オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

オム・ファタールなトム・ヒューズ😍 in 『終りなき世に生まれつく』(アガサ・クリスティ)


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 題名の"Endless Night"は、ウィリアム・ブレイクの詩『無垢の予兆』の一節

“甘き歓びに生まれつく者あれば、終りなき夜に生まれつく者あり

(Some are born to sweet delight, Some are born to Endless night.)”

から取られたもので、全編にわたり、作品の隠れたテーマとして、また主人公二人に降りかかる悲劇の不吉なプレリュードとして、度々繰り返されます。

 

  アガサ・クリスティの作品の中でも多くの人に愛されるキャラ、ミス・マープル。穏やかで人好きな老嬢で、少々お節介がタマにキズだけど、エルキュール・ポワロに負けないくらい脳細胞の働きは活発なもよう(笑)ポワロが灰色なら、ミス・マープルはさしずめピンク色かな❓😊

 

  この作品、マープルものの一つではあるんだけど、今作品ではミス・マープルは完ぺきに脇役の趣で、最後の謎解きの場面だけご登場(笑)真の主人公は、ドラマの一人称の語り手であり、係わる女性たちの理性を狂わせずにはいられない運命の美男、マイク・ロジャース(トム・ヒューズ)。富豪のお抱え運転手、ウェイター、バーテン等様々な職業を転々としながら、いつか自分の思い通りの豪奢な生活を手に入れたいと夢見ている。そんな彼が、アメリカの大富豪の娘エリーと恋に落ち、電撃結婚する。二人は新居建設の為、廃墟のような邸宅の建つ『ジプシーが丘』を購入するが、そこはかつて一家惨殺のあった場所、呪われた土地だった。ジプシーの女占い師の不吉な予言も、恋に有頂天な二人の耳には届かない。呪われた廃墟を取り壊し、『夢の家』を建てた二人。しかし、新居のお披露目パーティーが行われたその夜からというもの、二人には次々と恐ろしい出来事が降りかかり…。

 

  ミステリーと言うより、デュ・モーリア原作の『レベッカ』(アルフレッド・ヒッチコックが映画化)みたいなゴシックホラーロマンスの味わいですねぇ。トムくん、淡くて碧くて深い、湖みたいなブルーの瞳がめっちゃミステリアス、何を考えているのかわからない魅力と怖さがあって、まさにファム・ファタール、もといオム・ファタール❗普段は無表情で、心の奥も窺い知れないのですが、ふと唇の端を歪めたり、微かに涙を浮かべたりして一瞬、心の裡を見せる瞬間がある。もうね、理性射抜かれるよ(笑)こういうのって、いわゆる名演技とされがちな、泣いたり叫んだりの『激情』型演技よりよほど難しいし、高度な技巧が必要な気がするんですが…。どうでしょう❓

 

  典型的な英国紳士役だけでなく、こういう、社会の底辺から必死に上り詰めようとする、冷たい目をした野心家の役ができるのも、トムくんの強みかなぁ。古くは『太陽がいっぱい』のアラン・ドロン、『陽の当たる場所』のモンゴメリー・クリフト系😉今の英国演劇界を牽引しているエディ・レドメイントム・ヒドルストンだと、良家の子息の育ちの良さがどうしても滲み出てしまうからね😅トムくんみたいにはハマらなさそう。

 

  しっかし…この作品のトムくんはあまりにも魅力的すぎる。彼になら、翻弄されて人生滅茶苦茶にされて、終りなき夜に放り込まれても許しちゃうね、うん(笑)

 

  ヲタクはDVDを所有しておりますが、残念ながら動画配信サイトではどこも配信していないもよう😢AXNのミステリーチャンネルでは過去に度々放映されたようなので、機会がありましたらぜひ❗

 

(おまけ)

クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』で、イギリス兵になりすまして決死の脱出を計るオランダ人の役を演じたアナイリン・バーナードが、重病に冒された若き建築家役で出ています😊


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