オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

『窓辺にて』~監督と演者の幸せな邂逅


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 上映が終了した時、客席からさざ波のような拍手。そして「今泉監督が1階におりますので、声をかけて下さい」とのアナウンスがあって、ビックリ😮1階に下りて、ホールにいらっしゃるのかと思ってキョロキョロしたけど、そこは無人(笑)あ、あれ?アナウンスは空耳?……と思っていたら、いらっしゃいました!入り口を出たところの暗がりに、ひっそりと立ってらした。ヲタクは無言でぱちぱちと拍手して通りすぎるのが精一杯😅だから今、帰りの京浜東北線の中でこれを書いてる。監督へのファンレターを。

 

  んもう、最初から最後まで、今泉ワールド炸裂。相手の、そして自分自身の心の襞を手探りで辿っていくような会話。

あなたはどうしたいの❓

あなたにとって何がいちばん幸せ❓

……そして、問いかけている私自身は❓

そこから少しずつ見えてくるもの。

 

  クリエイティブな世界の住人になることを熱望しながらも、芸術や創造の神さまに「選ばれない者」のせつなさ(『街の上で』)、あるいは努力しても努力しても愛する者に愛されない者の悲哀(『愛がなんだ』)。……いや、監督の世界では、選ばれた筈の者も、愛されている筈の者もどこか不安げで自信がなく、心の片隅に、なかなか癒えない小さな引っ掻き傷を抱えて右往左往しているように、見える。

 

  稲垣吾郎が、初めて今泉ワールドの住人になったとは思えないほどピッタリハマっていて、演技……というよりもむしろ、「妻に浮気されたにも関わらず、その事実を知っても怒りが湧かない自分自身にショックを受けている一人の男」が、銀幕にリアルに息づいている感。ゴローちゃんがじつは市川茂巳というフリーライターで、これは彼の私生活を淡々と追ったドキュメンタリーなんではないかと思うくらい😅それって、稲垣吾郎が演技者として悟りを得た……というか、演技が上手いとか下手とかそんなフェーズを突き抜けた境地に行ってしまったのか、それとも、市川茂巳という人物にこれ以上の適役はいないであろう稲垣吾郎という役者に目をつけた、監督の慧眼の賜物なのか……。いずれにせよ、監督と演者の、またとない幸福な邂逅だといえるでしょう。

 

  物語は夏。ギラギラした木洩れ陽とか、フルーツパフェとか、アイスコーヒーのグラスの滴りとか、この秋の頃になってから過ぎ去った季節を惜しみながら観るのもまた、オツなもの😊

 

 主人公の茂巳をはじめとして、 いつもながら登場人物たちは皆、不器用で、純粋で、物事を突き詰めすぎておかしなことになってしまうのだけれども😅ヲタク的には特に、茂巳と、彼が才能を認めた高校生作家の久保留亜(玉城ティナ)のイキってるキンパ彼氏(倉悠貴)のやり取りがめちゃくちゃ好き。留亜にちらっと「僕だって悩みがある」と打ち明けたら途端に、留亜の命令で彼氏のバイクの後ろに乗せられて拉致?されるシーンとか、「奥さんに浮気されて怒らないなんてサイコパスだ」ってキンパ彼氏に決めつけられた(注・キンパは当の本人に向かって言っているとは気づいていない)時のゴローちゃんの表情とか。もう、絶妙に可笑しい。

 

  ……って、監督に一言も声もかけられない(「面白かったです」の、たった7文字でコトは済んだのに  笑)ヲタクは、今泉ワールドの住人たちに負けず劣らず不器用な人間なんだとしみじみ思いましたことよ(笑)

 

★今日の小ネタ

ポスターに写ってる喫茶店は大森のルアンでしょう?「キネカ大森」で映画見た帰りに寄ったことある~🎵『極主夫道』で玉木宏がいつもパフェ食べてるのもここ。『極~』の中では玉城ティナちゃんがなぜか上から目線のウェイトレス役。今回はお客さんでしたが😅