シアタートラムで、『愛するとき 死するとき』(小山ゆうな・演出)
緊急事態宣言が明け、あの憎むべきウィルスも、どこかに身を潜めているように見える昨今。私たちが気を緩めれば再び牙を剥こうと狙っているのかもしれないけど、とにもかくにも、観劇の楽しさを享受することは許された。ヲタクが劇場に足を運ばなかった期間は、じつに丸2年。先日の『アルトロ・ウイの興隆』からまだ一月も経たないというのに、まるで何かに追いたてられるように、何かに飢えたように足を運ぶシアター・トラム。
『愛するとき 死するとき』
何よりも素晴らしかったのは、役者さんたちが、長い空白期間を経て、演じることの悦びを身体いっぱいに表現していたこと❗そのワクワク感を、密接なあの空間で舞台と客席とが一体となって感じる楽しさよ。
東ドイツを舞台にした珍しい3部仕立ての劇。社会主義体制下、言論統制が敷かれ監視社会にある1970年代の東ドイツが第1部、人々が社会の矛盾に声を上げ始め、ある者は投獄され、ある者は命を賭けて亡命を試みる1980年代後半の第2部、ベルリンの壁が崩壊した1990年代の第3部で構成されています。
劇の形式も多彩で、第1部はデヴィッド・ボウイやディープ・パープル、ボブ・マーリー等懐かしの名曲が全編を彩る音楽劇、第2部では役者がセリフもト書きも機関銃のように喋り続け、第3部ではひたすら詩的な言葉を朗読のように紡いでいく、もはやひと粒で3度美味しい豪華絢爛さ。おまけに舞台転換のための大道具移動も役者たち自身が行うし、セリフがなくても常に出演者全員が舞台上で見え隠れしているので、まるで限られた人しか入れない「通し稽古」を覗き見ているような錯覚に陥ります。
役者の技量をさまざまな角度から試すような、実験的とも言える作品なので、歌や演技や朗読や八面六臂の活躍を続ける浦井健治が主役に選ばれたのは超納得😊特に第1部では、浦井さんの至高の歌声が堪能できます♥️また、高岡早紀の凛々と通る声と、バレエダンサーのような立ち姿の優美さ、「聖なる魔性」とも言うべき魅力。山崎薫のコメディエンヌの才。
そして小柳友、前田旺志郎、篠山輝信の3人が舞台上をところ狭しと走る、躍動する❗彼らのエネルギーは、第1部と第2部の、監視社会における「面白うて、やがて哀しき」無軌道な青春の鬱屈と滑稽さと哀愁とを存分に表現し、随所で客席の笑いを誘っていました😊時代が時代だけに、例えば、ベルリンを舞台にした『コーヒーを巡る冒険』(東ベルリン出身トム・シリングが主演した青春映画)や、『ある画家の数奇な運命』(東ドイツを拠点に画家人生を始めたゲルハルト・リヒターの伝記)のようなシリアスものになるのかと思いきや、まるで『アメリカンパイ』みたいに……#〉〈@☆$-"(笑)小柳友、映像作品では異彩を放つ役者さんですが(『東京ソナタ』『BLEACH』など)、舞台でもその堂々たる体躯も相まって凄い存在感。
また、浦井健治と高岡早紀の第3部、東西ドイツが統合されても相変わらず望むような職がなく貧しいまま、かつて夢見た理想とはかけ離れた絶望の中、許されぬ恋に身を焦がす男女のさまはドキドキするほど色っぽい。
浦井さん、きじるしの王次と『ウェストサイドストーリー』のトニー、コロナめのせいでヲタク、見ることができませんでした😢トニー役は、柿澤さんとWキャストで、もう死ぬほど悩んで浦井さんに決めていたのに…😢
いつかどこかでもう一度、浦井さんのきじるしの王次とトニーは絶対見たいっす❗
小劇場ならではの、舞台と客席のラブ・コミュニケーション♥️
重いテーマをコミカルに、斬新に、野村萬斎氏曰く「とがって」演出した小山ゆうなさんの若き才能に乾杯🍷
(但し、幕間にワインを楽しめるようになるのは、もっとずーーっと先でしょうけどね😅)