オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

2022年 オタクが選ぶ洋画ベスト10プラス1~前編

  見ているだけで元気になったり、知らなかったことが学べたり、生きる勇気が貰えたり……。今年も私たちに、数々の素敵な贈り物をしてくれた映画たち。そんな映画の中から、10の映画を選んでみました。(実際はどうしても絞り込めず、日本映画同様、プラス1となっております😅)

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★幻滅 (監督 グザヴィエ・ジャノリ)

 トップバッターは、今月2日に横浜みなとみらいで開催された「フランス映画祭」の一環で観たばかり、まだ興奮冷めやらぬフランス映画『幻滅』❗文豪バルザックの小説の映画化ですが、当時の衣装、社会風俗、建築、調度品等々一分の隙もなく再現、フランス映画人たちの心意気に圧倒される大作です。

 

19世紀末王政復古後、貴族と反体制派がせめぎあうフランス、パリ。当時の印刷技術の急速な発展により、ジャーナリストたちが徐々に力を得、世論を動かし、ひいては政治すらも陰で牛耳るようになっていました。金と虚々実々の駆け引きが渦巻くパリに幻惑され、ついには悪魔に魂を売ってしまう田舎出の純朴な主人公を演じたのは、オーディションで選ばれたバンジャマン・ヴォワザン。巨匠グザヴィエ・ジャノリ監督に見込まれ、この映画でセザール賞新人賞を受賞した秀でた演技力はむろんのこと、上映後の質疑応答で見せたインテリジェンスとフランス流エスプリの効いた会話術は、将来が楽しみな大器と見た😊

 

バンジャマンの清新な演技を支えるのは、グザヴィエ・ドランジェラール・ドパルデュー、ヴァンサン・ラコスト、ジャンヌ・バリバールら、オールスターキャスト❗普段の役どころとは違う端正な演技を見せるグザヴィエ・ドランはギャップ萌えだし、主人公を堕落した都パリの悪徳に引き摺り込むメフィストフェレス、ヴァンサン・ラコストも出色。(ラコストは、セザール賞助演男優賞受賞)


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響け!情熱のムリダンガム (インド映画)

 今年は超大作『RRR』が世界の話題を席巻、インド映画の底力を見せつけましたが、忘れちゃいけないのがこの映画❗『響け!情熱のムリダンガム』。いいなぁ、この泥臭さ。将来のため、会計士になることを親から命じられているオタク青年が、ある日南インドの伝統楽器ムリダンガムの音色に魅せられ、名人の師匠のところに無理やり押しかけ入門😅主人公が、ぶ厚いカースト制度にもめげず、厳愛に満ちた師匠の下、ムリダンガム奏者としても人としても成長していくさまを胸アツに描いた感動作です。

 

インド版『セッション』とも言われていますが、どちらかと言えばこの「道を極める話」、まんま日本の少年熱血マンガぢゃん❗と思いながらヲタクは見てました(笑)師匠に昼夜を問わず練習を命じられて、(当然のことながら)手に激痛が走り、ガールフレンド(注・主人公の彼女は看護師)にコルチゾン注射を打ってもらった主人公、「この痛みは精神で乗り越えられる👊✨」って、『柔道一直線』かいいいっ❗(←古い😅)

 

  さらに驚くべきは、東京都荒川区にある南インド料理店「なんどり」の店主の方がこの映画に惚れ込んで、直接上映権を買い取ったということ❗インド映画ファンも負けず劣らず熱い(笑)

 

  動画配信サイトで配信の可能性はあるんでしょうか?……一人でも多くの人に見て欲しい作品。このまま埋もれちゃうのは惜しい❗

 

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ノースマン / 導かれし復讐者

(監督 ロバート・エガース)

ヲタクは、11月に開催された「東京国際映画祭」の一環として鑑賞しました。

 あのシェイクスピアの有名過ぎる四大悲劇の1つ、『ハムレット』の元ネタになったと言われている「ヴァイキングの王子・アムレートの復讐奇譚」。鬼才ロバート・エガースが、当時の価値観そのままに描いた作品。近代的自我に目覚めたシェイクスピアハムレットのイメージでこの映画を見ると、ショックで倒れます(笑)こっちの主人公アムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)はもはや、獣と人間の中間みたいな感じで😅狼の遠吠えとかフツーにしちゃってるし(笑)彼にとって、いやあの時代の男たちにとって、近代的な倫理道徳の観念なんて全く存在しないわけで、やられたらやり返す、目には目を、振り向けば死屍累々、ご遺体の山((( ;゚Д゚)))敵をバッタバッタと叩き殺し、血塗れで仁王立ちのアムレート。何しろ、戦いの中で死ななければ天国(ヴァルハラ)に行けないから、あの時代の戦士たちはみーんな嬉々として死地に赴くわけです。恐ろしい時代だよ……ぶるぶる。見ているうちに、自分の価値観が根こそぎ引っくり返されます😅

 

  世界で唯一、天皇陛下を象徴として戴く私たち日本国民。日本の皇室は時折、ヨーロッパの王室と比較対照されますが、言わば「神の子孫」であり、国の安寧と平和を祈念する神事を司る日本の天皇陛下とは違い、ヨーロッパの王たちは、敵を武力で捩じ伏せ、略奪と破壊と侵略の上に成立した存在。この映画を見れば、その違いがよく理解できるでしょう。

 

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イントゥ・ザ・ラビリンス

(監督 ドナート・カリシ)

結末のどんでん返しが鮮やかなサスペンスを「マインドファック」映画と呼びます。これまでも、『アイデンティティー』(アメリカ)、『ピエロがお前を嘲笑う』(ドイツ)、『女神は二度微笑む』(インド)、『去年の冬君と別れ』(日本)……等が生まれていますが、もう1つ、傑作が誕生した❗

 

  15年前、誘拐された少女が突然発見された。彼女は重度のPTSDを発症しており、高名な精神科医(ダスティン・ホフマン)が必死の治療に当たります。もちろん彼に託された目的は、治療と並行して憎むべき犯人の手がかりを得ること。一方、彼女の両親が亡くなる前に犯人探しを依頼したのは、重病を患う私立探偵(トニ・セルヴィッロ)。彼は、警察も尻込みするような命懸けの捜査を始めますが……。

 

  米・独の名優二人がラストに会いまみえる時、明らかにされる真実の衝撃たるや……❗

 

 イタリアの作家ドナート・カリシの小説を、カリシ自らの脚本・監督によって映画化したものなので、その緊迫感、凄いです、怖いです。同じくカリシ原作・脚本・監督の『霧の中の少女』もイヤミスの傑作です。(主演はやはりトニ・セルヴィッロ)

 

いつの間にか公開されて、いつのまにか終了してしまったこの映画😢動画配信サイトで見かけた時はぜひご覧になって下さい。

 

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アフター・ヤン (監督 ココナダ)

深い 森のなか、風のそよぎや、さやさやと葉の鳴る音を聴いているような気持ちになる映画。映像もひたすら美しく、登場人物も善意に満ちて、見終わった時思わずヲタクは、(……究極のヒーリング映画だわ)って呟いたものです😊

 

  社会的分断や人種の違いなどは乗り越えて、さらに人類がAIやクローンと共存しようとしている近未来。家族同然だったAIのヤンが突然壊れて、動かなくなってしまいます。半永久的な存在と認識していたAIが突如としていなくなってしまうという思いがけない出来事を、試行錯誤の末に乗り越えていこうとする家族の姿が淡々と描かれます。

 

  AIを描いた作品として頭に浮かぶのは、『エクス・マキナ』。あの作品に描かれた人間と、徐々に進化していくAIの、食うか食われるかの心理バトルはひじょうにリアルで、気の小さいヲタクなどビビってしまって😅(もし本当にこんな未來が待っているなら、AIなんて要らないよー)などと悲観的になってしまいましたが、『アフター・ヤン』みたいな世界なら体験してみたいかも(⬅️単純  笑)

 

この作品、言わずと知れたA24の製作。この他にも、『ラム/LAMB』、『ドント・ウォーリー・ダーリン』、『グリーン・ナイト』、『MEN/同じ顔の男たち』と、今年も次々と良作を世に送り出したA24。そんな中からオタクがなぜ『アフター・ヤン』を選んだかというと……。

単に好みの問題です。(笑)


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ボイリングポイント / 沸騰

(監督 フィリップ・バランティーニ)

クリスマス前の英国のとあるレストランの一夜を、驚異の長回し、ワンカットで撮影した作品。原題の「ボイリングポイント」とは「沸点」。妻子と別居して家を追い出され、借金まみれの主人公、崖っぷちシェフ(スティーヴン・グレアム)をはじめとして、抜き打ちの衛生管理検査で問題発覚、さらにはオーバーブッキングのトラブルやモンスター客でレストランのスタッフたちはまさに「沸騰」寸前。さらには毒舌で知られる評論家が突如来訪というてんやわんや。はてさて彼らが行き着く先は天国か、それとも地獄か!?

 

  リアルタイムで映画がスリリングに「疾走」していくので、映画を観る……というより「体感」する感じ。見終わった後ぐったり疲れました(笑)英国アカデミー賞4部門ノミネート。