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歴史上のイケメン列伝③~英国スパイの祖・ウォルシンガム卿


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(即位前にはロンドン塔で幽閉されていたエリザベス1世……Pixabay)

久しぶりの「歴史上のイケメン列伝」です😊チェーザレ・ボルジア、トマス・エドワード・ロレンス(アラビアのロレンス)ときて、エリザベス1世の下でスパイ・マスターとして暗躍したフランシス・ウォルシンガム卿がイケメンの部類…って、つくづく目的遂行の為には手段を選ばない冷酷非道なヤツが好きらしい、じぶん😅

 

  コロナ禍で海外旅行ができない昨今、YouTubeで旅動画を見ることが多いヲタクですが、中でもお気に入りのひとつが『英国ぶら歩き』。英国の歴史をひもときながら、ゆかりの地を巡ってくれるという、知識欲と観光が楽しめるという「ひと粒で2度オイシイ」グリコみたいな動画なんですよね。最近『バビントン陰謀事件』を特集していて、またぞろウォルシンガム熱が…(⬅️単純すぎ😅)

ドラマ『ディスカバリー・オブ・ウィッチズ』で、推しのトム・ヒューズが、ウォルシンガム卿の下でスパイ活動をしたと言われている作家クリストファー・マーロウを演じているのもその一因ではあるんですが。

 

  さて、父王ヘンリー8世がカトリック教皇から破門され英国国教会を設立した為、当然エリザベス1世も即位と同時に英国国教会の首長となったわけですね。しかしその為に歴代教皇から憎まれ、スペイン等カトリックの大国を敵に回し、エリザベス女王は生涯に渡って20回以上の暗殺計画に晒されたと言われています。彼女がその全てを乗り越え、天寿を全うすることができたのも、彼がヨーロッパ中にスパイを放ち、大陸を全て網羅する巨大な諜報網を張り巡らしたからこそ。

 

  ケンブリッジ大学やスイスのバーゼル大学で学んだ秀才で、エリザベスの腹心秘書官長ウィリアム・セシル(映画『ふたりの女王~メアリーとエリザベス』では、ガイ・ピアーズがイケおじオーラむんむんで演じてました)に見込まれ、当初はフランス大使に着任、政治の世界を目指したエリートでしたが、エリザベス暗殺未遂が頻発するにつれ、陰の大立者として強大な秘密警察を組織し、いわゆる英国政府の「汚れ仕事」に手を染め、血と謀略の世界に身を投じるのです。

 

  エリザベス暗殺計画の中でも最も大規模なものが、アンソニー・バビントンという青年貴族がリーダーとなり、当時イングランドのチャートリー城に幽閉されていたスコットランド女王メアリー・スチュワートの奪還を計画し、彼女を擁立して最終的にはエリザベスを亡きものにしようという『バビントン陰謀事件 Babinton Plot』です。バビントンとメアリー女王は、城に定期的に運び込まれるビールの樽の中にお互い暗号を使った手紙を忍ばせて、通信手段としていました。しかし、プロ中のプロ、ウォルシンガム卿にかかればそんな方法など赤子の手をひねるより簡単に見破られてしまいます。暗号は瞬く間に解読され、メアリー女王側(すなわちカトリック側)の情報は全てウォルシンガムに筒抜けに…。普通ならバビントン一人が捕らえられて幕引き…となるところですが、ウォルシンガムはそうはしなかった。ここが彼の非常に恐ろしいところです。

 

  彼は、メアリーのふりをしてバビントンから「メアリー奪還計画」の仲間たちの名前を全て聞き出します。バビントンに扮したウォルシンガムの巧妙な誘導により、ついにメアリーは致命的な一言をしたためてしまうのです。

 

さあ、大いなる陰謀を実行に移しましょう。

 

これこそ、ウォルシンガムが待っていた一言でした。計画に加担した者14名は全て捕らえられ、四つ裂きの刑に処せられましたが、現場の様子は凄惨を極めたようです。メアリーもまた、致命的な一文が陰謀罪の証拠となり、ついに刑場の露と消えます。

 

  エリザベス女王は、親戚筋に当たるメアリー、同じ女性として国を統治する者同士として苦労の絶えないメアリーに、一種親愛の念を抱いていました。(このへんの経緯は、先に話題にしました映画『ふたりの女王~メアリーとエリザベス』に詳しく描かれています。メアリー役のシアーシャ・ローナン、エリザベス役のマーゴット・ロビーの役作りが素晴らしかった)女王は、メアリーを幽閉こそすれ、命までは奪いたくなかったのでしょう。また、メアリーを処刑すればそれは、スペインに宣戦布告することに他なりません。女王はそこにも躊躇があったわけですね。

 

  案の定メアリーの死によってスペインとの仲は決裂、あの有名なスペイン無敵艦隊と英国海軍の一騎討ち、アルマダの大戦に雪崩れ込むわけです。

 

  それまで小さなヨーロッパの島国でしかなかった英国が大国スペインの無敵艦隊を打ち破り、後々の大英帝国の礎が築かれるわけですが、これこそが、ウォルシンガムの狙い通りだったのでは…と思います。

 

  スペインに大勝利した後もエリザベス女王はウォルシンガムを決して許さず、生涯を通じて冷遇したと言われています。

 

  ウォルシンガムがそれを気に病んだか?……ですって?

ヲタクはそうは思いません。

顔浅黒く、常に黒づくめの衣装に身を固め、まるでメフィストフェレスのようだと陰口を叩かれたというウォルシンガム卿、きっと、自らの陰謀が全て思い通りに運んだことに、冷たい笑みを浮かべていたに違いないのです。

 

メフィストフェレスの魅力は永遠である。

                                          塩野七生

 


ふたりの女王 エリザベスとメアリー エリザベス1世暗殺計画 「バビントン陰謀事件」の全容 Babington Plot 【英国ぶら歩き】(読む動画 ノーナレーション) - YouTube