オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

奇妙な味がクセになる!?ポーランドミステリー『その森に』『Wの殺人』『カインズ』

現在ロシアのウクライナ侵攻に際し難民を無条件に受け入れ全面的支援を行っているポーランド。自国もナチスの暴虐(アウシュビッツ強制収容所は首都クラクフにあります)やソ連社会主義体制下における戒厳令の恐怖に長い間晒されてきたせいでしょうか、政治上の連帯とは別に、ポーランド国民によるウクライナへの友好的な感情も大いに働いているような気がします。日本とは経済・文化とも密接な関係があり、私たちにとって「遠くて近い国」ポーランド。ヲタクが家族と共にベルギーに住んでいた頃、ポーランドの移民2世のご家族と親しくさせて頂きました。他人の痛みがわかる、温かい方たちだったと記憶しています。今日はそんなポーランドのミステリードラマを、Netflixで配信中の作品からご紹介したいと思います。

   

  ポーランドのミステリーと言えば、ヲタク的にNo.1と2に位置するのは、やはりNetflixで配信されている『泥の沼』シリーズ(シーズン1、2配信中)と『ヒヤシンスの血』なのですが、この2つのドラマについては既に記事を書いているので、今回はNo.3~5までの3つのミステリードラマについて書いてみたいと思います。(『泥の沼』『ヒヤシンスの血』について興味を持たれた方は、検索に2つの作品の題名を入れてみて下さいね😊オススメの名作です❗)

その森に


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  凄惨な過去と現在を行き来するストーリー展開。サマーキャンプで高校生4人が行方不明に。翌朝男女2人が惨殺死体で発見され、やはり男女2人が行方不明となり、未解決のまま25年が過ぎる。

 

  サマーキャンプ参加者であり、行方不明のままのカミラの兄パヴェウの元へ警察から連絡が入り、彼は身元不明遺体の確認を要請される。パヴェウは強引な立件で敵も多い検事。彼は身元不明遺体の発見をきっかけに、25年前の忌まわしい事件に引き戻され、再び独自の捜査を始める。そして彼は、その過程で、ユダヤ人の為に迫害を受けていた恋人と再会し…。

 

  殺人事件のあった1990年は、それまでポーランドを支配していた社会主義体制が崩壊して「連帯」のワレサが大統領に選ばれた年なんですよね。サマーキャンプに参加している高校生たちが非常に無軌道…というか、何でもアリのハチャメチャぶりなんですが、当時の時代背景を考えると、自由と解放への期待が若者たちに反映しているのかな…と感じました。

 

  過去の暗い記憶に苛まれ、なかなか未來への一歩を踏み出せない登場人物たち。『泥の沼』と同様、暗く重厚な「イヤミス」で、題名でも明らかなように、ヨーロッパ特有の森のメタファ(神の領域外、魔的なものの跋扈する場所)が重要なテーマになっている気がします。

☆Wの殺人~マグダは名探偵

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  『泥の沼』、『その森に』と来たヲタクが次に鑑賞したのが『Wの悲劇~マグダは名探偵』。あまりの雰囲気の違いに思わずのけ反った作品(笑)舞台はポーランドのとある小さな街。ミステリーオタクの専業主婦マグダが、偶然にも殺人事件の第一発見者になってしまい、ミステリーオタクの迷推理❓😅を次々と繰り出し、幼なじみの刑事と共に事件を解決していくライトなミステリー。日本で言えば片平なぎさやかたせ梨乃の二時間サスペンスの味わい😊ストーリー的には突っ込みどころ満載なんだけど、マグダのお節介だけど憎めない「近所のオバサン」キャラが楽しいし、マグダの家の可愛いインテリアやマグダのカラフルなファッションに目を奪われて一気に見終わっちゃいました。そしてそして季節は夏❗ヲタク、ベルギーに住んでいた時も思っていたんだけど、ヨーロッパって、冬と夏の気候があまりにも違いすぎるんですよ(笑)霧と低く垂れ籠めた雲、骨身に染み入る寒い陰鬱な冬(しかも緯度の高い国だと午後4時には真っ暗になる)と、夜8時くらいまで明るくて、空が蒼くて高いカラリとした夏とでは、性格まで変わってしまうよう😅そんな季節の違いも、ドラマの雰囲気を左右するのかもしれませんよね。暗~いイヤミスの代名詞みたいな北欧ミステリーにも、『凍てつく楽園』(ヴィヴェカ・ステン原作のドラマ化)みたいなライトミステリーがありますものね。あのドラマも、スウェーデンの夏の避暑地サンドハムン島が舞台でした。

 

☆サインズ


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都会クラクフから、高校生の一人娘ニーナを伴い、小さな田舎町の警察署長に赴任したトレラ。そんな矢先、ある人妻の惨殺死体が湖のほとりで発見されます。彼女は至近距離で2発の銃弾を撃ち込まれており、それは20年前、若い女性が殺された未解決事件と状況が酷似していました。ヨーロッパの田舎町の常で、新参者で都会人のトレラに対し、頑なに心を閉ざす村人たち。少量の麻薬を混ぜた水を「聖なる水」と称して売りさばく怪しげなカルト団体の存在、今でも癒えないナチスドイツの暴虐の傷痕‥‥。様々な妨害が行く手を阻みますが、メゲない熱血刑事のトレラが体当たりで捜査を進めるうち、村に蔓延る様々な隠蔽体質が浮かび上がり、ついには長年にわたる殺人事件の全貌と村全体が明らかに‥‥❗

 

  一緒に見ている夫が、トレラ役の俳優さんが「泉谷しげる」にしか見えない‥‥とか言い出して、その言葉がヲタクの脳内にしっかり刻まれてしまって、ちょっと困った(笑)KYで猪突猛進、北欧ミステリー『特捜部Q』主人公のカール・マークに似たキャラなんですよね。『特捜部Q』でもカールと相棒アサドのキャラが事件の陰惨さを大いに救っているのですが、このドラマも然り😊トレラと娘のニーナの関係も微笑ましいです(じつはこの親子、悲惨な過去を背負っているんですが‥‥😢)

 

‥‥しかしこの感想はシーズン1まで。

『カインズ』シーズン2は、一転してダークすぎる、勧善懲悪とは真逆のイヤミスの極みみたいな展開に。シーズン1で回収されなかった伏線と数々の謎が宙ぶらりんなままに😅‥‥だけどなんだろ、このヘンテコな世界がなぜかクセになるんだよな‥‥ヲタクはよっぽど変人ということか。ポーランドの国民性や倫理観って、日本人のそれとはずいぶん違うような気がします。過去の第1の殺人はシーズン1で犯人が判明しますが、第2の殺人のほうはチラッと匂わせがありつつ未解決のままシーズン2に突入。シーズン2は宗教色のあるサイコスリラーなのかSFなのかわからない展開になるので、純粋なミステリーファンの方はシーズン1で見るの止めてもいいかも😅

 

  ポーランドの歴史って、迫害やジェノサイド等を受け続けてけっこう悲惨。必ず正義が勝つとは限らない、警察やお上は頼りにならない、最後は自分の力しかない‥‥という、絶望的なペシミズムがあるような気がするなぁ‥‥。

 

‥‥ともあれ、人間の心のダークサイドを容赦なく抉り出すポーランドのミステリーですが、対照的に背景となる自然は、蒼い山並み、目に染みるような緑、白い霧立つ湖‥‥と、ストーリーが陰惨であればあるほど、感動的なくらい超絶美しい❗

 

 

まだまだマイナーなポーランドのミステリーですが、ハマる人にはハマると思うので(笑)機会があったらぜひご覧になって下さい😊