オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

セクシー魔人❤イドリス・エルバ〜『アラビアンナイト 三千年の願い』

 
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 「KINO CINEMA 横浜みなとみらい」にて、『アラビアンナイト 三千年の願い』鑑賞。

 

 ナラトロジー(物語学)の権威である英国人女性アリシアティルダ・スウィントン)は、物語学の国際会議の為、トルコのイスタンブールを訪れます。彼女は自立した一人暮らしの女性で、ライフワークを持ち、そんな毎日にとても満足している……と、アリシア自身のモノローグによって語られます。…しかしライフワークである物語学に生き甲斐を見出していると言いつつ彼女は、パネルディスカッションの最中、「現代の物語の役割は終わりを告げたかのように思われます。僅かにメタファとして残っているだけで…」などと発言し、客席に(何てことを言うんだ❗)とばかりに怒り狂う巨人の神(どの神さまのオマージュなんだろう…衣装からして北欧系?)の幻想を見たりします。アリシアが決して現在の自分自身に満足してはいないのだ……と、冒頭からさりげなく私たち観客に想像させる心憎い演出です。彼女の深層意識が、後に彼女が下す決断の伏線になっているからです。

 

 そんな彼女はイスタンブールの骨董品店で、とある硝子瓶を手に入れます。翌朝彼女が洗面所でガラス瓶をキレイにしていると(電動ハブラシでこすってましたね (^_^;)魔人の呼び出しも現代風というわけです 笑)アラ不思議、モクモクと黒煙が立ち上り、アラジンと魔法のランプよろしく、美ボディの魔人(ジン)登場〜〜❗演じるはイドリス・エルバ。ピープル(米)誌の「世界で最もセクシーな男性」№1に選ばれ、一時期は次期ジェームズ・ボンドの最有力候補でもあったエルバが、そのセクシー・ダイナマイトぶりをいかんなく発揮してくれます。彼を初めて見た時、アリシアが無表情・無感動なのが信じられん(笑)

 

 ジンが魔界から与えられた役割は、人間の願いを3つ叶えること。首尾よく叶えることができれば、ジン自身も呪いから解放され、永遠の自由を手に入れることができるというのです。自分は今の生活に満足している、願いなどないとすげなく突っぱねるアリシアに、ジンは問わず語りに、これまで3つの願いを成就出来ずに来てしまったその理由をアリシアに話して聞かせるのでした。それは、与えられた使命と言いつつじつは、相手に幸せになってもらいたい、人の役に立ちたいと願って三千年も生き永らえていながら、所詮願いを叶えてくれる便利な存在としか認識されないジンの、愛と孤独の自分史なのでした。「幸せは他者に認識されること」と言うジンと、「欲望は不幸のもと。欲望の欠如は知の光となり得る」と反発するアリシア

彼の三千年にも及ぶ壮大な物語を聞くうちにアリシアは、次第にその頑なな心を溶かしていきます。果たして彼女が最後に出した答えは……!?

 

 何しろ、ジンが紡ぐ物語の、目にも鮮やかな美しい映像が素晴らしい。※1「シバの女王とソロモン王」から始まり、「血に飢えたオスマン皇帝ムラト4世とその弟・※2快楽主義者イブラヒム」、「父スレイマン1世から処刑された悲劇の皇子※シェフザーデ・ムスタファ」、そしてジンが初めて心から愛した数学の天才、ゼフィールの物語…等々、絢爛豪華な物語絵巻をとくと御覧あれ❗

※1 旧約聖書「列王記」より。聖書ではシバの女王のほうがゾッコンになりますが、ジンの話では今ふう?に立ち位置が逆になっています。

※2 デブ専だったという設定のイブラヒムの後宮の様子がヤバいです(^_^;)『カリギュラ』か『サテリコン』かはたまた『バビロン』か。

※ドラマ『オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム』にも登場しますよね。今回の映画でも、なかなかにイケメンの俳優さんが演じています。

 

 大人の為の官能的なファンタジー……というだけでなく、女性の生き方や、社会に依然として潜む差別や分断、情報に溢れ返る現代社会への皮肉など、ちょっぴり辛口なスパイスも利いています。監督はジョージ・ミラー。『マッドマックス 怒りのデスロード』ではナミビア砂漠で戦車をぶっ飛ばし、ガチバトルをリアルに繰り広げたミラー監督ですが、今回はCG等先端の映像技術を駆使して、美しき寓話世界に見ている者を誘ってくれます。

 

★今日のおまけ

 ジョージ・ミラー監督のインタビュー、監督はティルダ・スウィントンのことを敬意を込めて「ティルダ様」と読んでいるというくだりを読んでヲタク、狂喜乱舞(笑)だって、ヲタクも今までずっとブログの中で「ティルダ様」って呼んでいたから…。名だたる監督とのタッグが続くティルダ様。ミラー監督は

としても、役者としても最高。彼女と仕事をした監督の一人になれて光栄です。私は今回が初めての仕事だったけれど、優れた監督たちは彼女と何度も仕事をしている。彼らが彼女と組むのは、彼女の絶対的な個性と風格にあるのだと思う。

と語りますが、この辺りが、ティルダ様の出演する作品が名作揃いである理由なんでしょうね。