オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

播磨屋から高麗屋へ〜松本幸四郎『鬼平犯科帳 血闘』


f:id:rie4771:20240514130728j:image

 ヲタクも寄る年波のせいか、ここ数年時代劇が大好きになった。とはいえ、先が読めないダークなストーリー展開、登場キャラも善悪渾然一体となった曖昧なやつじゃなくて、スッキリ勧善懲悪、殺陣も歌舞伎みたいに型がバッチリ決まってて、水戸黄門大岡越前みたいに最後は決め言葉でシャンシャンシャン、安心して見れるやつ。だから池波正太郎のホンだったら、仕掛人シリーズより鬼平のほうがいいの、最近は(笑)去年、映画でトヨエツの藤枝梅安を観た時はスタイリッシュでワルの魅力に溢れててそれは素敵だったけど、ダークでスリリングすぎるストーリー展開にちと疲れちゃって(^_^;)鬼平観たいなーと思ってたから、今回の松本幸四郎鬼平は「よっ、待ってました高麗屋!」って感じよ。

 

 ……って、前置き長すぎ。

 

 悪党どもから“鬼の平蔵”と恐れられる、江戸の火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の頭・長谷川平蔵の捕物を描いた「鬼平犯科帳」(原作・池波正太郎)。さてさて、今回の事の顛末は……。


f:id:rie4771:20240514165522j:image

※平蔵(松本幸四郎…右)を慕い、身命を賭して働くおまさ(中村ゆり)。

 

 ある日のこと、長谷川平蔵松本幸四郎)が若い頃(深川本所の鐵と呼ばれて、放蕩者のワルだった頃ですね)馴染みだった居酒屋の娘おまさ(中村ゆり)が突然平蔵を訪ねてきて、「密偵になりたい」と申し出ます。当時、おまさの父親は居酒屋を営みながらもそのじつ、裏の顔は腕利きの盗賊だったのです。父親の死後、おまさは引き込み女(商家などに住み込み、盗賊の手引をする)を生業にしていたものの、平蔵が火付盗賊改方の頭に就任したことを聞きつけ、引き込み稼業からきっぱりと足を洗い、自ら密偵となって彼の下で働きたいと思ったのです。しかし平蔵は昔妹のように可愛がっていたおまさをそんな危険な目には会わせられないと、けんもほろろに彼女を追い返します。折も折、押し込み先の老若男女を皆殺しにして金品を強奪する極悪非道な盗賊・網切の甚五郎(北村有起哉)一味が江戸の町を夜な夜な恐怖のどん底に陥れていました。そんなある夜のこと、芋酒屋を営みながら盗みを働く錠前破りの天才・鶯原の九平(柄本明)は、偶然にも商家に押し込みに入った甚五郎一味とバッタリ鉢合わせ。命からがら逃げ帰ります。ひょんなことから九平と知り合いになったおまさは、鉢合わせた夜甚五郎一味の後をつけ、彼らの居場所を突き止めたと言う九平と共に一味のアジトに潜入しますが……!


f:id:rie4771:20240514134112j:image

※平蔵の若き日を演じる市川染五郎。さすが高麗屋の未来を担う御曹司、「水も滴るいい男」とはこのことでございますよ(笑)

 

 今回の「血闘」は、吉右衛門のドラマでも人気キャラだった鬼平密偵・おまさが、いかにして鬼平から密偵の盃を受けるに至るか……を描いたもの。吉右衛門版では『女囚さそり』シリーズの梶芽衣子が演じてて、めっちゃカッコよかったのよね。いわゆる江戸時代の粋な女の代名詞「小股の切れ上がったいい女」ってやつかしら(笑)今回中村ゆりが演じてますが、毅然として気丈ではあるけれども、胸の奥では鬼平に対する一途な思いを燃やし続けるおまさのイメージにぴったりですね。

 

 ヲタクの世代だと、鬼平と言えば幸四郎のオジサマに当たる故・中村吉右衛門のイメージが強いですよね。映画を見るまではヲタクもちょっぴり不安でした。でもひとたび作品世界に入り込んだら、そんな不安はふっとんだ❗やはり血は争えないなぁ。幸四郎鬼平は、ふとした瞬間に吉右衛門を彷彿とさせて…。このキャスティングは良かったよねぇ。時代劇はやはり歌舞伎役者ですよ。まずもって低重心の腰の据わり方が決まってるし、歩き方や立ち回りが現代劇の俳優さんとは全然違う。吉右衛門は「鬼」に相応しく眼光鋭く人を射るようで、何とも言えない凄みがありましたが、幸四郎は、若い頃放蕩三昧のワルでしたが、改心の末酸いも甘いも噛み分けた大人になった鬼平の、強面の裏にある人たらし的な愛嬌を巧く出していて、ヲタク個人的には幸四郎推しかも(笑)


f:id:rie4771:20240514180537j:image

※甚五郎一味の引き込み女おりん(志田未来…左)と、若き日の本所の銕(市川染五郎)の想い人、すあい女(呉服類などの取次ぎ販売をしながら、かたわら売春をした)のおろく(松本穂香…右)。生まれ落ちた時から、一生を定められてしまった彼女たちは、何とか泥沼から這い上がろうとしたが故に悲劇に見舞われます。ベテラン揃いのキャストの中、そんな江戸の女たちの悲哀を全身で表現したお二人。素晴らしかった❗

 

 原作者の池波正太郎生誕100年を記念して、昨年の『藤枝梅安』に引き続き制作開始となった『新・鬼平シリーズ』シーズン1。今年2024年の1月に放送・配信された『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』、本作である劇場版『鬼平犯科帳 血闘』、そして今後放送・配信予定の『鬼平犯科帳 でくの十蔵』『鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛』の計4作品から構成されます。

 

 次は小野十蔵のエピソードかぁ……。柄本時生が演じるんだよね。でもこの役、吉右衛門版では時生のパパ、柄本明が演じてるんですよ。幸四郎から染五郎柄本明から時生と、技の継承……って感じがして、なんともまあ、粋なキャスティングじゃござんせんか。