オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

ニューヨークを舞台にしたおススメ映画〜PART2

 先日ご紹介した、憧れの街ニューヨークを舞台にした映画の特集パート2❗

 

ウェスト・サイド・ストーリー

(2022年 スティーブン・スピルバーグ監督)

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※ジェッツのリーダー、リフの人物造型に新たな息を吹き込み、BAFTA英国アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたマイク・フェイスト(中央)

 

 何故今になってリメイク?って声もチラホラ出ていたこの映画。昔むかしロバート・ワイズ版にハマって映画館に日参したヲタクとしては最初、ちょっとコワゴワ…だった。しかしさすがスピルバーグ監督、随所でワイズ版と匹敵する、あるいは超える演出を見せてくれた❗

 
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 ワイズ版の1番の特色だった「序曲」の部分(カラフルなシルエットがニューヨークの$&〉/@#-"に突如変化して「おおっ❗」と思わず声が出るあのオープニングね)は思いきってカット。すぐにジェッツとシャークスの乱闘に持っていく。俯瞰して撮るのではなく、若者たちにぐっと寄っていって追いかけるリアルな疾走感が凄い。


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  ワイズ版の『アメリカ』はトニーとマリアが初めて出逢う体育館のパーティーの後、マリアやベルナルドが住むアパートメントの屋上シーン(夜)なんだけど、今回は翌朝の太陽の下、街の通りに出て歌い踊り、道行く人が拍手喝采、まるで屋外のパフォーマンス状態。解放的で明るくて、この演出はスピルバーグに軍配が上がった気がします。

 

 そしてそしてスピルバーグ版はね、状況設定がまずもって巧いのよー。少年ギャングたちの住む界隈がニューヨークの再開発地区に指定され、立ち退きを要求されているという時期設定(冒頭に、「リンカーンセンター建設予定地」の看板が映される)。新天地を求めてアメリカに渡って来たのに、なぜまた流浪の身にならなきゃいけないんだっていう、少年たちの焦燥感と鬱屈した怒りが、ヒリヒリ伝わって来る。古びた建物が次々と取り壊され、瓦礫の山に変わっていく。遅かれ早かれ追放される運命だというのに、その土埃の塊を「オレたちのシマだ」と言って旗を突き刺し、命さえ賭けて闘う少年たちの魂の暗黒。


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  ワイズ版では白人(ジェッツ) VS  有色人種(シャークス)の対立…という単純な構図だったけど、実を言えばジェッツの方もポーランド系やイタリア系、アイリッシュなど、混成の移民軍団なのね。シュリンク警部補が「アメリカに来て、金持ちになりそこなった貧乏白人ども」と吐き捨てるように言ったり、ベルナルド(デヴィッド・アルバレス)がトニー(アンセル・エルゴート)のことを「Big dumb Polack(ノロマなポーランド人の大男)」って毒づき、アニタ(アリアナ・デボーズ)に「移民の悪口言うなんて、アメリカ人みたい」って突っ込まれる場面も。(「オレはアメリカ人じゃない、プエルトリコ人なんだ」って言うのが、ベルナルドの口ぐせ)ちなみにPolackは差別用語で、正しくはPolishです。アメリカでは、ポーランド人と言うと、肉体労働者というイメージ。テネシー・ウィリアムズ欲望という名の電車』のスタンリー・コワルスキー(映画ではマーロン・ブランドが演じた)とか、ジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』とかね。さすがスピルバーグ、社会の分断化がさらに複雑になっている現在のアメリカを巧妙に表現してるなぁ…と思いました。偉大な名作にさらに新しい息を吹き込んだスピルバーグ監督に乾杯❗

 

ストレンジャー・ザン・パラダイス

1984年 ジム・ジャームッシュ監督)


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 人種のるつぼ、移民たちがひしめく街ニューヨーク。本編の主人公、ハンガリー移民のウィリーもまさにそんな一人。憧れのニューヨークに来てアメリカン・イングリッシュを身につけても定職につかず、いかさまの賭けポーカーや競馬で食いつなぎ、ぺラペラの肉が入った『TVディナー』をつつく日々。彼の本名はベラなのですが、アメリカ人になりきりたい彼は自分でウィリーと改名したのです。そんな彼が悪友のエディと故郷のブダペストから出てきたいとこのエヴァと共にパラダイス(フロリダ)を珍道中する顛末。しかし所詮彼らはストレンジャー(異邦人)。どこへ行ってもinはできない、thanで外に弾かれたまま、流離うしか術はないのです。

 僕はキャリア・アスピレーション(出世)を目指している人の映画を撮ることにまったく興味がない。僕のどの映画にもテーマとしてあるのが、そうしたキャリア・ハッスル(出世主義)の外側にいる人たちなんだ。

…と語るジャームッシュ監督。作品の中で、社会に存在していても周囲にそこはかとない違和感を抱えるストレンジャーたちに常に温かい眼差しを注ぎ続ける監督の、面目躍如たる1本。

 

★『tick, tick... BOOM!:チック、チック...ブーン!』(2021 リン=マニュエル・ミランダ監督)


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 これはねー、特筆すべきはニューヨークの町並みとダイナーとアンドリュー・ガーフィールド❗何はなくともアンドリュー・ガーフィールド(笑)前回のオスカー・主演男優賞、ヲタク的には100%アンドリュー・ガーフィールドだった。伸びのある力強い歌声が素晴らしく、世になかなか認められない焦燥を抱きつつ、それでもなお、音楽への愛と希望を捨てない熱い心を持つ青年の役を演じ切って、司会者殴って物議を醸した誰かさんの演技よりよっぽど……#@[]¢£€℃℉%$#@……ってそれはさておき(笑)


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※「あと1週間で30歳になっちゃう!まだ1作もミュージカル完成していないのに!」と、焦燥に駆られるラーソン(アンドリュー・ガーフィールド)。

 

 10年もの長い間ブロードウェイでロングランを続けた名作ミュージカル『RENT レント』の作詞作曲、脚本家として世界に知られるジョナサン・ラーソン。『チック、チック…ブーン❗』の舞台は、1990年のニューヨーク、『RENT レント』の初演から遡ること5年前。ダイナーでめちゃくちゃ忙しく働きながらミュージカル作家としての成功を夢見るジョナサンその人を描いたミュージカルです。

 

  このジョナサン・ラーソンは、なんと『レント』初演の前日に、大動脈解離の為に帰らぬ人となってしまいます(映画の最後でもそれが語られます)😢『チック、チック…』は、夢を叶えようと奮闘する若者のポジティブな青春を描きながらも、やがて訪れる悲劇の不穏な翳が、そこかしこに見え隠れしているよう。そんな二重構造に、ガーフィールドの、明るさの中にどこか悲劇的な匂いのする独特な個性が、ぴったりハマっている気がします。

 

★レオン

(1994年 リュック・ベッソン監督)


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※スタンの登場シーン。当時おうちにスダレがあった人は、密かにマネしたはず(笑)

 

 ストーリーは今さら説明する必要もないくらい有名な作品で、日本でも大ヒットしましたね。凄腕の殺し屋レオン(ジャン・レノ)と、麻薬組織に家族を皆殺しにされた少女(ナタリー・ポートマン)、天涯孤独な二人が、ニューヨークの街の片隅で魂を寄せ合うさまが、切なくも感動的な映画です。封切当時のキャッチコピーは「凶暴な純愛」。ジャン・レノの寡黙な、しかし味のある演技、そしてこの作品で鮮烈なデビューを飾ったナタリー・ポートマンの煌めくような魅力。どちらも素晴らしいっ❗


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※さんざん弾を撃っておいて、「血で下ろしたてのスーツが汚れた、クソっ」って…。キング・オブ外道だよ、コイツ(笑)

 

 だけど、だけど……。

ヲタクにとってこの映画はゲイリー・オールドマンの映画なの。

 麻薬取締官のクセに裏ではヤクの密売稼業、裏切り者は皆殺し、女子供にも容赦しない、しかも背後から拳銃ぶっ放すようなクズ中のクズ、ノーマン・スタンフィールド(愛称スタン)。……なのになぜこんなにもハマってしまったのか、今もってナゾである。


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 今でこそ権力の闇を描いたノワール系の映画も作られるようになったけど、※30年前のアメリカでは、たとえフィクションでも警察官は清く正しい聖職のイメージ、ヤクの密売人の警官なんて登場しなかったよね^^; そこに一発ブチ込んだのがリュック・ベッソンゲイリー・オールドマンというわけ。そもそも監督が「恐るべき子供たち」の1人、フランス人のリュック・ベッソンだからね。アメリカ人のピューリタニズムをしりめに、暗黒の実存主義(笑)ニューヨークが舞台でも、その精神の病み具合はゴダール並み。そんなリアリズムが、今も昔もヒネクレ者のヲタクの心を捉えたのかも……しれない(笑)

当時のアメリカの映画関係者の神経は逆なでしちゃったもよう(^_^;)20分弱という短い出演時間に、あれだけのインパクトある神演技を見せたゲイリー、その年のアカデミー賞に受賞はおろか、ノミネートすらされていません。


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これも超有名なシーン。ヤクを噛み潰して、ぐりっと首回して恍惚のタメ息を吐く…っていう。ゲイリーって、後々定番になりそうなスタイリッシュな「キメポーズ」を考えつくのがめっちゃ上手なんだよね。

 

真夜中のカーボーイ

(ジョン・シュレジンジャー監督)


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 ジョー・バック(ジョン・ヴォイト)は、テキサスのど田舎にあるスーパーで食堂の皿洗いをしている脳みそ筋肉青年(^_^;)(このムキムキのカラダで金持ち女を引っ掛けよう)とばかりに、ジョン・ウェイン顔負けのカーボーイスタイルに身を固め、ニューヨークへやって来ます。

 ところが、カラダ自慢の気のいいだけの青年に都会の風は冷たく、行きずりの娼婦に持ち金を全部を巻き上げられる始末。たちまち今日の食べ物にも困ったジョーは、公衆トイレでゲイのオジサンたちの相手をすることに……。そんな彼から金を騙しとろうと声をかけてきたのが、「ラッツォ(ネズミ)」と呼ばれるサギ師のエンリコ・リッツォ(ダスティン・ホフマン)。一度はラッツォから金を騙し取られたジョーでしたが、根が優しい彼は片足が不自由で結核持ちのラッツォを捨てておけず、廃墟ビルで一緒に暮らし始めるのでした。二人の夢はいつかマイアミに行って暮らすこと。相変わらず体を売って小金を稼ぐジョーでしたが、ラッツォの病状は目に見えて悪化していきます。

 死ぬ前に一度ラッツォにマイアミの海を見せてやりたいと、ゲイの老紳士からお金を分捕ったジョーは、息も絶え絶えのラッツォと2人、フロリダ行きの夜行バスに乗り込みますが、ついにラッツォは……。


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 とにかくこの、社会の底辺でもがく青年二人の、「裏アメリカン・ドリーム」ストーリーが切なくて胸が痛い(ToT)監督が英国人のいぢわる爺さんジョン・シュレジンジャーなんで、アメリカン・ドリームを胸に抱いて挫折していく若者たちの描写が容赦ないです。アメリカ人の監督なら、ここまでシビアに描けなかっただろうなぁ。

 

 主人公を演じるジョン・ヴォイト、この作品で遅咲きの映画デビューを果たし、80を過ぎた今でも、名脇役として活躍中。ハイ、ご存知アンジェリーナ・ジョリーの実のパパです。お顔、そっくりよね^^;片やダスティン・ホフマン、映画『卒業』で、裕福な家庭のぼったま大学生(しかもドー○イ)を演じた直後の役がこの「ドブネズミ・ラッツォ」だんたもんだから、みんなビックリしましたよねぇ……。ひと昔前、「カメレオン俳優」の代名詞といえば、ダスティン・ホフマンでした。

 

 いわゆる「アメリカン・ニューシネマ」の名作(しかしなぜか監督は英国人 笑)です。