オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

キット・ハリントンのNTL『ヘンリー五世』~イケメン演技派の登竜門❓


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池袋シネリーブルにて、『ヘンリー五世』観賞。休憩挟んで3時間20分の長丁場でございます。

 

  剣を取れば勇猛果敢、群雄割拠だった英国をひとつにまとめ、さらには当時大国であったフランスの軍勢を打ち破り、フランスの美姫を娶って両国の友好関係を築いたヘンリー五世。抜きん出た軍人且つ政治家でありながら、夢半ばにして病に倒れたヘンリー五世(1386~1422 : あの、百年戦争の時代であります)。ヲタク的には、このシェイクスピアの史劇の主人公って、なにげにイケメン演技派の登竜門のような気がしてるんですが😊ヲタクが観ただけでも、トム・ヒドルストンティモシー・シャラメ、我が国では松坂桃李……。ねっ、きら星のようなメンツでしょう❓この目映い面々に、今度はキット・ハリントン(『ゲーム・オブ・スローンズ』『エターナルズ』)が加わったというわけ❗もー、観る前からドキドキするわー(笑)

 

 

  冒頭に上演開始前のキットのインタビューが❗彼は「ヘンリー五世は、ヒーローにもヴィランにも成りうる人物だ」と語ります。確かに今回の舞台では、王位に就いた途端に昔の仲間を切り捨てたり、敵国のフランスに通じた貴族に対し、彼らが後悔し命乞いをするにも関わらず死罪に処す冷徹さが強調されていたように感じます。但し、今回の舞台では時代が現代に置き換えられているので、現代人の我々の目から見れば、王の偉業も1つの蛮行に映る……ということなんですけどね。

 

  曾祖父であるエドワード黒太子に倣い、フランスの王権を主張するヘンリー五世に対し、フランス王はテニスボールを送りつけて侮辱します。(さんざん放蕩を重ねた遊び人なぞテニスでもして引っ込んでろ❗って意味らしい)その頃のイングランドというのは、フランス王のセリフにもあるように「曇天ばかりの陰気な場所で、薄いビールを飲んでいる」とバカにされる小さな島国でしかなかったわけですね。そんな島国の王が、ほぼ5倍のフランス軍と戦って勝利するという奇跡を起こした。

 

   季節は凍てつく冬。戦い前夜、フランスの街を陥落させる為に勢力を使ったイングランド軍は疲弊していました。ヘンリー五世は、一諸侯に変装して野営する兵士たちの群れに忍び込み、兵士たちの士気が著しく低下しているのを見、強制的に徴兵されたから仕方なく戦うのだと呟く若い兵士の言葉を耳にします。この場面がシェイクスピアのスゴイところで、「戦争なんて俺たち庶民にゃ何の得にもならん」という痛烈な皮肉も利かした二重構造になっているんですね。

 

  そしていよいよアジンコートの戦いの朝、「ああここにもう一万のイギリス兵が駆けつけてくれたら」と呟く側近に、王は「戦死するのは我々だけで十分。もし生き残れば、その名誉たるや甚大だぞ。敵に挑む勇気のない者は即刻立ち去るがよい。祖国に帰りたい兵は旅費をやるから帰るがいい。今日は聖クリスピンの祭日だ。生き残った者は、必ずやこの日に誇らしくその名を口にするだろう…」で始まる、『聖クリスピンの祭日』と呼ばれる有名な演説をします。圧倒的なフランス軍勢。しかし一番の敵は自分自身の中に巣食う怯む心。それを理解しながらも、捨て身の勇気を持てと諸侯を鼓舞し、聞き手の心を次第に高揚させていくヘンリー五世。


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  ヘンリー五世は兵たちの気分をその名演説によって奮い立たせ、 奇襲作戦で奇跡とも呼ぶべき勝利を手中に収め、フランスの姫キャサリンを娶ってフランスの統治権を得ます。しかしその勝利は汚泥と血糊、側近の貴族を初めとして、両軍の兵士たちの死屍累々の果てに得たものでした。

 

  ……これ、戦いに奇跡的に勝利したから英国史上の名君として讃えられるけど、もし負けていたら……。キット・ハリントンは、軍神の強力なリーダーシップと、その心の底に潜む闇と冷徹さ、そして王者たる者の圧倒的な孤独を巧みに描出していたように思います。(キットは冒頭のインタビュー中で、「同じ悲劇が今、ウクライナで起きている」と、呟いていましたっけ)そしてラスト、口上役が登場し、「ヘンリー五世は若くして亡くなり、その子のヘンリー六世の時代にはフランスも失い、さらには※内戦によって多くの同胞の血が流されました」と締めくくります。権力に固執し、多くの犠牲を払って得た勝利は所詮泡沫のように虚しい。そんな声なき声が聞こえてきそうでした。

薔薇戦争のこと。父の急逝により幼くして王位に就いたヘンリー六世は平和を愛する温厚な人物だったものの、軍事的・政治的な才には欠けていた為、薔薇戦争を引き起こしたと言われています。

 

 解釈の仕方によって、演出のスタイルによって、そして演じる俳優によって、いかようにも姿を変えるシェイクスピアの戯曲の登場人物たち。単なる「歴史」ではなく、今、世界のどこかで起きている物語として語られ、観ている私たちの心を熱くしてくれる。今宵もまた、シェイクスピアの奥深さと稀代の天才ぶりに改めて感動したヲタク😊

 

シェイクスピアよ、永遠なれ❗

 

キット・ハリントン主演『ヘンリー五世』は、シネリーブル池袋にて10月13日まで上映。

 

 

  ★今日のコネタ

ここでちょっと、これまでヘンリー五世を演じたことのあるイケメンたちにご登場願いましょう😉

 

トム・ヒドルストン

『ホロウ・クラウン~嘆きの王冠』

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実はこの『ヘンリー五世』って、その前の王の治世を描いた『ヘンリー四世』と対のようになっていて、のちのヘンリー五世は、皇太子ハルとして登場。若くてヤンチャで、悪友フォルスタッフ(シェイクスピアの戯曲に度々登場する名脇役)たちとロンドンの歓楽街で放蕩に明け暮れている様子が描かれます。ところが父の死によって王位を継いでから彼は一変し、冷徹で統率力に溢れた王者へと変身を遂げます。トムヒは、若い頃のパリピなハル王子と、王位に就いてからのヘンリー五世の落差が物凄くて、もう、アッパレの一言❗

 

……ただ、フランスの姫キャサリンにプロポーズする場面で、「戦いに明け暮れ、顔も黒く、無骨な武人で、ダンスも愛の詩もできぬ無骨な武人だが、私の妻になってくれますか?」っていうセリフがあるんだけど、キャサリンに向かってにっこりする白面の貴公子トムヒの笑顔があまりにもスイートで、どうひっくり返っても「女性の扱いに慣れない無骨な武人」にゃ見えないのが唯一の難点(笑)


ティモシー・シャラメ

Netflix『キング~The King』


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   父王ヘンリー四世からは疎まれ、自暴自棄になって、悪友のジョン・フォルスタッフと夜な夜な歓楽街で遊び歩くハルをシャラメは、決して好んで放蕩しているわけではなく、「若者の自分探しの途中……」といった感じで演じてました。それがまたシャラメの、傷つきやすい憂愁の貴公子然とした雰囲気にぴったりで……。その場にいたらきっと、剣を抜いて守りたくなるわ(笑)この時、傲慢で鼻持ちならないクセにチキンなフランスの王太子ルイを演じていたのが、アノロバート・パティンソン。ノリノリで演じてましたね😅イケメンなのに、こういう情けないクズ男を演じるの好きだよね~この人(笑)

 

  余談ですが、この映画でキャサリンを演じたのがリリー・ローズ・デップ。リリーとシャラメが、たちまちのうちに恋に落ちたのは皆さんご存知の通り😉

 

松坂桃李 『ヘンリー四世』(演出・蜷川幸雄)


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そしてそして、我が日本の誇る若き演技派・松坂桃李❗故・蜷川幸雄さん演出の『ヘンリー四世』ハル王子❗今では押しも押されもせぬ大スターですが、恥ずかしながらヲタク、当時は(朝ドラに出てた人❓)くらいの知識しかなくて、不安半分、期待半分。

 

  ところが、ところが❗180センチ以上はありそうな長身を生かした立ち姿の美しさ。あの長丁場の劇で全くブレない発声の確かさ、明確なセリフ回し。何より、これは天性のものなのか、王子にふさわしい気品。シェイクスピアの劇って、主人公ほとんどが王子とか貴族の息子ですから、何より「気品」が大事😅松坂くんにはそれが備わってた。そしてそして、あの、老獪な吉田鋼太郎(フォルスタッフ)に堂々と渡り合う、将来の王者の威厳さえ持ち合わせて、あまりの嬉しい衝撃に口あんぐり(笑)

 

  蜷川さん亡き後、吉田鋼太郎演出でヘンリー五世演じたんですよね、彼。ヲタクはチケット取りそびれて観てないんですが、今更ながらに悔やまれます(≧口≦)