オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

『グリーンナイト』A24~アーサー王伝説のアンチヒーロー!?

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 あの有名なアーサー王と円卓の騎士の物語の中で、ぜんぜん有名ぢゃない(笑)サー・ガウェインのおはなしです。

 

  若き日のガウェイン(デーヴ・パテル)はアーサー王の甥という立場でありながら、騎士になる気もなく、娼館に入り浸りで朝帰りの毎日(なんか、ハル王子みたい😅)。ある年のクリスマスのこと。アーサー王と円卓の騎士を初め、客人たちが宴に興じていると、全身緑の異様な風体の騎士(グリーンナイト……グルートをでっかくして、緑に塗って無気味にしたみたいなやつ)が現れ、アーサー王に勝負を挑みます。アーサー王はもうこの頃には可哀想なくらい年取っていて、「わしの代わりに勝負(ゲーム)に出てくれる者はいないか」と呼び掛けますが、円卓の騎士たちからも一向に声が上がりません。(どーしちゃったのよ、円卓の騎士!💢)って感じですが、※アーサー王と同様、彼らも後期高齢者になってる設定なのかいな😅そんな時立ち上がったのが、我らがガウェインです!ガウェインはアーサー王エクスカリバーを借りて勝負を挑みますが、グリーンナイトはちっとも戦おうとせず、そればかりか、(ほら、首取れよ)と言わんばかりにガウェインの前に首を差し出します。仕方なく?ガウェインが彼の首を切り落とすと、ちゃっかりグリーンナイトは生きていて😅「1年後、同じクリスマスの日に緑の礼拝堂に来い!その時こそ俺がお前の首を切り落とす!」と言い残し、呆然とするガウェインをしりめに、切り落とされた自分の首をひっつかみ、からからと笑いながら去っていくのでした。

※グェナビアも、どこのお婆さんかって感じで……。イケメン騎士ランスロットをたらしこんだ……いやもとい、ランスロットと禁断の恋に身を焦がした美貌の王妃の面影よ、今いずこ……(遠い眼)

 

な、なんだよー、この展開❗

そっちは不死身だからいいけどさ、こっちは首切られたら死んぢゃうんだぞ。

……ってガウェインは叫んでいたに違いありません。心の中で。

 

  ……と、あっという間に1年が過ぎ、もちろん彼は本心としてはグリーンナイトのところに行きたくはなかったでしょうが、何しろグリーンナイトの首を切り落とした英雄として国中でもその名が轟いてしまい、(どんな事情があるにせよ、男同士の約束を破ったら騎士道にもとるだろう)という世間の眼に耐えかね、ガウェインは待ち合わせ場所に指定された「緑の礼拝堂」を目指す、長い長い旅に出るのでした……!

 

  英雄が真の英雄になるまでの冒険譚ですから、当然のことさまざまな艱難辛苦を乗り越えなきゃいけないわけで。現代人の眼からみたらその目的がマーベルヒーローとかと違って、世界を救う、とか祖国を守る……とかではなく、単に騎士としての名誉のため……というのがちと納得がいかないとこではありますけど😅

 

  何しろ、盗賊によって非業の死を遂げた貴婦人に、湖の底から自分の首を取ってきて欲しいと頼まれるエピソードをはじめとして、ガウェインが行く先々で出会うのが殆ど面妖なる人外さんや、妖(あやか)しの面々。それをバリー・コーガン等々、当代きっての個性派俳優たちがノリノリで演じております。


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※ガウェインを騙し討ちにして身ぐるみ剥いでしまう盗賊にバリー・コーガン。立ち振舞いがゴブリンっぽい(笑)


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アリシア・ヴィキャンデルが、ガウェインの純朴な恋人エセルと、途中立ち寄った城でガウェインを誘惑する奥方の二役を演じています。

 

  何しろガウェイン役がデーヴ・パテル(『スラムドッグ・ミリオネア』『ホテル・ムンバイ』、『どん底作家の人生に幸あれ!』のディケンズ役など)なので、一筋縄ぢゃいかない展開になるだろうとは思っていたけど(笑)、最初は(んもう、しっかりしてよ)って感じだったのが、しまいには彼の愚直なまでの一生懸命さにほだされちゃいます。……まっでも、あるお城の奥方(アリシア・ヴィキャンデル)に寝込みを襲われる時のエピソードはあまりにもトホホすぎましたが……(笑)それにしても彼、まだ若干32才なのね、ビックリ。凄い貫禄😮

 

   クチコミとか読むと、かなり好き嫌いが別れてるみたいですが、少なくともヲタクは好きだなぁ、この世界観。トールキンだと、たしか最後にグリーンナイトの正体の種明かしがあったと思うんですが(すみません、記憶が定かではない😅)、映画では辻褄合わせは全くなく、その不条理感が個人的には◯!この筋書きを書いたのがもしかして、魔女であるガウェインの母親……?って含みもありましたよね。ここらへんは現代的な味付け。やっぱりね、A24らしく、人口に膾炙した神話・伝説であれ、かなりヒネリが効いた作品になってます。

 

★今日の小ネタ

英米のフィクション(文学や映画、ドラマ)を深掘りするための3種の神器と言えば、聖書、ギリシャ神話、そしてアーサー王伝説ですが、ヲタクが初めてアーサー王伝説の存在を知ったのは、あの『赤毛のアン』。ランスロットに恋い焦がれて、見向きもされなかった為ハンストして亡くなったというエレーン姫。アンが姫の亡骸のマネをして小舟に乗り、川を下るも、舟に穴が空いて沈没、アンは橋桁につかまって一昼夜……って展開でした😅