オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

ジャック・ロウデン主演『Benediction(祝祷)』サン・セバスチャン国際映画祭へ❗

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(サスーンとオーウェンが運命の出逢いを果たすエディンバラの街並み…Pixabay)

サンセバスチャン国際映画祭の公式Twitterに嬉しいお知らせが❗

 

 テレンス・デイヴィス監督(その作品は、当映画祭において2008年に回顧上映が開催された)が、『Benediction~祝祷』を正式出品することに決まった。正式出品は、今回で三度目。本作品は反戦詩人ジークフリード・サスーンの生涯を描いたものであり、主演を務めるのはジャック・ロウデンとピーター・キャパルディ(サスーンの晩年)である。

…とあります。

 

  今回ジャクロくんが演じるのは、第一次世界大戦の凄惨な体験から心を病み(今で言うPTSDですね)、その後反戦の詩を書き綴った実在の人物、ジークフリード・サスーン。

サスーンは、やはり英国の反戦詩人、ウィルフレッド・オーウェンの詩作上の師であり、師弟関係を越えた敬愛の対象でもありました。二人はPTSD治療の為に入院したスコットランドエディンバラの精神病院で運命の出逢いを果たし、サスーンの指導によりオーウェンは、戦争を題材にした詩作の中でも英国文学史上屈指の名作と言われる『死すべき定めの若者の為の讃歌』(Anthem for Doomed Youth) を書き上げます。その後オーウェンはサスーンの反対を押し切り再び前線に赴き、激戦の地で25才の若き命を散らすのですが…😢

 

ツイッターの左の写真は、ジャクロくんと、若手イケメン演技派ジェレミー・アーヴァイン(『戦火の馬』)との麗しきツーショットが❗

っつーことは、サスーンの運命の人、ウィルフレッド・オーウェン役はジェレミーってことか…。

い、いかん、今からヨダレが…(^q^)(⬅️バカ😅)

 

…って、デレデレしてる場合ぢゃないのよ。なんてったって監督は、あのテレンス・デイヴィス(Twitterの写真右)。鬼リアリズムなんだよなー、この人の作品😅ヲタクが直近で観たのは、有名なアメリカの詩人の生涯を描いた映画『エミリ・ディッキンソン~静かなる情熱の生涯』。ディッキンソンと言えば若い時から自宅の敷地を一歩も出ず(もちろん結婚せず)ひたすら詩を書きまくった人で、元祖引きこもりというか。その芸術性が世に認められたのも、彼女が亡くなってから。もともと腎臓が弱かったエミリはギリギリまで医者にかからなかったから重症化して、尿毒症から脳に来て((( ;゚Д゚)))そのプロセスが徹底したリアリズムで描かれていて、主演のシンシア・ニクソンの熱演と相まって怖くて…。第一次世界大戦の戦場や当時の精神病院の様子、サスーンのPTSD等をあの容赦ないリアリズムで描くとしたら…。

映画見る前にちょっとした覚悟がいるかもね。

 

 サスーンの晩年を演じるピーター・キャパルディは、ルイス・キャパルディのMV『Someone You Loved』で、妻を心臓病で亡くした男性を演じていたスコットランドの俳優さんですね。あのMVで日本でも広く知られるようになりましたが、本国では以前から高名なバイプレーヤーです。個人的には、英国の作家ディケンズの半生を描いた『どん底作家の人生に幸あれ❗』の軽妙なコメディ演技が好き🎵『スーサイドスクワット』の新作にも出てるみたいですね。(予告編にチラッと写ってた😅)

 

  …とにもかくにも

一刻も早く見たいよ~❗❗(⬅️こればっか😅)

 

 

 

 

 

久々のゴシック・ホラー~Netflix『レクイエム/マチルダ・グレイの秘密』

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(From Pixabay)


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  映画や音楽、舞台を観た後、自由奔放に、マイナーな感想を呟いているだけの当ブログ。そんな中で、掲載後最も多くの方々が読んで下さっているのが、ちょうど2年前に書きました「夏の夜におススメ~ゴシックホラー3選」という記事。なぜなら、「ゴシックホラー」ってググると、お陰さまでヲタクの記事がトップに出てくるからなんですね😮(びっくり)いやぁ…Googleの威力、おそるべし。(ゴシックホラーに興味のある方はそちらの記事もどうぞ😉)

 

  そもそもゴシックホラーの由来は…

18世紀の作家、ホレス・ウォルポールという人が自分の別荘を中世ゴシック風(ゴシック・リバイバル建築)に改築したのですが、ある夜のことそこで恐ろしい夢を見、その夢をもとに中世の古城を舞台にした幻想小説『オトラント城奇譚』を書いたことから…と言われています。彼の作品以降、ゴシックホラーといえば、ヨーロッパの古い建築物を舞台にした幻想的かつ恐怖に満ちた作品…というイメージが定着したようです。

 

  ヲタク、幼少期からこのゴシックホラーに目がなくて(笑)だいたい、建物自体が今にも崩れそうに古くて、部屋が幾つもあって、地下室とか開かずの間とかがあって、どこに誰が潜んでるかわからないって、めちゃくちゃ怖いですよね❓ロンドン塔やヨーロッパのお城に行くと、どこも同じように何とも言えない湿気があって冷たくて、澱んだ空気を感じます😅そんな空気が今にも画面から漂ってきそうなのが、今回ご紹介するNetflixミニシリーズ『レクイエム~マチルダ・グレイの秘密』(6エピソード)。

 

  冒頭から登場する、霧深い森の奥深く佇む古びたマナーハウス。その上から老人が飛び降りる衝撃の展開。そこで画面は一転、賑やかなロンドンの街並みが映し出される。マチルダ・グレイ(リディア・ウィルソン)は、将来を嘱望される新進気鋭のチェリスト。あと少しで自身のコンサートが開演というところで、マチルダがナーバスになっていると、前の日に会ったばかりの母ジャニスが突然彼女の前に姿を現します。「こんな時にどうしたの?」と戸惑う彼女に、まるで何かに取り憑かれたような、ただならぬ様子でひとこと、「マチルダ、ごめんね…」と呟き、身を翻してロンドンの雑踏の中に立ち去ってしまうジャニス。マチルダは驚いて後を追いかけるが、行き止まりの地下駐車場で、あろうことか、ジャニスはマチルダの目の前で喉をかき切って息絶えてしまう……❗

 

  いくらホラーだって言ったって、始まってわずか10分位で二人も人が死ぬってなかなかないよ(笑)

 

  母親の死をきっかけに、自分の出自には何か暗い秘密があり、それはペンリニスというウェールズの小さな村、さらには20数年前にその村で起きた少女の失踪事件に関係があると知ったマチルダは、相棒のピアニスト・ハル(ジョエル・フライ)と共にペンリニスを訪ねるが、それは彼女にとって想像を絶する恐怖の始まりだった…❗

 

  以前ブログに書きましたけど、イングランド、特にロンドンに住んでいる人にとって、アイルランドスコットランドウェールズの片田舎って、どこか異空間、というかそれだけで得体の知れない存在なんですよね😅民族も違うし。

 

  妙齢の美女が、ひたすら鬱蒼とした森を車で進んでいって、行き着いた先が古い古い広大な屋敷(相棒のハルの、「カビ臭いなぁ。肺炎になりそう」というセリフが😅)目に見えない「何か」が住み着いていても何ら不思議はありません(笑)

 

  だいたい「何か」が見えるのはヒロインだけで、周囲から信じてもらえなくて追い詰められていく…っていうのがホラーの定番なんですが(ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』とかね)、このドラマが目新しいのが、ヒロインの他に「何か」が見える人が複数いるんです😅…で、それを利用しようとする悪役がいる。誰がその悪役か❓っていうのがサスペンスの要素、謎解きになっているんですよね。  ウェールズの美しい大自然をバックにホラーとサスペンス要素の融合が計られた新しいタイプのゴシックホラーだと思います。Wikipediaによれば、

The series encompasses elements of both the supernatural and thriller genres.

(このドラマシリーズは、超常現象とスリラーの両方の要素を兼ね備えている)とありますから、ヲタクの感想もあながち的外れではないようです。

 

 BBCNetflixの共同制作の作品らしくって、宣伝文句は「BBC開局以来、最恐のホラー」。…それはちと盛り過ぎだとヲタクは思いますが(笑)

 

しかし、目に見えない「何か」が、ヒロインの全くの妄想だとしたら……❗❓

そういう視点から見直すと、また別の作品になるような気がしますが。

 

  ブレンダン・コイル(『ダウントン・アビー』)、リチャード・ハリントン(『ヒンターランド』)、クレア・カルブレイス等、英国を代表するベテラン俳優たちが脇を固めています。

 

(おまけ)

ドラマの重要な場面で、ジョン・ディー(16世紀、エリザベス朝の占星術師・数学者・錬金術師)と「エノク魔術」(Enochian magic)の名前が出てきます。

  ジョン・ディー、どこかで聞いた名前だなぁ…と思っていたら、ヲタクの推し、マシュー・グードが主演を務めるドラマ『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』第2シリーズにも登場してました😊

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私たちもまた悠久の歴史の一部である~Netflix『時の面影』

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(サットン・フーの出土品が展示されている大英博物館…From Pixabay)

 1930年代後半まで、イギリス最古の遺跡は、遥か北方からやって来てイングランドを征服したヴァイキングのもの…と信じられていたのですが、1940年代、第二次世界大戦前夜にサフォーク州で発見されたサットン・フーの遺跡が、それまでの定説をまるっきり覆しました。文学作品で言えば、イギリス最古の叙事詩と言われる『ベーオウルフ』や『アーサー王伝説』の時代に、イングランド本土にも文明が存在していたという事実を証明する、英国考古学史上最大の発見だったのです。

 

 この映画は、世紀の大発見がいかにしてなされたか、その顛末を描いたもの。サフォーク州ウッドブリッジ近郊のカントリーハウスに幼い息子と二人で住む未亡人のイーディス(キャリー・マリガン)の依頼を受け、近所の博物館のアルバイトだったバジル・ブラウン(英国のベテラン名優、レイフ・ファインズ)が彼女の家にやって来るところから物語は始まります。

 

  彼は小学校卒業後、生活のために農作業をしながら、絵、天文学、地理学、地質学を通信教育で学んだ、言わば「叩き上げ」。サットン・フー遺跡は、イーディスの、考古学では素人でありながら、まるで神がかっているとも言える鋭い直感力(スピリチュアル…と言ってもいいかもしれない😅)と、バジルの掘削者としての豊富な体験により奇跡的に発見されるのです。しかし、いざ発見されたとなると、それまでイーディスの言うことなど見向きもしなかった村の博物館や、大英博物館から、大挙して関係者が押し寄せてきます。

 

  大英博物館の考古学者チャールズ・フィリップから「これから後は、考古学者たる私の仕事だ。お前は学位も持たないただの掘削者(Excavator)だろう。」と暴言を吐かれて著しくプライドを傷つけられ、泊まり込みで掘削を続けていたイーディスの館を抜け出して、自宅に帰って来るバジル。その時、彼を励ます奥様の言葉が泣かせるんですよ😢(バジルの妻メイは、実際にも、幾つもの仕事をかけもちしながら、バジルの遺跡の掘削作業を経済的に支えたと言われています)

 

掘削は過去や現在でなく、未来のためなんでしょ?次の世代にルーツを伝えるのよね。

未来の人と祖先を繋げる仕事でしょ。

だから戦争が近づいても掘り続ける。

意義があるから。

戦争より永劫の価値があるから。

妻の励ましによって今ひとたび遺跡掘削の意義をかみしめたバジルは、「たとえ名前が残らなくてもいい。下働きでもかまわない」と、再び発掘の現場に戻っていくのです。

 

 一方イーディスは、重度の心臓病を患い、次に発作が起きたら命の保障はないと医者に宣告を受けていました。サットン・フーの船墓遺跡を見て、「これに乗ってママと宇宙まで行けるかな❓」と尋ねる幼い息子を、早晩置いて逝かなくてはいけない悲しみ、苦しみ😢

「人間は結局、最後は朽ちて行くだけね」と嘆くイーディスにバジルは

掘り出したのは人の生きざまです。

(私たちは)洞窟の壁の手形から続いている。……私たちもその悠久の一部です。消え去るわけではない。

と励まします。

 イーディスは、その言葉に自らの存在意義を見出し、サットン・フー遺跡の全ての埋蔵品発掘に、人生最後の炎を燃やすのでした…。

 

  『プロミシング・ヤング・ウーマン』で、セクハラ男たちに鉄槌を下す、ケバい化粧のキッチュな復讐鬼をぶっ飛んだ演技で魅せたばかりのキャリー。今作では真逆の、静かな中にも意思の強さを感じさせる薄幸の未亡人役。彼女の演技の幅の広さを実感します。都会の喧騒な生活を嫌い、普段は英国の片田舎で家族と静かに暮らしているというキャリー。今回の役は、普段の彼女に非常に近いのかもしれませんね😊

 

  ヲタクは大英博物館が大好きで、ロンドンに行く度に立ち寄っていましたから、3回位訪れていると思います。サットンフー遺跡は大量に宝物が出土した為、1つの大きな展示スペースを形成しています。遺跡の発掘に、こんな深い人間ドラマがあったとは…。最近スペースに掲示されたというバジル・ブラウンについての記述は見逃したので、またいつか、大英博物館にサットン・フー遺跡を見に行きたい❗

 

  世界が戦争にひた走っていた暗黒の時代、立場、境遇は違えども不思議な友情で結ばれ、遺跡の発掘に「永遠」を見ようとした二人。

英国アカデミー賞各部門にノミネートされた秀作です。


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WOWWOW放映❗中川大志『砕け散るところを見せてあげる』


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   男子は、生涯に1度はヒーローに憧れる。だけど大人になるにつれ、世の中のさまざまな矛盾や過酷な現実に直面して、(いつかヒーローになってやる❗)…と心に誓ったことも忘れ、それはやがて甘い痛みと共に風化していく。

 

  しかし、これはそんな誓いをずーっと心に持ち続け、ついには本当のヒーローになってしまったひとりの青年のおはなしである。

 

……え❓ち、違う❓もしかしておばさん間違ってる❓

 うーーん、そう言えば「衝撃の愛の物語」って書いてあるよね…。愛の物語かぁ…。

 

 

 ええい、ままよ❗

 ヲタクは映画評論家ぢゃないし、このブログは単なるヲタクの自分勝手な感想(妄想❓😅)をつらつら綴っているだけのものなんだからして、やっぱり、思う通りに書く(笑)

 

  正義感に溢れ、困った人を見たら見過ごしにできない高校三年生の濱田清澄(中川大志)。(名前からして清澄だからね😅)ある日学校で、同級生たちから執拗なイジメ(だいたい、女子の頭に上履きぶつけるなんて酷すぎる😭)の対象になっている一年生の蔵本玻璃(石井杏奈)と出逢う。はじめは清澄が差しのべる手も拒否していた玻璃だったが、清澄の純粋さ、誠実さに次第に心を開いていく。しかし彼女は大きな秘密を抱えていて、それが明らかになった時、悲劇が幕を開ける…。

 

  何の予備知識もなく見始めたヲタク。中川くんは相変わらず素敵な自然体の演技だし、またヒロイン玻璃のキャラが、過酷な状況で虐げられているにもかかわらず、心の芯の部分は決して汚されることのない、ピュアな強さと明るさを感じさせてめちゃくちゃ魅力的。ヒロインを、石井杏奈さんがリアルに演じてます😊そんな二人が主人公で、舞台は緑深い、牧歌的な地方都市。さぞかし癒し系の学園恋愛モノかと思いきや…。

 

それがトンでもないんです❗(笑)

ラストまであと40分位のところで、あれよあれよという間に心理サスペンスか、はたまたサイコホラーに劇的なヘンシン

((( ;゚Д゚)))

 

  私たちを待ち受けるのは残酷で衝撃的なラストですが、見終わった後の余韻は、なぜかとても爽やかなんです。人の役に立つことを心底喜んで、人知れず実践しているヒーローってきっと、町のどこかに存在しているはず、清澄みたいな人がいるからこそ、虚偽や矛盾に満ちているように見えるこの世の中も、危ういバランスをとりながら、なんとか成り立っているに違いない…そんなふうに思わせてくれる映画でした。

 

  清澄は、「オレが君を守る❗」と言いながら、結局、自分の手で波璃を助けることはできなかったんですね。彼女はとっても強いので、何でもなんとか自分でできちゃうんです😅(これ以上はネタバレになっちゃうので話せませんが…)清澄はそのことに忸怩たる思いをずっと抱いていて、ある日とうとう…。

 

  こんなピュアな青年どこにもいないよ❗…って思いながら、(いやもしかしたら、ひょっとしたらどこかに…)と、淡い夢を抱かせてくれるのは、中川くんの類い稀なる演技力か、はたまた彼自身から滲み出る人徳なのか…❓正義のヒーローを演じさせて嘘っぽくならないと言えば、彼の右に出る人はいないでしょう。

 

  清澄の親友役に、ヲタクご贔屓井之脇海くん。主人公のマブダチ役って言ったら、なんてったって井之脇海岡山天音😍

二人とも、受けの演技巧すぎ🎵

 

  父・清澄の遺志を受け継いでヒーローに憧れる息子役に北村匠海。二人が並んでライダーの変身ポーズをキメるシーンは、何だかもう可愛すぎて、まさに眼福でございます♥️

 

  題名にある「砕け散るもの」とは、はたして何なのか❓清澄は私たちにいったい何を見せたかったのか❓

 

……その答がわかった時にきっと、私たちの心は温かく包まれ、キラキラ光るもので満たされる。

スリリングな心理スリラー『フレイザー家の秘密』(U-NEXT)

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(フレイザー家が暮らすニューヨークのマンハッタン)

  臨床心理士のグレイス(ニコール・キッドマン)はニューヨークの豪奢なアパートメントで、高名な小児科医の夫ジョナサン(ヒュー・グラント)と名門私立校に通う息子ヘンリー(ノア・ジュプ)とともに、人も羨むセレブ生活を送っていました。ところが、学校のチャリティー委員会で一緒になった若いママのエレナと知り合ってから、彼女の、完璧だったはずの人生には、次第に暗い影が…。(エレナは委員会の席上で、偶然一緒になったスポーツクラブで、チャリティ会場で、なぜかグレイスに向かって奇嬌で不気味な行動を繰り返すのです)そんなある日のこと、エレナが顔を潰された撲殺死体で発見され、時を同じくして、夫のジョナサンが失踪してしまいます。フレイザー一家は警察の捜査対象となり、理想的な夫だと信じ込んでいたジョナサンの、次第に明らかになる衝撃の素顔…。それをきっかけに、グレイスは身を切られるような残酷な真実に向き合うこととなり、彼女の人生は一挙に破滅ヘと突き進んでいます。

 

  殺人事件の渦中に巻き込まれたグレイスを見て、手のひらを返したように離れていく周囲のママ友たち。絶望と孤独、苛立ち、夫を信じようとしながら信じきれない心の惑いを表現するニコール・キッドマンはさすがの演技力❗

 

  脚本は「ビッグ・リトル・ライズ」のデヴィッド E ケリー。「ビッグ・リトル・ライズ」でニコール・キッドマンは、今作とは真逆の、とっくに家庭は崩壊しているのに、セレブなママ友仲間にそれを知られたくないプライドと虚栄心から小さなウソを重ね、追い詰められていく女性を演じて秀逸でした。

 

  今作品、後半は息詰まるような法廷劇となっていき、フーダニットのサスペンスと同時に、検察側と弁護側の虚々実々の駆け引きや、人間の心理の不可思議さ、恐ろしさに焦点が当てられていきます。事件の裏に潜む驚愕の真実が明らかになるにつれ、次第にあらゆる神経が研ぎ澄まされていくかのようなキッドマンの演技に注目❗

 

 夫役には、お久しぶりね~🎵のヒュー・グラント。 一時は『ブリジット・ジョーンズの日記』『フォー・ウェディング』をはじめとして、「ロマコメ・プリンス」だった彼。オックスフォード大卒で英国紳士、いかにも清潔で誠実そうなイケメン。そのイメージをウリに一世を風靡しましたが、一転、公道の車中で売春婦とワイセツ行為に及んだとか、誰かを殴ったかどで逮捕され、たちまちのうちに偶像崩壊、単なる「アブナイオジサン」に成り果てた(笑)。当時のファンの悲しみいかばかりか…ってカンジですよねぇ…。

 

  しかしそれから数十年を経て、今作品の演技で一発逆転、マスコミからは「奇跡の復活」と騒がれました。齢(よわい)六十、還暦を迎えたヒュー、スキャンダルを逆手にとって、ニコール・キッドマンに負けない迫真の演技を見せてくれます。(二人とも演技が巧いから、観ているこっちがうっかりミスリードされて、翻弄されちゃうんですよね😅)

 

 ニコール・キッドマン演じるヒロイン・グレイスは、ニューヨークにオフィスを構え、高額なカウンセリング料をとる臨床心理士の設定。カウンセリングで患者を冷静に分析する場面が幾度か出てきますが、一番身近な夫の心理にはまるで無知だった…というアイロニー。『ビッグ・リトル・ライズ』もかなり皮肉で苦い、セレブの浅薄さを揶揄するようなストーリー展開でしたが、これはデヴィッド E ケリーの脚本の持ち味なのかな…。(原題の『The Undoing』は破滅(の原因)といった意味)「心理的バイアス」とか、心理学の専門用語が時々出て来て興味深かった。

 

  ベテラン俳優のドナルド・サザーランド(息子はあの『24』ジャック・バウワー役、キーファー・サザーランド)がニコール・キッドマンの父親役で出演しており、権力も財力も有り余るほど持っていながら、愛する娘を真の意味で幸福にはしてやれない老いた父のもどかしさを滲ませてサスガ。

 

  名優たちの演技のアンサンブルを堪能できる、大人の大人による大人のためのミステリー…といったところでしょうか😊


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悪魔は夜に森の小道をさ迷う~Netflix『泥の沼 '97』

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(ポーランドユダヤ人墓地。ナチスドイツによるホロコーストの舞台となったアウシュビッツ強制収容所は、ポーランドにあった…Pixabay)

  以前このブログで取り上げたポーランド発のミステリードラマ『泥の沼』、待望の第2シーズンがNetflixで配信開始❗

 

  第1シーズンは、ポーランドがヨーロッパにおけるソ連の傀儡国家、共産主義の砦であり、反政府主義者が弾圧されていた1980年、戒厳令下の時代が舞台となっていました。当時の暗い世相を反映して、ドラマの内容も所謂「イヤミス」、かなり救いようのないストーリー展開でしたね😅第2シーズンはポーランドがやっとソ連の傀儡政権を脱して「第三共和国」を立ち上げ、民主主義の道を歩み始めた1997年が舞台。

 

  第1シーズンで新進気鋭の新聞記者として難事件の解決に尽力したザジツキ(ダヴィド・オグロドニク)が、古巣の新聞社に、今回は編集長として着任するところからストーリーは展開します。舞台となるのは第1シーズン同様、首都ワルシャワから遠く離れ、密接な人間関係が時に息苦しく感じられるような小さな地方の町。しかし町の裏に広がる広大な森の中には第二次世界大戦ナチス強制収容所があり、ソ連軍の侵攻によりナチスが退却した後も、埋葬されないままになっている多数の遺体が土の下に眠っている…という暗い歴史が背景にあります。(当時ナチスに内通していた町人もいたため、町にとっても暗黒の時代だったのです)ザジツキの妻は第1シーズンの時から、「森には悪魔が住む。森は皆を不幸にする」と繰り返していましたが、今回もその禍々しい森のイメージは繰り返し語られます。

 

悪魔は夜に森の小道をさ迷う。

 

 

 そんなある日、 町を流れる川の堤防が大雨の日に決壊して、その犠牲になったらしい12才の少年の遺体が森で発見されます。堤防の決壊は、人為的なものではないか?少年の死の背景には、どうやら町の名士による大きな陰謀が隠れているらしい…と疑って、捜査を始める女性刑事ヤス(アンジェイ・セヴェリン)。彼女は人材の交換プログラムにより1ヶ月限定でワルシャワ警察からやって来たのですが、本庁で鍛えた捜査能力を発揮しようと意気込んでも、同僚の男たちはおしなべてやる気がないし、署長は絵に描いたようなパワハラ、セクハラ男、賄賂や自白の強要が横行する世界。ヤスはいつもウィスキーをストレートでイッキ飲み😅『第一容疑者』のテニスン警部(ヘレン・ミレン)も然りだったけど、どうしてこう、オトコ社会でがんばる女性たちはアルコール依存になってしまうのか…。(ヤスはロマ人の祖母を持ち、自身はLGBTというマイノリティ。複雑な人物造型がなされています)

 

  第2シリーズでは、第1シリーズで主役だった老練の記者ヴァニッツの若き日、ドイツの少女との悲恋が描かれます。(第1シリーズでは、彼の口から概要が語られたに留まっていましたが…)かと思えば彼の叔母はソ連軍人の愛人。ナチスの次はソ連軍…次々と他の大国に搾取され続けたポーランドという国の、まるで縮図のように。複雑な歴史的背景を絡めて、この緻密に練られたミステリーはどんでん返しの連続。そして、その果てにあるものは、「因果は廻る」、悲しき宿命。

 

  過酷な歴史を背負っているにも関わらず、困難に負けない負けじ魂と、底抜けに明るい笑顔が印象的なポーランドの人たち。ヲタクがヨーロッパに住んでいた頃、次女が仲良くしていたお友達のご家族もポーランド出身だったし、あっ、ズンバの先生もポーランド人だ❗(…って言っても、YouTubeで動画見てヲタクが勝手に踊って、先生呼ばわりしてるだけ=笑)

 

  ヲタク大好きなYouTuberの無職旅さんも、数年前にポーランド旅行してましたね✈️家々の可愛いペインティングで有名なザリピエ村で、見知らぬおばちゃんにやけに親切にされてましたっけ(笑)

 

  第二次世界大戦中、隣国リトアニア日本大使館に勤務していた外交官杉原千畝氏がナチスから逃れようとする避難民にビザを発給し、大勢のポーランド人が救われたことから、ポーランドはヨーロッパの中でもとりわけ親日国として知られています。

 

「遠くて近い国、ポーランド

このドラマで、そんなポーランドの現代史を紐解いてみませんか❓

 

(おまけ)

ヴァニッツの青年時代を演じている俳優さんがめちゃくちゃイケメンなり♥️

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女性陣大活躍の最新作~『ワイルドスピード/ジェットブレイク』

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(世界を股にかけるワイスピ。舞台のひとつとなるエディンバラ(スコットランド)の街)

   

待望の『ワイスピ』最新作(No.9)、日本公開~❗

レティ役のミシェル・ロドリゲスが、「ワイスピで女優はほんの添え物。セリフも出演場面も少ない。製作陣はもっと女優たちにリスペクトを持って欲しい。そうでなければ出演の継続は考える」と語ったのも今は昔😅

 

  ファミリーの一員である彼女の訴えが効を奏したのでしょうか、前作の『ワイルドスピード ICE BREAK』ではなんと❗シャーリーズ・セロンヘレン・ミレンが初登場、今回の『ジェット・ブレイク』二人とも、出番はほんのちょっとなんですよ、カメオ出演と言ってもいいくらい😅でも、そこはそれシャーリーズ・セロンヘレン・ミレンですから。二人の大女優はますますそのオーラを出しまくり、強烈なインパクトを与えています。(言わば、『レオン』におけるゲイリー・オールドマン現象ですな 笑)

 

  セロン演じるサイファーは、ひじょうに知的なサイコパスとして描かれていて、直接自分で手を下すのではなく、仲間の男たちの劣等感や優越感を巧妙に利用して、悪に洗脳していくファム・ファタール。彼女しか演じられない魅力的なヒール♥️

 

  また、ヘレン・ミレン(ヲタク、彼女の大ファン~🎵)は以前から『ワイスピ』の大ファンだったとかで(ちょっと意外😅)あるワイドショーで「いつかワイスピに出演するのが夢」と、ワイスピ愛を語りまくり、前作の「ICE BREAK」の出演に繋がったのだとか。ヘレンは、前作でいきなり悪役から善人化したデッカード(ジェイソン・ステイサム)のお母さん役で出ています😊(スピンオフの『スーパーコンボ』にも受刑囚の設定で出演)実際に車の運転にも自信があるそうで、今回は宝石店から盗んだ😅エメラルドをつけ、ゴージャスなドレス姿でロンドンの街中をカーチェイス、華麗なハンドルさばきを見せてくれます😍

 

  ゲストのアカデミー賞女優二人は言うに及ばず、当のミシェル・ロドリゲス演じるレティも、ド派手なバイクアクションや、わけあってミアと訪れた東京の街で、悪漢相手にくんずほぐれつ、大活躍❗これなら「もう、ワイスピには出ないもん❗(ぷん、ぷん💢)」なんて言わないよね❓ミシェル(笑)

 

  ヲタク大好きな凸凹コンビ、ローマンとテズ、今回はロケットエンジンを搭載したシボレーで宇宙まで飛ばされるハメに…。(なぜそういう成り行きになったのかは、本編をご覧下さい 笑)

 

  そしてそして、『TOKYO DRIFT』で爆死したはずのハン(サン・カン)が奇跡の大復活~~🎉✨😆✨🎊なにげにヲタク、ハン推しだったんで、嬉しいよぅ~😭

 

  No.11で終了が決定しているワイスピ。ミスター・ノーバディは行方知れずのままだし、ハンがデッカードを訪ねる場面で終わって、何やら不穏な雰囲気。

 

 

  うーーん、続き気になる。ドラマと違って映画が続きモノだと(スターウォーズしかり、アベンジャーズしかり)間が数年空く場合があるからめちゃくちゃ待ち遠しいのよね😅


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POPなダークヒロイン、爆・誕❗〰️💣💥『プロミシング・ヤング・ウーマン』

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   リスベット・サランデル(北欧ミステリー『ドラゴンタトゥーの女』)やハーレイ・クイン(DCコミックス、映画『スーサイド・スクワッド』ジョーカーの元カノ)、サイコなニックス(映画『ガンズ・アキンボ』)も形なしの、ぶっ飛んだダークヒロイン、爆・誕❗

 

 クラブで何故か一人、超ミニスカでキレイな脚を広げて泥酔している一人の女。男が一人、親切そうに近寄って来る。

「キミ、一人❓ボクちょうど帰るとこなんだ。UBERで送ってあげる」

自宅のベッドで覆い被さってくる男。

泥酔した無抵抗な女にコトをいたす事は、立派にレイプという史上最悪な犯罪なんだということを認識すらもできない男に、

「アンタ、いったい何してるの❓…何してるのかって聞いてんだよ!」と冷たく言い放つ女

(その顔をふと見れば、全くのシラフ 笑)

そして茫然自失、男の顔のアップ。

場面変わって、血だらけの手で掴んだホットドッグを食べながら、裸足で車道を歩く女。

(男の生死は明らかにされず😅)

 

  …こんな、超衝撃的なオープニングで幕をあけたこの映画、優秀な医学生だったヒロイン、カッサンドラ(キャリー・マリガン)がなぜ、大学を中退して、夜な夜な卑劣なレイプ犯の男たちに正義の鉄槌を下すに至ったのか?彼女の過去がサスペンスタッチで次第に明らかにされていきます。

 

  女性側が勇気を奮って告発しても、周囲の好奇の目に晒され、

「全て合意の上」

「襲われる方にも落ち度があるのでは?」「あんな短いスカートはいて。誘ってるのも同然だよ」

といった心ない言葉に、女性がさらに傷つくレイプ裁判。

(英国のドラマ『SILK~王室弁護士マーサ・コステロ』でも、レイプ裁判の難しさをテーマにした一連のエピソードがありました)

 

  この映画のヒロインであるカッサンドラも、自分自身の人生をまるごと賭けて、刺し違える覚悟を持たねばならない。カッサンドラは、ストーリーの始まりには、道行く人々が瞠目するような美貌と、医学部でも一二を争った知性を武器に次々と卑劣な男たちに復讐を遂げていく。けれど、彼女が最大の敵に対峙する為には自らの性的魅力に頼らざるを得ないし、やはり男側の圧倒的暴力の前にはなすすべもない…というアイロニー。『オイディプス』のロマン的アイロニー、すなわち「運命のいたずら」(ironie du sort)を感じましたね。

 

  この映画のプロデューサー、マーゴット・ロビーですよね❓ヲタク思うんですが、映画『スキャンダル』で、FOXテレビの元プロデューサー、ロジャー・アイルズのセクシャルハラスメントのえじきになるキャスター役を演じていたマーゴット、役柄上とはいえ、かなーりストレス溜まったんじゃないかしらん(笑)これ、絶対リベンジだよ、『スキャンダル』の。監督は、Netflixドラマ『ザ・クラウン』で、いい年こいてピーターパン・シンドロームチャールズ皇太子を翻弄する、サッチャー顔負けの鉄の女、カミラ・パーカー・ボウルズを演じたエメラルド・フェネル。そして何と言っても、主役のキャリー・マリガンが華奢で可愛くてポップでキュート、しかも頭が良くてオニ強くてカッコいい❗「キャリー・マリガン劇場」と言ってもいいくらい😅挿入歌として使われているブリトニー・スピアーズの『Toxic』そのもの、中毒性のある危険な魅力。特にラストのナースのコスプレにはヤられますね。椎名林檎とどっちが毒があるかな(笑)

 

今最旬の女性たちが作り上げた、超スタイリッシュなブラックコメディと言えるでしょう😊……って、東京オリンピックたけなわの今、わざわざこの映画見に行ってるヲタクがいちばんブラックなヒネクレ者かしら(笑)

 

(ついしん)

…ってブラックにヒネクレつつも、帰宅したら体操の村上茉愛がなんと前回の東京オリンピック以来57年ぶりの体操女子銅メダル、卓球女子団体のパワーを見て、やっぱり胸アツになるヲタクなのでした、ぢゃん、ぢゃん❗

 

  

  

 

 

 

これは反戦映画の名作だと思う~『ラスト・フル・メジャー/知られざる英雄の真実』

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 これは実話に基づく物語。

 

 1966年、ベトナム戦争における救出作戦。米国空軍の落下傘救助隊の医療兵だったウィリアム・H・ピッツェンバーガーは、激戦の最前線で60人以上の兵士たちを献身的に救った末、自らは若い命を散らしました。この功績を称え、戦後、最高位の「名誉勲章」を推薦されたが、なぜか却下されてしまいます。しかしその後30年以上もの間、彼に救われた兵士たちはさまざまな形で、ピッツェンバーガーに対する名誉勲章授与を求める活動をし続けるのです。そしてついに1999年、米国国防総省のエリート職員、スコット・ハフマンが調査を担当することになります。しかし調査を続けるうちに、その裏に大きな政治的思惑と謀略が蠢いていることを知ります。その時彼がとった行動は……❗❓

 

  戦場でピッツェンバーガーに助けられた兵士たちに、ウィリアム・ハートピーター・フォンダ、サミュエル L ジャクソン…と、アメリカを代表する名優たちが揃い踏み。たとえ命永らえても、いやだからこそ戦争は、彼らの心に深い、深い傷を残しました。それは30年経っても決して癒えることはありません。

 

  彼らがなぜ、ピッツェンバーガーの名誉を求め続けたのか❓……彼らが戦後歩んだ人生と、彼らの心の奥の、いまだに消えない贖罪と慟哭が明らかになる時、見ている私たちの心にもそれはトゲのように刺さり、戦争の愚かさと残酷さを思わずにはいられません。

  一人息子を若くして失い、30年もの間妻と悲しみに耐えながら社会の片隅でひっそりと生きて、今は病で余命幾ばくもないピッツェンバーガーの老いた父にクリストファー・プラマー

  この名画が、ピーター・フォンダクリストファー・プラマーという、ハリウッドでひとつの時代を築いた二人の名優の遺作となったことも、感慨深いです😢

 

  当初は、自分の出世にとっては傍流の仕事だと嫌々ながら始めた調査でありながら、当時の証人たちやピッツェンバーガーの両親の心の痛みを理解するにつれ、真の勇気とは何か、真の人生の目的とは何かに目覚めていく若きエリート官僚、ハフマンにセバスチャン・スタン(アベンジャーズの中でじつは、ヲタクのいち推しはウィンター・ソルジャーだったりするので、彼にスポットが当たり始めたのはとっても嬉しい😊)彼はお母さんと一緒に12才の時にアメリカに入国したルーマニア移民。訛りのせいで虐められたりして、デビューするまではバーテンダー等職を転々とした苦労人。その彼が今回の映画では堂々と合衆国の中枢で働くキャリア官僚を演じていて素晴らしかった❗彼はこれからキますね❗……って、もう十分キテるか(笑)

 

  この映画は、戦争における英雄賛美の物語でもなければ、かといって声高に反戦を叫ぶ映画でもなければ、若き兵士の名誉勲章授与に潜む政治的思惑を暴く社会派映画でもない…と、ヲタクは感じました。当時の戦闘回想シーンはかなりリアルですけれど、ハフマンが様々な関係者にインタビューする過程は、どちらかというと激しい感情は抑制された形で、淡々と進められていきます。しかしだからこそ、深い悲しみと、戦争に対する静かな怒りが、見ている私たちの心の裡にも、沸々と沸き起こってくるのです。

 

  クライマックスとなる感動的なラストシーン。題名の"Last Full Measure"とはエイブラハム・リンカーンの演説の一節で、「最後の全力を尽くして」という意味だそうです。戦場に散った若き兵士、残された戦友たち、その厳粛な事実を全力で受け止め、ピッツェンバーガーに負けない勇気を示す若き官僚、その夫を献身的に支える妻(『ファンタビ』のアリソン・スドル)、ハリウッドの名優二人の最後の名演……それぞれの"Last Full Measure"に思いを馳せる時、ヲタクはもはや、感動の涙が溢れて止まらなかったのでした😢

 

  

 

  

世界の現代史を学べと言うのなら…Netflix『ザ・クラウン』シーズン3&4

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(エリザベス女王お気に入りの夏の離宮バルモラル城(スコットランド)…Pixabay)

  開催までに本当にいろいろなことがあった東京オリンピック。様々な理由で辞任騒ぎも続きました。それに関する意見の中に、「日本では世界の現代史の授業がなおざりにされている。常識の1つとして、学校でもっと現代史を学ばなくては…」というのがありました。何も無味乾燥な学校の授業(暴言、お許し下さい😅)で学ばなくても、(その気にさえなれば)ドラマや映画の中に、溢れるほど勉強材料はあるのに…。残念です。

 

  それはさておき、歴史というものは単なる出来事の羅列ではなく、それぞれの出来事が生じる裏には必ず、社会の流れや政治的駆け引きその他に加えて、人間同士の愛憎や嫉妬や喜怒哀楽が複雑に絡み合っている。

 

  Netflixのドラマ、『ザ・クラウン』がこれほどまでに私たちの心を捉えて離さないのは、1つ1つの歴史的出来事に潜む骨太な人間ドラマが、余すところなく描かれているからではないでしょうか❓

 

1つ例にとれば、「スエズ危機」。当時多国籍企業だったスエズ運河を当時(1956)エジプトの大統領だったナセルが突如エジプトの国有化を宣言、イスラエルがエジプトに侵攻して第二次中東戦争が勃発します。(ナセル大統領は社会主義諸国寄りだった)一方、イスラエルの裏で糸を引いていたのがフランスとイギリスですが、当時のイギリスの首相だったアンソニー・イーデンが、国連の賛同も得られないままにエジプト侵攻を強行するんですね。彼はずっとチャーチルの陰で目立たず、老いたチャーチルが政権を手放したことでやっと首相に就任して表舞台に出ましたが、ことあるごとに、「ヒットラーから世界を救った男」チャーチルと比較され、次第に鬱屈が溜まっていきます。そんな時ちょうどスエズ危機が勃発し、イーデンは政治的判断というよりもむしろ、「危険な社会主義者(ナセル大統領)から世界を救うのが私の任務だ❗」と言わんばかりに、チャーチルに対する屈折したコンプレックスが暴発したのでは?という描き方がなされていて印象的でした。(結果的に第二次中東戦争はイギリスの大敗に終わり、その後の長い経済低迷のきっかけとなった為、イーデンは首相を辞任)

 

  アメリカの既婚女性ウォリス・シンプソンと恋に落ち、わずか1年も満たないうちに王位を放棄したエドワード8世(のちのウィンザー公)は、戦争中ヒットラーと交流し、ナチスドイツのプロパガンダに利用されました。(英国政府の警告も無視して夫妻は度々ドイツを訪問。その折にウィンザー公はナチス式の敬礼をして、世界中の顰蹙をかいました)その為、エリザベス王太后(エリザベス2世の母。チャーチルと共にナチスドイツに徹底抗戦したジョージ6世の妻)は、この二人を憎み、生涯二人を認めなかった…とも言われています。この、短い歴史の場面を見ただけでも、ナチスドイツがいかにヨーロッパの歴史に暗い影を落としたか、そしてそれは今でも連綿と続いていることが見てとれます。

 

  第3シリーズになって、エリザベス女王はオリビア・コールマンに、マーガレット王女はヘレナ・ボナム・カーターに代わりました。第1&2シリーズのクレア・フォイ(エリザベス女王)とヴァネッサ・カービー(マーガレット王女)も当代きっての若手演技派、素晴らしかったですが、アカデミー賞女優同士、二人の御大の火花散る演技合戦の前には…(笑)比較する方がそもそも間違ってますね、ゴメンなさい😅

 

特に、マーガレット王女役ヘレナ・ボナム・カーターの、溢れるほどの才気と美貌に恵まれながら、次女として生まれたが故に、重要な公務にその情熱を注ぐ機会を与えられず、次第に心を病んでいく演技は圧巻の一言でしょう。さらには宗教上の制約から初恋の人と引き裂かれ、その後は真実の愛を求めても得られず、「王室の娼婦」とゴシップ紙に叩かれながら、アルコールと刹那的なラブアフェアに惑溺する王女の姿に胸が痛みます。

 

  一方、幼少時から父王から帝王学を叩き込まれ、感情を抑圧する訓練をしてきた為、歌を忘れたカナリヤよろしく、「泣くことを忘れてしまった」エリザベス女王。オリビア・コールマンの、静かな、抑制の効いた演技がまた、素晴らしい😊また、第4シリーズから登場、鉄の女マーガレット・サッチャーを演じるジリアン・アンダーソン❗(「Xファイル」「ねじれた家」)ビジュアルから声音から表情から完コピして、「女は感情的なので政治家には向きません」と言い放つ(じゃあ、あなたは誰?って感じですけどね  笑)、鬼気迫る「怪演」でございます。

 

  たとえ王族に生まれても、逃れられない人間同士のしがらみ、愛憎と喜怒哀楽。壮大な歴史もまた、その担い手は私たち一人一人の人間なのだ…ということをこのドラマは教えてくれます。


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無理ゲー❓ク○ゲー❓~『ガンズ・アキンボ』

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 なんだかあんまり楽しい話題がなくって、気がクサクサしてる昨日今日(せっかくの連休だっていうのに…😅)そんな時、映画館で萌えたダニエル・ラドクリフの『ガンズ・アキンボ』がWOWWOWシネマで放映~🎉✨😆✨🎊ぱちぱちぱち

 

  ご存知ハリポタで一世を風靡したラドクリフくん、エドワード・ファーロングブラッド・レンフロの前例見てるせいか、ハリポタ以降の俳優人生見てると、(「あの時の子役?あれ以降冴えないね。大人へのイメチェンに失敗したのかな?」なーんて、オレはぜってぇ言わせねーぜッッ❗)っていう彼のムンムンした熱い役者魂を感じて、息苦しいくらい(笑)

 

  突然頭から角生えちゃうとか、究極に呪われた父さんとか、果ては死体の役とか…。ハリポタのイメージを全払拭したいとは言え、そんなに極端から極端に吹っ飛ばなくてもなぁ…とは思うけど(笑)

 

  今回の『ガンズ・アキンボ』も、ラドクリフくん好み❓のエグい映画で、またもや捨て身の怪演と、週6日というクレイジー…もとい、超ハードなトレーニングで鍛え上げた肉体を披露してくれます。

 

  課金アプリのゲーム製作を細々と続けているほかは家に引きこもってネット生活、真性ヲタクのマイルズ(ダニエル・ラドクリフ)は、ネットにいわゆる「ク○リプ」を書き込んではウサを晴らしていた。そんなある日のこと彼は、街中で拳銃の打ち合いライブを開催、それを世界中に配信するという狂気の闇サイト「スキズム」にまたもやク○リプを書き込んで運営者を怒らせてしまい、ある夜突如襲撃を受ける。目覚めた時、彼の両手にはボルトで固定された二丁拳銃が…。しかも彼の悲劇はそれでは終わらず、「スキズム」最恐の女殺し屋ニックス(サマラ・ウィービング)につけ狙われ始める。今まで無責任な傍観者だった彼は、命を賭けたデスゲームに強制的に参加させられるという最悪の事態に…。

 

  何しろ手そのものが拳銃化しちゃってる状態だから、一人ではごはんも食べられない、トイレにもいけない、ズボンもはけない、携帯もいじれない😅そんな状態の中、女殺し屋のニックスに踏み込まれて、ボクサーパンツ一丁とアニマルスリッパ?で街中を逃げ回るラドクリフくん。いやもう、爆笑モノです。それでも、映画の途中で元カノが「スキズム」の首領にさらわれ、彼女を救い出す為、ビビりながらも、またニックスに「○○がちっちゃすぎて拳銃でも狙えねー」(⬅️ひ、ひどい…😅)と罵倒されながらも、敵地に乗り込んでいくラドクリフくんの姿は、かつてのホグワーツのヒーローを彷彿とさせてちょっと胸キュン🎵

 

  で、最恐のガンマン…もといガンウーマン?😅ニックスが、せっかくのラドクリフくんの怪演も霞んじゃうほどぶっ飛んでてカッコいいんだな~、これが。リスベット・サランデル(北欧ミステリー史上、最も過激と言われるヒロイン。少女期のトラウマを引き摺っている点も似てる)や、ハーレイ・クイン(DCコミックスの激ヤバヒロイン。ジョーカーの元カノ)も真っ青…と言ったところ(笑)彼女のセリフって、デップー並みに殆ど4letter wordsで、書くと伏せ字だらけになっちゃうからこれ以上のコメントは控えさせていただきます(笑)

 

  ド派手なガンアクションにネット依存の危険性や社会批判も絡ませたストーリー展開は斬新で◎❗

…だけど「人間ガンズ・アキンボ」なんて、よくこんなアイデア思いつくよね(笑)

 

 

 

スカーレット・ヨハンソン × フローレンス・ピュー美の競演『ブラック・ウィドウ』


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(家のリノベした時、大半の書籍やCD整理したんですが、なぜかいまだに持ってたニルヴァーナのアルバム"Never Mind"。ハマってた当時は、ニルヴァーナのヴォーカル、カート・コバーンの、シュールで出口のない絶望的な歌詞と、まとわりつくような歌声に中毒になってました)

『ブラック・ウィドウ』を109シネマズ湘南で。いざ映画が始まって、ニルヴァーナの"Smells Like Teen Spirit"が流れ始めた時には驚いたなぁ。

 

  歌っているのはマリアJという女性のシンガー。『ブラック・ウィドウ』は、ヒロインであるナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)の暗い過去と、彼女がその宿命に立ち向かおうとするさまを描いた作品なので、女性がカヴァーするのは自然な流れだと思うし、マリアJの哀切な歌声は映画のイメージにピッタリだった…。

 

  とは言え、ここで"Smells Like Teen Spirit”を聞くとはねぇ…。この歌が流行っていた当時、ヲタクはベルギーのド田舎に家族で赴任したばかり(しかも真冬❗)重く垂れ込める雲、朝8時頃まで明けない空、あっという間に立ち籠めて視界を遮る濃霧…。赴任そうそう夫が他の国に出張になって、その間に長女(4才)が熱を出し、長女をベビーカーにムリヤリ押し込め、2才の次女をおんぶして霧の中小児科を探してさ迷った時のこと、映画そっちのけで思い出しちゃった。

 

  ニルヴァーナから始まったこの映画も、ヲタクの思い出なんて問題にならないくらい、暗い。ナターシャも妹のエレーナ(フローレンス・ピュー)も生みの親から幼少時に誘拐されて、「レッドルーム」という暗殺者集団で洗脳され、「ウィドウ」と呼ばれる殺し屋になるべく育てられるわけですね。(任務の為に擬似家族で暮らしてるんだけど、お母さん役が久々のレイチェル・ワイズ。相変わらずの知的美人でしかも、強くてヤバい)

 

  時は経って、時期的には「キャプテン・アメリカ/シビルウォー」の頃。アイアンマンとキャプテン・アメリカが反目し合って、アベンジャーズもてんでバラバラな時ですよね。ソゴビア協定違反で潜伏中のナターシャは、ひょんなことから妹のエレーナと再会、自らの家庭と青春を威張った憎むべきレッドルームがまだ活動中で大勢の女性たちが犠牲になっていることを知ります。エレーナが、レッドルームでウィドウたちがどんな扱いを受けるか話す場面があるのですが、ナチス強制収容所もかくや…といった内容で、別に映像が出てくるわけじゃないんですが、話だけでも十分衝撃的なので、気の弱い方はご用心…しかしね、形は違えど、このレッドルームで行われていることって、まだまだ世界のどこかではある意味現実なんだ…って思えて仕方ない。ヲタク、一時国連女性機関の翻訳の下請けしてたことがあるんですが…いや…ホントに世界の状況はまだまだ過酷です😭ナターシャやエレーナが現実に存在してくれてたらいいのに…。

 

  しっかし、スカヨハとフローレンス・ピューのアクションシーン、女性としては極限まで行ってるんじゃないかな。

とにかく、凄すぎる❗

日本だと、キャラかぶりしてる女優さん同士って、特に先輩の方が嫌がって共演しない…とかって聞くけど、そこはそれ海千山千のスカヨハ姐御、懐深いわ(笑)今でこそスリムになってるからそれほどでもないけど、ひと昔前(『マッチポイント』とか『それでも恋するバルセロナ』とかブイブイ言わせてた頃=笑)だったら、顔つきも似てるし、キャラ丸かぶり。しかも、相手は今破竹の勢いの若手だもんねぇ…。トドメは、ブラック・ウィドウの決めポーズ(戦う時、地面に開脚しながら着地するアレね。下のマーベルTwitterの映像参照のこと)を「絶対人目気にしてるよね」とか、「狙ってる」とかフローレンス・ピューに言わせてて…。いやー、いろいろスゴい(笑)

 

  マーベル映画お約束の、ラストクレジットが流れた後の次回作に繋がるシーンなんですが、ジュリア・ルイス=ドレイファス演じるヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ(通称ヴァル)が突如出て来て、エレーナに何やら不穏なことを吹き込んでるんですよね。ネットで調べたら、このヴァル(別名コンテッサ=伯爵夫人)って人、S.H.I.E.L.D.のエージェントで、なんと❗ニック・フューリー長官(サミュエル L ジャクソン)の長年の愛人らしい…。しかしなんでまたS.H.I.E.L.Dのエージェントがあんなことを…❓

 

うーん、先がめっちゃ気になるゾ❗

(いつものことだけど=笑)

 

 

 

コン・ユのヒョンニム(お兄ちゃん)感が凄い~『SEOBOK/ソボク』


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ソボクとは、2500年前に始皇帝の命を受け不老不死の霊薬を探したといわれる実在の秦の家臣「徐福(ソボク)」に因んでつけられた名前であり、死を克服した人類の象徴だという。

 

  映画評のサイトに行くと、SFアクションって分類されてるけど、1つのジャンルになんて収まりようがない、そもそも分類不可能な映画❗

 

  SFであり、ロードムービーであり、カーアクション映画であり、親子の人情モノであり、生と死の意味を問う哲学的な映画であり、ブロマンスであり…。こんなてんこ盛りの要素が、二時間という限られた時間の中に過不足なく、きちんと収まってる、凄い映画です❗

 

こういう、深遠なテーマ提起とエンタメ性を兼ね備えた映画って、ひと昔前はハリウッドのオハコだったハズだけど…。韓国映画、ひけをとらない❗…いや、ある意味ハリウッドを超えてるかも…。分かりやすいハリウッド的エンタメ大作のストーリーに、東洋的な死生観、特に親子の情愛や兄弟愛(主人公二人は擬似兄弟だからね😉)が織り込まれているから、日本人の私たちにとっては感動がひとしおなのかも。

 

  脳腫瘍を患い、余命1年と宣告された元情報局エージェントのギホン(コン・ユ)。死を待つだけの絶望的な日々の中、彼は元上司からある任務を依頼される。それまで極秘に進められていた遺伝子操作プロジェクトの対象である不老不死のクローン、ソボク(パク・ボゴム)を、彼の生まれ育った研究所から他の場所へ護送するというものだ。しかしその裏には、巨大な陰謀が蠢いており、護送車は襲撃を受け、ギホンはソボクを連れて逃避行をするハメに…。

 

  研究所で純粋培養され、逃避行の当初には人間的な感情を一切見せなかったソボクが、ギホンとのふれあいによって次第に個性を持ち始め、人間らしく変わっていく過程…ソボクを演じるパク・ボゴムの瞳が美しすぎる、演技が上手すぎる😮「さんづけで呼ぶな」って言われて、おそるおそる「…兄さん❓」って言う時のイントネーションが、ラーメンすする口元が可愛いすぎる(笑)それを受け止めるギホン役コン・ユの、一見荒々しく手負いの獣のようでありながらも、そのじつ、誰より優しく誠実な兄さんぶりが心に刺さりすぎる(ものすごくイケボだしぃ~😍)

 

  研究所しか知らないはずのソボクが、唯一行ってみたかった憧れの場所。その理由が明らかにされた時、観ている側は、もはや涙腺崩壊😭😭…それからはもはや、ソボクが何言っても何やっても涙が溢れ出て止まらず、おばさんホント、困ったゾ😅

 

  ギホンも、ソボクも、一方は人生の過去のトラウマから、そして一方はその出自から、それぞれ生きる意味を見つけられずにいた。ソボクはギホンに、いや、観ている私たち全員に、その澄んだ幼子のような瞳で問いかける。

 

生きる意味が見つからないのに、なぜ死ぬのは怖いんだろう?

 

死ぬ…って、眠りから目覚めないことだよね?じゃあなぜみんな眠ることは怖がらないの?

 

その哲学的な問いにギホンも私たちも答えが見つからぬまま、迎えるラスト。壮大かつ悲劇的なクライマックスに、私たちは渦の中の1枚の木の葉のように巻き込まれ、翻弄され、打ちのめされる。(『AKIRA』を思い出させる…って書き込みを見たけど、個人的には『ダークフェニックス』(X-Menシリーズ)か『キャリー』かなぁ…。)

 

パク・ボゴムはソボク役を引き受けたきっかけについて…

人間を人間たらしめるものは何か? 科学技術に倫理が必要なのはなぜか? ソボクは“人間”と“生”について考えるきっかけをくれたからです。

とインタビューで語っていますね。役に対する理解、真摯な向き合い方があったからこその入魂の演技だよな…。

 

上映している映画館数は少ないようですが、今この時、見るべき一作であることには間違いない❗

やっぱりめちゃくちゃ癒される~😍『いいね❗光源氏くん/し~ずん2』

 ドラマの冒頭、ハートの花びらが舞い散るなかで、平安時代の装束に身を固めた光くん(千葉雄大…これまためちゃくちゃ似合うんだなぁ😍)からバックハグされる沙織(伊藤沙莉)❗

 

もう、シーズン1に引き続き、のっけから女子のドリーム全開ね(笑)戸籍もなく、仕事もなく、腕力も財力もなく、あるのは美しい顔(かんばせ)と優雅な立ち振舞いと優しさとピュアなハートだけ😅

 

…って、ヲタク的に見たら、もうそれだけでじゅうぶんすぎるんだけど(笑)

 

  沙織が会議のプレゼンの前にUSBをパソコンに差しっぱなしにしたのに気づいて、自宅でブラブラしてる光くんに持ってきてもらうエピソード、いいなぁ…(^q^)光くんは、働く女子の永遠のドリーム…♥️

 

 

 大昔の新婚時代、 残業の後の帰りの電車の中で、閉店スレスレのスーパーで何買おうか考えて(往々にして売り切れてることが多い😅)、15分でできるオカズ何かあったか必死で考えてるヲタクの顔はきっと怖かったよね(笑)ヨレヨレになって帰った家に光くんみたいな人がいてくれて

「疲れたであろう。夕げの支度は後でよいから、まずは湯にでもゆっくり浸かるとよいぞ」

なんて言ってくれたら…。きっとあの時、もっと優しいじぶんでいられたと思うわ…(遠い眼)たとえ相手が一生非正規労働者でもいいの。そのぶん、じぶんが馬車馬みたいに働くから(笑)

 

 『源氏物語』中の元祖・光くんも、正妻葵の上の実家の後ろ楯があってさらに出世するわけだから、女子の力が頼みの綱、って点では、現代の光くんと似ていなくもない😅後年、紫の上はじめ、あまたの女人を広大な屋敷に住まわせるけど、その女人たちは葵の上とは真逆で、親が早くに亡くなったとか、身分が低いとか、ワケアリの人たち。経済的に光くんの庇護が必要な人たちなんだよね。元祖・光くんはあらゆるタイプの恋愛を経験した上級者です(笑)

 

  エピソード1から持ち越していた光くんタイムワープの謎もやっと解明❗うん、スッキリ納得😊ラスト、教会でのエピソードは懐かしのハリウッド映画を思い出しましたねぇ…(注・『卒業』ネタバレになりそうだから小声=笑)

 

とにかく、こじらせハスキー女子・伊藤沙莉と雅やかな平安美男・千葉雄大カップルが最高です❗どんな奇想天外なファンタジックロマコメでも、いやだからこそ、観ている側が感情移入するためには演技力がモノを言います。

 

  この二人には、本年度ベストカップル賞贈呈❗…って、ちょっと早すぎ❓😅

 

 

 

 

  

カンヌ映画祭衝撃の問題作、WOWWOWで放映①~『クラッシュ』

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(映画『クラッシュ』の舞台となるカナダ・トロントのハイウェイ…Pixabay)


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カンヌ映画祭で賛否両論、観る側の気持ちもざわつかせる問題作が、WOWWOWで7月に続々と放映されます。

 

  まずは『クラッシュ』(1996) R15

7/8(木)22:45~ WOWWOWシネマ

 

同名の作品(2004年…ある交通事故によって引き起こされる人種差別の問題を真正面から取り上げた社会派ドラマ)がありますが、1996年のデヴィッド・クローネンバーグ版は内容的には全く違います😅

 

  妻と倦怠期を迎えている主人公の青年(ジェームズ・スペイダー)はある日高速道路で衝突事故に遭い、そのクラッシュする瞬間、激しいエクスタシーを感じた。その後彼は事故の相手の妻ヘレン(ホリー・ハンター)と車中で性的関係を結び、彼女に誘われ、妻と共に謎めいた男ヴォーンが主催する、『クラッシュマニアの会』なるものに参加、ますますクラッシュエクスタシーに魅了されていく…というトンでもないストーリー展開(笑)だいたいクラッシュマニアなんて存在も、「自動車事故とは、破壊的ではなく生産的な現象なんだ。性的エネルギーの解放なのだ。事故で強烈な死に方をした人間の性的エネルギーを感じ、自分自身もそれを経験することだ」というヴォーンの教義❓も、こうやって後から冷静になって改めて書いていると、全くリアリティからは程遠いように感じますが、観た当初は凄く衝撃を受けたし、この映画の持つ奇妙な魅力とパワーに圧倒されました。死と隣り合わせになった瞬間にしか生きる実感が湧かない世界って、確かに存在するんだろうな…というね。

 

  その時の、奇想天外な世界観に対して奇妙に納得しちゃう感覚って、クローネンバーグ監督の脚本・演出はもちろん、クラッシュ・エクスタシーの教祖❓ヴォーン役、イライアス・コティーズの奇っ怪な演技によるところも大きいし、また何と言っても主演がジェームズ・スペイダーだからね。今でこそ髪の毛なくなっちゃって、お腹周りのお肉もタップリ、ドラマ『ブラックリスト』でイライアス・コティーズ顔負けの怪演をカマしてるスペイダーくんですが、この頃は水も滴る細身のイケメンだった……(遠い眼)

  でもただのイケメンじゃない、そのじつ、物凄くこじらせた、人間の暗黒の一面を表現できる人で。

 

  1980年代の彼は、トム・クルーズとかロブ・ロウ、ロバート・ダウニー・ジュニア等ブラットパックと呼ばれた若手俳優たちの青春映画の常連で、イヤミな金持ち坊っちゃん、かませ犬的な役回りが多かった気がする(笑)

 

  本人もそんな立ち位置には満足しなかったらしくて、1990年代に入ってからは、恋人を失った喪失感から年上の、しかも全く境遇の違う女性(スーザン・サランドン)に溺れていくユダヤ人ヤッピーの役とか(『僕の美しい人だから』)、得体の知れないオタク青年(『セックスと嘘とビデオテープ』…スティーブン・ソダーバーグの実験的な処女作で、カンヌ映画祭パルムドール。スペイダーくんも主演男優賞受賞)とか、秘書を奴隷化するヘンタイ社長(『セクレタリー』)とか、一筋縄ではいかない役ばかり(笑)

 

  この映画でも、アメリカでは「blank eyes」(今ふうに言えば「死んだ眼」❓😅)な三白眼の魅力全開、観ている私たちを、あっと驚く衝撃のラストまでぐいぐいと引っ張っていってくれます。(R15)


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