オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

2022年 オタクが選ぶ日本映画ベスト10プラス1~後編

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★さかなのこ (沖田 修一監督)

  あー、これ、個人的にもう、好きでたまらない映画。かなりリピートしました(笑)ご存知、「さかなクン」(もはや彼自身が1つのアイコン化しています)の半生を、あの、のんが男性として演じるというアイデアの凄さ、不思議さ。

そして、全編を流れる、ネジがちょっと緩んだようなユーモア。またはストレート直球な笑いぢゃなくて、ひょろひょろ~っと飛んできた変化球がじつはかなりツボにはまって後からジワジワ効いてくる……というか。しかもその裏にはしっかり、人生の苦さや皮肉も利いています。のんは言うまでもなく、柳楽優弥磯村勇斗井川遥岡山天音三宅弘城カメオ出演さかなクン自身も含め、脇役陣も隅から隅まで適材適所、演技のアンサンブルもお見事!何度見ても、優しく暖かい気持ちになる映画です😊

感動でギョざいましたっ!


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★もっと超越した所へ。(山岸 聖太監督)

 元々は根本宗子さんの劇団「月刊・根本宗子」が下北沢のザ・スズナリで上演した舞台の映画化のようで、特にラストのどんでん返し❓は舞台劇ならではの演出で、めっちゃ楽しかった~🙆

 

  キレイで性格も良くて生活力もある4人のヒロインたち(前田敦子、黒川芽衣趣里伊藤万理華)。それぞれの場所で懸命に生きる彼女たちには、ある共通点がありました。それは、揃いも揃ってダメンズ好きだということ。でもって、相手のダメンズたち(菊池風磨三浦貴大千葉雄大オカモトレイジ)は、しょーもない奴らなんだけど、どこか可愛くて、憎めない😅……彼女たちの気持ちも、わかる。ヲタクもじつは、かなりのダメンズ好き(小声)しかし、男たちのあまりの自己チューっぷり、不甲斐なさかげんにさすがに女たちもある日ぷっつんアタマの回線がキレて、ダメンズたちに向かって叫ぶ。

私の家からさっさと出てってよーーっ!

唖然呆然、「……でもボク、今でもキミのこと好きだよ」と、メソメソする男たち。

はてさて、彼らの多難な恋の行く末はいかに……!?

 

  ……しかし、良い時代になりましたね。恋愛において、女性が選択できる時代。男性がガマンせずに泣ける時代(笑)日本の中年以上の男性たちに心筋梗塞が多いのは、幼少期から「男のクセに泣くな」って言われ続けて、そのストレスが一因である……なんて説を聞いたことあるんだけど😅もっと泣け泣け、男たち。もっと行け行け、女たち(笑)

 

  そんな男女の「いま」を表現するに相応しい脚本、相応しい旬な役者が勢揃い。シモキタの舞台の熱気が、そのまま伝わってくるような映画でした。


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★窓辺にて (今泉 力哉監督)

ある日、妻の不倫を知ってしまった1人の中年男(稲垣吾郎)。しかし彼が落ち込んだ原因は、妻の不倫そのものではなく、その事実を知ってもショックを受けていない自分自身にあった……!

 

  中年に差し掛かって、結婚生活にも、自己認識にも、岐路に立たされた男の悲哀と少しばかりの滑稽さ。稲垣吾郎が心憎いほど自然体で演じていて、フィクションではなく、彼が演じる市川茂巳というフリーライターの日常を淡々と追ったドキュメンタリーなのではないかと錯覚するほど。この役にゴローちゃんをキャスティングした今泉監督の慧眼たるや、もはや神(断言)

 

  ヲタク的には、なぜか自分になついてくる高校生作家(玉城ティナ)を見つめる時の、自分がもはや永遠に喪ってしまった若さと、煌めく才気に対する微かな羨望と諦めの入り交じったゴローちゃんの表情にヤられました(笑)

 

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★ある男(石川 慶監督)

人権派弁護士として知られる城戸(妻夫木聡)は、かつて離婚訴訟を手がけたことのある里枝(安藤サクラ)から、彼女の再婚相手で、樹木の伐採作業中不慮の事故で亡くなった夫・大祐(窪田正孝)の身元を調査をして欲しいという相談を受け、横浜からはるばる宮崎まで足を伸ばします。大祐は里枝に、自分は伊香保温泉の旅館の次男坊だと話していたのですが、長年疎遠になっていた大祐の兄(眞島秀和)が一周忌に訪れ、遺影に写っているのは全くの別人だと告げたことから、4年近く夫と思っていた誠実で優しい男性が全くの別人だったことがわかったからです。城戸は何かに取りつかれるようにこの事件の調査にのめり込んでいきますが……。

 

  この社会派サスペンスは次第に、出自に複雑かつ鬱屈した劣等感を持つエリート弁護士の妻夫木聡、過酷な人生に翻弄される哀しみを的確に体現した窪田正孝、人生の流転に否応なしに流されていく薄幸な女性・安藤サクラの、三者三様の演技合戦の様相を呈していきます。……そして、見終わった後、私たちの心に染み入るのは、現代社会に今も潜む差別や分断、それによって引き起こされる人生の辛さ、哀しさ、切なさ。ミステリーの名を借りた、深い人生ドラマで、登場人物一人一人に向ける作者の温かい眼差しは、どこか松本清張を思わせる味わい。


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★夜、鳥たちが啼く(城定 秀夫監督)

  十代の頃に書いた小説で華々しいデビューを飾った慎一(山田裕貴)。しかし彼は、自分自身の裡に時折沸き起こる暴力衝動を持て余し、さりとてそれを自己分析して文章に表現することもできずスランプに陥り、悶々とした日々を送っていました。そんな彼の家に、ひょんなことから同居することになった若い母親(松本まりか)と小学生の息子。それぞれに孤独で人生の傷を抱える彼らが、「疑似家族」となって身を寄せ合い、それによって少しずつ、彼らの裡の「何か」が変わっていく過程を淡々と描いた映画です。

 

  こういう、登場人物の意識の流れをそのまま辿っていくような映画って、役者さんにとってはひじょうに演じにくいのではないかと思いますが、主役の山田裕貴松本まりかコンビが、そりゃあもう体張って頑張ってました。とにもかくにも若いお二人の果敢なる挑戦に拍手!


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★天上の花 (片嶋 一貴監督)

  日本近代詩の祖とも言われる萩原朔太郎の息女・葉子の小説『天上の花~三好達治抄』の中から、特に、朔太郎の弟子のような存在である詩人・三好達治(東出昌大)と朔太郎の妹慶子(入山法子)との短くも激烈な結婚生活をテーマに選んで映画化したもの。

 

  男に可愛がられ、奉仕されることしか知らない奔放な慶子に若い頃一目惚れした三好は、16年もの間自身の妄想の中で「あらまほしき慶子像」を発酵・醸成し続けた結果、やっとの思いで彼女との結婚に漕ぎ着け、最果ての地、越前三國の海岸沿いで、二人だけの生活を始めます。  しかし贅沢好きの慶子にとってそんな生活が耐えられる筈もなく、折しも太平洋戦争の暗黒が日本全体を覆い始めた頃、彼らの結婚生活は早々に破綻、ついには三好は慶子に対して、ことあるごとに激しい暴力を振るい始めるのです。

 

  何しろ、慶子への激しい憧憬と落胆、せめぎ合う愛憎の果てに、DV夫、さらにはストーカーと化す、三好達治を演じる東出くんが何より凄いです、怖いです。夜中に家を飛び出して逃げる慶子を追いかける東出くんの鬼の形相たるや、まるでホラー😅もはや失うものなど何もない、なんでもござれな捨て身の居直り演技。……これからの役者・東出昌大が楽しみなような、恐ろしいような(笑)

 

★前編5作品についてはコチラ⏬⏬⏬⏬⏬