オタクの迷宮

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PARCO劇場『エレファントソング』~井之脇海の透明感


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 PARCO劇場で『エレファントソング』マチネ観賞。

 

  この作品、ヲタクはグザヴィエ・ドランの映画を以前観てます。主人公のマイケルという役、彼に当て書きしたんじゃないの❓っていうくらいのハマリ役だったし、ドラン自身も「これは僕の役だ❗」と演じることを熱望したようで、他の俳優さんが演じるのは考えられなかったけど‥‥。なぜ今回舞台を観に行くことにしたかと言えば、映画『帝一の國』で、海帝高校生徒会副会長の端正な演技を観て以来、井之脇海くんの密かなファンだからです(笑)

 

  時はクリスマス。カナダのとある精神科病棟から、精神科医ローレンスが突然失踪。家族と過ごすはずだった休暇も返上して、院長のグリーンウッド(寺脇康文)は病院に駆けつける。失踪直前のローレンスと一緒に居たのは、トラブルメーカーの患者マイケル(井之脇海)。マイケルとローレンスは、患者と担当医の一線を越えたただならぬ関係だったらしい。グリーンウッドは部下の失踪の謎を解くべくマイケルに様々な質問を投げかけ、その深層心理を探ろうとするが、彼と心理的な駆け引きを繰り返すうち、かえって彼に翻弄され、眩惑され始める‥‥。そして、驚愕のラストが‥‥❗

 

  グザヴィエ・ドランのマイケルは、担当医のローレンスを虜にし、彼の失踪の謎を追うグリーンウッドすらも誘惑するかのような、毒を秘めたオム・ファタールっぷりが凄くてひじょうに魅力的でしたが、だからこそ、グリーンウッドの心理分析から浮き彫りにされるマイケルの圧倒的な孤独感と哀切さ、ラストの衝撃は少々薄まった印象があります。

 

  その点、海くんのマイケルは、クリスマス(欧米では必ず家族で過ごす)に精神科病棟で象のぬいぐるみを相手に過ごさなくてはならない青年の、親からも社会からも見捨てられた悲痛さが滲み出ていましたよね。ふと、中原中也の『汚れちまった悲しみに』の一節を思い出しました。海外を舞台にしてはいるけれど、日本の湿った情緒が融合した演出、見事でした。それも、清廉な声、立ち姿をはじめとして、彼が醸し出す独特の透明感が一役買っていたのではないでしょうか。

 

  ネットで調べると、登山が趣味のアウトドア派、きわめて健全な嗜好の方のようですが、『エレファントソング』の海くんは役作りのためなのでしょう、透き通るような白い肌に華奢な身体が印象的。ヴィジュアルから作り込む生真面目な役者さんのようですね😊

 

まだまだ無限の可能性を秘めているようなので、映像にせよ舞台にせよ、次回作が楽しみです❗

 

★おまけ

マイケルの母親はオペラ歌手の設定。久しぶりに「私のお父さん~O mio babbino caro」(プッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』より)聞いたなぁ‥‥。母親の歌声をCDで聞きながら、母親のプレゼントしてくれた象のぬいぐるみを抱きしめるマイケルの心情が切ない😢