KINOシネマ横浜みなとみらいで、クリスチャン・ベール主演『ほの蒼き瞳』を鑑賞。ルイス・ベイヤード原作の『陸軍士官学校の死』を映画化したものです。
【あらすじ】
時は1830年。ハドソン川近くにあるウェストポイント士官学校で、木から吊るされた士官候補生の遺体が発見された。そしてあろうことか、学校内に安置されていた遺体から心臓がくり抜かれ、どこかに持ち去られるという事件が起きる。内密に捜査を依頼されたのは、巷で名探偵との噂も高い、オーガスタス・ランドー(クリスチャン・ベール)。彼は、士官候補生たちの中から、一風風変わりだが知的洞察力に優れた※エドガー・アラン・ポー(ハリー・メリング)に目をつけ、密かに助手と密偵役を頼み込む。二人は必死の捜査を続けるが、それを嘲笑うかのように第2の殺人が起き、遺体はやはり心臓を抉られ、さらには去勢されていた。その背後には悪魔崇拝の影がちらつき、一方では猟奇的な匂いも……。彼らが辿り着いた衝撃の結末とは……!?
※ポーがウェストポイント士官学校に在籍していたのは事実に基づいており、後に彼の死の遠因となるアルコール依存症に関する描写もあります。
ポーの「生と死の境界線は曖昧である」という言葉から始まるこの映画。オタクはめちゃくちゃエドガー・アラン・ポーのファンで、詩集も好きだし、『アッシャー家の崩壊』のような幻想小説も、ミステリーの元祖『モルグ街の殺人』『マリィ・ロジェの謎』、リアルな恐怖を体感する『落とし穴と振り子』『赤死病の仮面』、サイコホラー『黒猫』……等々みんな好きなんだけど、この映画、ポーのファンほどミスリードされるんです。おまけに途中から悪魔崇拝の話になっちゃうし😅てっきりポーお得意の幻想奇譚かと思うじゃないですか。ラストの種明かし前のクライマックスのシーンは『アッシャー家の崩壊』のオマージュだし。※主人公のオーガスタスはポーの推理小説に登場する名探偵オーギュスト・デュパンをモデルにしてるの?……とか。
※オーガスタスは、「尊厳」を意味するローマの初代皇帝アウグストゥスの英語名。デュパンはフランス人なので、オーギュストとフランス語読みとなります。
あー、まんまと騙された❗(笑)
ポーが、憧れの女性に自作の詩※『レノア』を捧げる場面があるんですね。「これは貴方を想って書きました」って。(ちなみにその女性は金髪碧眼)しかもご丁寧に、「あなたのそのほの蒼き瞳(Pale Blue Eyes)に捧げる」と言いながら。これがまた落とし穴なのよねぇ……。全てが明らかになった後に、その瞳の真の持ち主がわかるしくみ。
※ああ黄金の酒杯は砕け
美酒は永遠に失われた
弔いの鐘を鳴らせ
気高き処女のたましいは いま三途の川を漂う そうしてギイ・デ・ヴィアよ 涙は無いか
今泣かずしていつ涙する。
……で始まる、若くして逝った美女レノアへの鎮魂歌。オタクが持っている一天社古典新訳文庫より抜粋。
……まあでも今考えてみれば、ランドー初登場のシーン、そして彼がなぜ陸軍士官学校に対して必要以上に敵意を燃やすのか……をはじめとして、ミスリードすると同時に、謎解きへの伏線もちゃんと張り巡らされていたよね。ヲタクが注意力散漫だっただけかも(笑)
季節は冬。雪に覆われた森、ハドソン川に立ち上る冷たい霧。霧や雪は、殺人者の姿を覆い隠してしまいます。(それはあたかも、切り裂きジャックを隠したロンドンの霧のように)
ヲタク、19世紀を舞台にしたミステリーが大好きなんですけど、これもそのうちの1つ。まだ電気も通っていない時代、どこの暗闇に殺人者が潜んでいるかもわからない恐怖。科学的な捜査手段は何一つなく、そしてプロファイリングの祖とも言えるフロイトもその学説が疑問視されていた時代。追う者、追われる者が、知力・気力・体力の限りを尽くし、時には命懸けで戦う。これをロマンと呼ばずして何と呼びましょう。
ジリアン・アンダーソン(『Xファイル』『ザ・クラウン』のサッチャー首相役など)が、ポーの小説に出てきそうな、狂気を秘めたヒステリー気質の良家の婦人を演じて、さすがの貫禄。その他にも、名脇役トビー・ジョーンズ、ロバート・デュバル、シャルロット・ゲンズブール等、なにげにゴージャスなオールスターキャストです。
Netflixでは来年1月6日に配信開始だそうですので、E.A.ポーのファンはもちろん、ミステリー好き、19世紀の時代ものがお好きな方もぜひ❗
★今日の小ネタ
キーパーソンのE. A. ポーを演じるのは、『ハリポタ』シリーズ、あのおマヌケ(失礼!)ダドリー、ハリー・メリング。子役の頃より激ヤセして、顔がすっかり変わってる…。ぜんぜんわからなかった(^_^;)
[明日公開] 映画『ほの蒼き瞳』クリスチャン・ベール主演、19世紀 士官学校が舞台のミステリー小説を実写化 https://t.co/6vuNpXAAV6
— Fashion Press (@fashionpressnet) 2022年12月22日