オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

ハートは乙女のアマゾネス~『ワンダーウーマン1984』


f:id:rie4771:20210114151357j:image

(ワンダーウーマンが活躍するワシントンの街…From Pixabay)

 やっと公開~~❗コロナ禍のせいで未公開の話題作が山積みだけど、この作品もその一つ。前作の舞台は第一次世界大戦中でしたが、時代は一気に飛んで1984年。見ている私たちにしたら、当時のバブリーな雰囲気や、ファッション、音楽がすでに懐かしいのだけど😊

 

  冒頭、現在のダイアナの基礎を築いた一つの出来事として、少女時代のダイアナが故郷の島セミッシラでアマゾネス版SASUKEみたいな競技に参加するシーンから始まるんだけど、もうしょっぱなから手に汗握りまくり(笑)背景に広がる真っ青な海、急峻な山谷を馬で一気に駆け抜けるアマゾネスたち。

 

  馬に振り落とされてやむなく近道したダイアナを、「勝利に値しない❗」と一刀両断するアマゾネス史上最強の将軍と言われたアンティオペ役のロビン・ライトが前作に引き続きめちゃくちゃカッコいい❗ロビン・ライト…そう、大ヒットドラマ『ハウス・オブ・カード~野望の階段』で、夫(ケビン・スペイシー)の後を引き継いでアメリカ初の女性大統領に上り詰めた鉄の女。ロビンはいつでもどこでもアマゾネス(笑)

 

  ヲタクはチビで童顔(しかもタヌキ顔😅ヨーロッパに住んでいた頃は、30代だというのにしょっちゅう中学生に間違えられてた)なんで、長身でパワフルな美女を見ると無条件で憧れちゃう😍『ドクターストレンジ』のティルダ・スウィントンとか『マイティソー』のケイト・ブランシェットとか今回のロビン・ライトとかね。

 

 さて1984年のダイアナですが、 前作のラストから引き続きスミソニアン博物館の学芸員として働きながら、ワンダーウーマンとして街の悪を挫き、困った人々を助ける日々。(ニューヨークにはスパイダーマンが、ワシントンD.Cにはワンダーウーマンあり…というわけ😉)そんな彼女が今作では、世界征服の陰謀に立ち向かいます。

 

  ダイアナの一番の魅力は、オニ強いのに、心は乙女のままのピュアハート、アマゾネス族の王女らしく、立ち振舞いもとっても淑女なところ。アクションも美しいんですよね。まるでバレエを見てるみたい😍

 

  前作で悲しいお別れをした😢スティーブが、(え、それ❗?)っていう形で甦ってきます😅これ以上はネタバレになっちゃうから言えないけど…。でもそれも、ダイアナの純粋さがなせるわざ…と思えば納得がいく、うん。

 

  ヒール役もそんな彼女に相応しく?😅人間離れしたサイコパスなんかじゃなくて、しごく人間くさいんですよ。今回ダイアナのライバルとなるチーターも、元はと言えばドジでモテないいじめられッ子。それが思わぬ力を与えられて…って、『ミザリー』を思い出します。ラスボスも貧しいヒスパニック系で、人生逆転を狙ったがために正道から踏み外してしまった設定。ダイアナも、そんな彼らの心の痛みがわかるからこそ、力でねじ伏せたり、断罪しようとは決してしない。ラスト、彼女が全世界の人々へ向けて語りかけるメッセージが泣かせます😢

 

  最近はヒーローものと言ってもダークな内容のものが多くなってきましたが、この作品は安心して家族揃って見に行けます。特に母娘で見るのにおススメ❗

 

TVドラマ版でダイアナを演じた元祖ワンダーウーマン、リンダ・カーターが一瞬だけカメオ出演しています😉ガル・ガドットが取材の時に着ていた衣装も、リンダのファッションを踏襲したものだとか。監督やキャストをはじめとして、関係者たちの、大先輩に対するリスペクトが清々しい😊

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

  

岩田剛典は日本のアーミー・ハマー❗~『コールドケースIII』

 今夜の『コールドケースIII』第3話『女優』、ゲストは今をときめく有村架純と岩田剛典❗

 

  有村架純は、田中絹代かはたまた京マチ子か、多くの巨匠たちに愛される昭和の大女優役。彼女の黒目がちな大きな瞳とふっくらした顔立ちが、古風な外巻きカールに似合うこと😊その美しさは眩しいばかりです。

 

  そしてそして、岩田剛典ですよ❗大女優を献身的に支えるマネージャー役。今回の作品も然り…なのですが、この人はなんて「受け」の演技が巧いんだろうといつも思う。

 

  『植物図鑑』の高畑充希、『ディア・シスター』の石原さとみ(彼女のそれまでのイメージを打ち破るような役柄になりました)、『去年の冬、君と別れ』の山本美月、『パーフェクトワールド』の杉咲花、『空に住む』の多部未華子、そして今回の有村架純…。美貌と演技力を兼ね備えた、綺羅星のような女優さんたち。どの作品でも、岩ちゃんは自分が目立つというよりもむしろ、彼女たちの魅力を耀かせ、それによってまた彼自身もさらに高みに登って行っているような気がするんです😊

 

  それってアーミー・ハマーに凄く似てる気がする。彼自身にエッジーな、または強烈な個性があるわけではないけれど、決して相手役(女優さんばかりでなく、ティモシー・シャラメのような同性の相手でも😉)の魅力を相殺することはない、いやむしろ共演することで相乗効果を生んでいく…。アーミーもその素晴らしい「受け」の演技で、作品が途切れませんよね。

 

  うん、岩ちゃんは日本のアーミー・ハマーだ❗二人ともセレブ出身の正真正銘のおぼっちゃまくん(笑)生来のおっとりとした育ちの良さが滲み出るような演技、人を押し退けて前に出なくても、いつのまにか、しっかり自分の地位を確立してる…。

 

それって、スゴイことだ、素晴らしい個性だ😮

最も過激で最も恐ろしく最も美しいフローレンス・ピュー~『レディ・マクベス』

f:id:rie4771:20201216205804j:image

  最近ヲタク大注目のフローレンス・ピュー、彼女の出世作『レディ・マクベス』U-NEXTで期間限定配信❗…これ、東京でしか上映してなくて、迷っているうちに終わってた作品😢半年くらい待たなきゃダメかな…と思っていたので、嬉しい~~😍(但し超新作なので、1,200円です😅)

 

  原作はロシアの作家ニコライ・レスコフの小説『ムツェンスク郡のマクベス夫人』で、オペラ化もされているそう😮舞台を英国に置き換えて撮影されたのがこの映画なんですね。どの批評読んでも「シェイクスピアの『マクベス』とは違います」って書いてある😅しかしヲタク的には、ヒロインの、欲望と野心を満たすためには手段を選ばない感じが、どう見てもシェイクスピア作品中最大のヒール(リチャード三世と双璧を為す😅)、マクベス夫人を想起させます。周囲のオトコたちの情けない腰抜けぶりも似てますね(笑)

 

  ストーリーは、20才以上も年の離れた夫に嫁いだ17才の少女キャサリンが、馬の世話係によって性の歓びに目覚め、彼を我が物にする為に次々と手を血に染めていく…というトンデモナイ話なんですが😅何が凄いかって、冒頭、少々野暮ったい無垢な少女として登場したキャサリンが、当時の女性に課せられた意味のない数々の風習や社会通念に次第に苛立ちと怒りを募らせ、ついには数々の軛を自ら断ち切ることによってあらゆるものから解放され、どんどん美しく変貌していくところ((( ;゚Д゚)))フローレンス嬢、この時若干20才❗ヲタクは『ファイティングファミリー』『ミッドサマー』『ストーリーオブ・マイライフ~わたしの若草物語』と彼女の多彩な演技を見て来ましたが、この映画が彼女の原点だったなんて❗……いやはや末おそろしや😅(特に『ミッドサマー』の、典型的巻き込まれ型ヒロインとのギャップ、スゴすぎ=笑)

 

  ロケ地はどこなんでしょう?冷たい風が吹きすさぶ、見渡す限りの索漠とした荒野。イングランドのヨークシャー地方か、はたまたスコットランドのハイランドか。自由を得る代わりに、人間として何かが欠落してしまったかのような孤独なヒロインの、荒涼たる心象風景をそのまま表しているかのようです。

 

 なんと、世界の映画祭・映画賞で21部門受賞47ノミネートされたという話題作かつ問題作。U-NEXTでの配信は、来年2021年1月10日まで❗

 

  

 

  

この魔女、狂暴につき😅~映画『魔女がいっぱい』

f:id:rie4771:20201213072540j:image

  ギレルモ・デル・トロロアルド・ダールの『魔女がいっぱい』を映画化~~❗こりゃ、見ないとアカンやつでしょう(笑)(注・但し今回は監督ではなく、プロデュース&脚本に名を連ねています)

 

  ロアルド・ダールの原作は、祖母と暮らす一人の少年が魔女によってネズミに変えられてしまい、「世界中の子どもたちをネズミに変身させる❗」という魔女たちの悪辣な陰謀(魔女は世界中でいちばん子どもがキライ…という設定)を阻止しようとする…というおはなし。監督はロバート・ゼメキス(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ』)だから、そのまま行ったら、少年の、アメリカン・スピリットに溢れたアドベンチャー、そして苦難を乗り越え大人に成長するというビルディングスロマンになったところでしょうが(まっ、それはそれで楽しそうだけど)、そこにデル・トロが加わったことで、原作のけっこうダークでシビアなテイストも保ちつつ、魔女のキャラ造型が、彼ならではの独特な魅力に溢れているのです。

 

  デル・トロの「異形への偏愛ぶり」は、『パンズ・ラビリンス』のペイルマンや、『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人の、セクシャルな造型で既に実証済みですが、今回デル・トロの期待を一身に受けて登場したのが(おそらく…ね😅)なんと、あのアン・ハサウェイ❗これはねー、ドギモ抜かれましたよね(笑)厚化粧やカツラで覆い隠してはいるけれど、そのじつ「手の指はかぎ爪、子どもの匂いを嗅ぐと鼻柱は20センチも広がり、口は耳まで裂ける」という恐怖の魔女軍団の頂点に君臨するラスボス((( ;゚Д゚)))ロシアか東欧?なまりの巻き舌英語を駆使し、恐ろしく狂暴で圧倒的オーラを放つ、眩しいばかりのゴージャスなヒール❤️…ギレルモ・デル・トロの「異形への偏愛」は、アン・ハサウェイを得て、ここに極まれり(笑)

 

  この映画の凄いところは、アン・ハサウェイ演じる大魔女が、長い間、異質なものを排除しようとする人間たちに恐れられ、忌み嫌われ、時には中世の魔女裁判のように迫害を受けてきて、ひょっとするとその復讐をしようとしているのでは…と思わせる場面があること。脚本の力か、演技の力か…。きっとその両方😊

 

  ネズミに変えられた孫の少年を助け、アン・ハサウェイの大魔女とガップリ四つ、堂々と戦い抜く肝っ玉おばあちゃんにオクタヴィア・スペンサーという名女優を持ってきたのもナイスキャスティング❗(『ヘルプ 心をつなぐストーリー』『ドリーム』『シェイプ・オブ・ウォーター』等々、逆境に負けないガッツな役柄はこの人ハマリ役ですよね😊)この、アカデミー賞女優二人のガチンコ勝負も見ものですゾ😉

 

  ハラハラドキドキの冒険譚に、(幸せは目に見えるものじゃなくて、決まった形があるものでもなくて、自分の置かれている状況をどう捉えるか、そして自らがどう行動するかにかかってる)…というさりげない教訓も滲ませて、大人も子どもも楽しめる、そして見終わった後は自然と、自分の日頃の生活を振り返る……そんな映画になってます。

 

  人生に必要なことはみんな、映画が教えてくれる。今までも、そしてこれからも😊

 

 

 

 

 

 

 

終わり良ければすべて良し~ドラマ『七人の秘書』


f:id:rie4771:20201210214840j:image

  いやー、とうとう終わってしまった『七人の秘書』。木曜日の夜、伊良(いよし)コーラ片手にソファに寝そべって、大口あけて笑いながら「うっわー、キモいコイツ❗」とか、「いいぞ、やっつけちゃえ~」とか叫びまくる楽しみも、もはやこれまで(笑)

 

  題名見て、(秘書の話か~、懐かしいなぁ)と思いながら見始めたヲタク(昔むかし5年ほど、とある機関で秘書をしていたことがあるので)。時にはボスの代わりに文書等作成してボスはめくらサイン…なんてこともあるのに、実際のところは何ら権限も決定権もない、それこそドラマにあるように、何者にもなれない黒子の秘書稼業。…そんな悲哀とリアルを描く「お仕事モノ」かと思って見始めたら…。

 

なんの、なんの、全然違った❗(笑)

 

  社会の中枢で働く秘書たちが、その情報収集能力を駆使して、社会にはびこる悪い奴らをお仕置きしちゃうお話だったんですねぇ。

月に代わってお仕置きよ、秘書バージョン(笑)

結論として、ヲタク的にはリアルなお仕事ドラマよりこっちのほうが面白かった😉木曜日の夜っていちばん仕事の疲れが押し寄せる時だから、リアルなドラマより、こういう荒唐無稽(もちろん、良い意味です😊)なほうがストレス発散できる(笑)

 

  ストーリー展開は、毎回かなり突っ込みどころ満載なんだけど😅面白いんだから、カタイこと言いっこなし(笑)…それに、何より秘書たちがもうそれぞれキャラ立ちがスゴイ。室井滋の老獪なユーモア、木村文乃の気っ風の良さ、水を得た魚のごとき菜々緒のアネゴ肌(やっぱり菜々緒はこうでなくっちゃ❗)、大島優子のコケティッシュな小悪魔的魅力(『生きちゃった』と同じ人とはとても思えない😮)、シム・ウンギョンの汚れなき純情、そして、一緒に見ていた夫イチ推し、広瀬アリスの壮大な天然ボケ…誰も彼もみんな魅力満開でした🌸🌸

 

  秘書たちに相対するオトコたち…ワケありラーメン店の亭主・江口洋介、ラスボス岸部一徳はサスガの安定感😊

 

  なかでも、シム・ウンギョンの演技が素晴らしかったです。終盤も近づいた頃、リリー・フランキーが生き別れになっていた父親役で登場するんだけど(ゴメンなさい、1つだけネタバレ、お許し下さい🙇)二人がお互い名乗りをあげる場面、もう二人の情感籠った芝居がスゴくて、ヲタクは『愛の不時着』見た時より泣いちゃったゾ😭

 

  最終回、超絶アクションを誇る現代忍者の坂口拓さん(ヤクザな雑誌記者役)と秘書たちの大立回り、そして最終回ならではのゴージャスゲストも◎❗

 

  来週から木曜日寂しいなぁ…。シリーズ化してくれないかなー。

 

 テレビ朝日さん、よろしくお願いいたします(笑)

 

  

  

硝子の少年ノア・シュナップ~『アーニャはきっと来る』

f:id:rie4771:20201209061702j:image

  『エイブのキッチン・ストーリー』で、そのむかしエドワード・ファーロング(『ターミネーター2』)やブラッド・レンフロ(『目撃者 刑事ジョン・ブック』)を初めて見て以来の衝撃を受けたヲタク。それ以来、ヲタクのアタマの中には、あのKinKi Kidsの名曲『硝子の少年』が鳴り響いているのです😅

 

  …あの歌は、最愛の人を年上の、地位も財力もあるオトナの男に奪われた少年の傷心と絶望を歌い上げたものだけど、ヲタクにとって『硝子の少年』とは、銀幕に登場する、硝子のように儚く脆い、あっという間に過ぎさってしまうその年齢特有の美しさを持った耀ける少年たち。

 

  この映画に主演するノア・シュナップくんも、そんな少年たちの一人。今回は、フランスはピレネー山脈の麓に住む羊飼いの少年ジョー(13才)としてご登場❗雪を戴くピレネー山脈を背に、ベレー帽を被り羊飼いのマントを翻して立ち尽くす姿は、さながら一幅の絵画のよう😍

 

  第二次世界大戦中の1942年、ナチスは既にパリを占領下に。ジョーの住む、スペインと国境を接する南仏のエスカン村にも、戦争の足音は確実に近づいてきます。村を通ってスペインに亡命しようとするユダヤ人たちを「狩る」…国境警備隊の日夜を問わないパトロールが始まったのです。そんなある日、ジョーは、山でベンジャミンという一人の男に出会います。彼はユダヤ人で、収容所列車に乗せられる直前に、一人娘のアーニャを連れて逃亡。ユダヤの子どもたちと共にスペインに亡命する為、義母オルカーダ(アンジェリカ・ヒューストン…『アダムズファミリー』のママですね😅今回も「村の災い」と呼ばれる特異なキャラを怪演)の農場に一時身を寄せていたのです。

 

  ベンジャミンと子どもたちの存在は、ジョー、そして朴訥で反骨精神旺盛なジョーのおじいちゃんアンリ(ジャン・レノ…イイ味出してます😊)から、最後には村人全員の知るところとなり、村人たちは一致団結して子どもたちを逃がそうと計画します。

 

  自分たち自身に危険に晒されている親族や友人がいるわけではない。何の利害も関係なく、ただただ見ず知らずの子どもたちを、身を賭して助けようと立ち上がる村人たち。そこに、ヒューマニズムの根源を見るような気がして、胸が熱くなります。しかもしかも、これが実話だなんて……❗

 

 ニンゲン、捨てたもんじゃないよね(笑)

 

また、この映画に登場するナチスの軍人は、戦争映画に よく見られるような非人道的キャラではなく、人間的な側面を持つ存在として描かれています。ナチスユダヤ人をテーマにした作品としては、かなり新しい視点で描かれているというか。特に、国境警備隊を率いるナチス将校のトーマス・クレッチマン。彼、アノぶっ飛びホラーの巨匠、ダリオ・アルジェント監督(『サスペリア』『フェノミナ』など)の『ドラキュラ』で、主役のドラキュラ伯爵演じてた人だー。お腹回りに貫禄がついたとはいえ😅すっかりダンディなイケオジになってるわー(笑)任務を忠実に実行しようとしながらも、平和を願い、自然を愛し、ジョーを父親のような目で見守る役を好演。さながら『ジョジョ・ラビット』のサム・ロックウェルのよう😍

 

  さまざまな苦難を乗り越え、やっと迎えた山越え決行の日。ところが、ベンジャミンが待ち焦がれる、収容所列車で離ればなれになった一人娘のアーニャだけが姿を現しません。…。子どもたちの行く手に広がる急峻な山々、谷川を流れる清流…。あの『サウンド・オブ・ミュージック』のラストシーン思い出しちゃった。

 

  果たしてアーニャは現れるのか?子どもたちの決死の逃避行の行く末は?

 

  ラストシーン、神が招来したかのような奇跡に、きっとあなたも涙するはず😢

 f:id:rie4771:20201209165837j:image

(ブルグ13併設のカフェから眺めるみなとみらい。カフェの円柱が映っちゃってますけど=笑)

 

  

すべてはLOVEゆえに~『ノッティングヒルの洋菓子店』

f:id:rie4771:20201207060539j:image

(入場記念品☕映画に相応しく気が利いていて、オシャレ😍…あっ、記念品は紅茶のみです=笑)

f:id:rie4771:20201206165502j:image

 美しい異国の街角、カラフルで見るからに美味しそうな現地の食べ物たち。最近見た『エミリー、パリに行く』や『エイブのキッチンストーリー』も然り……だけど、そんな映画が無性に見たくなるのは、やはり今海外に旅行することができない(しかも見通しも立たない)からかなぁ…😅

 

 キノシネマみなとみらいで、『ノッティングヒルの洋菓子店(原題 Love Sarah)』

  優れたパティシエのサラは、親友のイザベラ(シェリー・コン)と共にロンドンのノッティングヒル地区に長年の夢だった自分たちの店をオープン。その当日、猛スピードでロンドンの街中、店に向かって自転車を走らせるサラ。この人がヒロインかと思ったら、事故に遭って亡くなってしまうという衝撃のオープニング😭

 

  親友の死によって長年の夢を打ち砕かれたイザベラと、遺されたサラの一人娘クラリッサ(シャノン・ターベット)、そして娘と仲違いしたまま事故で失い、喪失感に悩まされるサラの母ミミ(セリア・イムリー)が、力を合わせてサラの夢だった洋菓子店を再び立ち上げようと奮闘する物語。パティシエがなかなか見つからないまま開店に向けて走り出した3人の前に、なぜかミシュラン二つ星レストランで活躍する一流パティシエのマシュー(ルパート・ぺンリー=ジョーンズ)が現れて、「僕に手伝わせて」と申し出る…。

 

  ワケありマシューは、英国の法廷ドラマ『シルク~王室弁護士マーサ・コステロ』で、女たらしのクズ弁護士役で強烈な印象を残したルパート・ペンリー=ジョーンズ。(どこかの国の芸人ぢゃないけど、トイレで&Ⅹ%#[]≠≒する場面がアタマに焼き付いて離れないんですけど😅)この映画では、やっぱり女たらしではありつつ(イザベラに"You are a womanizer"って言われてた😅)シンは優しくて誠実なパティシエを好演。

 

  お店の名前を"Love Sarah"(映画の原題)と名付けた四人の、それぞれ心に秘めた想いが胸を打ちます😢また、店をオープンしたもののちっともお客さんが来なくて、ミミが起死回生のアイデアを打ち出すのですが、それも、ロンドンっ子ならではの、街や街に住んでいる移民の人たちへの深い「愛」があるんですね😊(映画の中で、「なんで治安の悪いノッティングヒルで洋菓子店を開こうと思ったのか?」っていうセリフがあるんですが、多国籍の人々がひしめくこの地区だからこそ…の展開になっていきます)

 

  人が挫折した時、深く傷ついた時、立ち直るきっかけを作ってくれるのは、自分自身の傷にこだわるよりもむしろ、いったん視点を変えて周囲に目を向け、他者の為に自分が何ができるかを考えてみること…。その時初めて、自らの心の傷が癒されていることに気づく…。この映画は、私たちにそんな密やかなメッセージを送ってくれているような気がします。

 

  お店の将来に転機をもたらす存在として、日本人女性のタナカ・ユウナさんと、抹茶ミルクレープが登場します。(日本の代表的なお菓子がコレ…って言うのは論議を呼ぶところだと思いますが=笑)

詳しくは映画を見てのお楽しみ😉

 

Love Sarah, love people, love life❗

 

  

 

  

 

  

ロイ・アンダーソンワールド再び~『ホモサピエンスの涙』

f:id:rie4771:20201205203142j:image

  寡作で知られるスウェーデンの鬼才、ロイ・アンダーソンの新作『ホモサピエンスの涙』をキノシネマみなとみらいで。

 

  前作の『さよなら人類』から6年かぁ…。月日の経つのは早いですねぇ。前作は、ひじょうに皮肉でシュールというか、ブラックコメディの要素に満ちていました。(エピソードのオチとかは、デヴィッド・ウォリアムズのBBCのTV番組『リトル・ブリテン』を思い出したりもした😅)

 

  アンダーソン監督の作品ってひじょうに独特の世界観。リアルな実物大のセット、ミニチュアの建物、マットペイントなどSFXを緻密に組み合わせたそれは、まるで動く絵画、動く美術品のよう。その静止画のような映像の美しさにぽーっと見惚れていると、人物が突然動き出して(あら、これ映画だったんだっけ)とビックリするくらい(笑)

 

  さて、最新作『ホモサピエンスの涙』

人類の歴史は悲しみの歴史、涙の歴史。美しい映像で語られるのは、そんな人間たちのさまざまに悲劇的なエピソード。ヲタク的に目に焼き付いて離れないのは、神を信じられなくなってキリストのように磔刑に処せられる悪夢にうなされる牧師や、お誕生日会に向かう途中大雨に降られてしまうパパと娘、明白な敗北の中で立ち尽くすヒットラーとそれでもなお「ハイル、ジーグ(勝利万歳)」と叫ぶ哀れな親衛隊員たち、厳寒のシベリア平原で捕虜収容所に向かう兵士たちの背中、背中…。

 

うーーん、書ききれない❗(笑)

 

  それにしても、ポスターヴィジュアルに取り上げられている場面。ナレーションは「廃墟と化した街の上を飛翔する恋人たち」とだけ。むむ…。終末論?最後の審判?監督はスウェーデン人だから、ラグナロク(神々の黄昏)?深掘りしすぎると、夜眠れなくなる(笑)

 

  ……しかし、その人間たちの悲痛な涙を見つめるアンダーソン監督の眼差しは限りなく暖かい。(…それでも、生きていくんだよ)と、背中を押してくれている気がする。映画に登場する精神分析医のセリフ「生きてることは、いいことだ」や、降りしきるクリスマスの雪を見ながら繰り返される酒場の客の叫び「それでも(この世界は)素晴らしいんだよ❗」に代表されるように。……そうやって、人類の歴史は連綿と続いていくのだ、今までも、そしてこれからも。

 

  映像の魔術師と呼ばれるロイ・アンダーソン監督。作品の魅力を説明するのは難しい😭じぶんの表現力の乏しさがうらめしい。

 

  拙い感想で恐縮ですが(汗)記事を読んで少しでも興味を持った方がいらしたら、この機会にぜひ、アリ・アスター監督(『ヘレディタリー継承』『ミッドサマー』)やイニャリトゥ監督(『バードマン』『レヴェナント』)が尊敬してやまないという、唯一無二のロイ・アンダーソンワールドを体感してみて下さい😉

f:id:rie4771:20201205204736j:image

(キノシネマ前のイルミネーション)

 



  

凍てつく冬こそおススメ❗北欧ミステリー 3選

f:id:rie4771:20201203164504j:image

(From Pixabay)

 いつの頃からか、何故か(小説でも映画でもTVドラマでも)北欧ミステリー好きになったヲタク。全編を流れる暗くて陰鬱な雰囲気、謎解きの奥に潜む移民差別や児童虐待、政治の腐敗等の社会問題、甘さを一切排除したようなシビアな結末…。こんなふうに書いてくると、「とてもじゃないけど、何が面白いのさ」って言われそうだけど、内容の暗さ、重さに反して、その舞台となる北欧の自然や街並みの綺麗なこと❗こんな美しい背景の中で、あんな陰惨な事件が…っていう、ギャップ萌え?……うん、そうだ❗ヲタクはギャップに弱いのだ(納得)…って、前置きはそのくらいにしまして(笑)

 

 「トラップ~凍える死体」シーズン1,2

(アイスランド)


f:id:rie4771:20201203141830j:image

   シーズン1は、首都レイキャビクから遠く離れたアイスランドの港町沖合いに停泊した船が、人間の胴体を引き揚げたところからストーリーが展開します。意に反して、捜査の陣頭指揮を取ることになった警察署長アンドリ(オラフル・ダッリ・オラフソン)。殆ど事件らしい事件が起きない田舎町のことゆえ、捜査に当たることのできるのが、彼の他に女性警察官ヒンリカと、真面目だが少々ドジな独身中年男のアウスゲイルのみ。レイキャビクの首都警察に応援を頼もうにも猛吹雪で道は閉鎖。3人で何とか事件を解決しようと奮闘するアンドリだが、それを嘲笑うかのように次なる殺人が…。

 

  アンドリがシロクマ(あるいはムーミンパパ?😅)みたいな巨体を揺すりながら事件解決に走り回るさまは微笑ましい…と言いたいところですが、彼の家庭環境は微笑ましいとは程遠い状況😢離婚した妻は新しい夫とルンルン生活、なぜか彼は元妻の実家で、置いてきぼりの娘二人と同居生活(…なんでこんなことになっちゃったんだろう?ナゾである(-ω- ?))。

 

  結末は見ている我々も目を背けたくなるほど重苦しいものですが、一方で、生きることの難しさ、辛さ、切なさが胸を打ちます。やはりアイスランド出身の作家、アーナルデュル・インドリダソンの作品に相通じるものがある気がします。

 

  しかし、背景となるアイスランド雄大な自然~どこまでも続く白い山々、透明な海、深々と降りしきる雪のさまはどこまでも美しく、この世の楽園のよう。(ベン・スティラーが主演した映画『LIFE!』に登場した風景そのままです😊)そのギャップたるや、強烈。

 

  シーズン1、2ともネトフリで配信中。(シーズン2では、連続殺人事件と並行して、アンドリと次女の親子の関係性が描かれます。ずいぶん日本のお父さんと違うんですよね。もう少し父権?を行使してもいいんじゃないかと思うくらい😅そういうところも興味深い😊)


「ブリッジ」シーズン1,2,3


f:id:rie4771:20201203142246j:image

  ちまたでは、「キリング」と共に、北欧ミステリーブームの先駆けになった作品と言われております。…しかしそもそも、日本で北欧ミステリーブームなどというものは存在したのであろうか❓ヲタクの回りには「北欧ミステリーが好き」と言ってる人など、一人もいないのですが(笑)

 

  ヲタク的には、ハリウッドでリメークされ、デンマーク国民の3人にひとりが見たという「キリング」よりも、どちらかと言えばこちらのほうが好みかな😅

 

  シーズン1の冒頭、デンマークスウェーデンをつなぐ、オーレスン橋のライトが突然消え、その後復旧すると、その国境線上には切断されたひとつの遺体が。上半身はスウェーデン側、下半身はデンマーク側。そして、その上半身はスウェーデンの政治家、下半身はデンマークの娼婦という、衝撃的なオープニング❗この状況から、スウェーデン側の女性刑事サーガ・ノレーンとデンマーク側の刑事マーティン・ローデは、共同で捜査を開始することになります。

 

  サーガはアスペルガー症候群という設定。なので、職場で多くの人の目があるにもかかわらず、時間がないからといって突然セーター脱いで着替えちゃうなんてシーンもあります😅でも、さすが個人主義が徹底している北欧、同調圧力が強く、障害を抱えているとなかなか職場の人間関係が上手くいかない場合が多い日本と違って、サーガの障害を理解した上で彼女の突出した才能を生かしていこうとしている職場環境が興味深いなぁ…と思って見てました。

 

  シリーズを重ねるにつれ、主人公たちが次々と驚きの展開に巻き込まれていきます😮ヒーローはいない、警官も弱さを抱えた一人の人間…という、リアルを追及する北欧ミステリーならではの展開なんですが、ここで好き嫌いは分かれるかも。

 

  デヴィッド・フィンチャー監督が「ドラゴン・タトゥーの女」をリメークしたりして、ハリウッドでも一時「北欧ミステリーブーム到来か❗❓」って騒がれましたが、その後はサッパリ😅どー考えても、アメリカでは人気出そうもないよね(笑)

 

 「湿地」


f:id:rie4771:20201203141910j:image

  我が愛するアイスランドのミステリー作家、アナールデュル・インドリダソンの作品の映画化。北の湿地に立つアパートの一室に横たわる老人の死体。その部屋には、ある少女の墓石が写っている古い写真と、3つの言葉が書かれたメモが…。それを手がかりにして、老人の暗い過去を探り、ついには驚愕の真実を知ることになる主人公、エーレンデュル捜査官。

 

  見終わって、ストーリー展開にかなり偶然が続くような感じがするかもしれませんが、アイスランドの人口はわずか42万人。あの広大な土地にわずか新宿区民の人口しか住んでいません。国民のルーツを探ればどこかしらで血縁が繋がっていると言われます。この映画を見る際には、そんな知識を頭に入れておくといいかも😊

 

  インドリダソンの作品って、ある殺人事件をきっかけに、ある人物、家族の歴史を遡り、さらに遠い過去の犯罪が露になっていく…っていくパターンが多いんですよね。北欧版「コールドケース」とでも言うのかな。アメリカ版と違って、「過去がわかって良かった❗」ってカタルシスはあんまりないですけどね😅

 

  ヲタクはこれまで北欧ミステリーについては度々記事を書いておりまして、今まで記事にした作品については今回は話題にしておりません。もしこの記事を読んで北欧ミステリーに興味を持った方がいらっしゃいましたら、「ドラゴンタトゥーの女」「蜘蛛の巣を払う女」などのリスベット・サランデルシリーズ、「特捜部Qシリーズ」(2つのシリーズとも、映画化されています)、Netflixオリジナルドラマ「刑事ソフィア・カルピ」(第1・第2シリーズ)などもおススメです😉

 

 



ああついにヲタクの悲願がぁぁ~😭ジャック・ロウデン ×ゲイリー・オールドマン❗

 
f:id:rie4771:20230317173828j:image

予定よりも早く目覚めた朝。(よせばいいのに)ツイッター覗いて、あまりにも衝撃的で嬉しいニュースに二度寝できなくなった(笑)だって、だって…。

 

  ついに、ついに、ヲタクの推し、ジャック・ロウデンとゲイリー・オールドマンがTVドラマで悲願の初共演❗

しかも……しかもですよ、原作は Mick Herronの スパイ小説  "Slough House"❗

…ヲタクの為に立ち上げられたプロジェクトなのね、ホントにありがとう😆💕✨(⬅️ホントにバカ=笑)

 

   邦題はまんま「窓際のスパイ」なんですが、直訳すると「泥沼の家」。米ソ冷戦時代、英国のスパイ活動の拠点といえば、国際的なスパイ活動を行っていたMI6(英国秘密情報部…あの007ジェームズ・ボンドはここの所属)と、国内問題を扱うMI5(英国保安部)。ドラマの舞台となるのは、MI5の中でも通称「Slough House(泥沼の家)」と陰口を叩かれる窓際部署。下のデイリー・メール紙の記事にもある通り、Slow Horses(鈍足の馬)と韻を踏んでるんですね😅

 

  あの名作『裏切りのサーカス』ではMI6の初老のスパイ、ジョージ・スマイリーを演じたゲイリー・オールドマン、今回はMI5の「鈍足の馬たち」、ワケありのハグレ者どもを束ねるリーダーのジャクソン・ラム役。そしてそして、我が最愛のジャクロくんは、007に憧れ、伝説のスパイを祖父に持ちながら昇進試験で大失敗をヤらかし😅泥沼部署に左遷されてしまったリバー・カートライト😍『裏切りのサーカス』で言えば、ベネさま演じたピーター・ギラムの立ち位置かしらん。先日「ゲイリーとベネさま見るだけで腰砕け」ってツイしたけど、ジャクロくんとゲイリーのツーショット見たら、ヲタク、もぉもぉ、どーなるかわかりましぇ~ん(笑)

 

  ジャクロくんは現在撮影中のジークフリード・サスーン伝(第一次世界大戦の過酷な戦場体験を基に反戦の詩を書き続けた英国の詩人。監督はテレンス・デイヴィス)の撮了後すぐに合流するもよう❗

 

 英国の名女優キャサリン・スコット・トーマスも、彼らの上司役で出演者に名を連ねています。ゲイリーがアカデミー主演男優賞を受賞した『ウィンストン・チャーチル/ヒットラーから世界を救った男』の奥様役ですでに共演してますね。知的で上品なファーストレディ、ステキでした。直近では、ネトフリの『レベッカ』ダンヴァース夫人役で彼女の演技を見たばかり。コワかった…😅

 

  MI5を舞台にしたスパイドラマの名作と言えば、ヲタクの推し(ヲタクの愛は上限無し=笑)、トム・ヒューズの『THE SPY』がありますけれども、今作品も…。

 

もはや名作にしかならない予感(笑)

  

]

  

日本のネオ・リアリズモだ❗~映画『泣く子はいねぇが』

  月の夜、スクリーンからも立ち上って来るような凍てつく冷気。山の上の神社から松明の篝火を携えて、奇声を発しながら次々と駆け下りてくるなまはげたちの異形のさまはこの世のものとは思えず、恐ろしく、神々しく、そして美しい。

 

  今でも男鹿半島に残る奇習は本来は神事であり、なまはげは「父性」の象徴で、家族の絆を強固にする為のものだと言う。けれど、新進気鋭の佐藤快磨監督が紡ぎ出す物語は、リアルで残酷で、どこか物悲しい。

 

  女の子が生まれたばかりの若い夫婦、たすく(仲野太賀)とことね(吉岡里帆)。一番幸せに溢れている時期のはずが、映画の冒頭から二人の間には不穏な空気が漂っている。泣く子をあやしながら、妻は一言、「…もう、無理だから」と呟いている。たすくは父親になる自覚のないままに、卑屈な笑いを浮かべながら、なすすべもなくそこにいる。それを責める妻の視線から逃れるようになまはげの神事に参加したたすくは、あろうことか、その本番の夜、御神酒をあおりすぎて前後不覚になり、なまはげの面をつけたまま一糸まとわぬ姿になって、街にさ迷い出てしまう…。

 

  衝撃の一夜から、歯車の狂ってしまった彼の人生。男鹿半島から出奔し、東京の片隅で身を潜めるように暮らして2年が過ぎたが、故郷や離婚した元妻のことね、そして3才になったはずの娘への想い絶ちがたく、たすくは男鹿へ舞い戻ってきた。そこで彼を待ち受けていたものは…❗❓

 

  これまでの出演作品を見ただけでも仲野太賀が、当代きっての演技派であることは異論の余地がなく、今作品でもばつぐんの安定感😊最初のうちこそ『生きちゃった』と似たようなキャラかな…?と思っていたのに、見終わってみればぜんぜん別人😮凄いな…。

 

…そしてそして吉岡里帆ですよ❗

 

寡黙な役なんですけど、「目は口ほどにモノを言い」最後の場面の、元夫、娘の父親を見つめるその表情。静かな怒り、憐れみ、諦観、赦し…。全くの無言のなかにあらゆるものがせめぎ合う…見事です❗❗

 

  ラストは素晴らしい名場面。一切のセンチメンタリズムを排除した皮肉で苦い結末ながら、それが乾いた感じにならずに、どこか哀愁があり、ひとすじの光りが射しているように思えるのは、舞台が男鹿半島だからか、それとも仲野太賀の滲み出る人間味ゆえか❓

 

見終わった後の感じは、第二次世界大戦後の貧困と荒廃をリアルに描き出した『自転車泥棒』(ヴィットリオ・デ・シーカ)や『鉄道員』(ピエトロ・ジェルミ)など、イタリアのネオ・リアリズモの作品にも似て…。なまはげというローカルな風習を題材にしながら、現代の日本が抱えるさまざまな問題を孕んだ、骨太な作品。

 

  是枝裕和監督が佐藤快磨監督の若き才能に惚れ込み全面的に助力を惜しまなかった、それがなかったら陽の目は見なかっただろうと言われるこの作品。佐藤監督は見事に是枝監督の期待に答え、そしてその若き才能のもとに一流の役者陣が集結した❗

 

  …そんな情熱的なエピソードを聞くにつけ、日本映画界の未来は限りなく明るい❗…と思わずにはいられない😊

 

天才がゆえの…『あさイチ』の宮本浩次さん

  NHKあさイチ』に宮本浩次さんご登場~🎉✨😆✨🎊

 

パブリックイメージ作りにも興味なく、「じぶんを○○に見せたい」という自己顕示欲にも縁遠い人が、自由気ままに語り出すとああなる…っていう1つの見本みたいな😅人はそれを「宮本ワールド」と呼ぶけど(笑)

 

  その楽曲を聴いてみれば、そして舞台上のパフォーマンスを間近に見てみれば、宮本さんが天才であることは紛れもない事実だけど、昨日の『あさイチ』は、私生活においても心情面でも、天才ならではの数々の逸話に満ちていて、いちいち面白かった(笑)

 

  宮本さんの話を聞いていると、真の天才というのは、やはり我々一般大衆に理解されるのには時間がかかるものなんだと思う。特に初期の作品(『星の砂』とか『デーデ』『珍奇男』など)は誰にも相手にされなかった…と宮本さん今でも自虐的に仰っているけど、ヲタクだって…『珍奇男』より、「売れることを意識して作った」っていう『今宵の月のように』のほうが好きだもん(小声😅)昨日映像が流れた「オレの歌を黙って聞け❗」事件(ギター壊しちゃったんだっけ❓この時😅)も、世の中から理解されない若き天才の咆哮のように聞こえた。あの映像を見て、まるで初めて見るかのように「これ、いつの話だったかな…。」って目を丸くしている宮本さん。もはやあの事件も、過去の出来事なんだね。最近彼がよく口にする「大人の」成熟がうかがえてツボでありました。

 

  華丸大吉さんから「宮本さんといえば男の歌のイメージで、女性ばかりの歌をカバーするのは意外」みたいなことを言われて、「いやじつは、母親を初め女性から沢山影響受けてます」と返す宮本さん😊以前お付き合いをしていた彼女からは、浮世絵やゴッホの手ほどきを受けた…って仰っていて😮す、スゴいなー、浮世絵が好きな若い女性って…。天才とお付き合いする人はどこか違う(笑)

 

  番組では宮本さんのこれまでの歴史や過去の逸話がさまざま持ち出されて来るんだけど、宮本さんはだいたい「…そんなことありましたっけ❓」って😅齢(よわい)五十を過ぎて「大人の青春」を謳歌している宮本さんにとって、今、そして未来があるのみなんだね😊

 

  ヲタクはこれからもいちファンとして、宮本さんの進化を見守り続けるゾ、どこまでも😊

 

 

三島由紀夫没後50年~そして、三島と太宰のこと

  あの衝撃的な事件から早や50年…。ヲタクが三島の作品を夢中になって読み始めた頃には、既に彼はこの世の人ではなかった。

 

  …じつはヲタクの父親は当時海上自衛隊に所属していて、事件の直前に横須賀から市ヶ谷の防衛庁に転勤したばかり。父はちょうどその日は出張中で、後日同僚から話を聞かされて驚いたそう。ヲタクが父からその話を聞いたのは、事件から10年位経ってから。「豊饒の海」三部作や「禁色」「金閣寺」「仮面の告白」を読んで、その豪華絢爛な日本語に酔いしれていた頃。同僚から聞いたという父の話の内容は、その場にいた人しかわからない生々しさに満ちていて、ヲタクはしばらく三島の作品は読めなくなってしまった😅

 

  三島と同時期にヲタクが夢中になった作家に太宰治がいるのだけれど、どこかで三島が太宰治のことを忌み嫌っていて、なんと面と向かって「僕はあなたの文学が大嫌いです」と言い放ったというエピソードを読んで、驚いてしまった😮なぜって、ヲタクの中では、三島と太宰って同一線上の作家のような気がするから。

 

  太宰の文学に接するたびに、その不具者のような弱々しい文体に接するたびに、私の感じるのは、強大な世俗的な徳目に対してすぐ受難の表情をうかべてみせたこの男の狡猾さである。

  三島が太宰について書いた文章の一節だけど、なかなかに激しい(笑)…しかし女性は、その「受難の表情」にヨワイ😅

 

  三島って幼少期は虚弱体質で、それを心配したおばあさまに外で遊ぶのを禁じられ、家から一歩も出してもらえなかったって聞いたことある。後年の、ボディビルディングや武道への傾倒ぶりや盾の会設立等も、自らの内に潜む柔弱さや繊細さを乗り越えようとした反動がなせるわざ…だったのでは❓  三島の写真集『薔薇刑』なんて見ると、憂国の士…というよりむしろ、激しいナルシシズムを感じる(神田の古本屋で立ち読みした時にはあまりの衝撃に本取り落としそうになった😅)それって、太宰に感じるものと同じなんだよな…。

 

  蜷川実花監督の『人間失格太宰治と三人の女たち』で、太宰(小栗旬)が若き日の三島(高良健吾)に向かって「…本当はお前、オレのこと好きなんだろ?」って言い放って、三島が思わず絶句する場面。あれが全てのような気がする。またね、人たらしの太宰に小栗旬がぴったりで、高良健吾の、青い清廉な三島も良くて😍短いけど、大好きなシーン。

 

   三島も太宰も、自己愛を突き詰めた末に、自死という道を選んでしまった😢二人とも、願わくばその生涯のどこかの時点で、他者を愛することに目覚めて、歳を重ね、円熟した作品を書いて欲しかった…。

 

  冷え冷えとした晩秋🍁そんなことをつらつら考えるうちに憂國忌の夜は更けていく🌃

 

 

 

 

  

美少年コ・ウ・リ・ン😍~『エイブのキッチンストーリー』

f:id:rie4771:20201121140422j:image

  キノシネマみなとみらいで、『エイブのキッチンストーリー』。ここのところキノシネマに通いつめてるな(笑)前から好きだったけど、最近とみに映画のラインナップが激しくヲタク好みなんである。早く着きすぎてしまったヲタクがスマホいじってる前には、『ミッドナイトスワン』の開場を待つ長蛇の列が…😮
f:id:rie4771:20201121140454j:image

(今日の横浜美術館)

さて、本日の映画、何てったっていちばんのハイライトは、主演のノア・シュナップくんでしょう❗もはや天から舞い降りた大天使👼ミカエルか、はたまたガブリエルか。世の中の穢れにまだ染まっていない、ひたすらピュアな美少年。聞けば、ネトフリの『ストレンジャー・シングス』に出演していて、知る人ぞ知る…の存在らしいんだけど、ヲタクはお初だったから、『ターミネーター2』のエドワード・ファーロング、『目撃者~刑事ジョン・ブック』のブラッド・レンフロを初めて見た時の衝撃を思い出したワ😍

 

  12才の料理好きの少年エイブが、バラバラな家族を何とか結びつけようと孤軍奮闘する、ひと夏の成長物語。(原題はまんま『エイブ』。エイブラハムでもなく、イブラヒムでもなく、ただのエイブって呼んで欲しいという本人の願い。それはなぜ…❓というのが、この映画のテーマでもあります)しっかし、その家庭環境と来たら、ハンパなく超大変😖💦パパはパレスチナムスリム出身、ママはイスラエルユダヤ系。いくら自由の国、人種のるつぼアメリカはブルックリンとはいえ、二人が結婚出来たことは奇跡に近い😅パパはエイブを苦しませないために無宗教というスタンスを選んだものの、いざ親族で集まればけんけんごうごう、イスラムユダヤで火花を散らし、結局は喧嘩別れ。エイブは得意の料理の腕をふるい、感謝祭で自ら考案したアラブとユダヤフュージョン料理を一人で準備し、何とか家族を1つにしようとしますが…。

 

  少年の成長物語にはメンター役が不可欠ですが、今回その役を担うのが、自由気ままなブラジル人シェフ、チコ。親族の宗教戦争から逃れてチコに弟子入りしたエイブは、料理だけでなくさまざまなことを学んでいきます😊

 

  まあしかし、エイブの親族(ジジババ、叔父さん)がもー、わからんちんのトーヘンボクすぎて、映画の途中でスクリーンに殴り込みをかけたくなったわ(笑)なのにエイブちゃんはひたすらエンジェル👼、「ボクが(料理を)失敗したせいで、みんな結局ケンカになっちゃった…😭」って。その場面まで来ると、観客全員の眼からは、涙が激しく吹き出るハズ(もちろんヲタクも例外ではありませんでした)

 

  子どもだからって軽く見ちゃ、ダメなんだゾ。大人が思うよりずっと深く、いろんなことを考えてる。8才の、可愛いい孫がいるヲタクは、この映画を見て改めて、自戒と共にその事実を深く心に刻んだのでした😊

 

それにしても、次々と出てくる珍しい料理(ファラフェル、アカラジェ、シュワルマ…等々)の美味しそうなこと❗また、チコについて料理修行をしている時の、数々の野菜や果物の色彩の美しいこと🤤空腹で見るのは最後までもたないと思うので(笑)必ず何かしらお腹に入れていきましょう😉

 

舞台人の心意気❗~映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい❗』

f:id:rie4771:20201117200147j:image

(横浜美術館前の紅葉)

キノシネマみなとみらいで『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい❗』

 

  1897年12月27日の初演以来500日間のロングランを達成し、フランスを代表する戯曲と言われる『シラノ・ド・ベルジュラック』。戯曲の作者、エドモン・ロスタンを主人公に、いかにこの名作が作り上げられたかを、笑いあり、涙ありで描いた作品です😊
f:id:rie4771:20201117200224j:image
ロスタン(トマ・ソリベレ)は売れない戯曲作家。才能はあるらしいのですが時流に乗れず、韻文の悲劇ばかり書いているので酷評ばかり😅流行に迎合しない芸術家が不遇をかこつのは、古今東西変わらないようですね(笑)そんな彼の文才を以前から認めていた大女優サラ・ベルナールが、ロスタンを当時の売れっ子舞台俳優コンスタン・コクランに紹介するところからストーリーは始まります。このロスタンがね、お髭だけは立派なんですが、小柄で細くて童顔で、めちゃくちゃ母性本能くすぐるタイプ。サラ・ベルナールが一生懸命になるのも…わかる(笑)

 

  一方紹介されたこのコクランという役者(オリビエ・グルメ)、借金まみれで、借金がまとめて返せるような大傑作を書け、一攫千金を狙うんだ❗とロスタンに迫ります。おまけに大根役者の自分の息子に重要な役をつけろとゴリ押ししてくる始末😅さらには興行のパトロンが、自分の愛人の女優をヒロインに据えるのが第一条件だと言い出して…。

 

  そんなてんやわんやに加えて、上演まであと1ヶ月しかないという無理難題。周囲からは「大コケ確定❗」とウワサされる中、果たしてロスタンとそれぞれワケあり、崖っぷちの仲間たちは一発逆転を図れるか❗❓
f:id:rie4771:20201117200205j:image

(映画が終わってキノシネマを出ればそこはイルミネーションの世界)

 見終わった後爽やかな笑いと涙に満たされるのは、少々性格はヘンテコリンでも(笑)登場人物の誰もが、何よりも舞台を愛しているから。そして、さすが芸術の都パリ、製作側・演じる側の心意気を情熱を、サポーターや観客がガッチリ受け止める、心底応援する❗サラ・ベルナールのセリフにもあるように、「パリは舞台を見る観客が成熟している」。それはつまり、文化の成熟、社会の成熟。大人の都、パリ。この映画を見てヲタクは、昔から大勢の芸術家や文化人たちがなぜあれほどパリに惹かれるのか、その秘密をちょっぴり垣間見た気がしました。

 

  最後に、コクランを初めとして、歴代シラノ役者の貴重なフィルムの数々がぁぁぁ~❗舞台&映画ファンには垂涎モノです。詩人ジャン・コクトーが愛したイケメン俳優ジャン・マレーや、ジェラール・ドパルデュー、さらにはホセ・ファーラー(『アラビアのロレンス』トルコの司令官役で強烈な印象を残した人)の英語を話すシラノ…なんていう変わり種も😅

 

  世紀末のパリ、特に当時のムーラン・ルージュポルトサン・マルタン座が忠実に再現されていて必見ですし、娼館でロスタンがアントン・チェーホフに偶然出会う…なんていうエピソード(ここでの会話がまた、笑えます)を筆頭に、当時のパリ演劇界の内幕や、くすりと笑える小ネタも満載❗