オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

それでも、生きていく。~映画『さくら』


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(ブルグ13のカフェから臨む今日のみなとみらい)

 我が敬愛する漫画家大島弓子(犬童一心監督が愛してやまない漫画家でもあるのですが😊)の作品に『リベルテ144時間』という名作がありまして。高校生の主人公「僕」は、長い間兄の恋人に秘かに想いを寄せていた。ところがある日、常に「僕」の憧憬の対象であった兄は、山で遭難して死んでしまうんですね。…で、生きる希望を失いかけている兄の恋人に「僕」は励ます意味で薔薇を贈ります。あくる日、彼が贈った薔薇の一輪を握りしめて歩く彼女を見て、「僕」は(あの人は薔薇に寄りかかって歩いてる…❗)と想い、愕然とするシーンがヲタク、目に焼き付いて離れないんです。

 

  …ってつまり何が言いたいのかと言うと(笑)

人は生きている限り、大事なもの、命にも替えがたいものを手放さなくてはいけない瞬間に必ず1度は遭遇する。人類史上有数の覚者であり哲学家である仏陀は(ヲタクは宗教家というより、人生の真理を覚った哲学家だと思っています。あくまで個人的見解です=笑)、それを「諸行無常」と呼んだ。果たして、取り返しがつかないほどの喪失感を経験した私たちは、どうやってそれをやり過ごし、乗り越えていくのか❓…それはきっと、周囲の人の思い遣りの一言だったり、愛のこもった花一輪だったり、この映画のようなペットの飼い犬だったり…するのではないか❓って言いたかった(笑)

 

  映画『さくら』は、この上なく愛しいものを喪失する運命に直面した家族が、それによって家族そのものさえも瓦解する危機に瀕しながら、踏み留まり、手探りしながら、明日に踏み出していく物語。そう、まさに私たち自身の物語なのです。

 

  爽やかで優しくて、何をさせても秀でている、きょうだいの崇拝の対象である長男(吉沢亮)。光に満ち溢れた人生を歩む筈だった彼が、その未来を突然もぎ取られてしまう人生の、なんという不条理。なんという悲劇。

そして、そして彼は…。

 

  あまりに完璧に幸せだと、人間(この状況がいつまで続いてくれるのか。この人はいつまで私の側にいてくれるのか)不安に駆られるものですが、完璧すぎて不吉な感じがする長男の一(はじめ)。我らが吉沢亮だからこそ、この一という、人柄に曇りのない人物像と、一転して悲劇に見舞われた後の、哀切極まりない慟哭を演じ切れたのだと、ヲタクは信じて疑わない。

 

  この映画は、愛すべき長谷川家の次男坊(北村匠海)の一人称で語られていきます。兄にコンプレックスを抱き、なかなか自己確立ができなかった内向的で無口な彼が最後には、家族が見舞われた悲劇をも、天空にいる大きな存在の愛の発露と受け止めていくプロセスが胸を打ちます。

そして小松菜奈❗兄を愛しすぎたが故に屈折し、少しずつ常軌を逸していくエキセントリックな妹。彼女の独特の持ち味が十二分に発揮されたハマリ役でしょう😊

 

  この映画が初めて告知された時のプロデューサーのお言葉…

三人の共通項は、その演技力にあると感じています。今を代表する人気俳優陣である事と同時に、彼らが演じる人物達は、強烈な存在感を観客に植え付けています。

ヲタクは今日、それが如実に証明されている❗と感嘆しながら、スクリーンの若い三人に目が釘付けになりっぱなしでした。

 

  若手演技派三人をガッチリ受け止めるは、海外にも認められた名優のお二人、寺島しのぶ&永井正敏。「明るくて逞しくしっかり者のお母さん&ちょっとぼーっとした、優しいお父さん」のコンビはまるで夫婦漫才、阿吽の呼吸、いやー、さすが演技の大ベテラン、素晴らしい😊シリアスで悲劇的なストーリーの中で、ほっとするやりとりは、このお二人が担ってくれています。

 

  最後に功労賞をあげたいくらいの名演技を披露してくれたサクラ役のミックス犬ちえちゃん😊そのつぶらな瞳で、いついかなる時も相手に対してしっぽを振り、家族に寄り添い、家族の歴史の生き証人であるサクラは、この映画の象徴とも言うべき存在です。

 

  この、5人+1匹が繰り広げる、緻密な演技。背景に流るるは、その曲調と映画の内容のギャップがびっくりするほど新鮮な『青のID』(東京事変)。

 

演技と美しい映像と音楽の素晴らしいアンサンブルをぜひ❗