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ジャック・ロウデン アーカイブ ~『否定と肯定』息詰まる法廷劇と人間ドラマ

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(London from Pixabay)

これ、2年前の映画なんですけど、ご存知『ダンケルク』でジャクロくんにヤられたヲタクが、次に映画館でジャクロくんを観た作品がコレです。もちろん、円盤化した時に即買い😅あっでも、ジャクロくんが出ていなくてもきっと観に行っていたであろう作品。彼のヴィジュアル、声、演技はもちろんですけど、彼の脚本選びが個人的にはめちゃくちゃツボ❤️

 

  この映画は実話に基づいたもので、ホロコースト研究家アメリカのデボラ・リップシュタット教授(レイチェル・ワイズ)が大学の講義中、ホロコースト否定論者のアーヴィングが乗り込んできて、『ホロコーストはなかった。なぜなら命令書は残ってない。あるなら持ってこい❗』と叫び出す衝撃的な場面から始まります。デボラは、ホロコースト否定論者たちの嘘を批判した本を出版していたのです。あまりの理不尽な言いがかりに、デボラが茫然として反論できないのを見たこのクズなおっさん、これはイケるぞ、と思ったんでしょうね、今度は名誉毀損でデボラを訴えてきます。

 

  ホロコーストはもちろん厳然たる歴史的真実なので、大元のドイツでは、公的な場でホロコーストを否定することを法律で禁じているのですが、言論の自由を謳うアメリカでは何でもアリ。だからアーヴィングはそこを逆手にとる。しかも、彼自身はイギリス人だから、『被告側が原告側の訴追内容の立証責任を負う』というイギリスのヘンテコな法律を利用して、アメリカ人の彼女が闘いづらいイギリスで訴訟を起こすんですね。アーヴィングはホロコーストが事実であることを充分承知していながら、自分自身の反ユダヤ思想、売名、ミソジニー等々を正当化するために、デボラを訴えたのです。それはデボラがユダヤ人であり、しかも女性だったから。

 

  イギリスの法廷で裁判があるから、デボラは英国人の弁護団を雇い、裁判の度にロンドンに通わなくてはならない。初めて弁護団に会うために陽光溢れるアメリカからロンドンに着いた日は暗い空から土砂降りの雨が降っています。まるで彼女の心象風景のように。

 

  何かの災害に遭遇したように理不尽な闘いを突然強いられたデボラが、当初はぎくしゃくした関係だった弁護団の面々と、国籍や『被告と弁護団』という立場を越えて次第に心を通わせ、奇跡とも言える大逆転を勝ちとるさまは、感動としか言いようがありません。

 

アンドリュー・スコット弁護団のリーダーである英国でも有数のキレ者、事務弁護士ジュリアスを(ヲタク的には、彼と言うと、ベネ様の『シャーロック』めっちゃ魅力的な悪役モリアーティ😍)、英国の名脇役トム・ウィルキンソンが実際に法廷で弁護に当たる法廷弁護士ランプトンを演じています。この法廷弁護士、スコットランド人で、そのたくまざるユーモアと職務に対する誠実さでデボラのピリピリと尖った心を溶かしていくプロセスがね…とってもステキなんですよ~❗😃

 

さて肝心のジャクロくんはというと、いつものようにまずはビジュアルから全く変えて、ストレートの短髪にメガネ男子(…萌える😍❤️)新進弁護士そのまま。デボラに、どういう論点で法廷で闘っていくか、説明する場面があるんですが、法律用語を多用した長ゼリフ、淀みなく流れるように喋るところはサスガです。正義感に燃えるストレートな役柄で、屈折したキャラが多い彼にしては、『ダンケルク』のパイロット、コリンズと並んで珍しい役です😃

  

 社会のそこかしこでフェイクニュースが、しかもSNSであっという間に拡散する時代。一国の大統領や首相ですら、この映画のアーヴィングのように、それが嘘だと知りながら平気で政治的な手段に使っている…。この映画が2年前に製作されたのは、そんな危険な時代に警鐘を鳴らす意図があったのか…2019年も終わろうとする今、そんなことをつらつら思うヲタクなのであります😅

 

  ヲタクのような法律に疎いシロウトにもわかりやすく、町山智浩さんが『たまむすび』でこの映画について説明してくれてます。動画配信サイト等でこの映画をご覧になる方は、この町山さんの話を読んでから観ると、めっちゃわかりやすいです😃


町山智浩 映画『否定と肯定』を語る