オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

秋風吹けば英国ミステリー🍁~BBC『ウィッチャーの事件簿』


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  U-NEXTでBBCのミニシリーズ『ウィッチャーの事件簿』(①ロード・ヒル・ハウス殺人事件②エンジェル通り殺人事件③名家の秘密④夫婦の秘密…2011年)鑑賞。

 

  もうね、このヴィクトリア朝を背景とした英国ミステリー…って言うだけで背中ゾクゾクしちゃうヲタク(笑)雲低く垂れ込める灰色の空、じめじめと湿った石造りの街角、ロンドンを取り巻く深い霧、霧の中に仄かに浮かび上がるガス灯、その暗闇に乗じて跋扈する、切り裂きジャックをはじめとする残忍な殺人鬼たち…。

 

  ヴィクトリア朝のミステリーと言えば、かの名探偵シャーロック・ホームズの一連の作品が超有名ですが、本作品の特徴は、特に第1エピソード、主役のウィッチャーも実在の人物であり、実際の事件を題材にしていること。それもそのはず、第1エピソードの原作はケイト・サマースケイルのベストセラーであり、ミステリーの形式を借りた犯罪ノンフィクション『最初の刑事~ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件』だから。主役のウィッチャーは、スコットランドヤード(ロンドン警視庁)創設時の刑事8人衆の一人だったのです。

 

  1860年、イギリス・ウィルトシャーの邸宅ロード・ヒル・ハウスで、当家の次男で若干3才のフランシス・サヴィル・ケントが無残な他殺体となって発見されます。状況から見て、犯人は同居する家族か、使用人たちしか考えられない。事件解決の為に当地に派遣されたのが、当時スコットランドヤードで敏腕刑事の名を欲しいままにしていたジョナサン・ウィッチャー警部。名家の名を汚し、遺族が抱える秘密を暴露することを恐れ、関係者は全員が頑なに口をつぐんだまま。地元警察の協力も得られない中、地道で孤独な捜査を続けていくウィッチャーでしたが…。

 

  いかなる犠牲を払っても、真実は必ず明らかにされなければならないという固い信念のもと、捜査を続けるウィッチャーに立ちはだかる当時の英国の格差社会と地方の因習の壁。DNAはおろか指紋の検出さえできなかった時代、頼りは聞き込みと目撃証言、それに基づく直接的・間接的推理、犯人の自白のみ。それに、現代だとひとつのチームか、少なくともバディを組んで事件の解決に当たると思うんですが、地元警察も腰引けてるし、捜査はぼっちの孤軍奮闘、スコットランドヤードの上司からは矢の催促…って、いくらウィッチャーが敏腕刑事だからって、カワイソすぎる😅また、当時は創設されたばかりの刑事という職業、「相手構わず容赦なくプライバシーを暴きたてる」という偏見から、世間からかなりの反発を受けていたことがわかります。

 

  ウィッチャーを演じているのが、英国の俳優であり映画監督でもあるパディ・コンシダイン。この方映画『思秋期(原題 Tiranosaur)』の監督だったんですね😮遅蒔きながら、今回『ウィッチャー~』を見て初めて知りました😅『思秋期』、酒浸りで生きる希望を無くしかけているような中年男(英国の名バイプレーヤー、ピーター・ミュラン)が、夫のDVに悩む女性(『女王陛下のお気に入り』でアカデミー主演女優賞受賞、今や英国のトップ女優に上り詰めたオリビア・コールマン)との出逢いによって、再生していくさまを描いた名作です。その作風といい、そして俳優さんが撮った秀作という観点から見ても、ゲイリー・オールドマンの『ニル・バイ・マウス』を思い起こさせます😊俳優業としては、『ピーキーブラインダーズ』の悪徳神父役が強烈でしたよね。

 

 犯人探しの醍醐味だけでなく、当時の英国社会が抱えていた社会問題、また、教会牧師の告解に対する守秘義務の問題など、様々なテーマを孕んでいて、大変見ごたえのあるドラマになっています。

 

  第1エピソードの最後で、ウィッチャーは故あってスコットランドヤードを辞しますが、彼の悪を憎む心、真実の探求心は止むことなく、第2エピソード以降は探偵に転身して様々な事件の解決に当たります。もしかして英国最初の探偵❓😅第2エピソードには、彼の初監督作でヒロインを演じたオリビア・コールマンがゲスト出演して、サスガの演技を見せていますし、第3第4エピソードも実話をベースにしているとのことで、リアルなストーリー展開に重厚な演出、セットも素晴らしく、それぞれ1本の映画を見ているよう😊

 

  来週は秋雨前線の影響からか、やっとこの暑さも一段落しそう。秋の夜長、じっくり腰を落ち着けて見るのに相応しいドラマかも😊