オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

Netflix『ドント・ルック・アップ』~ブラックすぎるブラックコメディ


f:id:rie4771:20220208181124j:image

 毒を孕んだコメディ💀オールスターキャストの巧みな演技にお腹を抱えて笑いながらふと気がつくと、いつのまにかゾッと背筋が寒くなる((( ;゚Д゚)))

 

 ディケンズが愉快になり得るのは彼が権威に対して反抗しているからであり、また常に笑いの対象となる権威がそこに存在するからなのだ。

…と書いたのは英国の作家ジョージ・オーウェル(ディストピア小説の名作『動物農場』の作者)ですが、この映画を見てふと、彼の言葉を思い出しました。時の権力者や、その術中にまんまとハマってしまう世論に反抗し、その暴走に歯止めをかける効用が「お笑い=コメディ」にはあるのだと。そういう意味ではまさにこの映画は、真の「コメディ」と言えるでしょう。…ただしその笑いは苦く、どす黒いですが。

 

  ミシガン州立大学天文学を教えているミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)と教え子の大学院生ケイト(ジェニファー・ローレンス)はある日、急速に地球に向かいつつある巨大彗星を発見します。

  二人の軌道計算によると、半年後彗星は地球に激突、人類はもちろん、生物全て死滅してしまうほどの衝撃。青ざめた二人はツテを通じて大統領(メリル・ストリープ)に面会、直訴しますが、大統領は「その手のフェイクニュースは毎日毎日ごまんと寄せられるのよ(だから何❓)」と相手にしません。ホワイトハウスを体よく追い出された二人は、これはマスコミの力を利用して世論に直接訴えかけるしかないと、TVのニュースショウに出演して地球の危機を叫びますが、さて事の顛末は…❗❓

 

  まあ、出る人出る人色と欲のカタマり…って感じで、マトモなのは院生のケイトくらい😅メリル・ストリープが、選挙戦を目前に発覚した自分のスキャンダル揉み消しの為にミンディ博士たちの「世界終末説」を利用し、人類の存亡すらも自分のイメージアップに利用しようとするクズ大統領をノリノリで演じてます。ケイト・ブランシェット、本作では、ニュースショウのメインキャスターの地位を掴む為、大統領二人その他モロモロと寝た…っていうトンデモ女のブリーを熱演😅メークの仕方や髪型、ボディコン衣装にキレイすぎる真っ白な歯並びがいかにも…って感じ。映画『スキャンダル』で題材にされたセクハラ裁判(長年にわたり所属の女性キャスターたちにセクハラを繰り返してきたFOXニュースのCEO、ロジャー・アイルズをいち女性キャスター(ニコール・キッドマン)が告訴した)を思い出しました。ゴールデングローブ賞英国アカデミー賞で「セクハラ撲滅」が叫ばれ、俳優たちのドレスが黒一色になった後、米国アカデミー賞では「セクハラは既に終わった」とされ、再びカラフルになったけど…。ケイトがブリーみたいなキャスターをいまだに演じるってことはいまだに終わってないってこと❓それとも女性のほうがそれを逆手にとって利用してる❓…深読みし過ぎか(笑)

 

  また、主役のレオさま、地味男子のオタク学者(しかもレオさま、普段より2倍くらい身体の容量増やして、生活習慣病まみれ…って設定)が一転、人類救済に立ち上がるカッコいいヒーローに変身する❗……のかと思いきや、事態は思わぬ方向に😅「巨大惑星の地球衝突」説は世間にちっとも受け入れられないのに、なぜか自身が妙なマスコミ人気を博してしまい、(オレってホントはイケてる❓)とばかりに有頂天になって、ケイト・ブランシェットと不倫に走る…というトホホな展開😖⤵️この、レオさま演じるミンディ教授とジェニロ演じるケイトが、ミシガン州立大学(ミシガン大学とは別)に在籍…というのがまたポイントなのかな。アメリカって日本とは比較にならないくらい大学のヒエラルキーが強いから、二人がなかなか相手にされないのも…☆$〈#"/@のせいなのかも。

ミンディたちの前に立ちはだかる億万長者ピーター(『ウルフホール』の名優マーク・ライアンス❗)のキャラ設定も、共感欠如型のサイコっぽくてCEOあるある😅

 

 

 レオさまはインタビューで

 エンディングは、未来の姿を僕らに突きつけている。徐々に取り返しのつかない状態になり、10年もたてばもう後戻りができない。

と語ったといいます。あらゆる物事を私利私欲に利用する者たちと、彼らの作戦にやすやすと引っ掛かり、真実を見極めようともせず、SNSに垂れ流された情報に右往左往する一般大衆。Xデーが近づくにつれ、ミンディたち「ルックアップ(空を見上げ、彗星(の真実)を見よ)」と言う人々と、「ドントルックアップ(空なんて見上げるな❗世界滅亡など全くのフェイクニュースだ)」と叫ぶ人々……世界は真っ二つに分断されていきます。そして…。

 

  俳優業のかたわら長年環境問題に本気で取り組んできたレオさまや、政治的スタンスを明確にし、あのトランプ大統領に公然と噛みついた心意気の人メリル・ストリープ、UNHCRの親善大使を務め、気候変動についてのポッドキャスト番組を立ち上げたケイト・ブランシェットらが、彼らの実生活とは真逆の人物像を演じるからこそ、演じるキャラ(たぶんモデルがいそうですね😅)の愚かさが浮き彫りにされるしくみ。

 

  昔むかし、核戦争の結果による世界最後の日を描いた『渚にて』って映画をTVで観たことがあるんだけど、逃れることのできない悲痛な運命を受け止め、粛々と死に向き合う人々が描かれていました。現代では、今回の映画『ドント・ルック・アップ』に見るように、科学や経済が発達して選択肢が増え、情報が氾濫しているぶん、いざ危機に直面した時、真実に向き合うことが難しくなっている……のかもしれない。

 

 進む環境破壊、 度重なる天変地異、地球のそこかしこでいまだに燻る国家間の緊張…。笑いのオブラートに包まれてはいてもこの映画は、私たちに刃のように鋭い質問を投げかけてくる。

 

あなたはこのままでいいの?

あなたは手をこまねいてこの現状を見ているだけなの?

………と。

 

 

 

(おまけ)

ブリーのニュースショウでプライベートを突っ込まれ逆ギレするアイドルにアリアナ・グランデ、世界滅亡を前にケイトとの刹那の恋に身を焦がす青年にティモシー・シャラメ。映画の冒頭ずーーっと怒りっぱなしのジェニロが、彼にプロポーズされた時に初めて見せる柔らかな笑顔😍さすがのシャラメ、世界でいちばんラブシーンが上手いオトコ(笑)

 

シャラメのほかにも、ニュースショウでプライベートを突っ込まれ、逆ギレするアイドルにアリアナ・グランデ😮をはじめとして、レオさまのマブダチ、ジョナ・ヒル(ウルフ・オブ・ウォール・ストリート)、クリス・エヴァンス(キャプテン・アメリカ)、トメル・シスレー(法医学者のバルタザールさんね)…と、書いてて疲れるくらい(笑)ゴージャスな面々。

 

し、しかしラストのメリル・ストリープ、アノ後ろ姿はご、ご本人❗❓ご本人だとしたら…スゴい女優魂でやんす😅