オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

『青天を衝け』渋沢栄一役が吉沢亮でなければならない理由

  吉沢さん自身がツイッター公式で、「個人的に(『青天を衝け』の)11回、12回は栄一にとってかなり重要な回だと思ってます」と語りました。先日4月26日に放映された第11回を改めて見直してみると、いつものように吉沢さんはサラッと言っているけど、そこには深い意味があることに気づかされます。

 

  谷川岳のまさに「青天を衝く」シーンでクライマックスを迎えた、栄一のキラキラした少年時代。ブレない正義感、明るく逞しく、太陽のようだったこれまでの栄一。それが、片時も離したくないほど溺愛した長男市太郎の早すぎる死に遭遇してからは、まるで取り憑かれたように攘夷倒幕運動にのめり込んでいく栄一。その暗い瞳の底には何が潜んでいるのか、得体の知れない一種の怖ささえ感じさせた。

 

  この、『青天を衝け』における、日本経済界の巨人のユニークな描き方。それは例えば、従来の偉人伝にありがちな、どこから切っても「エライ人」という金太郎アメ的なストーリー展開…「一見迷いや愚かな行為に見えるかもしれないけれども、実は彼なりに深謀遠慮があったのだ」あるいは「義理人情に縛られてやむにやまれず…」などという視聴者へのおもねりは一切見られない。一人の人間の人生において、偉大な行為は偉大な行為、迷いは迷い、愚かさは愚かさ、その事実をセンチメンタリズムを排してリアルに描く。

 

 視聴者の中には、 栄一の急激な変貌と垣間見せた心の闇に戸惑った方たちもいらっしゃるでしょう。その一方でJ-CASTニュースには、栄一が抱える闇を的確に表現した吉沢さんの演技に絶賛の声も相次いだ…とあります。そんな視点から第11回までを振り返ると、それはそのまま、「役者・吉沢亮」の10年のキャリアとシンクロするような気がするのです。

 

  映画『アオハライド』や『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『通学電車』、ドラマ『水球ヤンキース』等に見られる明るい3枚目から、演技の分岐点になったという『オオカミ少女と黒王子』の、コンプレックスに苛まれる自意識過剰な高校生役を経て、『リバーズ・エッジ』、『悪と仮面のルール』や最近の『青くて痛くて脆い』で見せた、微かな狂気さえ感じさせる深い心の闇。少女マンガやロマコメの典型的な王子様役を演じても(映画『ママレードボーイ』ドラマ『サバイバル・ウェディング』)、どこか翳のある風情に魅力がいや増す吉沢さん。

 

  あの若さで既に10年というキャリアを持ち、あらゆる役を独自の感性で演じ分けてきた彼だからこそ、単なる立身出世の偉人伝ではない、血の通った渋沢栄一像を造型できるのだ…と、改めて確信しました。

  

  そして今後は、今吉沢さん自身も思案中だという、成熟と漲る力の壮年期へと入っていきます。吉沢さんにとっては未知への挑戦。しかし彼のことですから、きっと、見ている私たちの固定観念を覆すような素晴らしい演技を見せてくれるに違いありません。

 

  私たちはこれからも、渋沢栄一と役者・吉沢亮の成長を、ドキドキしながら見守っていくことにいたしましょう😊