オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

「パリ、嘘つきな恋」~生きてるって素晴らしい💕

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 「ジャック&べティ」で「パリ、嘘つきな恋」ずっと見たかった…とか言いながら、土曜日で終映と知り、慌てて観に行ってきました😅社会的には一応成功を収めているけれど、女性とは一度も真正面から向き合ったことはなく、One night loveの出会いと別れを繰り返してきた主人公ジョスラン(49才)が、ケースワーカー若い女の子から車椅子生活と誤解され、口説く目的でそのフリを続けます。ところが女の子の姉の、こちらは本当に障害を持ったフロランス(アレクサンドラ・ラミー)に真剣な恋をしてしまい…というおはなし。

 

  ロマンスものはあまり観ないワタシですが、これはもうね、序盤はウィットに富んだ設定と会話のキャッチボールに大笑いし、ジョスランが本気の恋に落ちる中盤から涙が溢れて止まらなくなり、ラストはもう号泣状態なので(笑)館内が明るくなるのが少々気恥ずかしくなるような始末😅

 

  ジョスランの愛すべき「チョイ悪オヤジぶり」(フランス人でこんなタイプ珍しいな、と思ったら、しっかり「イタリア系」って設定だった😅納得=笑)、フロランスの凛とした美しさ、強さ、ユーモアのセンスを始めとして、障害の姉を思いやる妹のいじらしさや、ジョスランの嘘にムリヤリ付き合わされてしまう友人(LGBTの医者)、ジョスランを好きだけど自分に自信がなくて悩む秘書の女の子、認知症で老人ホームに暮らすジョスランの父親に至るまで、弱さもズルさも持ち合わせているけど、みんな精一杯前を向いて生きている愛すべき人たち😊脚本・監督・主演の三役を務めたフランスのコメディアン、フランク・デュボスクの人間そして人生そのものに対する優しい眼差し…その全てが、爽快かつ意外性のあるラストに収束していくという感じです❗

 

  ン十年前のヨーロッパ駐在時代、夫が急きょ出張になった為、3歳と5歳の娘たちを連れてドイツへのバスツァーに参加したことがありましたが、子連れだからとさりげなくいつも手助けしてくれた若い学生の男の子。そしてそのバスには車椅子の若い女性が一人旅で参加していましたが、当然のように、他の参加者が手を差しのべる。そしてその女性も当然のように笑顔でその善意を受けとる。介助する側もされる側も、ごくごく自然体だったことが思い出されます。

 

  劇中「障害のことをやっとジョークにできるようになった」というセリフがあるのですが、障害を持った人が主人公のコメディって、成熟した社会でしか成立しないんじゃないか…とふと思いました。観ている側もね、その意識如何によって、必要以上に過剰反応しちゃったりするし…😅

 

  それで思い出すのが、イギリスのコメディ「リトル・ブリテン」あれもLGBTを始めとしてマイノリティを徹底的にジョークにしているぶっ飛んだ作品ですが、逆説的に言うと、マイノリティを差別していないからこそ、権威やマジョリティに対してと同様、笑いのタネにできるんですよね。ヘンな意識があると、何も出来ないですけど。

 

  「パリ、嘘つきな恋」のフランク・デュボスクも、「リトル・ブリテン」のデヴィッド・ウォリアムスも高名なコメディアン。本作、笑いと涙の感動だけでなく、いろいろなことを考えさせられる深い作品。首都圏では、アップリンク吉祥寺明日から上映。ぜひ一見を❗