オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

お正月はライトなミステリーコメディ〜『ウェスト・エンド殺人事件』U-NEXT


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アガサ・クリスティ原作の『ねずみとり』。

俺に言わせりゃ二流の殺人ミステリーだ。

いわゆるフーダニットで、長たらしい序幕で人間関係が紹介され、殺されるのはいつも嫌なヤツだ。

 

……という衝撃的なモノローグで始まるミステリー・コメディ。クリスティ・ファンから総スカンを食らいそうなこの男は、※1 『ねずみとり』の映画化を画策しているハリウッドの映画監督(エイドリアン・ブロディ)。金の亡者で、※2 原作者も脚本家も俳優たちもコキ下ろす尊大なオトコは、自分がクズの嫌われ者だということは自覚していたみたいで(^_^;)『ねずみとり』のロングランと映画化を祝うパーティの夜、

やっぱり殺されるのは嫌なヤツだ。

というセリフを残して殺されてしまいます。

 

※1 ウェストエンドの舞台を映画化する…と言いながら、結末を当時のハリウッドのB級活劇ふうに改悪しようとしたり、主役は英国人ではなくグレース・ケリーにすると周囲に吹聴したり、パーティでは「ホンモノの酒はないのか!バーボンとかウィスキーとか」と叫んだり…と、とにかくヤなヤツなんです(笑)

※2 アガサ・クリスティの戯曲『ねずみとり』は、1952年から2020年までウェストエンドで上演された、連続上演回数世界一の舞台。ヲタクが『オペラ座の怪人』など主にミュージカルを鑑賞した10年前も上演していました(遠い眼)

 

…で、この「嫌なヤツ」が殺されてからは、彼が一番嫌っていた、容疑者が一堂に会して探偵役が登場し、謎を解く「クローズドミステリー&フーダニット」、つまり『ねずみとり』のストーリーそのものの展開になっていきます。

 

時は1953年、場所は第二次世界大戦終結して間もないロンドンの劇場街ウェストエンド(被害者の遺体は殺害現場のパーティ会場からなぜか、『ねずみとり』の舞台上に運ばれていた)。この「ウェストエンド殺人事件」を解決するべく、スコットランド・ヤードから劇場に乗り込んで来たのは、飲んだくれで、妻に不倫の末逃げられてしまった冴えない警部ストッパード(サム・ロックウェル)と、戦争未亡人で二人の子供を抱え、なんとか自活しようと警察に志願した新人巡査ストーカー(名前がストーカーって(^_^;)…シアーシャ・ローナン)。この、ヤル気なさそうでそのじつ推理力ばつぐんの「隠れデキル男」の警部と、メモ魔で早とちりだけど正義感溢れる巡査の凸凹バディがとっても魅力的❗

 

アカデミー助演男優賞に輝いた『スリービルボード』の名演技をはじめとして、ナチスの幹部でありながら人道主義者でユダヤ人の主人公を体を張って助ける軍人を演じた『ジョジョ・ラビット』など、テンション高めの演技が印象的なサム・ロックウェルですが、今回のユルい役もいいなぁ、なーんちゃってハンフリー・ボガードみたいな。バディの巡査が映画オタクで、「今までで1番感動した映画は、※3 『アフリカの女王』です」ってセリフがあるから、やっぱりボガードを意識してるんだろうか…深読みしすぎか(^_^;)

※3 第一次世界大戦下のアフリカ。ボロ船の船長(ハンフリー・ボガード)と同乗した女性(キャサリン・ヘップバーン)が敵に立ち向かうアドベンチャー・ロマンス。

 

かたやシアーシャ・ローナン、我が推しジャクロことジャック・ロウデンの最愛のパートナーである彼女。史上最年少でアカデミー賞にノミネートされ、以降はノミネート常連の演技派ですが、ジャクロのインスタに時折登場する素顔のシアーシャは、ユーモアがあってとっても可愛い人。ヲタクは、ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブタペストホテル』や『フレンチ・ディスパッチ』での彼女のキュートでポップなコメディエンヌぶりが大好きなので、今回もすごく良かった〜♥

 

 クライマックス、雪の中関係者たちがアガサ・クリスティ本人の別荘に集められるのですが(クリスティ本人や、再婚相手の考古学者マックス・マローワンも登場、メソポタミアから持ってきたという怪しげな飲み物を勧めたりする小ネタも)ラストは殺された監督が狙っていたドンパチアクションで締めくくる…という、イキな展開に。

 

お正月にピッタリなこのライトなミステリー、U-NEXT での配信が1月いっぱいになっているんですけど…。ということは、映画館公開前の先行配信?映画館で公開されたらまた見に行こうっと。何しろ小ネタ満載で、犯人がわかった後に見直しても面白そうなんだもん🎵