オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

フランス風苦味の効いたハートフル・コメディ〜『ウィ、シェフ❗』


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 KINO CINEMA横浜みなとみらいにて、フランス映画『ウィ、シェフ❗』鑑賞。

 

 ⼀流レストランのスーシェフ(副料理長)として働くカティ。夢はいつか⾃分のレストランを開くこと。しかし、自らの技量に圧倒的なプライドを持つ彼女は、ある日オーナーシェフと⼤ゲンカ、その日に店を飛び出してしまいます。「魅惑の空間」レストランでシェフ募集…という謳い文句に釣られて彼女が応募した先は「魅惑の空間」どころか、建物は古くてボロボロ、移⺠の少年たちが暮らす⾃⽴⽀援施設でした。質より量、とにかく少年たちのお腹を満たしてくれれば……と言う施設⻑のロレンゾ。しかしそこはそれ、カティの一流料理人としてのプライドが許しません。施設の限られた食材で一流の料理を…と孤軍奮闘するカティ。見かねたロレンゾは、少年たちを助手として使って欲しいとカティに提案しますが……。


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※さすがはグルメ大国、フランス。出てくる料理にヨダレが…🤤(笑)一方、カティが働く一流レストランのメニューに「天ぷら」が登場したり…と、日本料理に言及するセリフが度々登場して、日本人としては嬉しいです。

 

 自らも児童養護施設出身で、16歳でレストランに住み込みで入り、独立独歩肩で風を切って人生を歩んできたために、他人となかなか馴染めないカティが、同じような孤独を抱える少年たちと料理を通じて心を通わせていくプロセスに、思わずホロリ😢笑って、泣いて、アツくなるハートフル・コメディですが、そこはそれ冷徹なリアリズムを旨とするフランス映画のこと、18才までに就学できなければ容赦なく母国に強制送還されること、「大人か否か」を判断する基準は実年齢ではなく「骨検査」によること、まだまだ制度がきちんと整っていないために、少年たちの未来が施設長のロレンゾや助手のサビーヌのようなごく一握りの人々の意志と努力に左右される……等など、「フランス移民問題のいま」がシビアに描写されていきます。


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※カティの助手たちを演じるのは、オーディションで選ばれた実際の移民の少年たちだそうです。カティ役のオドレイ・ラミー、元々料理が得意な人なのか、それとも訓練の賜物なのか、包丁さばきが素晴らしい❗

 

 ヒロインのカティには、この映画で優れたコメディエンヌの資質を見せたオドレイ・ラミー、施設長のロレンゾ役に『最強のふたり』が東京国際映画祭グランプリに輝いたフランソワ・クリュゼ。最初は移民の少年たちに対するスタンスの違いから対立していたのが、次第に互いの人間性を理解し合い、最強のバディになっていくプロセスがステキ😍

 

 近い将来、外国人労働者の割合が2割を数えると予測される我が国、日本。フランスの「今」は日本の未来。笑いと涙の中にも、考えさせられる問題を含んだ佳作だと思います。