オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

すべてはLOVEゆえに~『ノッティングヒルの洋菓子店』

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(入場記念品☕映画に相応しく気が利いていて、オシャレ😍…あっ、記念品は紅茶のみです=笑)

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 美しい異国の街角、カラフルで見るからに美味しそうな現地の食べ物たち。最近見た『エミリー、パリに行く』や『エイブのキッチンストーリー』も然り……だけど、そんな映画が無性に見たくなるのは、やはり今海外に旅行することができない(しかも見通しも立たない)からかなぁ…😅

 

 キノシネマみなとみらいで、『ノッティングヒルの洋菓子店(原題 Love Sarah)』

  優れたパティシエのサラは、親友のイザベラ(シェリー・コン)と共にロンドンのノッティングヒル地区に長年の夢だった自分たちの店をオープン。その当日、猛スピードでロンドンの街中、店に向かって自転車を走らせるサラ。この人がヒロインかと思ったら、事故に遭って亡くなってしまうという衝撃のオープニング😭

 

  親友の死によって長年の夢を打ち砕かれたイザベラと、遺されたサラの一人娘クラリッサ(シャノン・ターベット)、そして娘と仲違いしたまま事故で失い、喪失感に悩まされるサラの母ミミ(セリア・イムリー)が、力を合わせてサラの夢だった洋菓子店を再び立ち上げようと奮闘する物語。パティシエがなかなか見つからないまま開店に向けて走り出した3人の前に、なぜかミシュラン二つ星レストランで活躍する一流パティシエのマシュー(ルパート・ぺンリー=ジョーンズ)が現れて、「僕に手伝わせて」と申し出る…。

 

  ワケありマシューは、英国の法廷ドラマ『シルク~王室弁護士マーサ・コステロ』で、女たらしのクズ弁護士役で強烈な印象を残したルパート・ペンリー=ジョーンズ。(どこかの国の芸人ぢゃないけど、トイレで&Ⅹ%#[]≠≒する場面がアタマに焼き付いて離れないんですけど😅)この映画では、やっぱり女たらしではありつつ(イザベラに"You are a womanizer"って言われてた😅)シンは優しくて誠実なパティシエを好演。

 

  お店の名前を"Love Sarah"(映画の原題)と名付けた四人の、それぞれ心に秘めた想いが胸を打ちます😢また、店をオープンしたもののちっともお客さんが来なくて、ミミが起死回生のアイデアを打ち出すのですが、それも、ロンドンっ子ならではの、街や街に住んでいる移民の人たちへの深い「愛」があるんですね😊(映画の中で、「なんで治安の悪いノッティングヒルで洋菓子店を開こうと思ったのか?」っていうセリフがあるんですが、多国籍の人々がひしめくこの地区だからこそ…の展開になっていきます)

 

  人が挫折した時、深く傷ついた時、立ち直るきっかけを作ってくれるのは、自分自身の傷にこだわるよりもむしろ、いったん視点を変えて周囲に目を向け、他者の為に自分が何ができるかを考えてみること…。その時初めて、自らの心の傷が癒されていることに気づく…。この映画は、私たちにそんな密やかなメッセージを送ってくれているような気がします。

 

  お店の将来に転機をもたらす存在として、日本人女性のタナカ・ユウナさんと、抹茶ミルクレープが登場します。(日本の代表的なお菓子がコレ…って言うのは論議を呼ぶところだと思いますが=笑)

詳しくは映画を見てのお楽しみ😉

 

Love Sarah, love people, love life❗

 

  

 

  

 

  

ロイ・アンダーソンワールド再び~『ホモサピエンスの涙』

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  寡作で知られるスウェーデンの鬼才、ロイ・アンダーソンの新作『ホモサピエンスの涙』をキノシネマみなとみらいで。

 

  前作の『さよなら人類』から6年かぁ…。月日の経つのは早いですねぇ。前作は、ひじょうに皮肉でシュールというか、ブラックコメディの要素に満ちていました。(エピソードのオチとかは、デヴィッド・ウォリアムズのBBCのTV番組『リトル・ブリテン』を思い出したりもした😅)

 

  アンダーソン監督の作品ってひじょうに独特の世界観。リアルな実物大のセット、ミニチュアの建物、マットペイントなどSFXを緻密に組み合わせたそれは、まるで動く絵画、動く美術品のよう。その静止画のような映像の美しさにぽーっと見惚れていると、人物が突然動き出して(あら、これ映画だったんだっけ)とビックリするくらい(笑)

 

  さて、最新作『ホモサピエンスの涙』

人類の歴史は悲しみの歴史、涙の歴史。美しい映像で語られるのは、そんな人間たちのさまざまに悲劇的なエピソード。ヲタク的に目に焼き付いて離れないのは、神を信じられなくなってキリストのように磔刑に処せられる悪夢にうなされる牧師や、お誕生日会に向かう途中大雨に降られてしまうパパと娘、明白な敗北の中で立ち尽くすヒットラーとそれでもなお「ハイル、ジーグ(勝利万歳)」と叫ぶ哀れな親衛隊員たち、厳寒のシベリア平原で捕虜収容所に向かう兵士たちの背中、背中…。

 

うーーん、書ききれない❗(笑)

 

  それにしても、ポスターヴィジュアルに取り上げられている場面。ナレーションは「廃墟と化した街の上を飛翔する恋人たち」とだけ。むむ…。終末論?最後の審判?監督はスウェーデン人だから、ラグナロク(神々の黄昏)?深掘りしすぎると、夜眠れなくなる(笑)

 

  ……しかし、その人間たちの悲痛な涙を見つめるアンダーソン監督の眼差しは限りなく暖かい。(…それでも、生きていくんだよ)と、背中を押してくれている気がする。映画に登場する精神分析医のセリフ「生きてることは、いいことだ」や、降りしきるクリスマスの雪を見ながら繰り返される酒場の客の叫び「それでも(この世界は)素晴らしいんだよ❗」に代表されるように。……そうやって、人類の歴史は連綿と続いていくのだ、今までも、そしてこれからも。

 

  映像の魔術師と呼ばれるロイ・アンダーソン監督。作品の魅力を説明するのは難しい😭じぶんの表現力の乏しさがうらめしい。

 

  拙い感想で恐縮ですが(汗)記事を読んで少しでも興味を持った方がいらしたら、この機会にぜひ、アリ・アスター監督(『ヘレディタリー継承』『ミッドサマー』)やイニャリトゥ監督(『バードマン』『レヴェナント』)が尊敬してやまないという、唯一無二のロイ・アンダーソンワールドを体感してみて下さい😉

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(キノシネマ前のイルミネーション)

 



  

凍てつく冬こそおススメ❗北欧ミステリー 3選

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(From Pixabay)

 いつの頃からか、何故か(小説でも映画でもTVドラマでも)北欧ミステリー好きになったヲタク。全編を流れる暗くて陰鬱な雰囲気、謎解きの奥に潜む移民差別や児童虐待、政治の腐敗等の社会問題、甘さを一切排除したようなシビアな結末…。こんなふうに書いてくると、「とてもじゃないけど、何が面白いのさ」って言われそうだけど、内容の暗さ、重さに反して、その舞台となる北欧の自然や街並みの綺麗なこと❗こんな美しい背景の中で、あんな陰惨な事件が…っていう、ギャップ萌え?……うん、そうだ❗ヲタクはギャップに弱いのだ(納得)…って、前置きはそのくらいにしまして(笑)

 

 「トラップ~凍える死体」シーズン1,2

(アイスランド)


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   シーズン1は、首都レイキャビクから遠く離れたアイスランドの港町沖合いに停泊した船が、人間の胴体を引き揚げたところからストーリーが展開します。意に反して、捜査の陣頭指揮を取ることになった警察署長アンドリ(オラフル・ダッリ・オラフソン)。殆ど事件らしい事件が起きない田舎町のことゆえ、捜査に当たることのできるのが、彼の他に女性警察官ヒンリカと、真面目だが少々ドジな独身中年男のアウスゲイルのみ。レイキャビクの首都警察に応援を頼もうにも猛吹雪で道は閉鎖。3人で何とか事件を解決しようと奮闘するアンドリだが、それを嘲笑うかのように次なる殺人が…。

 

  アンドリがシロクマ(あるいはムーミンパパ?😅)みたいな巨体を揺すりながら事件解決に走り回るさまは微笑ましい…と言いたいところですが、彼の家庭環境は微笑ましいとは程遠い状況😢離婚した妻は新しい夫とルンルン生活、なぜか彼は元妻の実家で、置いてきぼりの娘二人と同居生活(…なんでこんなことになっちゃったんだろう?ナゾである(-ω- ?))。

 

  結末は見ている我々も目を背けたくなるほど重苦しいものですが、一方で、生きることの難しさ、辛さ、切なさが胸を打ちます。やはりアイスランド出身の作家、アーナルデュル・インドリダソンの作品に相通じるものがある気がします。

 

  しかし、背景となるアイスランド雄大な自然~どこまでも続く白い山々、透明な海、深々と降りしきる雪のさまはどこまでも美しく、この世の楽園のよう。(ベン・スティラーが主演した映画『LIFE!』に登場した風景そのままです😊)そのギャップたるや、強烈。

 

  シーズン1、2ともネトフリで配信中。(シーズン2では、連続殺人事件と並行して、アンドリと次女の親子の関係性が描かれます。ずいぶん日本のお父さんと違うんですよね。もう少し父権?を行使してもいいんじゃないかと思うくらい😅そういうところも興味深い😊)


「ブリッジ」シーズン1,2,3


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  ちまたでは、「キリング」と共に、北欧ミステリーブームの先駆けになった作品と言われております。…しかしそもそも、日本で北欧ミステリーブームなどというものは存在したのであろうか❓ヲタクの回りには「北欧ミステリーが好き」と言ってる人など、一人もいないのですが(笑)

 

  ヲタク的には、ハリウッドでリメークされ、デンマーク国民の3人にひとりが見たという「キリング」よりも、どちらかと言えばこちらのほうが好みかな😅

 

  シーズン1の冒頭、デンマークスウェーデンをつなぐ、オーレスン橋のライトが突然消え、その後復旧すると、その国境線上には切断されたひとつの遺体が。上半身はスウェーデン側、下半身はデンマーク側。そして、その上半身はスウェーデンの政治家、下半身はデンマークの娼婦という、衝撃的なオープニング❗この状況から、スウェーデン側の女性刑事サーガ・ノレーンとデンマーク側の刑事マーティン・ローデは、共同で捜査を開始することになります。

 

  サーガはアスペルガー症候群という設定。なので、職場で多くの人の目があるにもかかわらず、時間がないからといって突然セーター脱いで着替えちゃうなんてシーンもあります😅でも、さすが個人主義が徹底している北欧、同調圧力が強く、障害を抱えているとなかなか職場の人間関係が上手くいかない場合が多い日本と違って、サーガの障害を理解した上で彼女の突出した才能を生かしていこうとしている職場環境が興味深いなぁ…と思って見てました。

 

  シリーズを重ねるにつれ、主人公たちが次々と驚きの展開に巻き込まれていきます😮ヒーローはいない、警官も弱さを抱えた一人の人間…という、リアルを追及する北欧ミステリーならではの展開なんですが、ここで好き嫌いは分かれるかも。

 

  デヴィッド・フィンチャー監督が「ドラゴン・タトゥーの女」をリメークしたりして、ハリウッドでも一時「北欧ミステリーブーム到来か❗❓」って騒がれましたが、その後はサッパリ😅どー考えても、アメリカでは人気出そうもないよね(笑)

 

 「湿地」


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  我が愛するアイスランドのミステリー作家、アナールデュル・インドリダソンの作品の映画化。北の湿地に立つアパートの一室に横たわる老人の死体。その部屋には、ある少女の墓石が写っている古い写真と、3つの言葉が書かれたメモが…。それを手がかりにして、老人の暗い過去を探り、ついには驚愕の真実を知ることになる主人公、エーレンデュル捜査官。

 

  見終わって、ストーリー展開にかなり偶然が続くような感じがするかもしれませんが、アイスランドの人口はわずか42万人。あの広大な土地にわずか新宿区民の人口しか住んでいません。国民のルーツを探ればどこかしらで血縁が繋がっていると言われます。この映画を見る際には、そんな知識を頭に入れておくといいかも😊

 

  インドリダソンの作品って、ある殺人事件をきっかけに、ある人物、家族の歴史を遡り、さらに遠い過去の犯罪が露になっていく…っていくパターンが多いんですよね。北欧版「コールドケース」とでも言うのかな。アメリカ版と違って、「過去がわかって良かった❗」ってカタルシスはあんまりないですけどね😅

 

  ヲタクはこれまで北欧ミステリーについては度々記事を書いておりまして、今まで記事にした作品については今回は話題にしておりません。もしこの記事を読んで北欧ミステリーに興味を持った方がいらっしゃいましたら、「ドラゴンタトゥーの女」「蜘蛛の巣を払う女」などのリスベット・サランデルシリーズ、「特捜部Qシリーズ」(2つのシリーズとも、映画化されています)、Netflixオリジナルドラマ「刑事ソフィア・カルピ」(第1・第2シリーズ)などもおススメです😉

 

 



ああついにヲタクの悲願がぁぁ~😭ジャック・ロウデン ×ゲイリー・オールドマン❗

 
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予定よりも早く目覚めた朝。(よせばいいのに)ツイッター覗いて、あまりにも衝撃的で嬉しいニュースに二度寝できなくなった(笑)だって、だって…。

 

  ついに、ついに、ヲタクの推し、ジャック・ロウデンとゲイリー・オールドマンがTVドラマで悲願の初共演❗

しかも……しかもですよ、原作は Mick Herronの スパイ小説  "Slough House"❗

…ヲタクの為に立ち上げられたプロジェクトなのね、ホントにありがとう😆💕✨(⬅️ホントにバカ=笑)

 

   邦題はまんま「窓際のスパイ」なんですが、直訳すると「泥沼の家」。米ソ冷戦時代、英国のスパイ活動の拠点といえば、国際的なスパイ活動を行っていたMI6(英国秘密情報部…あの007ジェームズ・ボンドはここの所属)と、国内問題を扱うMI5(英国保安部)。ドラマの舞台となるのは、MI5の中でも通称「Slough House(泥沼の家)」と陰口を叩かれる窓際部署。下のデイリー・メール紙の記事にもある通り、Slow Horses(鈍足の馬)と韻を踏んでるんですね😅

 

  あの名作『裏切りのサーカス』ではMI6の初老のスパイ、ジョージ・スマイリーを演じたゲイリー・オールドマン、今回はMI5の「鈍足の馬たち」、ワケありのハグレ者どもを束ねるリーダーのジャクソン・ラム役。そしてそして、我が最愛のジャクロくんは、007に憧れ、伝説のスパイを祖父に持ちながら昇進試験で大失敗をヤらかし😅泥沼部署に左遷されてしまったリバー・カートライト😍『裏切りのサーカス』で言えば、ベネさま演じたピーター・ギラムの立ち位置かしらん。先日「ゲイリーとベネさま見るだけで腰砕け」ってツイしたけど、ジャクロくんとゲイリーのツーショット見たら、ヲタク、もぉもぉ、どーなるかわかりましぇ~ん(笑)

 

  ジャクロくんは現在撮影中のジークフリード・サスーン伝(第一次世界大戦の過酷な戦場体験を基に反戦の詩を書き続けた英国の詩人。監督はテレンス・デイヴィス)の撮了後すぐに合流するもよう❗

 

 英国の名女優キャサリン・スコット・トーマスも、彼らの上司役で出演者に名を連ねています。ゲイリーがアカデミー主演男優賞を受賞した『ウィンストン・チャーチル/ヒットラーから世界を救った男』の奥様役ですでに共演してますね。知的で上品なファーストレディ、ステキでした。直近では、ネトフリの『レベッカ』ダンヴァース夫人役で彼女の演技を見たばかり。コワかった…😅

 

  MI5を舞台にしたスパイドラマの名作と言えば、ヲタクの推し(ヲタクの愛は上限無し=笑)、トム・ヒューズの『THE SPY』がありますけれども、今作品も…。

 

もはや名作にしかならない予感(笑)

  

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日本のネオ・リアリズモだ❗~映画『泣く子はいねぇが』

  月の夜、スクリーンからも立ち上って来るような凍てつく冷気。山の上の神社から松明の篝火を携えて、奇声を発しながら次々と駆け下りてくるなまはげたちの異形のさまはこの世のものとは思えず、恐ろしく、神々しく、そして美しい。

 

  今でも男鹿半島に残る奇習は本来は神事であり、なまはげは「父性」の象徴で、家族の絆を強固にする為のものだと言う。けれど、新進気鋭の佐藤快磨監督が紡ぎ出す物語は、リアルで残酷で、どこか物悲しい。

 

  女の子が生まれたばかりの若い夫婦、たすく(仲野太賀)とことね(吉岡里帆)。一番幸せに溢れている時期のはずが、映画の冒頭から二人の間には不穏な空気が漂っている。泣く子をあやしながら、妻は一言、「…もう、無理だから」と呟いている。たすくは父親になる自覚のないままに、卑屈な笑いを浮かべながら、なすすべもなくそこにいる。それを責める妻の視線から逃れるようになまはげの神事に参加したたすくは、あろうことか、その本番の夜、御神酒をあおりすぎて前後不覚になり、なまはげの面をつけたまま一糸まとわぬ姿になって、街にさ迷い出てしまう…。

 

  衝撃の一夜から、歯車の狂ってしまった彼の人生。男鹿半島から出奔し、東京の片隅で身を潜めるように暮らして2年が過ぎたが、故郷や離婚した元妻のことね、そして3才になったはずの娘への想い絶ちがたく、たすくは男鹿へ舞い戻ってきた。そこで彼を待ち受けていたものは…❗❓

 

  これまでの出演作品を見ただけでも仲野太賀が、当代きっての演技派であることは異論の余地がなく、今作品でもばつぐんの安定感😊最初のうちこそ『生きちゃった』と似たようなキャラかな…?と思っていたのに、見終わってみればぜんぜん別人😮凄いな…。

 

…そしてそして吉岡里帆ですよ❗

 

寡黙な役なんですけど、「目は口ほどにモノを言い」最後の場面の、元夫、娘の父親を見つめるその表情。静かな怒り、憐れみ、諦観、赦し…。全くの無言のなかにあらゆるものがせめぎ合う…見事です❗❗

 

  ラストは素晴らしい名場面。一切のセンチメンタリズムを排除した皮肉で苦い結末ながら、それが乾いた感じにならずに、どこか哀愁があり、ひとすじの光りが射しているように思えるのは、舞台が男鹿半島だからか、それとも仲野太賀の滲み出る人間味ゆえか❓

 

見終わった後の感じは、第二次世界大戦後の貧困と荒廃をリアルに描き出した『自転車泥棒』(ヴィットリオ・デ・シーカ)や『鉄道員』(ピエトロ・ジェルミ)など、イタリアのネオ・リアリズモの作品にも似て…。なまはげというローカルな風習を題材にしながら、現代の日本が抱えるさまざまな問題を孕んだ、骨太な作品。

 

  是枝裕和監督が佐藤快磨監督の若き才能に惚れ込み全面的に助力を惜しまなかった、それがなかったら陽の目は見なかっただろうと言われるこの作品。佐藤監督は見事に是枝監督の期待に答え、そしてその若き才能のもとに一流の役者陣が集結した❗

 

  …そんな情熱的なエピソードを聞くにつけ、日本映画界の未来は限りなく明るい❗…と思わずにはいられない😊

 

天才がゆえの…『あさイチ』の宮本浩次さん

  NHKあさイチ』に宮本浩次さんご登場~🎉✨😆✨🎊

 

パブリックイメージ作りにも興味なく、「じぶんを○○に見せたい」という自己顕示欲にも縁遠い人が、自由気ままに語り出すとああなる…っていう1つの見本みたいな😅人はそれを「宮本ワールド」と呼ぶけど(笑)

 

  その楽曲を聴いてみれば、そして舞台上のパフォーマンスを間近に見てみれば、宮本さんが天才であることは紛れもない事実だけど、昨日の『あさイチ』は、私生活においても心情面でも、天才ならではの数々の逸話に満ちていて、いちいち面白かった(笑)

 

  宮本さんの話を聞いていると、真の天才というのは、やはり我々一般大衆に理解されるのには時間がかかるものなんだと思う。特に初期の作品(『星の砂』とか『デーデ』『珍奇男』など)は誰にも相手にされなかった…と宮本さん今でも自虐的に仰っているけど、ヲタクだって…『珍奇男』より、「売れることを意識して作った」っていう『今宵の月のように』のほうが好きだもん(小声😅)昨日映像が流れた「オレの歌を黙って聞け❗」事件(ギター壊しちゃったんだっけ❓この時😅)も、世の中から理解されない若き天才の咆哮のように聞こえた。あの映像を見て、まるで初めて見るかのように「これ、いつの話だったかな…。」って目を丸くしている宮本さん。もはやあの事件も、過去の出来事なんだね。最近彼がよく口にする「大人の」成熟がうかがえてツボでありました。

 

  華丸大吉さんから「宮本さんといえば男の歌のイメージで、女性ばかりの歌をカバーするのは意外」みたいなことを言われて、「いやじつは、母親を初め女性から沢山影響受けてます」と返す宮本さん😊以前お付き合いをしていた彼女からは、浮世絵やゴッホの手ほどきを受けた…って仰っていて😮す、スゴいなー、浮世絵が好きな若い女性って…。天才とお付き合いする人はどこか違う(笑)

 

  番組では宮本さんのこれまでの歴史や過去の逸話がさまざま持ち出されて来るんだけど、宮本さんはだいたい「…そんなことありましたっけ❓」って😅齢(よわい)五十を過ぎて「大人の青春」を謳歌している宮本さんにとって、今、そして未来があるのみなんだね😊

 

  ヲタクはこれからもいちファンとして、宮本さんの進化を見守り続けるゾ、どこまでも😊

 

 

三島由紀夫没後50年~そして、三島と太宰のこと

  あの衝撃的な事件から早や50年…。ヲタクが三島の作品を夢中になって読み始めた頃には、既に彼はこの世の人ではなかった。

 

  …じつはヲタクの父親は当時海上自衛隊に所属していて、事件の直前に横須賀から市ヶ谷の防衛庁に転勤したばかり。父はちょうどその日は出張中で、後日同僚から話を聞かされて驚いたそう。ヲタクが父からその話を聞いたのは、事件から10年位経ってから。「豊饒の海」三部作や「禁色」「金閣寺」「仮面の告白」を読んで、その豪華絢爛な日本語に酔いしれていた頃。同僚から聞いたという父の話の内容は、その場にいた人しかわからない生々しさに満ちていて、ヲタクはしばらく三島の作品は読めなくなってしまった😅

 

  三島と同時期にヲタクが夢中になった作家に太宰治がいるのだけれど、どこかで三島が太宰治のことを忌み嫌っていて、なんと面と向かって「僕はあなたの文学が大嫌いです」と言い放ったというエピソードを読んで、驚いてしまった😮なぜって、ヲタクの中では、三島と太宰って同一線上の作家のような気がするから。

 

  太宰の文学に接するたびに、その不具者のような弱々しい文体に接するたびに、私の感じるのは、強大な世俗的な徳目に対してすぐ受難の表情をうかべてみせたこの男の狡猾さである。

  三島が太宰について書いた文章の一節だけど、なかなかに激しい(笑)…しかし女性は、その「受難の表情」にヨワイ😅

 

  三島って幼少期は虚弱体質で、それを心配したおばあさまに外で遊ぶのを禁じられ、家から一歩も出してもらえなかったって聞いたことある。後年の、ボディビルディングや武道への傾倒ぶりや盾の会設立等も、自らの内に潜む柔弱さや繊細さを乗り越えようとした反動がなせるわざ…だったのでは❓  三島の写真集『薔薇刑』なんて見ると、憂国の士…というよりむしろ、激しいナルシシズムを感じる(神田の古本屋で立ち読みした時にはあまりの衝撃に本取り落としそうになった😅)それって、太宰に感じるものと同じなんだよな…。

 

  蜷川実花監督の『人間失格太宰治と三人の女たち』で、太宰(小栗旬)が若き日の三島(高良健吾)に向かって「…本当はお前、オレのこと好きなんだろ?」って言い放って、三島が思わず絶句する場面。あれが全てのような気がする。またね、人たらしの太宰に小栗旬がぴったりで、高良健吾の、青い清廉な三島も良くて😍短いけど、大好きなシーン。

 

   三島も太宰も、自己愛を突き詰めた末に、自死という道を選んでしまった😢二人とも、願わくばその生涯のどこかの時点で、他者を愛することに目覚めて、歳を重ね、円熟した作品を書いて欲しかった…。

 

  冷え冷えとした晩秋🍁そんなことをつらつら考えるうちに憂國忌の夜は更けていく🌃

 

 

 

 

  

美少年コ・ウ・リ・ン😍~『エイブのキッチンストーリー』

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  キノシネマみなとみらいで、『エイブのキッチンストーリー』。ここのところキノシネマに通いつめてるな(笑)前から好きだったけど、最近とみに映画のラインナップが激しくヲタク好みなんである。早く着きすぎてしまったヲタクがスマホいじってる前には、『ミッドナイトスワン』の開場を待つ長蛇の列が…😮
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(今日の横浜美術館)

さて、本日の映画、何てったっていちばんのハイライトは、主演のノア・シュナップくんでしょう❗もはや天から舞い降りた大天使👼ミカエルか、はたまたガブリエルか。世の中の穢れにまだ染まっていない、ひたすらピュアな美少年。聞けば、ネトフリの『ストレンジャー・シングス』に出演していて、知る人ぞ知る…の存在らしいんだけど、ヲタクはお初だったから、『ターミネーター2』のエドワード・ファーロング、『目撃者~刑事ジョン・ブック』のブラッド・レンフロを初めて見た時の衝撃を思い出したワ😍

 

  12才の料理好きの少年エイブが、バラバラな家族を何とか結びつけようと孤軍奮闘する、ひと夏の成長物語。(原題はまんま『エイブ』。エイブラハムでもなく、イブラヒムでもなく、ただのエイブって呼んで欲しいという本人の願い。それはなぜ…❓というのが、この映画のテーマでもあります)しっかし、その家庭環境と来たら、ハンパなく超大変😖💦パパはパレスチナムスリム出身、ママはイスラエルユダヤ系。いくら自由の国、人種のるつぼアメリカはブルックリンとはいえ、二人が結婚出来たことは奇跡に近い😅パパはエイブを苦しませないために無宗教というスタンスを選んだものの、いざ親族で集まればけんけんごうごう、イスラムユダヤで火花を散らし、結局は喧嘩別れ。エイブは得意の料理の腕をふるい、感謝祭で自ら考案したアラブとユダヤフュージョン料理を一人で準備し、何とか家族を1つにしようとしますが…。

 

  少年の成長物語にはメンター役が不可欠ですが、今回その役を担うのが、自由気ままなブラジル人シェフ、チコ。親族の宗教戦争から逃れてチコに弟子入りしたエイブは、料理だけでなくさまざまなことを学んでいきます😊

 

  まあしかし、エイブの親族(ジジババ、叔父さん)がもー、わからんちんのトーヘンボクすぎて、映画の途中でスクリーンに殴り込みをかけたくなったわ(笑)なのにエイブちゃんはひたすらエンジェル👼、「ボクが(料理を)失敗したせいで、みんな結局ケンカになっちゃった…😭」って。その場面まで来ると、観客全員の眼からは、涙が激しく吹き出るハズ(もちろんヲタクも例外ではありませんでした)

 

  子どもだからって軽く見ちゃ、ダメなんだゾ。大人が思うよりずっと深く、いろんなことを考えてる。8才の、可愛いい孫がいるヲタクは、この映画を見て改めて、自戒と共にその事実を深く心に刻んだのでした😊

 

それにしても、次々と出てくる珍しい料理(ファラフェル、アカラジェ、シュワルマ…等々)の美味しそうなこと❗また、チコについて料理修行をしている時の、数々の野菜や果物の色彩の美しいこと🤤空腹で見るのは最後までもたないと思うので(笑)必ず何かしらお腹に入れていきましょう😉

 

舞台人の心意気❗~映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい❗』

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(横浜美術館前の紅葉)

キノシネマみなとみらいで『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい❗』

 

  1897年12月27日の初演以来500日間のロングランを達成し、フランスを代表する戯曲と言われる『シラノ・ド・ベルジュラック』。戯曲の作者、エドモン・ロスタンを主人公に、いかにこの名作が作り上げられたかを、笑いあり、涙ありで描いた作品です😊
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ロスタン(トマ・ソリベレ)は売れない戯曲作家。才能はあるらしいのですが時流に乗れず、韻文の悲劇ばかり書いているので酷評ばかり😅流行に迎合しない芸術家が不遇をかこつのは、古今東西変わらないようですね(笑)そんな彼の文才を以前から認めていた大女優サラ・ベルナールが、ロスタンを当時の売れっ子舞台俳優コンスタン・コクランに紹介するところからストーリーは始まります。このロスタンがね、お髭だけは立派なんですが、小柄で細くて童顔で、めちゃくちゃ母性本能くすぐるタイプ。サラ・ベルナールが一生懸命になるのも…わかる(笑)

 

  一方紹介されたこのコクランという役者(オリビエ・グルメ)、借金まみれで、借金がまとめて返せるような大傑作を書け、一攫千金を狙うんだ❗とロスタンに迫ります。おまけに大根役者の自分の息子に重要な役をつけろとゴリ押ししてくる始末😅さらには興行のパトロンが、自分の愛人の女優をヒロインに据えるのが第一条件だと言い出して…。

 

  そんなてんやわんやに加えて、上演まであと1ヶ月しかないという無理難題。周囲からは「大コケ確定❗」とウワサされる中、果たしてロスタンとそれぞれワケあり、崖っぷちの仲間たちは一発逆転を図れるか❗❓
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(映画が終わってキノシネマを出ればそこはイルミネーションの世界)

 見終わった後爽やかな笑いと涙に満たされるのは、少々性格はヘンテコリンでも(笑)登場人物の誰もが、何よりも舞台を愛しているから。そして、さすが芸術の都パリ、製作側・演じる側の心意気を情熱を、サポーターや観客がガッチリ受け止める、心底応援する❗サラ・ベルナールのセリフにもあるように、「パリは舞台を見る観客が成熟している」。それはつまり、文化の成熟、社会の成熟。大人の都、パリ。この映画を見てヲタクは、昔から大勢の芸術家や文化人たちがなぜあれほどパリに惹かれるのか、その秘密をちょっぴり垣間見た気がしました。

 

  最後に、コクランを初めとして、歴代シラノ役者の貴重なフィルムの数々がぁぁぁ~❗舞台&映画ファンには垂涎モノです。詩人ジャン・コクトーが愛したイケメン俳優ジャン・マレーや、ジェラール・ドパルデュー、さらにはホセ・ファーラー(『アラビアのロレンス』トルコの司令官役で強烈な印象を残した人)の英語を話すシラノ…なんていう変わり種も😅

 

  世紀末のパリ、特に当時のムーラン・ルージュポルトサン・マルタン座が忠実に再現されていて必見ですし、娼館でロスタンがアントン・チェーホフに偶然出会う…なんていうエピソード(ここでの会話がまた、笑えます)を筆頭に、当時のパリ演劇界の内幕や、くすりと笑える小ネタも満載❗

『タイトル、拒絶』舞台挨拶に伊藤沙莉登場❗

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(横浜のジャック&べティにて『タイトル、拒絶』舞台挨拶。誰が誰だか…=笑)

  女性による女性の女性の為の『風俗産業をテーマにした映画』見・参❗今まで風俗の女性たちを扱った映画って、まあ、日活ロマン○ルノの昔から押し並べて男性監督によるものばかりでしたが、まあ見事にリアルな爆弾ブチかましてくれましたよ、これが長編第一作だという山田佳奈監督が〰️💣💥

 

  大学の就活、あらゆる企業に落ちまくって、なぜかその道に飛び込んでしまったカノウ(伊藤沙莉)。ところが初の派遣❓先でいざとなるとビビってしまい、ホテルから逃げ出して大立ち回り😅デリヘル事務所の雑用係として働き始めたものの、事務所で働く一癖も二癖もある女性たちには引っ張り回され、彼女たちを上手くマネジメントできないと言ってはクズ男な店長(般若)にアタマをどつかれる日々(笑)クズ男って言えば、一見ジェントルマンに見えて実は…っていう池田大さん演じるクズっぷりもひどく印象的でした😅

 

  このカノウというのがまた、不思議な人物で。彼女が事務所に入ったことで、まるで起爆剤みたいに、今までどこか自分の人生を諦めたかのように淡々と(❓)仕事をこなしていたデリヘル嬢たちがどんどん素というか、ホンネを晒し始めるんですよね。まあ、それによって悲しいかな、さまざまな惨劇が事務所で起き始めるのですが…。

 

  この、女たちの人生を変えていくカノウという役、伊藤沙莉が演じるからこそ地に足が着いた感があるというか。ドラマ『全裸監督』や『いいね❗光源氏くん』でも感じたんですが、あのハスキーで野太い声が彼女のいちばんの魅力である「ホンネで生きていそうで、同性の共感を呼ぶキャラ」に一役買ってるんじゃないでしょうか😊(あざとい、とか、ぶりっ子キャラって、声がワントーン高いイメージあるじゃないですか。彼女の場合、その真逆を行ってるんですよね)特徴的なハスキーヴォイスのせいで、少女の頃は「風邪ひいてるのか」と言われてオーディションに落ちまくっていたというスカーレット・ヨハンソンを思い出します。

 

うん、伊藤沙莉は日本のスカーレット・ヨハンソンだ❗声だけじゃない、その胆の据わった女優根性もね😉

 

  裸一貫、たくましく、したたかに生きていく女たち。映画の中で語られるエピソードはけっこう凄惨なものも多いんですけど、随所にユーモアが散りばめられていて、客席ではけっこう笑いが起きてました。何よりも山田監督の、映画の中で、傷つき悶えながらも、必死で生きようとする女性たちへの温かい眼差しが心地良かった😊舞台挨拶で、伊藤さんが監督の人柄が現場でも大好きだった…って言ってましたね。

 

  最後の女性3人の舞台挨拶(山田佳奈監督、伊藤沙莉さん、恒松祐里さん)も女子会のノリで、顔を見合せながら「次、どーする❓」「なんも考えてなーい」なんてくすくす笑ってる感じが、とっても可愛かった😍

 

素敵な金曜日の夜をありがとうございました❗

 



「見たい、見られたい」のラブロマンス~『写真の女』in 東京国際映画祭

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  東京国際映画祭にて『写真の女』(串田壮史監督)鑑賞。いやー、久しぶりにドキドキする映画見たわ❗スリリングなオトナのラブロマンスです😊

 

  東京の片隅で細々と、親から受け継いだ小さな写真店を営む中年の男、カイ(永井秀樹)。彼はまた昆虫が大好きで、休みの日には山に昆虫の写真を撮りに行く。いつもと同じように昆虫の写真を撮っていると、彼は山の上から落ちてきて中腹の木に引っ掛かっている一人の女性キョウコ(大滝樹)を発見する。住むところも失ってしまったらしい彼女は、そのまま写真館に居座ってしまい、二人の奇妙な同居生活が始まる。様々なポーズをとっては自ら写真を撮影し、自分のインスタにアップするのがキョウコの毎日の日課であり最大の関心事。見られること、撮られることに至上の歓びを感じる女と、見ること、撮ることにエクスタシーを感じる男。まるで±の電極のような二人の運命の出逢い、究極のラブロマンスの行く末は…❗❓

 

このキョウコという女性、カイにとってはまるで能楽の『羽衣』みたいに、天から降ってきた舞姫なわけですよ。リアルなようで、リアルじゃない。手が届きそうで届かない、ファンタジックでフォトジェニックな存在。俗世間から隔離されたようにひとりぼっちで生きてきたカイは、キョウコにちょっと触れられただけでビックリして飛び上がる始末😅見かけは中年のおじさんでも心は少年、今ドキ絶滅危惧種のジェントルマン。伊達にいつも真っ白なスーツを着ているわけぢゃござんせん(笑)…まっ、そこはそれこの映画はオトナのラブファンタジーなんで、カイのピュアな恋心は徒労に終わることはありません、ご安心を。

 

  キョウコは唯一の生きがいであるインスタのフォロワーが最近激減しているのに悩んでいて、そのせいでスポンサーからも見放されてしまいます。それが、愛されたい、承認欲求の強い(大滝樹さん談)彼女を次第に狂気とも言える行動に駆り立てていくのです。キョウコは、SNS時代に生きる私たちがふとすると陥りがちな危うさ(SNSのフォロワー数やいいねに固執することの虚しさも含め)を体現していて、古典的な(終了後のTSで、串田壮史監督は「王道の」と表現されていましたが)ラブロマンスに、今日的なテーマが織り込まれています😊


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(TSの遠景。誰が誰だかわかりませんね=笑)

 

さて、なぜこの作品がエロいのか❓…ってまた振り出しに戻っちゃいましたけど(笑)これはヲタクの非常に個人的な感想です(…スミマセン😅)なぜならヲタクもカイと同じ、リアルな結びつきよりむしろ、ファインダーやスクリーンを隔てて、好きなモノや人を「見る」行為に歓びを感じる種類の人間だから。だから、まるで何かにとり憑かれたようにキョウコの写真を撮りまくるカイの気持ち、よくわかる。悲しいかなヲタクはカイのような才能は持ち合わせていないので、こうやってブログの片隅で細々と見たことの感想を呟くことくらいしか、できないけど😅

 

  それにしても、映画の中でカイが撮影する自然の中のキョウコの写真、そして二人が身にまとう衣装の、純白や深紅の色のなんと美しいこと。水の中に埋没していくキョウコの、なんとエロティックなこと(大滝さんによれば、撮影は過酷を極めたようですが😅)。

 

  ネタバレの恐れがあるので詳しくは語れないんですが、終盤近く、カイがいつも通っている銭湯のワンシーン、ひじょうに鮮烈で、長く記憶に刻まれる名場面だと思います😊

 

  世界中の60もの映画祭に出品され、数々の賞を受賞したこの作品が、いよいよ日本でも公開されると今日発表がありました❗来週の月曜日に正式に告知されるそうなので詳細はここで発表は控えますが、この素敵な作品ぜひ映画館で、一人でも多くの方に見て頂きたいと思います😊


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(主人公カイに影響されて、六本木ヒルズを出た後撮影した写真=笑)

 

 

  

 

  

 

  

Netflix新着~ダークミステリー再び『エイリアニスト 2』


Netflixで『エイリアニスト』第2シーズン(暗闇の天使~The Angel of Darkness)配信開始❗

 

  ヲタク、シーズン1について、ちょうど昨年の11月に記事書いてましたね。あれからもう1年かぁ…。好きなことに爆走してると、月日の経つのは早いですね(笑)

 

  舞台は19世紀のアメリカ、ニューヨーク。交通手段は徒歩か馬車。海からの冷たい霧が街を覆い、殺人鬼はそれに紛れて暗い街角の奥に息を潜める。殺人鬼を追う者は命を賭けてその闇に踏み込んで行く。敵が鋭い刃物を手に、襲いかかろうとしているのも知らずに…。

 

  シーズン1では、精神分析医(当時はエイリアニストと呼ばれていた)としてシリアルキラーの心理をプロファイリングしていくうちに、次第に犯人に共感してしまう主人公ラズロー・クライズラー(ダニエル・ブリュール)の苦悩と惑いが印象的でした。しかしシーズン2は一転、(あれ❓主人公ってダコタ・ファニングだっけ❓)って思うくらい、彼女演じるサラが大活躍❗ダコタのファンのヲタクとしてはオールオッケーですけど(笑)

 

  前シーズンではアメリカ初の女性警察事務官であり、ルーズベルト警察庁長官(のちの大統領)の秘書として、ニューヨークの男娼連続殺人事件の解決に尽力したサラ・ハワード。第2シーズンでは、警察内部のオトコ優先社会に嫌気がさしたのか(笑)、なんと女性だけの探偵事務所の所長として登場~😍優雅で美しいドレスを翻し、当時「悪の巣窟」と呼ばれていたブルックリンにも、拳銃片手に臆せず飛び込んでいく姿はめちゃくちゃカッコいい~❗(インタビューでダコタ・ファニング、あの衣装「コルセットで締め上げて気絶しそうになった」って言ってました。「風と共に去りぬ」の舞踏会のシーンでも然りですが、女性は長い間、「女性であり続けること」にかなりの苦痛を強いられてきたんだなぁ…。)

 

  ある曰く付きの病院で出産したシングルマザーの女性。ふと横のベビーベッドを見ると、赤ちゃんはいなくなっており、そのまま行方不明に。そしてあろうことか病院長や看護長の証言により、女性は「子殺し」の汚名を着せられたまま、電気椅子送りに。警察の杜撰で非人道的な捜査に憤るサラとラズロー。折しも、スペイン特使の乳児が自宅から誘拐される事件が発生。当時アメリカとスペインは国同士が戦争も辞さない一発触発の危機にあった為、内密に捜査を依頼されたサラ。しかし一方で、ニューヨークの百貨店の人形売り場に、毒を盛られた乳児の無残な遺体が…。

 

  スリリングな謎解き、犯人の追跡(ドラマの中盤で犯人は特定されるのですが、何しろサイコパスの心理は謎だらけ、こちらが想像もできない意表をついた突発的な行動をとるので、怖い、怖い((( ;゚Д゚))))

 

  ミステリーの謎解きに、当時の女性の結婚観や職業観、母性の問題、いわゆる「毒親」のテーマなど、さまざまな今日的なテーマも内包されていて、シーズン1に引き続き見ごたえがあります😊

 

(よけいなオマケ=笑)

1.犯人像のプロファイリングに行き詰まったラズローが、女性の精神科医に相談するんですが、(どっかで見たことあるよなー、誰だろ誰だろ)ってずっと思ってて、ドラマが終わる頃やっと気づいた❗

クリムトの「ユディト」だよ❗(笑)

この人、フロイトの弟子って設定で、フロイトからウィーンに来ないかって誘われてるんだけど、あながち見当ちがいでもないんじゃないか…。

 

2.そしてそして、ヲタクがシーズン1から目をつけていた愛すべきキャラにとんでもない悲劇がぁぁぁ😭😭その場面を見たとたん、ヲタクは天を呪い、(シーズン3が配信されても絶対見ないぞ、コノヤロー)と、年がいもなく毒づいたのでした。いや…サラを応援してるから、また続編あれば見たいけどさ…でもさ…(⬅️しつこい😅)

 

  

 

 

秋、深まりて🍁…『ヨナス・カウフマンコンサート』

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(キノシネマ前の公園。木々が色づき始めていました😊)

 

  今日は文化の日❤️文化の日に相応しい映画と言えばコレ(笑) キノシネマみなとみらいで、『ヨナス・カウフマン ウィーンコンサート』❗ウィーンのコンツェルトハウスで行われた、21世紀のキング・オブ・テノールと称されるドイツ出身のオペラ歌手カウフマンのコンサートを収録したもの。

 

  ヲタク的にカウフマンと言えば、「ザッツ、ゲルマン❗」とも言うべき暗く重厚な歌唱、シューベルトの「冬の旅」が強烈な印象なのですが…。

歌唱も醸し出す雰囲気も今回は全然違う❗

彼はその歌唱や演技の変幻自在さから、「カメレオン」と呼ばれているとか。

 

 温かく陽気な音楽の都ウィーン。街を愛し、人生を楽しむウィーンっ子気質に合わせて、カウフマンはあえてメジャーな大曲は避けているようで、楽しいオペレッタ(喜歌劇)の数々(「こうもり」、「サーカスの女王」、「メリー・ウィドウ」、「小鳥売り」など)や、ウィーンゆかりの楽曲(シュトラウスの「ジーヴェリングのリラの花」、「プラーター公園は花盛り」「ヘルナルスの小さなカフェで」など)を軽妙洒脱に歌い上げます。公演の合間に大観覧車に乗ってはしゃぐカウフマン、ホイリゲ(ウィーンの森のワイン酒場)で白ワインのグラスを傾けるカウフマンは、誰よりも歌を、人とのふれあいを、いや人生そのものを心底楽しんでいるように見えます。それが彼の歌声にえもいわれぬ温かみを添えているのでしょう😊

 

  共演するソプラノ歌手レイチェル・ウィリス・ソレンセンや指揮者のヨッヘン・リーダー、そしてウィーンの観客たちとの交流は相手に対する深いリスペクトに満ち、彼が当代一のテノール歌手と呼ばれる理由がよくわかる、至福の一時間半❗

 

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ジャック・ロウデンのジークフリード・サスーン伝、ついに撮影開始❗


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(サスーンとオーウェンが運命の出逢いをしたスコットランドの古都エディンバラ)

 ジャクロくんのツイッターに、新作『Benediction』撮影時の麗しいお姿がぁぁぁ😍…まっ、内容の重さ、シリアスさを考えれば、軍服姿が美しいなんて口が裂けても言えないんですが(反省)

 

  今回ジャクロくんが演じるのは、第一次世界大戦の凄惨な体験から心を病み(今で言うPTSDですね)、その後反戦の詩を書き綴った実在の人物、ジークフリード・サスーン。

 

  サスーンは、やはり英国の反戦詩人、ウィルフレッド・オーウェンの詩作上の師であり、師弟関係を越えた敬愛の対象でもありました。二人はPTSD治療の為に入院したスコットランドエディンバラの精神病院で運命の出逢いを果たし、サスーンの指導によりオーウェンは、戦争を題材にした詩作の中でも英国文学史上屈指の名作と言われる『死すべき定めの若者の為の讃歌』を書き上げます。その後オーウェンはサスーンの反対を押し切り再び前線に赴き、25才の若き命を散らすのですが…😢

 

  ヲタクが敬愛するティルダ・スウィントンが準主役で出演していて、いつか見たいと熱望していてまだ果たせていない映画の1つに『War Requiem(戦争の鎮魂歌) 』があります。これが、オーウェンの生涯を題材にしたオペラというか音楽劇でして😅

ティルダ・スウィントン➡️ウィルフレッド・オーウェン➡️ジークフリード・サスーン➡️ジャック・ロウデン❗😍

好きなモノ、好きな人物が次々と繋がれていく…ヲタクは密かに「ヲタクのラブ・チェーン現象」と呼んでいるのです(笑)ジャクロくんとティルダさまがいつか共演してほしいと祈念しているヲタクにとって、これは大いなる啓示だわ、うん(笑)

 

  …とつらつら考えていたら、ジャクロくんのツイッターにサスーンの詩の1節が❗「…僕は暗闇の中で数発銃を撃った。『無人地帯』であたかも自分が重要人物であるかのように…。」無人地帯(敵陣の塹壕との間のエリア)を深夜パトロールする任務にでもついていたのでしょうか。そこに敵の兵士がいるかどうかも定かではないのに、恐怖の為か疑心暗鬼の為か、闇雲に引き金を引く若い兵士…。歴史上の人物を演じる時、膨大な資料を読み込むジャクロくん。サスーンの詩も、きっと全作品読破したんだろうなぁ…😊

 

  監督は『エミリ・ディッキンソン~静かなる情熱』のテレンス・デイヴィス。有名なアメリカの詩人の生涯を描いた映画の監督です。ディッキンソンというのは若い時から自宅の敷地を一歩も出ず(もちろん結婚せず)ひたすら詩を書きまくった人で、元祖引きこもりというか😅その芸術性が世に認められたのも、エミリが亡くなってしばらくしてからでした。彼女、最後には腎臓を病むんですけど、ギリギリまで医者にかからなかったから重症化して、尿毒症から脳に来て((( ;゚Д゚)))そのプロセスが徹底したリアリズムで描かれていて、主演のシンシア・ニクソンの熱演と相まってもう、怖くて、怖くて😅

 

  あの演出で第一次世界大戦とサスーン…。楽しみなような、見るのが怖いような(笑)

 

 

 

 

  

 

  

初代007 ショーン・コネリーは永遠に~ジャック・ロウデンから追悼ツィート

 
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朝一番に、ショーン・コネリーが90才で滞在先のバハマ諸島で死去…とのニュース😢個人的には、007と言えば初代のショーン・コネリーか、現ボンドのダニエル・クレイグの印象が強烈ですが、ダニエル・クレイグの007最後の作品『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開を前にコネリーの訃報を聞くとは…。これも何かの因縁なのかなぁ。

 

  ご存知の通り、殆ど無名の俳優だったショーン・コネリーは初代007に抜擢されて一躍世界的な大スターになったわけですが、彼の素晴らしさはそれに有頂天になって天狗になるどころか、ボンド俳優というレッテルを貼られることを嫌い、一人の役者として、自らのキャリアを築いていったところでしょう。

 

  例えばマーベルのヒーロー役者たちはある程度キャリアを確立した人たちが選ばれてるように見えるんですね。だからそれほど役のイメージが強烈に印象づけられることは少ない気がする。しかし選ばれた時にほぼ無名というのは…。

 

  古くは、TV版『スーパーマン』でクラーク・ケント役を演じたジョージ・リーヴスは自らのパブリックイメージから脱することができずに深く悩み、自死という道を選んでしまいましたし、あのマリリン・モンローですら、亡くなる前は、世間が求める「アメリカのセックス・シンボル」という虚像に苦しんでいたと言います。 ショーン・コネリーはそんな重圧を自らの勇敢さと努力と強靭な役者魂で跳ね返した人なんだ…と思います。考えたら、007卒業後のキャリアのほうが華々しい。しかも期間も長い。これってスゴイことだよ。007を演じてた時には薄い頭髪をカツラで隠していたそうですが😅卒業後はそれも隠さず、リアルなビジュアルで真っ向勝負(笑)でもじゅうぶん、イケメンだった。

 

  中世修道院で起きた怪死事件の謎を追う『薔薇の名前』、あのオードリー・ヘップバーンと共演して老いたロビン・フッドの滲み出る悲哀を演じた『ロビンとマリアン』、『インディ・ジョーンズ』の考古学教授、『風とライオン』の砂漠の王など印象的な役柄はたくさん思い浮かびますが、やはり何と言っても白眉は、アカデミー助演男優賞に輝いた『アンタッチャブル』(ブライアン・デ・パルマ監督)でしょう❗長年、「危ないことを避けて」平々凡々のパトロール係を続けてきた初老の一警官が、エリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)に見込まれて、巨悪のマフィア組織に一世一代の大勝負をかける。そのオトコ気はショーン・コネリー自身にも被って、そりゃもう、胸アツだったもんです😊

 

  英国紳士の典型みたいなボンドで名の売れたショーン・コネリーだけど、その出自はバリバリのスコットランド人。彼はそのルーツをとても大事にしていた人で、英国からのスコットランド独立の是非を問う国民投票が行われた時には、独立派の最先鋒だったと記憶しています。今回英国のEU離脱でまたぞろスコットランド独立の気運が高まっていますが、最近のコネリーはどんな気持ちでいたのかな…。

 

  コネリーに負けないくらい反骨精神旺盛なヲタクの推し、ジャック・ロウデン、やっぱり早々に追悼のツイしてました。「あなたにかかると、我々の母国(ジャクロくんの言うcountryとはもちろんスコットランドのこと)も実際の倍くらいある大国に見えたね」…ってニュアンスかしら❓最近のジャクロくん、文章にまでスコティッシュだから、わかりにくいよ(笑)

 

  コネリーさん、大丈夫❗反骨のスコットランド魂は、英国演劇界においてジャクロくんがしっかり受け継いでくれます😊

 

  ショーン・コネリーよ、007よ、スコットランドよ永遠に。