オタクの迷宮

海外記事を元ネタにエンタメ情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想、推し活💙のつれづれなどを呟く気ままなブログ。

露伴、絶体絶命〜『岸辺露伴は動かない 密漁海岸』


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久しぶりの『岸辺露伴』❗あー、めっちゃ嬉しい。しばらく見ないと禁断症状が出ちゃうくらい好き❤さて今回は……。

 

 露伴先生(高橋一生)も泉くん(飯豊まりえ)も最近はお疲れ気味のようで、露伴先生は胃もたれと肩こり(職業病だよね^^;)、泉くんは歯痛と慢性睡眠不足(これまた職業病^^;)に悩まされていました。ある日のこと、泉くんは露伴邸の近くに良さげなイタリアンレストランがオープンしたという情報をどこかから仕入れてきて、「イタリアンは(胃にも)ヘルシーだからいいでしょ」と、先生をそこへ無理やり連れて行きます。暴言を吐きながらも、先生が結局泉くんの言いなりになるのは毎度のお約束(笑)。広いダイニングにたった1つのテーブルしかないそのレストランで、2人は摩訶不思議な体験をします。なんと、料理を一口食べた泉くんが洗面器一杯の涙が吹き出して寝不足が一気に解消したり、一方の先生は肩から次から次へと「肩凝り」のアカが剥がれ落ちてきて(泉くんも逃げ回ってたけど、ちとバッチイ 笑)、肩がすっかり軽くなった……といった具合。それもそのはず、オーナーシェフのトニオ(Alfredo Chiarenza)は、客の手を触っただけで病がわかり、それが治癒するような料理を作ることができるという「医食同源」のスペシャリストなのでした。しかし彼の腕をもってしても、重い病気に罹った最愛の人、森嶋初音(蓮佛美沙子)を治すことが出来ずに、焦燥の日々を送っていたのです。トニオはどこからか、あらゆる病を治してしまうという伝説のヒョウガラクロアワビの話を聞きつけ、日本の伝承に詳しい露伴先生にそれを手に入れたいので手伝って欲しいと頼みこみます。しかしそのアワビは希少種中の希少種、穫れば法律で厳しく罰せられる禁断の海の幸なのでした……!

 

 これまで、人間を闇の世界に引き摺り込む人外の者たち(幽霊やら妖怪やら地縛霊やら)の強大な力を恐れるでもなく、唯々諾々と従うのでもなく「これは面白い」「私は(真実を)知りたいだけなのだ」と言い放ち、ヘブンズ・ドアーというスタンド(異能力)と並外れた知能を武器に、果敢に立ち向かっていき、常に彼らに勝利してきた岸辺露伴。……しかし今回は、いくら動機が人救いであるとは言え、密漁という禁忌を犯してしまうのですから、当然の帰結として絶体絶命のピンチに陥ります。岸辺露伴、最大の危機といってもいいでしょう。『岸辺露伴』シリーズの特徴は、因果応報、(悪いことをすれば)罰が当たる……といった日本古来の思想が根底にあることで、我々のようなシニア世代が見てもどこか懐かしく、共感できるのはそんな点にもあるのではないでしょうか。

 

 岸辺露伴にとって最大の危機に、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の如く朗々と響き渡るのが、能『阿漕』の法華経方便品第二。『阿漕』は、昔阿漕という漁師が禁漁区で魚を取り、それが見つかって、見せしめのため沖に沈められた故事を詠ったもの。阿漕の霊は罪の深さにより、地獄で悶え苦しんでおり、それを知った旅僧が彼の慰霊のために方便品を唱える…というストーリー。しかし現代の阿漕たる岸辺露伴は、持てる知力体力精神力を振り絞り、仏の慈悲に頼ることなく、彼のスタンド「ヘブンズ・ドアー」を使って、最後は自力で危機を切り抜けます。方便とは仏が民衆を救うための「手段」を意味しますが、露伴にとって「自らを助くる方便」がヘブンズ・ドアーなわけですね。

 

 ラスト、泉くんが「(次作は)食をテーマにした怪奇ミステリー、舞台は美食の国イタリア!ぴったりじゃないですか!次の取材旅行はこれで決まりですね」と叫んだことで、映画化?の期待が一気に膨らみ、SNSはただいまお祭り状態(笑)。

 

 押せ押せ泉くん、無理やり先生をイタリアに連れてっちゃえ❗