オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

映画『ベルファスト』~映画ファンは必見!

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 ベルファストとは、北アイルランドの首府であり、この作品の監督、ケネス・ブラナーの生まれ育った街。

 

 ケネス・ブラナーってアイルランド出身だったんだ‥‥。知らなかった😅俳優としての彼は、シェイクスピアとか、サー・ローレンス・オリヴィエの役(『マリリン七日間の恋』)とか、海軍将校(『ダンケルク』)とか、「ザッツ・イングリッシュマン」な役柄を演じてるから、てっきり‥‥😅

 

 さてさて、 アイルランドケルト民族の地で、長い間イギリスの植民地でした。カトリックが盛んで、元来民族的にも宗教的にも異なる点が多く、激しい独立運動が起きて、アイルランドの南半分(カトリック系)はエール共和国として独立しました。‥‥プロテスタント教徒が優勢だった北6州は英国に残りましたが、その後も、北アイルランドで多数派を占めるプロテスタント(英国との連合派)が警察を巻き込んで少数派であるカトリックを強権的に支配し、カトリックは職業上にも差別を受けるなど、歪んだ社会構造が出来上がります。そのため、カトリック少数派はますます北アイルランドで孤立、英国からの独立と南アイルランドとの併合を求めて、急進的なIRAのテロ活動等に繋がっていくわけですね。

 

現在のベルファストをカラーで俯瞰撮影していき、次にカメラは「平和の壁」(上述のカトリックプロテスタントの両コミュニティを完全に分離し、両者の暴力抗争を防ぐ為に建設された)を捉え、瞬間、1960年代のモノクロ画面に切り替わる鮮やかなオープニング。ブラナーの分身であるバディ少年(ジュード・ヒル)が、「中世の騎士ごっこ」(‥‥たぶん😅)で、近所の友達とチャンバラをしているところに次々と火炎瓶が投げ込まれ、路上駐車の車が燃え上がります。バディが住んでいるのは「カトリック居住区」で、そこに、プロテスタントの急進派組織が「カトリック北アイルランドから出ていけ❗」とばかりに暴力行為を繰り返すようになるのです。カトリック系住民はバリケードを築き、徹底抗戦の構えを見せますが‥‥。

 

  バディのお父さん(北アイルランド出身の俳優、ジェイミー・ドーナン)はプロテスタントであり、腕のいい大工でロンドンに出稼ぎに行っている身でありながら平等主義者の穏健派、家族共々カトリックの人たちと和気あいあいと暮らしています。反面この父さん、プロテスタント急進派リーダーの友人から活動への参加を強制されても、毅然として撥ね付ける男気も持ち合わせているんですよね😊久しぶりのジェイミー・ドーナン(フィフティ・シェイズ・シリーズ)、やっぱカッコいいよね♥️しっかしジェイミーも早やお父さん役かぁ‥‥(遠い目)まっ、ダコタ・ジョンソンも『ロスト・ドーター』で母親役演じてたもんね😅

 

  心からベルファストを愛するひとつの家族が、頻発する暴力に次第に追い詰められていき、ついには故郷を捨てざるを得なくなる切なさ。命の危険に晒されても、「学校の友だちから離れたくない」「おじいちゃん、おばあちゃんも一緒にロンドンに連れていけないの❓」と泣くバディの姿に胸が締め付けられます😢

 

  思い起こせば80年代、ヲタクの夫は仕事でベルファストに出張に行った時、車を停めていた駐車場が、夫が立ち去ったほんの数時間後にIRAから爆破される‥‥という冷や汗モノの体験をしたことがあります。一方ヲタクは大学時代アイルランド文学を専攻していたのでアイルランドは長い間憧れの国。ヨーロッパ駐在中の夏休み、南アイルランドに旅行して、気さくなアイリッシュ・ホスピタリティに魅了されたばかりだったので、夫の遭遇した事件によって、人懐こいアイルランド人の別の貌‥‥暴力性や激烈さ(たとえそれが、IRAという限定的な集団のテロ行為だったにせよ)に、唖然とした覚えがあります。そして、バディたちが去った後ベルファストは、泥沼化する北アイルランド紛争の「戦場」となっていきます。

 

   バディたち家族がバスで旅立つのを、おばあちゃん(ジュディ・デンチ)が街角で見送るラストシーン。大写しになった彼女の表情と

お行きなさい。

振り返らずに、お行きなさい

というセリフ❗

ジュディ・デンチの演技のなんと素晴らしいこと❗

 

  ‥‥とまあ、アイルランドにめちゃくちゃ思い入れの強いヲタクは、今回アイルランドの政治や歴史のシリアスな側面ばかりを書いたようなきらいがありますが😅映画そのものはユーモラスで柔らかな語り口で、ケネス・ブラナー監督の、ベルファストに対する望郷の念と愛情に溢れた佳品と言えるでしょう。

 

〈今日の小ネタ〉

ケネス・ブラナーって、幼い頃から映画少年だったんですねー♥️彼の原点となった、60年代の映画や舞台が次々と登場して、洋画ヲタクとしては嬉しい限り😂ヲタク、彼と同世代なんで😅ゲーリー・クーパーグレース・ケリー(ハリウッド女優からモナコの王妃になった人)共演の『真昼の決闘』(しかも、後の場面で「ハイ・ヌーン」(フランキー・レインが歌った主題歌)が朗々と流れる😅)、ディズニーのミュージカル映画『チキチキバンバン』、60年代のハリウッドのセックス・シンボル、ラクウェル・ウェルチの(たぶん)『恐竜百万年』👇等々が次々と登場~~❗

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『恐竜百万年』のラクウェル・ウェルチ


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(いかにもディズニーな『チキチキバンバン』。映画を見たことはなくても、あの🎵チキバンバン、チキチキバンバン~~🎵という主題歌、どこかで一度は耳にしたことがあるのでは❓)

ジュディ・デンチがバディから「おばあちゃんも映画が好きだったんだね」と言われ、「そうね‥‥。※『失われた地平線』。シャングリラ」と答える。「それ、どこにあるの❓」という孫の問いに、「ベルファストからは行けないわ」と答えるジュディ・デンチの、諦観の表情がまた、凄いの。もう、独壇場だね❗

※1937年の映画。監督は『或る夜の出来事』(主演クローデット・コルベールクラーク・ゲーブル)や『オペラハット』(主演ゲーリー・クーパージーン・アーサー)等々、都会派コメディの名作を次々と送り出したフランク・キャプラ

 

 

  あっ、そうそう、小ネタもう1個。バディ少年が一生懸命読み耽っているマンガがなんと、『マイティ・ソー』❗ケネス・ブラナー、小さい頃からソーのファンだったんだね😊(※ケネス・ブラナーは、MCUのソー・シリーズの第1作目『マイティ・ソー』の監督を務めた)

 

‥‥って何だか、今日は小ネタのほうが本文より密度が濃くなったような(笑)