オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

異世界・祇園へようこそ❗〜Netflix『舞妓さんちのまかないさん』

 
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(From Pixabay)

何しろ毎回、主人公のまかないさんキヨ(森七菜)が作る料理……※おにぎり、湯剥きトマト、ふっくら親子丼、茄子の煮浸し、野菜の天ぷら、クリームシチュー、たまごのひとくちサンド…等々が美味しそうで美味しそうで🤤「お腹が空いてる時に見てはいけません」番組の二大巨頭は、『孤独のグルメ』と『舞妓さんちのまかないさん』どす❗(断言)

キヨの握ったおにぎりを食べた男衆(芸舞妓の身の回りの世話をする人)の武(北村有起哉)が、その美味しさに「お前、手からなんか出とる」って言うシーンが好きだなぁ。愛情の籠もった「キヨの出汁」(笑)

 

 

 修学旅行で出逢った祇園ナンバーワン※芸妓の百子(橋本愛)に憧れ、はるばる青森から京都花街の「屋形」にやって来た16歳の同級生同士キヨとすみれ(出口夏希)。最初から類まれな舞の才能を発揮するすみれとは違い、キヨは今1つ熱意が足りず、踊りのお師匠さん(戸田恵子)からは叱られてばかり。むしろキヨは、腰痛のまかないおばさんの助手をしていたほうが楽しそう^^;。そんなある日のこと、とうとうキヨは、「あなたは舞妓に向いていない」と、引導を渡されてしまいます。ところが、あと少しで青森へ帰されるというある日、キヨがたまたま作ったまかないごはんの親子丼に舞妓さんたちは大喜び。その様子を見た屋形の女主人である梓(常盤貴子)は、ある妙案を思いついて……。

舞妓はまだ修行中の身。昼間は芸事のお稽古、夜は先輩の芸妓についてお座敷へ出ます。舞妓は自毛で髷を結いますが、芸妓はかつらを被ります。作品中、百子や後出の吉乃(松岡茉優)は芸妓なので、自毛なんですね。

 

 舞妓の夢は潰えたものの、まかないさんとして生き生きと自分自身の人生を歩み始めるキヨと、親友のすみれをはじめとして、「屋形」を巡る個性豊かな人々の日常を、京都の街の季節の移ろいを背景にして、きめ細やかに描いた会話劇と言えるでしょう。


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 何よりキャスティングが見事❗しょっぱなから登場するのがキヨのおばあちゃん役の白石加代子だもん、凄いインパクト(笑)初々しいWヒロイン、森七菜と出口夏希はもちろんのこと、二人を支える脇役陣が当代きっての名優揃い。はんなりゆったり、しかも芯はしっかりの京女を存分に演じるベテラン松坂慶子常盤貴子橋本愛の孤高の美しさ、松岡茉優のおきゃんな魅力…。リリー・フランキー井浦新北村有起哉尾美としのり、古館寛治…と、本来なら非常に個性的な演技を魅せる男優陣が、今作品では女優さんたちの引き立て役に徹して、抑えた演技を見せているのも、ヲタク的にはツボでございました。

 

 一緒に見ている夫(注・韓国ドラマにハマっている)がいみじくも「出て来る人たちが皆良い人だよね。韓国ドラマだと、一人くらいはイジメ役が登場するんだけど…」と申しておりました。…そう言えば、どこぞの無粋な週刊誌が「舞妓さんの賄いの実態はドラマと全く違う」という記事を書いてたっけ。見出しだけで中身は読んでないけど。まあ、ようするに、祇園のリアルはもっと、ドロドロしてるぜ、って言いたいのよね。これって、銀幕で爽やかイケメンを演じる推しにクラクラ来た後、「映画のヒーロー役○○、隠された裏の顔」なんて見出し見て、鼻白むのと同じね。推しのプライベートなんて、こちとら知ったこっちゃないのよ。実生活でどんなにポンコツであろうと、役者は銀幕で華やいで、夢をくれればそれでいい。

 

舞妓さんちのまかないさん』も同じこと。これは祇園のドキュメンタリーじゃあ、ないの。是枝監督が創り上げた、祇園パラレルワールドなんだよぉ。京都に遊びに行ったところで、芸妓さんをお座敷に呼んで遊ぶだけの地位もおカネもないヲタクにとって、芸舞妓を演じる女優さんたちの美しさと、京都の綺麗な景色と、京都弁の音楽的な響きに酔うこのドラマは、森鷗外ぢゃないけれど、※「学問こそ心に飽き足らぬところ多かれ、浮世の憂きふしを知りたり、人の心の頼み難きは更なり」の昨今、ヲタクにとって得難い癒やしのひと時なのです。

舞姫』より。遠い異国、独逸の舞姫エリスが見舞われた運命は苛酷なものでしたが、京の都の舞姫ちゃんたちには幸せになって欲しい。どんなかたちであれ…ね。

 

 

 最後にもう1つ。なぜ是枝監督がこの原作を選んだのか。『海よりもまだ深く』、『万引き家族』、『海街Diary』、『ベイビーブローカー』など、必ずしも血縁に縛られない、異形だけれども愛情深い「家族の可能性」を追求し続けて来た監督。家族と遠く離れて京の街にやって来た年端も行かぬ少女たちにとって、尾形の女主人たちは母であり、芸妓は姉、男衆は父親のような存在。尾形同士が内線で繋がる祇園の世界は、監督にとって、「異形の家族」の1つの完成形だったからではないでしょうか。

 

 

 

 

★今日のおまけ

 様々に素敵な登場人物が往来するこのドラマですが、主旋律を奏でるのはもちろん、まかないさんのキヨ。大事にとってあったプリンを他の人に食べられてしまい、がっかりしているつる駒(福地桃子)に、「プリン味」のフレンチトーストを夜食に作って上げたり、初めて髷を結って眠れない百はな(すみれの芸名)に、「おなか、温まれば眠れるよ」と、さりげなく甘酒を出してあげたり……。森七菜が、まるでキヨその人自身のように自然体で演じていて、彼女を見ているだけでほっこり温かい気持ちになります。