こういう映画を見ると、映画の力、エンタメの力ってバカにできないよ、とつくづく思います。映画やドラマ、小説などエンターテイメントが、決して現実逃避の手段や単なる時間潰しではなく、ひょっとすると、観た人の価値観を揺るがすような、社会のしくみを変えるきっかけになりうるような潜在的な力を持っているのだと。以前、当ブログで取り上げたドイツの法廷小説『コリーニ事件』等はその代表的なものだけれど(この小説がきっかけになって、ドイツのある法律が改正された❗)、今回U-NEXTで鑑賞した映画『パブリック/図書館の奇跡』もそんな作品のひとつ。
米オハイオ州シンシナティの公共図書館で働いている一見平凡なおじさん図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)。この図書館には行き場のないホームレスたちが厳寒の冬、暖を求めにやって来ます。(朝の図書館のトイレは、そんな彼らの朝の身繕いの場で、顔洗ったりひげ剃ったり😅)ある年の大晦日、シンシナティには未曾有の大寒波が襲来、ホームレスの凍死が相ついでいました。閉館の時間になっても出ていこうとしないなじみのホームレスが、突然「ホームレスのシェルターはどこも満杯だ。俺たちは今夜出ていかない。図書館を占拠する❗これは公共のデモ行為である」と宣言。驚いたスチュワートが後ろを振り返ると、一夜の宿を求めてやって来た大勢のホームレスたちが…。
最初はホームレスの占拠騒動に巻き込まれた形のスチュワートが、次第にホームレスたちに肩入れし、社会の不条理に憤って、彼らと共闘していく過程が泣かせます(そこには、彼自身のそれまでの半生が深く関わって来るのですが…)
彼らが起こした騒動が、自分の売名の為に彼らを利用しようとする狡猾な市長候補(お久しぶりね、のクリスチャン・スレーター)や、視聴率アップを狙ってフェイクニュースをでっち上げようとするビッチなニュースキャスターによって、あれよあれよという間に驚きの展開を見せ、ついには機動隊が出動することに。強行突破しようとする警察に対して、スチュワートやホームレスたちがとった行動は……❗❓
ハリウッドの名バイプレーヤー、エミリオ・エステベスが、制作・脚本・監督・主演と、八面六臂の大活躍😊実話を基に11年にわたり構想を練ったというだけあって、所々に皮肉とユーモアを交えながら、正義とは何か、人権の尊重とは何か、真のデモンストレーションとは何か…様々な問題を提起する作品となっています。エミリオ・エステベスといえばトム・クルーズと共にかつて数多くの青春映画(『セントエルメスファイアー』など)に出演、ブラットパックの一員だったけど、当時は一番地味な存在😅しかも私生活でもお父さんはマーティン・シーンで弟はチャーリー・シーンだからなんだか可哀想なことに…😅でも今こうしてみると、彼が一番良い年の取り方してる。今まで誠実に人生を歩んで来たんだろうなぁ…ということが、顔に滲み出てるよ、うん。こういう、「アメリカの良心」を代表するような役者さん、とても貴重な存在だから、これからも頑張ってほしい😊
最初はスチュワートたちの行動に懐疑的だった図書館長が、警察権力の横暴さに耐えかね、「図書館は全ての人を公平に受け入れる場所だ❗民主主義の最後の砦なんだ。お前らの思うようにはさせないぞ」とタンカを切る場面は、アメリカン・ヒューマニズムここにあり、って感じでスカッとしましたね😊
邦題にあるように、この映画の中にはさまざまな「奇跡」が散りばめられていると思うのですが、その見方・捉え方は人によって違うと思います。なかなか外出が難しい昨今、家族で見て、感想を話し合ってみるのも楽しいかもしれません😊