オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

PG12で大丈夫❓(^_^;)〜映画『チャレンジャーズ』

 
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 桜木町駅前のシネコン「ブルグ13」にて、ルカ・グァダニーノ監督の新作『チャレンジャーズ』鑑賞。

 

 ヲタクが当ブログの記事で制作情報を発信したのがおよそ2年前。待ちに待って(その間ヴェネチア国際映画祭でのプレミア上映が突然キャンセルされるというハプニングもありつつ)ついに……ついに日本で劇場公開された『チャレンジャーズ』(ルカ・グァダニーノ監督)❗長かったよぉぉぉ😭😭😭


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※10代の終り、1人の女性に夢中になった2人の男。さて、このラブ・トライアングルの結末は…❗❓

 

 天才テニスプレイヤーとして少女の頃から将来を嘱望されていたタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)。しかし彼女は試合中のケガにより、突如として選手生命を絶たれてしまいます。それまでの人生のあらゆる局面において負け知らずだった彼女にとって、それは到底受け入れることができない事柄でした。彼女は潰えた自身の野心の代替として、自分に夢中なテニスプレイヤーのアート(マイク・フェイスト)と結婚し、彼の専属コーチとなります。結果、アートはグランドスラムに6回優勝(全豪、全英、全仏を各2回ずつ)、超一流選手に上り詰めます。しかし貪欲なタシの野望は留まるところを知りません。というのはアートは、彼女の最大の悲願である自国の全米オープンには1度も優勝していないからです。ところが彼女の意に反して、30才を迎えたアートは最近戦うことに疲れ始めているようで、若い選手たちに連戦ボロ負け状態。挙げ句の果てには、引退を口にし始める始末。焦燥に駆られるタシは、全米制覇に向けて何とかアートの士気を再び高めたいと、彼のランクにしてはかなり下位のチャレンジャーズ大会にワイルドカード枠(主催者推薦枠。集客が期待される人気選手である場合が多い)として参加させることにします。しかしそこで衝撃の事実が発覚❗なんと決勝戦の対戦相手は、アートの少年時代の親友で、共にジュニアダブルスで優勝し、タシとも一時肉体関係にあったパトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)だったからです……。


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※共に名門・スタンフォード大で学び、その後結婚してテニス界のセレブなパワーカップルとなるタシ(ゼンデイヤ…右)とアート。

 

 全てをこの手に掴み取り、周囲を自在にマニュピレートしたいという激しい欲望を抑え切れないタシ。彼女は長い間、アートという従順な人形を繰ることに成功し続け、今回のチャレンジもまた、彼女の勝ちに決まっている……はずだった。しかしそこに、粗野で傲慢、悪賢く、最後までタシの思い通りにならなかった元カレのパトリックが彼女の人生に再登場してきて、彼女の「人生の設計図」は思わぬ方向に進み始めます。本物のテニス試合と見まごうほどの白熱したゲーム展開(ゼンデイヤ、マイク・フェイスト、ジョシュ・オコナーは半年間、合宿形式でテニスの猛特訓を受けたそう)に、彼らの10年に渡る「ラブゲーム」が度々フラッシュバックします。


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 登場人物はほぼ3人のみ。タシ(ゼンデイヤ)は黒人、夫であるアート(マイク・フェイスト)はWASP(W白人、Aアングロ=Sサクソン、Pプロテスタントアメリカ人のこと)で、ライバルのパトリックはユダヤ系。ひと昔前ならアートが2人をマニピュレートする立ち位置だったかもしれませんが、彼はなぜか3人のうちで最も自己肯定感が低く、他の2人にいいように翻弄されてしまいます。そもそも舞台が2019年とは言え、アメリカのヤンエグ表現するのにWASPなんて言葉、当時でももはや時代遅れな気が……(^_^;)自身がイタリア人で(公表はしていませんがおそらく)LGBT、ハリウッドではいまだに「よそ者」、「異端児」であるルカ・グァダニーノの、米国社会への皮肉と揶揄と捉えるのはヲタクだけ❓

 

 三者三様10年という長い月日を経て、何にチャレンジして、何を得たかったのか❓アートとパトリックがタイブレークの末勝敗を決した時のラストシーンが全てを物語っている……とヲタクは感じました。自分自身の本心が掴めず迷走を続けていた彼らが、やっと自己認識に至ったのだと。あのシーンを見て初めて我々は思い知るのです。ジュニアカップ優勝の夜、アートとパトリック2人をトリコにした「筈の」タシが何故、「略奪愛は好きじゃない」というナゾの言葉を残して2人の元を去って行ったのかを。

 

 ヲタクの推理では、試合の後タシをコーチにして、アートとパトリックはジュニア時代と同様、ダブルスで再出発するような気がしてならない。

 

 オープニングからラストクレジットの曲に至るまで、全編を通じて音楽を担当したのは今業界で大注目の※トレント・レズナー & アッティカス・ロス。今回試合のシーンで多用されるのは、観客の体内に眠る欲望を呼び覚ます、アップビートなシンセサイザーの音……凄い❗❗

※『ソーシャル・ネットワーク』、『ドラゴン・タトゥーの女』、『エンパイア・オブ・ライト』、『ザ・キラー』等、最近の印象的な映画音楽といえば、必ずと言っていいほど彼ら……なんですよね。


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※ヲタクの推しマイク・フェイスト、元来はかなり細身の彼ですが、今作のために相当筋トレしたもよう。(ジョシュ・オコナーが「マイクは1日中トレーニングしてた」って言ってたもんね^^;)タシに全面的に依存していたアートが、パトリックとの試合を通じて次第に自己認識に至る過程を繊細に演じて、見事だったと思います。(推しに対するえこひいきではありません、念のため 笑)

 アート役にマイクを推薦したのは、プロデューサーも兼任したゼンデイヤだそう。彼がコナー・マーフィ役を演じた『ディア・エヴァン・ハンセン』のブロードウェイの舞台も見たらしい。立派なマイク担じゃん(笑)


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※映画の中では、激しい欲望を漲らせる大人の三角関係が描かれますが、撮影現場の裏側やプレスツアーでの3人は一転して、コドモ返り(笑)まるでハイスクールの生徒たちみたいにワチャワチャしてます。

 

しっかし米国ではR18+指定になったってニュース、以前どこかで読んだんだけど、日本ではPG12。ホントにこれで大丈夫❗❓

 

 ヲタクが溺愛するたった1人の孫👦は12才男子だけど、汚れなき天使ちゃんな彼にはとても見せられない映画だわ(笑)

 

★本日の小ネタ

クィア・コーディング

この作品、明らかにクィア・コーディング(性的少数者であると明示的ではなくても、そのように解釈できるような様々なサブテキスト要素(コード)を埋め込むこと)な作品。まっ、監督がルカ・グァダニーノだし、ある程度予想はついていたけど。だって『ブロークバック・マウンテン』(舞台)のマイク・フェイストだし、『ゴッズ・オウン・カントリー』のジョシュ・オコナーだし。コーディングと言えば、名作『君の名前で僕を呼んで』でティモシー・シャラメが食べてたスモモが、今回はチュロスやバナナなわけ。ちょっと困るじゃない〜〜、これからディズニーランドでどんな顔してチュロス食べればいいのさ(笑)

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※叶わぬ恋に悶々とするパトリック(左)を演じるのは、英国俳優ジョシュ・オコナー。クズだけど、心の奥底にどうしようもない寂しさを抱えてる役が上手いんだよなー、この人。

 

 今作を観た方の中には、「いや、これってむしろクィア・ベイティング(実際に同性愛者やバイセクシャルではないのに、性的指向の曖昧さをほのめかし、世間の注目を集める手法)じゃない?」って思う人がいると思う。……でも、グァダニーノ監督はたぶん真正のクィア(この呼び方自体が差別的なニオイがして、個人的には好きじゃないけど^^;)だから、ベイティングには当たらないというのがヲタクの考え。ノンケに惚れちゃったゲイの切なさをジョシュ・オコナーが小憎らしいくらい巧妙に演じてるけど、監督は彼の姿に自己投影しているような気がするから。

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※普段から仲良しなマイク・フェイスト(左)とジョシュ・オコナー(右)どこかで「クローゼット・ゲイ」っぽいって言われてたな、マイク(笑)

 

WASP

 今では死語と化した❓感のあるWASPですが、確かに1970年代くらいまでは彼らがアメリカ社会を牛耳っていたのは事実。ヲタクがこの言葉を知ったのは、大学時代に読んだエリック・シーガル(Erich Wolf Segal)の"Love Story"。就活してる主人公のハーバード大学生オリバーの「僕成績は3番目だけど、1番と2番はユダヤ人。彼らより良い所に就職できる筈」って言葉は衝撃的だったわー。当時のヲタクは、アメリカは「自由と平等の国」という幻想に囚われていたから。シーガル自身はハーバード大卒のユダヤ教徒だから、今思えば、作品の中でWASPハーバード大生を揶揄していたのかもね。