オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

時には少女のように~Netflix『チャタレイ夫人の恋人』のエマ・コリン

 
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『ザ・クラウン』で、英国王室というある意味伏魔殿のような場所に飛び込み、愛のない結婚に悩み、傷つきながら必死で未来を模索するダイアナ元皇太子妃を繊細に演じ、見事ゴールデングローブ賞を受賞したエマ・コリン。そんな彼女が、戦場で負傷し性的不能に陥った貴族の夫との結婚生活に絶望し、領地の森番との禁断の恋に走る妻……という『チャタレイ夫人の恋人』のヒロイン・コニーを演じると聞いて、そのイメージの落差に驚いたヲタクですが(何せ発売当時はその過激な性描写が祟って、発禁処分になった小説ですからね😅)、実際にNetflixで作品を見て、なぜエマがこの役にキャスティングされたのか納得がいきました!

 

  製作側の意図としてはおそらく、今までの映像化作品のように、貴族の夫人の性の解放と目覚め……的な側面からは描きたくなかったんでしょう。エマ演じるチャタレイ夫人コニーは、彼女の、華奢で少女のような体つきや、跡継ぎを欲しいが為に彼女に不倫を勧めるような配慮のない夫との価値観のズレに傷つく表情が印象的で、これまでの、「性的に満たされない、成熟したヒロイン像」とは対極にあります。これ、もしフローレンス・ピューが演じてたら、全く違ったイメージになっていたでしょうね。なんか凄いことになりそう(笑)……一方で、ダイアナ役とちょっとイメージが被った感はあるかな。それだけ『ザ・クラウン』の演技が強烈だったのね😅

 

  そんな繊細なヒロインに見合う相手役のメラーズ(※ジャック・オコンネル)も、いかにも男の体臭がムンムンするような筋骨隆々の森番ではなく、ジェームズ・ジョイスの小説を愛読し、コニーの苦しみを思いやる寡黙で優しい男性(自らも、出征中に妻が他の男と出奔してしまったという心の傷を抱えている)として描かれています。ぜったいこの描き方のほうが日本人好み。メラーズが孵化させたキジの雛を抱きながら、様々な感情がこみ上げてコニーが嗚咽し始め、彼がおずおずと、不器用に彼女を抱き寄せるシーンは胸きゅんモノ(……死語?😅)。この初々しい二人だと、雨の中マッパで走り回ってもむしろ可愛らしいというか、牧歌的というか。『チャタレイ夫人』というより、『ダフニスとクロエ』か『潮騒』みたいな。

※『ベルファスト71』で主役張ってた人ですね。推しのジャック・ロウデン目当てで見たけど、バリー・コーガンも出ていて、なにげに英国の若手総出演の戦争映画だった。あの時に比べるとオコンネル、めっちゃ落ち着き払ってて、別人かと思った(笑)

 

  どこまでも広がる丘陵地帯、木漏れ陽、陽光を反射してきらきら光る小川の水面、突然の雨に濡れてさらに鮮やかになる緑……。二人のロマンスを彩るイングランドの風景は、どこまでも美しいです。

 

  作者のD.H.ローレンスは、当時問題となっていた支配階級と労働者階級の対立に焦点を当てたかったようですが、性描写の部分に世間の注目が集まってしまった……という、少々不本意な成り行きになったようです。貴族の夫人と森番の禁断の恋を通じて、英国の厳しい階級制度を批判した書である、という見方もできますし。名作とは様々に異なる観点から解釈が可能……という典型的な例で、だからこそ異なるテーマで何度も映像化されてきたのでしょう。

 

そういった意味では、古典的名作に斬新な演出、そしてエマ・コリンとジャック・オコンネルというフレッシュな主役二人が、清新な風を吹き込んで新たに甦らせたと言えるのではないでしょうか。