オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

アノ場面に謎を解くカギが🔑~映画『ナイル殺人事件』

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(アブシンベル宮殿で愛を確かめ合う恋人たちの頭上に大きな石が…❗  From Pixabay)


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(ナイル川の夕景…From Pixabay)

 

  アガサ・クリスティーの作品には、ハーレクイン・ロマンスとミステリーがミックスしたような作品(同じくポワロものの『白昼の悪魔』とか、ミス・マープルものの『終わりなき夜に生まれつく』とかね)があるのですが、この『ナイル殺人事件』もその一つ。ピラミッドやアブシンベル宮殿を遠くに臨むエキゾチックでゴージャスなナイル川クルーズを舞台に、激しい恋に身を焦がす美男美女。その果てに起きる残酷な殺人事件。原題は『Death on the Nile』で、昔は『ナイルに死す』って邦題だったんですよね。ヲタク的には昔の邦題のほうが好きかな。

 

  若くして大富豪の父親から莫大な遺産を相続したリネット・リッジウェイ(ガル・ガドット)。彼女は親友のジャクリー・ド・ベルフォール(エマ・マッキー)のフィアンセ・サイモン(アーミー・ハマー)を紹介された瞬間彼に一目惚れし、彼を強引に略奪して結婚する。しかしジャクリーンはサイモンを諦めきれず、二人の行くところ行くところに亡霊のようにつきまとい始める。次第に追い詰められ、精神の均衡を失っていくリネット。ポワロ(ケネス・ブラナー)は、ジャクリーンの影に怯えるリネットから、サイモンとの新婚旅行にお目付け役として同行して欲しいと依頼を受ける。しかしそのナイル川クルーズは、恐るべき「死への道行き」だった……❗

 

  クリスティのロマンティックなミステリーを読むとヲタク、作家としての地位や名声を欲しいままにしたアガサ・クリスティ、じつは愛に餓え、愛を求めて彷徨し続けた人だったのでは❓…と、いつも思ってしまうんですよね。作家として成功してからも、最初の夫の不倫に悩んで失踪事件を起こし、英国中大騒ぎになりました。(失踪した間何があったのか、生涯彼女は語ることはなかったとか。それこそ最大のミステリー❗)結局その後離婚、傷心のメソポタミア旅行で14才年下の考古学者アローワンと知り合い2度目の結婚をしますが、彼もまた発掘旅行に連れていく女性を愛人にしていたらしい…😢映画の中で、ガル・ガドット演じるリネットが、「誰もが私のお金目当て」と、ポワロに孤独と不安を訴える場面があるのですが、ヲタク的にはアガサ・クリスティその人に重ねて見ちゃいましたよねぇ。…そう、クリスティの作品に出てくる男たちは、イケメンで優しくて魅力的だけど、その笑顔の裏で何を考えているかイマイチ掴めない、オム・ファタール。愛は謎、追いかけて掴んだかと思えばまた指の間からスルリと逃げていく。人の心の奥底こそミステリー。

 

 そして 今回の映画では、ポワロの、生涯たった一度の過去の恋が描かれます。そして、ポワロのトレードマーク、あの立派なヒゲの誕生の秘密も。(…なんだかとっても切なくて、胸キュン♥️)ヲタク的には、ポワロと言えばTVドラマで長年演じていたデヴィッド・スーシェのイメージが強くて😅(まさに灰色の脳細胞、卵形の頭そのまま)彼はどちらかと言えば、カリカチュア(戯画)的に演じてましたからね。それに比べるとケネス・ブラナーのポワロは超イケオジだわね😍アガサ・クリスティ、自分が作っておきながら(笑)ポワロのことはあまりお気に召さなかったらしいけど😅ケネス・ブラナーのポワロ見たらきっとご満足だったのでは❓…それにしてもシェイクスピア俳優でもあり、キングスイングリッシュの名手であるケネス・ブラナーが、ベルギー訛り(つまりフランス語訛り)の英語を、小憎らしいくらい見事に喋ってます。

 

  アガサ・クリスティクローズドサークルミステリーの映画化あるあるで、共演者も超豪華❗個人的には何と言ってもジャズシンガー・サロメ役のソフィー・オコネドー(『ワイルドローズ』『ホロウ・クラウン~嘆きの王冠』)ですね。彼女が唄う『That's all』に合わせてダンスを繰り広げる男女。退廃的な匂いふんぷん。年代設定は30年代、第一次世界大戦終結、狂乱と退廃のジャズエージを経て世界恐慌となり、世界中で株の暴落と景気の低迷に自殺者が続出していた時期。そんな時期に、リネットのような一握りの特権階級は依然として快楽を享受している……。見終わった後、作品の時代設定と最初のダンス場面に、謎解きの伏線がいろいろ隠されていたなぁ…と思うのはヲタクだけ❓

 

レティーシャ・ライト(そう、マーベルヒーロー『ブラックパンサー』の妹役で印象的だった彼女)が、黒人差別の激しかった時代に自らの才覚を武器に生き抜こうと奮闘する女性を好演。あと、お久しぶりねのアネット・ベニング。(前作『オリエント急行殺人事件』のミッシェル・ファイファーみたいな立ち位置かな❓)最後に、ストーリーのキーパーソン、ジャクリーンを演じるエマ・マッキー。ミステリアスな魅力を秘めたファム・ファタル役で、華やかさの中に確かな演技力があり、彼女、確実にこれから来ますね❗


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ヲタク原作も読んだし、スーシェの映画版も見たんですが、総じて登場する女性の描き方、セクシュアリティへのスタンスはガラッと変わってますね。「運命を嘆き、翻弄される女性像から、自立を希求し運命に抗う女性像への変革」といったところでしょうか。

 

  

 

 ナイル川ロケを大々的に敢行する予定が、憎むべき流行り病で頓挫、ほとんどが最新の技術を駆使した映像で、俳優たちはほぼ全編スタジオで演技したそうですが……

全く違和感がない❗没入感ハンパない❗

映像技術の進化に乾杯✨🍻🎶🍸✨🍸

 

 毎日TVで流れる 胸の痛むニュース、旅に行けない閉塞感…

それらを一時(いっとき)忘れて旅に出よう。蠱惑的でスリリングなナイル川クルーズへ❗