オタクの迷宮

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That's 悪役❗なベネディクト・カンバーバッチ~『リチャード三世』


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  シェイクスピアの作品の中でも、特に英国歴代の王たちの生涯を描いた史劇の数々をドラマ化した『嘆きの王冠~The Hollow Crown』。この稀有なシリーズもいよいよ大詰め、大トリを務めまするは、現代英国の演劇界でこの人ほど相応しいオーラ溢れる俳優はいないでしょう、ベネディクト・カンバーバッチことベネさまのリチャード三世❗

 

  王でありながら、歴史上これほど英国の国民に忌み嫌われた君主もいません。王位に就く為に、他人はおろか親族、兄弟までも手にかけ、王冠を手にしてからも謀叛を恐れ、疑心暗鬼のままに、数多くの人々を暗殺した、残虐極まりない血塗られた国王。

 

  特に、当時王位継承者であった甥のエドワード(当時12才)を戴冠式の前日に幼い弟と共に拉致しロンドン塔に幽閉、挙げ句の果てに刺客を放って暗殺した事件は、陰惨なロンドン塔の歴史の中でも最も悲惨極まりないものです。ヲタクがロンドン塔を観光した時も、ガイドさんが真っ先に話していましたから…😢

 

  さて『リチャード三世』の冒頭、上半身裸のリチャードは、背中に大きな瘤が盛上がった、衝撃的な傴の姿を観る者に晒しながら、あの有名な独白(モノローグ)を吐くのです。

俺は不具者で、醜い、女になんてモテやしない。戦争が終わっちまったから、活躍の場などありゃしない。だから決めた!悪党になってやる!

この科白ね、初めて読んだ時びっくりしましたよね。「悪党宣言」するキャラって初めてだったから(笑)まあでも、王子3人の中で一人醜く、幼い頃から狂暴な性格の為に母親である王妃(ジュディ・デンチ)から疎まれ、「お前を産んだこの子宮を呪う」なんて言われちゃね…。ベネさまがまたね、サイコパス的な殺人鬼とは違う、生まれた時から否定され続けて、自らが何なのかを見失って、『絶対的な悪の力』を手中にしようとあがくリチャード三世を、その圧倒的なパワーでグイグイ演じ切ります。極悪非道な中に、時に自らの醜悪さを冷笑したり、かと思えば人たらし的な愛嬌を滲ませたりして、もうベネさまの独壇場ですよ😅

 

  陰謀と策略で王冠を奪い取ったリチャード三世の治世は長くは続きません。正当な王位継承権を主張するリッチモンド伯ヘンリー(のちのヘンリー七世)が蜂起、リチャード三世は窮地に追い込まれます。戦いの前夜、王冠を手中にするために今まで手にかけた者たちの亡霊に悩まされ、悪夢にうなされるリチャード三世。「誰かいるか?…いない、俺だけだ。人殺しはいるか?いない…いや、いる。俺が」と、自分は一体何なのか、迷い、逡巡する無限地獄に堕ちていくわけです。

 

  ベネさまは、ストレートな役柄よりも、心に闇を抱え、二面性を持った役が合いますねぇ…。ご本人はいかにも、端正な英国紳士の風貌ですが。『イミテーションゲーム』、ナチスの暗号エニグマを解読、得意の絶頂にあったアラン・チューリングが同性愛のかどで逮捕され、去勢されて誇りをズタズタにされ、廃人同様になってしまう、あのメリハリの効いた演技。素晴らしいの一言でしたが、今回のリチャード三世もまた、劇前半の圧倒的な悪と、そこから一歩踏み外した時の惨めな凋落…この際立つ二面性があるからこその、ベネさまの忘れ難い名演となりました。

 

  あの発明王エジソンが絡む電力ビジネスバトルを描いた『エジソンズゲーム』もまもなく公開❗世間のイメージとかけ離れた、傲慢で謀略に長けた天才発明家を演じているようで、こちらもめちゃくちゃ楽しみです😊


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