オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

モノクロ映画を語ろう❗③~俳優の美しさを際立たせるモノクロ作品

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(Morocco from Pixabay)

  再びモノクロ映画のお話です😅今日焦点を当ててみたいのは、モノクロ映画だからこそ際立つ、俳優さんたちの美しさについて。

 

  モノクロ映画って光と翳の二元的世界ですから、やはり顔立ちの彫りが深いほどくっきりはっきり美しく見えますよね。そして、女優さんの場合、むろん元々綺麗なんでしょうけど、 特に肌が美しく映ります。その観点から言って最高峰は、何と言っても『カサブランカ』のイングリッド・バーグマンでしょう。舞台は第二次世界大戦中のフランス領モロッコ。当時親ドイツ派に支配されていたカサブランカで、クラブ「カフェ・アメリカン」を経営するアメリカ人リック(ハンフリー・ボガード)の元に、昔パリで別れた恋人、イルサ(イングリッド・バーグマン)が偶然やって来ます。彼女はすでに、ドイツに対するレジスタンス運動のリーダー・ラズロの妻になっていました…。「カフェ・アメリカン」で、リックとの思い出の曲、「As Time Goes By~時の過ぎ行くまま」をピアニストにリクエストして、口ずさみながら涙を滲ませるバーグマンときたら❗絹のように光沢のある、内側から微かに発光しているような滑らかな肌。もはや「女神さまぁぁぁ~❗」と叫んで、その場にひれ伏したくなります(笑)

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 もうひとつ、バーグマンで印象的なモノクロ作品に『さよならをもう一度』があります。『カサブランカ』で26才のそれこそ美の絶頂期だったバーグマンは、20年の時を経て、分別のある中年の女性として登場します。舞台はパリ。装飾デザイナーとして自立している女性ポーラは離婚経験があり、同じ年頃のロジェ(イヴ・モンタン)とは、付かず離れずの「大人の関係」。そんな彼女の日常は、15才も年下のフィリップ(アンソニー・パーキンス)との出逢いによって大きく変わっていきます。ひたすら若い情熱をぶつけてくる年下の男性に戸惑いながらも、次第に惹かれていく女性の心理をバーグマンがきめ細やかに演じています。カラー作品だったらこの二人の関係性、ちょっと生々しい感じがしたと思うんですが、モノクロだからこそ良い具合に紗がかかったイメージになって、オトナの、ファンタジックなロマンスの後味。ラスト、バーグマンが車に乗って、涙を溢れさせながら運転し始めるシーン。ネタバレになっちゃうので詳しくは説明できないんですけれども、彼女の自嘲と哀しみと諦めの表情は必見。「心に残る映画のワンシーン」なんていうアンケートがあったら、1票を投じたい(笑)この作品、フランソワーズ・サガンの『ブラームスはお好き』の映画化で、原作のほうは三者三様の恋の駆け引きや心理描写に重点が置かれていて、映画よりシニカルで苦いテイストです。

 

  フィリップがポーラを「ブラームスがお好き?」と、コンサートに誘うことから二人の関係が始まるんですね。映画の中でも、ブラームス交響曲第3番第3楽章の甘美で哀愁のあるメロディがアレンジされて繰り返し流れます。


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  そして、モノクロ映画の「陰翳の美」の帝王と言えばこの人❗1950年代のフランスの美のシンボルと言われたジェラール・フィリップ😍彼の、彫りの深さが際立つ彫刻のような美貌は、『赤と黒』のようなカラー作品よりも、モノクロ映画でこそ真価を発揮するような気がします。


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  フランスの名匠ルネ・クレールゲーテの『ファウスト』を独自のアイデアで映画化した『悪魔の美しさ』。年老いたファウスト博士(ミッシェル・シモン)がメフィストフェレス(ジェラール・フィリップの2役)と血の契約を交わして若く蘇った後の姿がジェラール・フィリップなんですけど、もうその美しさときたら圧倒的で、(こんな姿になれるなら、悪魔に魂を売り渡したくなっちゃうよねぇ…)って納得しちゃいましたよ(笑)原作では、あらゆる学問を極め尽くしたファウスト博士が、それでも尚満足せず、肥大する「知識欲」の虜となり、悪魔と契約することによって尊大にも神の領域に手をかけようとする…という展開になっていますが、一方このフランス映画では、若返って比類なき美しさを得、真に愛する女性と巡り合う…というストーリー展開。ドイツとフランス、国民性の違いかしら?面白いですよね😊

 

  スタンダール原作の『パルムの僧院』や『赤と黒』(こちらはカラー作品)など文芸大作の彼も、舞台出身だけあって、堂々としていてそれは素敵ですけど、じつは、『花咲ける騎士道』(調子の良いプレイボーイだけど、どこか愛嬌があって憎めないファンファン・ラ・テューリップ)や『夜ごとの美女』(何をやっても上手くいかず、毎夜夢の中で美女とのロマンスを妄想するオタク音楽家)のような、コメディタッチの軽妙な演技こそ、彼の本領が発揮されたのでは…?と思うのはヲタクだけでしょうか。


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  36才の若さで逝った彼😢(美人薄命ってホントね……)

  才能を世に認められず、貧困の中で路上死した画家モディリアーニの悲惨な晩年をリアルに、冷徹に描いた『モンパルナスの灯』。ガス灯に滲むように浮かび上がるパリの街。そして、どんなにやつれて無精髭姿でも、衣装はボロボロでも、隠しきれないジェジェ(ジェラール・フィリップの幼少期の愛称)の美貌。残酷で非情なラストシーンと共に、脳裏に焼き付いて離れません。



遺作はピエール・ショデルロ・ド・ラクロ原作の『危険な関係』。富と名声と美貌に恵まれたセレブ夫婦(ジェラール・フィリップジャンヌ・モロー)がお互いに不倫をして、それぞれの相手を破滅に追い込むゲームに興じる…というアンモラルな内容から、フランス国内で上映禁止になった曰く付きの作品。監督が、自分の奥さんを映画の主役にして、しかも脱がせちゃうっていう趣味のロジェ・バディムだから背徳的なのはしょーがないか…😅でもそんな映画でもジェジェは、彼自身のクリーンで誠実な人柄を滲ませた演技。それまで背徳的な人生を送ってきた男性が、真実の愛に目覚めて変化していく過程を繊細に演じてサスガでした。

 

  あまりに美しく才能に溢れ、あまりにピュアで誠実な人柄であったが故に神に愛され、早く天国に召されてしまったジェジェ。最近は彼の映画も次々とデジタルリマスター化されて、綺麗な画面で彼の美しい姿を堪能することができます😍


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(おまけ)

 『危険な関係』のテーマ曲、「危険な関係のブルース」(アート・ブレイキー &ジャズ・メッセンジャーズ)はジャズのスタンダードナンバーとなりました。

  しっかし、映画『死刑台のエレベーター』のマイルス・デイヴィスといい、この映画といい、フランスのモノクロ映画にジャズはよく似合う😊


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