『アラビアン・ナイト 三千年の願い』を見て、御年63歳というのに、変わらぬ知的な美しさにまたぞろティルダ・スウィントン熱が……(単純 笑)でもって、彼女の過去の作品を見返したりしている週末。なので今日は、世界でも名だたる監督たちからのオファーが引きも切らないティルダさまの魅力が堪能できる映画を、独断と偏見により年代の古い順から選んでみました。
※第77回ヴェネチア国際映画祭で「栄誉金獅子商」を受賞したティルダ・スウィントン
★『オルランド』
(1993年 サリー・ポッター監督)
映像化不可能と言われたヴァージニア・ウルフの小説を、サリー・ポッター監督が堂々の映画化❗ティルダさまという逸材が存在したからこそ、成し得た偉業と言えるでしょう。ヲタクがティルダさまの魅力にハマった記念すべき?作品です。
エリザベス1世の寵臣として不死の誓いを立てたオルランド。様々な愛の遍歴を経たオルランドは、東洋への旅を経た後に長い眠りにつきますが、目覚めた時にはなんと、女性の姿に変身していました……❗
ティルダさまといえばクールビューティの代表選手のような人ですが、その底に燃えたぎる情熱が仄見えるところが一番の魅力。その点で、愛に生き、詩を愛したオルランド役はまさに適役。30歳そこそこ、彼女のアンドロギュヌス的魅力が爆発の作品です。
★『フィクサー』
(2008年 トニー・ギルロイ監督)
ジョージ・クルーニーがカッコいいイケメン封印、弁護士でありながらギャンブル漬け、法律会社のクライアントの為様々なコネを使って事件を揉み消す男を演じた「フィクサー」。ティルダさまは、男社会でクールで自信たっぷりに立ち回っているように見せかけて、そのじつ、いつその地位から蹴落とされないかと不安に苛まれ、悪に手を染める巨大企業の法律部長を演じました。
彼女自身もケンブリッジ大学出の才媛(エディ・レッドメインやトム・ヒドルストンの先輩ですね)、キャリア演じたらリアルにハマる😊TVニュースの撮影を控え、緊張でブラウスの脇の下にじっとり汗かく場面で登場。キャリアもいいけど、女性ならわき汗パッドしなきゃ、っていうね。でもその生々しさが強烈だった。この作品の演技により、見事アカデミー賞助演女優賞受賞。
★『ナルニア国物語』(2011年)
これは日本でも人気があった映画なので、ティルダさまの演じた、美しく凛々しい「白い魔女」を覚えている方も多いのではないでしょうか。1つのファンタジー映画として見た場合、作品の出来は『ロード・オブ・ザ・リング』などと比べて$#)(&¢£€%……なんですが(^_^;)
なにせ、ティルダさまの人外なる美しさは圧倒的で、今でもたーまに見たくなるんだよねぇ、この映画。(笑)
★『少年は残酷な弓を射る』
(2012年 リン・ラムジー監督)
ああ、もうこれは、母親の心にナイフを突き立てられるような映画。ティルダは、子どもを産んでしまってから、自分は母親不適格者だと自覚してしまう母親…という難役。ワタシは娘二人だからまだ少し冷静に観れたけど…。息子がいたら、最後まで観れたかな。でも、キツくても、世の中のママたちには観てもらいたい作品。今でこそ『ロスト・ドーター』など、正面切って「母性神話」に疑問を投げかける作品が出始めたけど、この作品を10年前に作った…って、勇気あるよなぁ…。
息子ケヴィンを演じたエズラ・ミラー、傷つきやすくて鋭敏、一方通行の、母親への歪んだ愛情が恐ろしい結末を引き起こしてしまう、屈折した感情表現が素晴らしく、その若い才能を受け止めるティルダさまの演技も凄い。
★『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
(2013年 ジム・ジャームッシュ監督)
主人公は、何世紀にも渡って生き続けて来た吸血鬼の夫婦、その名もアダム(トム・ヒドルストン)とイヴ(ティルダ・スウィントン)。アダムはアングラのカリスマミュージシャンとして、デトロイトの廃屋のような古い大きな家にひっそりと暮らし、古書収集家のイヴはタンジールで大量の本に囲まれて暮らしています。アダムは最近、人間たちの蛮行に心を痛め、ひどく厭世的になっていて、なんとはなしにそれを感じ取ったイヴが、夫を励ましに訪れることからお話が進んでいきます。彼らは人間に噛みついて血を吸う…なんて野蛮なことは決してしません。「質の悪い、汚れた血液を飲むと体に悪い」と言って憚らず、ヴィーガン好きのセレブよろしく、医者から闇取引でゲットした「キレイな血液」で、細々と生きています。二人の愛の交歓場面は、ヲタク的には映画史上5本の指に入るラヴシーンだと思います。まるで美術品…みたいな。ロダンの彫刻『接吻』を彷彿とさせる…みたいな。
キャリア・アスピレーション(出世)を目指している人の映画を撮ることにまったく興味がない。僕のどの映画にもテーマとしてあるのが、そうしたキャリア・ハッスル(出世主義)の外側にいる人たちなんだ。
と語るジャームッシュ監督が、そういった「社会の外側に弾き飛ばされた人々」の悲哀を、二人の優しき吸血鬼の姿を通して表現した佳作と言えるでしょう。
★『胸騒ぎのシチリア』
(2016年 ルカ・グァダニーノ監督)
声帯手術をして、今は声を失った状態のロック・シンガー、マリアン(ティルダ・スウィントン)は、親子ほども年の違う若い恋人ポール(マティアス・スーナールツ)と人里離れたイタリアのパンテッレリーア島のヴィラで静かに暮らしていました。そこに、元恋人で音楽プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が、離婚した妻との間にできた娘ペネロペ(ダコタ・ジョンソン)を連れて強引に乗り込んで来ます。大量の食材を勝手に注文したり、女友達を連れ込んだり、傍若無人に振る舞うハリー。そして、ペネロペもどこか謎めいてエキセントリック。それぞれ秘密を抱える四人の間には張りつめた緊張感が漂い、マリアンとポールは次第に精神の均衡を失っていきます。そしてある日、思いもよらぬ恐ろしい出来事が…。
4人の愛憎が複雑にからみ合い、悲劇へと突き進むプロセスが非常にスリリング。まずもってティルダさまのロックスターっていうのがツボ。デヴィッド・ボウイとはマブダチで、「ふたごみたいに似てる」って言われてましたからね。パリコレモデル並みのスタイルの持ち主、ティルダさまが着こなすディオールのゴージャスな衣装も見モノです❗
★『ドクター・ストレンジ』(2017年)
ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の魔術の師匠、エンシェント・ワン役。コミック版ではチベット出身のアジア人キャラであったこの役に起用されたことで、当時問題にされていたホワイトウォッシング問題(非白人の役を白人に置き換える)に巻き込まれてしまったティルダさま(ToT)
……でもいいの❗ヲタク的には映画史上最高に美しいスキンヘッド姿が拝めたし、何よりベネさまとのツーショットが見れてシアワセ❤口さがない人たちが何を言ったところで、ティルダさまの美しい姿は、永遠に銀幕に刻みつけられたのだから。
★『サスペリア』
(2019年 ルカ・グァダニーノ監督)
グァダニーノ監督が、イタリアの同名の伝説的ホラー映画を1970年代の東ドイツに置き換えてリメイクした作品。第二次世界大戦後、勿論東西ドイツは分断され、ナチスの爪痕もまだ癒えていない時代。高名な暗黒舞踏集団に憧れ、アメリカからはるばる入団試験を受けに来たヒロイン、スージー(ダコタ・ジョンソン)。しかし彼女の周辺で次々と不気味な出来事が続きます。
ティルダさまは、スージーを恐怖のドン底に落とし入れる舞踏団のカリスマ指導者(これがもう、怪しいことこの上ない😓)、舞踏団の隠された秘密に疑問を持ち、探ろうとする老齢の精神科医(注・80才男性)、そして最後クライマックスの場面で現れる人物(美しいティルダさまの原型留めておりません😢)の、なんと三役を演じてます❗
『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』でも、当時の社会主義社会の暗黒を背景に、ホラー映画の存在意義を拡張した作品の1つとして絶賛されています。
★『フレンチ・ディスパッチ』
(2022年 ウェス・アンダーソン監督)
作品的には『グランド・ブダペスト・ホテル』のほうが好みなんだけど、なにせ特殊メークが…(^_^;)本人だって認識できないんだもん(笑)アンダーソン監督のティルダさまに対する絶大なる信頼も、ティルダさまの役者根性もじゅうぶんわかるんだけどさぁ。
フランスにある架空の街アンニュイ・シュール・ブラゼ。この街で発行されている雑誌「フレンチ・ディスパッチ」。その名物編集長アーサー・ハウイッツァー・Jr(ビル・マーレイ)が心臓マヒで突然亡くなり、彼の遺言通り、雑誌は彼の死をもって廃刊が決定します。ハウィッツァー編集長へのはなむけともなる最後の追悼号を、一癖も二癖もあるライターたち(ティルダ・スウィントン、フランシス・マクドーマント、ジェフリー・ライト)がこれまでのライター人生を賭けて渾身の記事をモノにしようと悪戦苦闘。ティルダさまは美術評論家の役で素顔に近いお姿。…しかし古風なヘアスタイルのせいで、角度によってはサッチャー首相に見えなくもなかった(笑)。
※プリンス・オブ・ハリウッド、ティモシー・シャラメもティルダさまの魅力にゴロニャン 笑
★『アラビアンナイト 三千年の願い』
(2023年 ジョージ・ミラー監督)
そして10番目が、最新作『アラビアンナイト 三千年の願い』。サスガに昨日ブログ書いたばっかりなので(笑)興味を持たれた方は、昨日のヲタクの映画日記を読んでみて下さいネ❤
その容姿、演技、知性、映画愛、作品の選択眼、人生への向き合いかた全てにおいて完璧な映画人たるティルダ・スウィントンは、2年前の第77回ヴェネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞しました。(ちなみに、我が日本の誇る黒沢清監督が、名作『スパイの妻』で銀獅子賞(監督賞)を受賞した年です)対コロナ対策の為唯一無二の黄金のマスク姿で登場したティルダ。志半ばで病に倒れ、亡き人となってしまったブラックパンサーことチャドウィック・ボーズマンを「ワカンダ(ブラックパンサーの王国)フォーエバー」ポーズで追悼しました。そしてそして、シェイクスピアもかくや…と思わせる詩的な受賞スピーチ❗
映画は私にとって幸せな場所であり、本当の母国。映画に携わる人たちの流れは私にとっての家系であり、この賞をこれまで授賞してきた人たちの名前は私にとって師のリストです。私の部族の長老たちなのです。
映画という言語によって書かれた詩を私は何よりも愛し、映画の中の歌をお風呂で歌う。
私は彼らの成し遂げた高みの麓に行くために駅までヒッチハイクしている映画マニアのパンクキッズなのです。
栄誉賞を受賞するほどの輝かしいキャリアを持ちながら、先達を心から讃え、自らを「まだまだヒッチハイク中のパンクキッズなのよ😉」と、お茶目な表情で語ったティルダ。これからもきっと、そのチャレンジ精神と情熱で、私たちに素晴らしい作品を届け続けてくれることでしょう。