オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

歌に生き、愛に生き『パヴァロッティ~太陽のテノール』

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 キノシネマみなとみらいで『パヴァロッティ~太陽のテノール』鑑賞。個人的にはパヴァロッティと言えば、その神からの贈り物のような透明感のある明るい高音は言わずもがな…なんですが、一方では、「無名時代に結婚した妻と娘3人を捨て、娘より年下の相手と不倫・同棲した」っていうスキャンダルがずっと脳裏に残っていて…😅当時ヲタクは夫の仕事の関係でベルギーに住んでいたのですが、ヨーロッパのマスコミはもう、大騒ぎでしたね。パヴァロッティの母国、厳格なカトリック国であるイタリアでは、離婚は神に背く大罪、当時タブロイド紙では、パヴァロッティはまるで色魔扱いだったように思います。

 

  ところが、今作品で名匠ロン・ハワード(『ビューティフル・マインド』など)は、毀誉褒貶の激しかったパヴァロッティの生涯を多数のプライベートフィルムや多くの人のインタビューを通じて深く掘り下げ、彼の真の姿、人間性を浮き彫りにしてくれた❗

 

  60もとうに過ぎて、娘のような女性に初めての恋をした少年のようなパヴァロッティ。そしてお相手のニコレッタ・マントヴァーニ(学生時代からパヴァロッティのアシスタントを務めていた)も、打算などは微塵もなく、マエストロへの深い尊敬が、次第に愛に変わっていったことがよくわかります。前妻アドゥアも、憎み合って別れたのではない…と微笑みながら話します。パヴァロッティ膵臓ガンで亡くなる前、入院先にナポリふうのパスタも届けたのよ、と。「あの声に恋しない人なんている?」彼女のこの問いが全てを物語ります。

 

  次女が難病になった時、全ての公演スケジュールをキャンセルしてつきっきりで看病したパヴァロッティ。「プロとして失格」との世間の批判にも耳を貸さなかったそうです。彼の溢れんばかりの豊かな愛情は、家族や周囲の人びとばかりでなく、後年、世界中の恵まれない子どもたちの為の慈善事業にも惜しみなく注がれました。親交のあったU2のボノ が語るように、人生の喜びも哀しみも成功も失敗も全て、歌に昇華し、「歌を生きた」人❗

 

  最新のデジタル技術で甦るパヴァロッティの伝説の歌唱の数々は、もう鳥肌モノ。彼の名声を不動のものにした「友よ、今日は楽しい日」(ドニゼッティ連隊の娘』なんと9回ものハイC❗)、「冷たい手を」(プッチーニラ・ボエーム』)、深い友情で結ばれた故・ダイアナ妃に捧げた「見たこともない美人」(プッチーニマノン・レスコー』)…。そしてそして、あの三大テノール夢の競演❗元々は、白血病で長い間闘病していたホセ・カレーラスの為の復活コンサートとして計画した…というのがいかにもパヴァロッティらしい😊三人がアイコンタクトをしながら息もピッタリに歌う「オーソレミオ」「誰も寝てはならぬ」(プッチーニトゥーランドット』)はもはや、この世のものとは思われぬ、大天使ミカエルの奏でる天上の音楽😌「次、ボク?」「いや、違うでしょ」なんて話しているのか、ひそひそ話してる3人の少年がめっちゃカワイイ😍

 

彼はまた音楽ジャンルの境を取り払った人としても知られています。ボノの家に押しかけて無理やり曲を書かせたエピソードはその最たるもので😅幾多のロックミュージシャンとチャリティコンサートを何度も開催しました。個人的には、若いジョン・ボン・ジョヴィパヴァロッティの横にチラッと写ったのがツボ❤️

 

  そして、最も心打たれるのは、全盛期を過ぎて、伝説的なハイCもすでに過去のものになってしまったパヴァロッティが、盟友プラシド・ドミンゴの指揮により歌い上げる「衣装をつけろ」(レオンカヴァッロ『道化師』)でしょう。「パヴァロッティも盛りを過ぎたね」という心ない人びとの声を耳にしながら、過ぎ去った過去の栄光を噛みしめつつ歌うパヴァロッティの苦渋の表情😢絶望にうちひしがれても、それでもやはり歌い続けたいという不退転の決意、そこから生まれる微かな希望…。もはや残り僅かとなった自身の人生を予感していたものか、その鬼気迫る絶唱は圧巻です。

 

神に愛された不世出のテノールルチアーノ・パヴァロッティ。映画館だからこそ堪能できる、素晴らしい音響でこの機会にぜひ♥️

 


パヴァロッティの魅力満載、オペラと愛にあふれた至福の映画。|Music Sketch|Culture|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)