オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

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ポーランドのアラン・ドロン❓~『ヒヤシンスの血』(Netflix)のトマス・ジェンテク

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  Netflixの新作スリラー『ヒヤシンスの血』(ポーランド)。北欧サスペンスと同様、東欧サスペンスもまた、ただただ謎解きをマニアックに楽しむよりは、その底に、社会的な諸問題や、歴史の暗部を摘発する意図がある場合が多い。この映画も、同じNetflixのサスペンスドラマ『泥の沼』等と同様、ポーランド共産主義時代、つまりソ連の巨大な力に飲み込まれ、厳しい言論統制が敷かれていた1980年代が舞台になっています。

 

  当時のポーランドでは同性愛者たちは厳しい弾圧を受けていましたが、題名のヒヤシンスとは、1985~87年にポーランドで秘密警察により実際に行われた「ヒヤシンス作戦」のこと。同性愛者たちの溜まり場やパーティーに手当たり次第に踏み込み、彼らを検挙して留置し、強制的に「同性愛者証明書」に署名させます。その目的が全国の同性愛者とその接触者のデータベースを作成するため……って言うんですから、恐ろしすぎる……((( ;゚Д゚)))当時1万5000人ものデータが実際に収集されたようです。

 

 〈あらすじ〉

  主人公のロベルト(トマス・ジェンテク)は秘密警察の大物を父に持つ巡査部長。親から認められたフィアンセも女性警官で、端からは恵まれた境涯に思われながら、自らを縛る様々な軛(くびき)や圧にどこか鬱々と楽しめない日々。そんなある日、男性の売春組織を経営したと言われていた男が、ゲイたちの溜まり場である公衆トイレで惨殺死体となって発見された。(ヨーロッパで公衆トイレといえば今でも…😅)警察上層部はこの事件を単なるゲイ同士の内輪もめとして早急に幕引きを図ろうとするが、ロベルトはその裏に何か大きな陰謀が蠢いているのを感じ、秘密裏に捜査を継続する…。

 

  ゲイ・コミュニティに潜入捜査をする過程でロベルトは、自分とは真逆の、何にも囚われない柔軟な自由人、大学生のアレク(フベルト・ミウコフスキ)と知り合います。彼は捜査を通じて、アレクの生き方に強烈に惹かれていきます。事件の謎解きと並行して、ロベルトの、本来の自分、そして自らのセクシュアリティに目覚めていく過程が描かれている点がもうひとつの見所になっています。

 

  北欧や東欧のサスペンスってなぜか、ヲタクみたいな中年のオバサンオジサンが主人公の場合が多くて、大方生活に疲れてるんですよね😅こんな、まるでアラン・ドロン二世みたいな若いイケメンが主人公って珍しいから、正直言ってコーフンしました(笑)彼のお相手のアレクも金髪巻き毛の美少年で……眼福です。ヲタクはどちらかといえばプラトニックなブロマンス愛好家ですが、今作の場合は、二人がひたすら美しいので許容範囲(笑)

 

  1980年代、厚い雲垂れ籠める、暗い冬のポーランドに起きた陰惨な殺人事件。弾圧を受けながらも、仲間同士身を寄せ合うように生きるマイノリティの人々。(彼らが秘密裏に催したパーティーで歌い踊るさまは、可笑しくて、どこか切なく、哀しい)……そんな中で密やかに育まれる禁断の愛。

 

  「……僕は、周囲の人々を騙して生きてきたんだ」と絶望するロベルトに、母親がかける言葉「だけど、自分自身には嘘はついていないでしょう?」が胸に染み入ります。

 

  イヤミスの範疇に入るのかもしれませんが、後味は悪くないのは、迷い悩みながらも自己確立するに至ったロベルトの、ラストの静謐な表情のせいでしょうか❓