北欧ミステリードラマ 『トラップ / 凍える死体』シーズン1、2に続く待望のシーズン3『トラップ / 流血の聖地』がNetflixで配信開始となりました。
舞台は前二作同様アイスランドの小さな漁港シグルフィヨルズル🇮🇸。町にあるカルト教団の祈祷場所「聖なる洞窟」で、教祖の信頼も厚い一人の若者が、撲殺死体となって発見されます。その若者イーヴァルは、主人公のアンドリ(オラフル・ダッリ・オラフソン)とは曰く因縁のある間柄でした。過去にある少女が行方不明となり、事件に巻き込まれた疑いが持たれましたが、第一容疑者が少女と交際していたイーヴァル。当時、事件の解決を焦ったアンドリは行き過ぎた尋問の末、イーヴァルを殴って怪我をさせてしまったのです。結局証拠不十分でイーヴァルは釈放されました。今は署長を辞し、収賄捜査課にいるアンドリ(その経緯はシーズン1、2参照)ですが、お悔やみに訪れたイーヴァルの母親から「無実の罪で逮捕され、あなたに怪我を負わされてから、息子はすっかり人が変わってしまった。カルト教団に入会したのもそのせい。お悔やみの気持ちがあるのなら、息子を殺した犯人をあなたが挙げてちょうだい」と言われます。そしてアンドリは、昔の相棒であるヒンリカ(今は署長に出世……リムル・クリスチャンスドッティル)と再びタッグを組み、事件解決に乗り出します。しかし、そのカルト教団は、土地の所有権を巡って地元の半グレ集団と長年にわたって抗争を続けており、折しもデンマークからその半グレの首領(ドン)が大掛かりな麻薬密売を狙って町に乗り込んできます。殺人事件の捜査よりも麻薬取引の現場を押さえて密売ルートを一網打尽にせよ、と主張する首都レイキャビクの警察本部。殆どの人間が顔見知りという小さな田舎町で、本部の命令に翻弄されながら、アンドリやヒンリカの捜査は混迷を極めていきますが……。
前二作は題名が『凍える死体』だけあって季節は冬。一面の冬景色や吹きすさぶ雪が印象的でしたが、今回は、どこまでも続く紺碧の海、山の稜線を走る道路……等々、アイスランドの雄大な自然が堪能できます。北欧ミステリーは、美しい自然と、どろどろした人間関係や閉鎖的な社会の暗部の描写の対比が特徴的なんですよね。自然に囲まれた田舎町に住む人たちはほぼ善人ばかりである……といった、ひよわな都会っ子のヲタクの、根拠のない幻想を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれます(笑)
主人公であるはずのアンドリ、前2シーズンで離婚はするわ、仲間を失うわ、娘は命の危険に晒すわ……で、今シーズンは精神的に迷走中😅アンドリは数々の難事件を解決してきた名刑事だけど、こと自分自身のこととなると、いろんなものが未解決なまま山積み。今回もまた上層部の命令に背いてフライング捜査した為に謹慎処分となりますが、心配して電話をかけてきたヒンリカにまで、「ほっといてくれよ!」と八つ当たり。オイオイオイ、んなでっかい図体して、しっかりしてくれよ❗(暴言、お許し下さい 笑) ……どうもアンドリには、知らず知らずに引き摺られる、深い心の闇があるようです。この辺の主人公の描き方が、まさに北欧ミステリーという感じ。ちなみに横で一緒に見ていた夫は、「ヒーローじゃない、失敗したり悩んだりする人間的な警察官の主人公がいいね」と言っとります。男同士、相通ずるものがあるらしいです(笑)
一方、アンドリの後シグルフィヨルズル警察署長を引き継いだヒンリカは今回、彼女が裏の主役じゃないかっていうくらい😮突然甥っ子を預かることになって(北欧ミステリーによく出てくるニグレクトかな……と推察します)家庭的にも大変なはずなのに、常に冷静沈着、見ててサスガの安定感🎵……かと思えば、悪漢相手に船の上で大立ち回りと、八面六臂の大活躍です。頑張れ、ヒンリカ❗女の味方はやっぱり、女よね(笑)
本格推理に、アイスランド社会に潜む種々の社会問題も反映させた『トラップ / 流血の聖地』。複雑に絡み合う人間関係と、聞き慣れない北欧の名前の覚えにくさが難点と言えば難点ですが、骨太な北欧ミステリーは、秋の夜長にじっくり腰を据えて観賞するにはピッタリです😊
★今日の小ネタ
アンドリ役のオラフル・ダッリ・オラフソン、アメリカ生まれで4歳の時にアイスランドに渡り、アイスランドで育った俳優さん。ヲタクが初めて彼を見たのは、ベン・スティラーが世界中を走り回る『LIFE❗』飲んべえのヘリコプター操縦士。ちょっと思い出しただけでも、『ファンタビ』や『マーダーミステリー』、『ユーロビジョン歌合戦』にも出てたなぁ。あの巨体と人懐こい笑顔で、出演時間が短くてもインパクトがスゴイ。俳優さんとしては得だよね。ヴェネチア映画祭で巨漢役で久しぶりに映画界に復活したブレンダン・フレイザーもムリに痩せようとしないで、オラフソンのセンで行ったらどうでしょう😊