オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

2021年、映画納めは『偶然と想像』(濱口竜介監督)

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 今年の映画納めは、横濱のミニシアター「ジャック & べティ」で濱口竜介監督の『偶然と想像』。

 

  映画の上映前に濱口監督が画面に登場して、作品に対する想いを語ってくれる嬉しいサプライズ。

やりたい映画をやりたい俳優さんたちと撮りました。

どうぞ肩の力を抜いて観て下さい。

…という趣旨のことを仰有っていたと思います…たぶん(汗)

 

  3話構成のオムニバス映画なのですが、ヒロインたち(……あ、3話全て主人公は女性でした。今気づいた😅)は皆、「今のじぶん」が幸福なのか不幸なのかわからず、いやそもそもいったい何を望んでいるのか、何を目的に生きているのか認識できずに、漠然とした不安やイライラを抱えながらその日その日を生きています。

第1話『魔法(よりもっと不確か)』

思ったままを口にし、 自分の本能のままに行動するがゆえに恋人(中島歩)を傷つけ、それがまた返り刃となって自分自身がさらに深く傷ついてしまうモデル(古川琴音)。

第2話『扉は開けたままで』

 自分を向上させたいと大学に入り直し心理学を学びながらも、生来の自己肯定感の低さから、不倫を繰り返す人妻(森郁月)。(彼女が最もわかっていないのが自分の心理という皮肉😅)

第3話『もう一度』

 20年ぶりに開催された高校の同窓会と、それに伴うあるあるの人違いをきっかけに、長年心の底で疼いていた「あの日、言えなかった言葉」に想いを馳せるSEの女性(占部房子)。

 

  そんな彼女たちが、天の配剤か神さまのいたずらか、自分の身に突如降りかかった出来事(偶然)に翻弄され、人生の皮肉や苦さ、痛みを体験しながらも、自分自身に向き合い相手の心を汲み取ろうと(想像)、奮闘します。彼女たちのそんな姿は、けなげで、いとおしい😃全編会話劇で成り立っているのですが、傷つき、迷えるヒロインたちが癒され、自己認識に至る助けとなるのはやはり、人と人との繋がり。会話の力、もっと言えば言葉の魔法。

 

  映画の中で、会話を重ねていくことで人と人が互いに探り合い、今まで誰にも話さなかったことを思わず口にしてしまう…「それって凄くエロくない❓」っていう古川琴音のセリフがあるんですが、ヲタクそれに凄く反応しちゃいました(笑)一方、言葉もなくただ身体を重ね合わせることの虚しさや不毛感が対極として描かれていて(第2話、人妻の森都月と年下の大学生、甲斐翔真の関係など)、ちょっと興味深いな…と思いながら見てました😊…あ、それから、自分の書いた小説の濡れ場シーンを教え子の女性に声に出して朗読してもらって初めてコーフンできた大学教授(渋川清彦)の悲喜劇も。

 

  3話とも、濱口監督の人を見つめる眼の優しさが溢れていて、ヒロインたちといっしょに観ているこちらも癒され、(人生いろいろあるけど、捨てたもんじゃない。明日からもガンバロウ)って思える作品。ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞しています。

 

「小さな撮影体制で、リハーサル、撮影時間を充分に確保した」(Bunkamuraル・シネマの撮影情報より)そうで、全編を流れるシューマンピアノ曲子供の情景』の如く、精緻で、軽やかで、心躍る小品集です♥️

 

新年を迎える時にこの作品を見ることができて良かった。

ありがとう、濱口監督❗