オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

少女は永遠の謎~『Dear Moon』(今関あきよし監督)

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(From Pixabay)

  下北沢トリウッドで今関あきよし監督の最新作『Dear Moon』鑑賞。

 

  ツイッターで相互フォローさせて頂いている俳優の久保宏貴さんから情報を頂いて行って参りました、約30年ぶりくらいの下北沢❗南口商店街を抜けてちょっと寂しくなった角のビルの2階。隣がバー(…だったかな❓😅)で、「えっ❓こんなとこに映画館があるの❓」ってカンジはシモキタならではですね。ほら、よくディストピア映画であるじゃないですか、音楽も映画も演劇も禁じられた絶望的な世界。そんな世界で、映画愛好家たちが秘密裏に上映してる映画…みたいな。そんな隠れ家みたいな映画館で、今関監督の、「少女幻想」とも言うべきファンタジックな世界に一時身を任せる。なんとも贅沢な時間。小さな映画館なのに、しっかりひとつ置きに座席は空いてるし、上映後の舞台挨拶も、撮影タイム以外は、今関監督や原田親さん久保宏貴さん共にマスク姿。このコロナ禍で、日本映画人の心意気を見る思い。下北沢トリウッド、ばんざい❗🙌

 

  …さて、『Dear Moon』は、煌びやかな江の島の夜景から幕を開ける、現代の竹取物語の如き幻想譚。月夜に江の島の浜辺で延々と砂に埋まった硝子のカケラを拾い続ける男(原田親…その理由に胸が痛む😢)。男は、浜辺で倒れている(…というか、自ら寝ている?😅)少女(石井そら)を保護して警察に送り届けます。一方、偶然カフェで出逢った女子高生との再会を夢見て、夜の都会を彷徨い歩く女。行方不明になった恋人の少女を探して、なぜかウサギのキグルミを着て尋ね人のビラを配る青年(久保宏貴)。それぞれに孤独と人生の痛みを抱える彼らにとって、少女はいったい何者だったのか?

 

  見ているうちに、ヲタクのアタマの中には、予定調和な大団円が出来上がっていったのですが、少々苦いラストで、今関監督に見事に裏切られます。(あっ、心地よい裏切られ方ですよ。ヤられたな…っていう。念のため 笑)そして、あの鎌倉の海を背にした朝の光景は一体何だったのだろう…ヲタクの中で謎は深まるばかり。

 

  少女には名前がありません。監督にとって少女は固有名詞ではないんですね、きっと。少女…という概念そのものが謎であり、あくなき探求心をかきたてる存在なんでしょう。見る側からするとさまざまにその貌が違い、日毎に変化する月のように。それにしても、カメラに捉えられた月の、なんと美しいこと❗

 

  この映画を見て、ヲタク大好きなビー・ガン監督(『凱里ブルース』『ロングデイズジャーニー~この夜の涯へ』)の言葉~「自分の映画は夢と記憶と時間についてのみ描いている」を思い出しました。ビー・ガン監督は、伝えたいメッセージなど何もないと言い切ってますよね。謎解きは必要ないと。

 

  『Dear Moon』も、然り。

美しい月や、夜の江の島の磯の匂いや波の音に心地よく身を任せて、私たち観客もまた、少女の謎を心の中で反芻すればいい。

謎は謎のまま、白日の下に無理やりさらけ出さなくていい。

 

  『Memories』(2019年   主演・モトーラ世理奈)との二本立て。『Dear Moon』は、ロサンゼルス映画祭(JFFLA)と、国内の『JAPAN WORLD FILM FESTIVAL 2021』での上映が決まったそうで、ますますこのさざ波が広がっていけばいいな…と思った満月の宵。