映画『蒲田行進曲』WOWWOWで放映❗天才演劇人つかこうへいが自らの舞台劇を元に脚本書いて、『仁義なき戦い』『柳生一族の陰謀』『火宅の人』等々…の深作欣二が監督となれば、名作にならないほうがオカシイ(笑)
舞台『熱海殺人事件』で風間杜夫に大注目だったオタクとしては、『蒲田行進曲』の公開がもう死ぬほど楽しみで、上映が始まるまで、映画館の片隅で心臓が飛び出すくらいドキドキしてたのを今でも覚えてる。
つか作品は幾つも映画化されてるけど、願わくは1本くらいは、主役も脇役も『つかこうへい事務所』初期のメンバー勢揃いで見たかった…。つかさん自身も気力体力充実してた頃の。いや、単なる舞台ファンのたわ言だってことはわかってます、ハイ😅それにしても、三浦洋一(故人)、加藤健一、根岸とし江(現・季衣)、酒井敏也、柄本明、角替和枝(故人)、萩原流行(故人)…。こう書いてみると、物凄く個性的な方たちばかり。この方々が、独特の『つかこうへいの世界』を形作っていたんですね。中でも、根岸とし江の伝説の舞台『ストリッパー物語』、公演の一部を映像で見たことあるんだけど、いやもう、あれはただただ衝撃的だった。映画で見たかったなぁ…。
一方この映画は、つかさんの秘蔵っ子だった風間杜夫と平田満が主役を張ったし、脇を萩原流行、岡本麗、酒井敏也、石丸謙二郎、長谷川康夫で固めてるから、つかさんの先鋭的な舞台の熱量に深作監督のエンタメ性が加わり、さらにバージョンアップした感があった。そこに艶やかな華のある松坂慶子が加わって、つかさんの舞台を知ってる人も知らない人もみーんな満足できる、「最強の人情喜劇」になりました❗(最後のオチも、映画好きにはタマリません😍)
のっけから、時代劇の撮影現場のてんやわんや、二大スターの意地の張り合い、職人監督の怒鳴り声…。あっという間にこの映画の世界に引き込まれます。ストーリーの主軸は、スター俳優の銀ちゃん(風間杜夫)と、銀ちゃんの恋人で売れない女優の小夏(松坂慶子)、銀ちゃんの子分で、いつまで経ってもうだつが上がらない大部屋俳優のヤス(平田満)の、奇妙な三角関係。この銀ちゃんがもう、今の芸能界だったら即抹殺されそうな性格破綻者で、恋人の小夏が自分の子どもを妊娠したと知ると、無理やりヤスに子どもごと押し付けちゃうっていう、トンデモない男😅銀ちゃんのキャラって、昔の破天荒な時代劇スターたちを戯画化したもので、似たようなエピソードどこかで聞いたことありますよね(S.KさんとかH.Mさん、S.Y さんとか😅)
たとえ性格が破綻していても、映画バカのヤスにとって、銀幕のスターである銀ちゃんは「神」に等しい。どんなに苛められようが無理難題を押し付けられようが、銀ちゃんから言われたことは何の疑いもなく引き受けちゃう。一見、小夏を挟んだ三角関係に見えるんだけど、そのじつ、銀ちゃんとヤスの、SMチックなブロマンス関係を匂わせてるとこが、つかこうへいっぽいと言うか。初期の作品『いつも心に太陽を』みたいにあからさまにホモセクシュアリティを前面に出した作品よりこっちの方がヲタク的には好きです😊
自己チュー銀ちゃんの巻き添えを食らった形で始まった小夏とヤスの関係ですが、二人が次第に心を通わせていく過程が泣かせます😢もうね、この映画の松坂慶子が天女みたいに綺麗で、いじらしくてね…。そして、小夏の出産も迫った頃、撮影中の大作時代劇で、ヤスは銀ちゃん演じる土方歳三から派手に切られ、大階段のてっぺんから壮絶に転げ落ちる、「軽くて半身不随、失敗したら命がない」と言われる「階段落ち」のスタントを仰せつかりますが…。
つかこうへいの芝居ってともかくセリフが膨大というか、役者さんがテンションMAX、超速でマシンガンみたいに喋りまくる(もちろん、演出のつかさんもでしょうけど😅)エッセイ『つかこうへいの腹黒日記』読むと、元来風間杜夫って対人恐怖症に近いくらいの超人見知りだったらしい。そういえば風間さん、どこかのインタビューで、「普段はあまりにも感情を抑制しているから、舞台でそれを爆発させている。演技の世界に入ってなかったら、何か犯罪を犯していたかも」っていう趣旨のことをおっしゃっていたような。風間さんが普段溜めに溜めたものを演技に放出するさまはもうマーヴェラス、驚きの一言です。
平田満がまた、映画に対しても銀ちゃんに対しても小夏に対しても、ひたすら男の純情を貫く、愚かにも愛すべきドM男、ヤスを演じきって、胸絞られる名演😢映画ヲタクとしては、『エデンの東』や『ウェストサイド物語』のポスターを貼り巡らしているボロアパートの一室で、ヤスが懸命に殺陣の練習をしているシーンが大好き💓
奇しくも今年は松竹映画100周年の年。「松竹映画100選」という特設サイトが公開されていますが、オタク的には確実にベスト3に入る名作です😊
☆WOWWOWシネマ 7月10日(金)23:00~