オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

パリを舞台にしたおススメ映画PART4〜『死刑台のエレベーター』『さよならをもう一度』

「パリを舞台にしたおススメ映画」第4弾は、モノクロ画面で輝く美しいパリ……でございます。
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死刑台のエレベーター(1958年)

 武器密売に手を染めるカララ社の社長夫人フロランス(ジャンヌ・モロー)は、年の違いすぎる夫カララとの結婚生活に絶望、夫の部下ジュリアン(モーリス・ロネ)との情事に惑溺し、ついには彼に※夫殺しを命じます。ジュリアンは自殺に見せかけてカララを射殺しますが、計画が狂ってエレベーターに閉じ込められてしまいます。おまけに逃亡用に停めてあったシトロエンを若い無軌道な男女に盗まれてしまい、彼らがさらに別の犯罪を起こしたことで、運命の歯車は大きく狂い始めて‥‥‥。

※電話口で「私を愛しているなら夫を殺して」と言い放つ時の、ジャンヌ・モローの凄味ったら‥‥。

 

 ルイ・マル監督の、若干25歳の時のデビュー作。1950年代と言えばまだ第二次世界大戦の傷跡深く、路上生活者が溢れて労働者のストも多発、美しい筈のパリの街もゴミだらけだった頃。主人公のジュリアンも戦時中は落下傘部隊で戦功を上げ、ヒーローともてはやされたものの、現在は将来に希望を持てず悶々としています。追い詰められて捨て鉢になり、衝動的な犯罪に手を染める二組の男女。被害者の社長が不動産開発の裏で死の商人‥‥という設定も、悪事に手を染める以外裕福になる手立てはない……といった世相を表していて、そんな時代の閉塞感を巧く絡めているところは、さすがヌーベルバーグの旗手‥‥といったところ。


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 エレベーターに恋人が閉じ込められて消息不明となり、焦燥感に駆られて夜のパリの街を彷徨い歩くフロランス。ビュンビュン車が通るシャンゼリゼ通りを彼女が無表情に横断するシーンは凄い。命がけぢゃん(^_^;)ヲタクもヨーロッパに住んでいた頃、パリの街を車で走ったことあるけど、街のど真ん中だっていうのにみんなスピード出すわマナーは悪いわで往生した記憶があります。ジャンヌ・モローって肝据わってるよねぇ‥‥‥。


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 全編に流れるのはマイルス・デイヴィスの気怠いトランペット。この映画を観て、ジャズにハマった……という人も多いんじゃないでしょうか。恥ずかしながらヲタクもその一人(^_^;)

 

★さよならをもう一度(1961年)


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 「彼女に見つめられると男はみんなセクシーになる」と、『カサブランカ』で共演したハンフリー・ボガードに言わしめたハリウッドの美神イングリッド・バーグマン。彼女は人気絶頂の頃、妻子のあるイタリアの映画監督※ロベルト・ロッセリーニと恋に落ち、婚外子を出産します。ピューリタニズムが支配するアメリカ映画界はそれを許さず、彼女は仕事を干されてイタリアに渡ります。彼女がロッセリーニ監督と離別後、ハリウッドの映画界に復帰するのはじつに8年もの歳月を要しました。

※女優・監督・作家とマルチな才で有名なイザベラ・ロッセリーニ(『ブルー・ベルベット』『永遠に美しく…』)は2人の愛娘。知性を父から、美貌を母から受け継いだ最強の女性だとヲタクは思っているんですが。


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 この映画の時、バーグマンは46歳。分別のある中年の女性として登場します。パリで装飾デザイナーとして自立している女性ポーラ(バーグマン)は離婚経験があり、同じ年頃のロジェ(イヴ・モンタン)とは、付かず離れずの「大人の関係」。そんな彼女の日常は、15才も年下のアメリカ青年・フィリップ(アンソニー・パーキンス)との出逢いによって大きく変わっていきます。ひたすら若い情熱をぶつけてくる年下の男性に戸惑いながらも、次第に惹かれていく女性の心理をバーグマンがきめ細やかに演じています。カラー作品だったらこの二人の関係性、ちょっと生々しい感じがしたと思うんですが、モノクロだからこそ良い具合に紗がかかったイメージになって、オトナの、ファンタジックなロマンスの後味。


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ラスト、バーグマンがフィリップに別れを告げて車に乗りこみ、走り出すシーン。雨が降ってきた…と思ってワイパーをかけたら自分が知らずのうちに流していた涙のせいだとわかって、思わず自嘲の笑いを漏らすシーンは必見。「心に残る映画のワンシーン」なんていうアンケートがあったら、1票を投じたい。……ただ、46歳のバーグマンは若い頃と同じくらい魅力的でキレイすぎて、彼女をあきらめられないフィリップに「私はもうおばあちゃんなのよ!」って叫ぶシーンにいまいち迫力がないのが玉にキズ。あれじゃあ、いくら15才の年の差って言ったって、あきらめ切れないよねぇ…(笑)


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 この作品、フランソワーズ・サガンの※『ブラームスはお好き』の映画化で、原作のほうは三者三様の恋の駆け引きや心理描写に重点が置かれていて、ロマンティックな映画よりずいぶんシニカルで苦いテイストです。

 

  ※フィリップがポーラを「ブラームスがお好き?」と、コンサートに誘うことから二人の関係が始まるんですね。映画の中でも、ブラームス交響曲第3番第3楽章の甘美で哀愁のあるメロディがアレンジされて繰り返し流れます。