オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想、推し活のつれづれなどを呟いたりする気ままなブログ。

心に刺さりまくる30歳の肖像画〜『わたしは最悪。』

 
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 U-NEXTで、『わたしは最悪。』(ヨアキム・トリアー監督)鑑賞。

 

 随所に心に刺さりまくる映画でした。時に共感し、時に痛かった。ヲタクも、主人公のユリヤと同様、人生の岐路でさんざん迷い、プライドと自己嫌悪の間を行きつ戻りつし、沢山たくさん人を傷つけてきたから。若さゆえの無知と傲岸さ…と言えばそれまでだけど。 …だけど、だけど、その時は必死だった。懸命に前を向いて、真剣に生きていたことだけは事実。だから、映画の中のユリヤを通じて透けて見える数十年前の自分自身が、恥ずかしくて舌打ちしたくなる一方で、泣きたいくらい愛おしい気持ちにも、なる。

 

 ヒロインのユリヤ(レナーテ・レインスヴェ)は30歳。少女の頃から頭脳明晰だった彼女は、「医大は成績優秀者に相応しい進路だ」とナレーションにあるように、当然の如く医学部に進学したものの、「自分が目指しているのは身体じゃなくて心❗」とある日突然目覚めて❓あっさり退学、臨床心理士の道へ。それにもピンとこなかったユリヤは、今度は文筆家を目指して書店のアルバイトを始めます。そんな時知り合ったのが、著名なコミック作家のアクセル(44歳…アンデルシュ・ダニエルセン・リー)。一回り以上年上の安定した大人の彼にたちまち恋したユリヤは、すぐに同棲生活に入ります。アングラで、コミックを通じて権威を痛烈に批判するリベラリストの彼でしたが、家族観は予想外に古風で、ユリヤに対して、早く結婚して子供を作ろうと迫ります。アートな才能に溢れる彼に対して尊敬とコンプレックスがないまぜになり、しかも、未だ「何者にもなれていない自分」に苛立つユリヤは、あるパーティで偶然知り合ったパン屋店員のアイヴィン(ハーバート・ノートラム)と恋に落ちます。アクセルに対して抱くある種の引け目を感じずに、気楽に付き合えるからでした。しかしある日、アクセルの友人から、彼が重病に冒されていることを聞かされたユリヤは……!?

 

 自己が確立されない限り、真の恋愛は出来ない…という理論を地でいくようなユリヤの右往左往。彼と口論すると本音が出て、アクセルとケンカした時には「あなたと一緒にいると私は一生脇役なのよ❗」と叫び、アイヴィンには、「これからずっとパン屋で働くつもり?あなたはそれでいいの?」と口走って、自分の残酷さにハッとして落ち込むユリヤ。

 

 舞台がノルウェーオスロだからね〜。世界で一番フェミニズムが進んでいる地域だと思うし(映画に出てくる男たちのなんと懐の深いこと❗)、女性の人生の選択肢も豊富である一方で、それだからこそヒロインが迷って、人生の袋小路に入っちゃう感じがよく描かれてましたね。直近に見た日本映画『そばかす』のヒロイン(三浦透子)も、偶然にも30歳でした。彼女は、内なる迷いというよりもむしろ、外なる敵……社会的通念とか、周囲の無理解と必死に戦ってた。2つの映画を見比べてみると、日本とノルウェー、それぞれの国の女性の立ち位置の違いがよくわかって、面白いです。

 

 ヒロインのレナーテ・レインズヴェは、この作品の演技で、見事カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。彼女はもちろんのこと、ヲタク的には、アクセル役のアンデルシュ・ダニエルセン・リーも、業病を患い、知的でリベラルな文化人の矜持から「元気なフリ」をしつつ、ふと、孤独感と死への不安をユリヤに吐露するシーンなど、レインズヴェに負けず劣らずの名演だったと思います。

 

★今日の小ネタ

オスロの、目に染みるような美しい風景。そして、親族全員が夏休みに一堂に会すことのできる広い広い庭付きの戸建て。……やっぱりさ、北欧の暮らしって豊かだよね〜、何だかんだ言っても。特にノルウェー石油資源開発の成功により、英国レガダム研究所の「繁栄指数」堂々の世界第1位だから、ユリヤが鬱々と悩んでいても、日本人のヲタクから見ると、(ユリヤちゃん、それ、ちょっとゼイタクな悩みなんじゃなーい?)って突っ込みたくなるシーンもちょっぴりあったことは、否めないかも(小声(^_^;))