渋谷PARCO劇場にて、『ウーマン・イン・ブラック』鑑賞。
英国の作家スーザン・ヒルのホラー小説を舞台化したこの作品は、1987年スカボローの劇場で上演されて以来、その舞台ならではの恐怖体験が評判を呼び、その後12の言語に翻訳されて、40カ国で上演されるほどの大ヒット作となりました。
そこは古ぼけたヴィクトリア様式の小さな劇場。そこへ中年の弁護士キップス(勝村政信)が現われます。キップスには若い頃、家族や友人にも告白できないような恐怖体験がありました。(余りにも衝撃的な恐怖体験は口に出すのも憚られる……というやつですね)彼はその恐怖体験のため、夜ごと悪夢に悩まされ、1日たりとも安らいだことはなかったのです。彼は悩み抜いた末に、あの忌まわしい記憶を、家族に告白する決意をしました。それはあたかも悪魔祓いの儀式によって、自らのどす黒い記憶を浄化しようとでもするように。彼はその「儀式」の前に、優れた語り部たるべく、独白の練習をしようとします。その為に相手として選んだのが、若いプロの俳優(向井理)でした。俳優が若き日のキップスを演じ、恐怖の劇中劇が幕を開けます。
【劇中劇】
若き日のキップス(向井理)は、顧客である老婦人アリス・ドラブロウ夫人死去の報を受け、北イングランドの片田舎クリシン・ギフォードへ出向きます。葬儀と遺産整理のためでした。夫人は、潮が引いた時にしか行き来のできない孤立した場所・イール・マーシュの館で暮らしていました。しかし街でキップスがドラブロウ夫人の名前を出す度に、相手の表情は凍りつき、そそくさと逃げ去ってしまいます。夫人の葬儀に参列した彼はついに、目にします。そこに居るはずのない、蒼ざめた表情をした、黒衣の女を。街の人々を恐怖のどん底に陥れる黒衣の女。果たしてその正体は……❗❓
ヲタクはこのストーリー、ダニエル・ラドクリフ主演の映画の方で先に見ているんですよね。(『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』2012年)灰色の空に覆われた沼地の光景やイール・マーシュの館の陰鬱さが恐怖を煽り、とても怖い思いをした覚えがあるので、今回舞台ではその恐怖をどう演出するのかと思っていましたが……。
舞台のほうが断然怖かった❗(^_^;)
度々暗転があり、暗闇の中で突然悲鳴や蹄の音を聞かされるのって、心臓に悪いよ(笑)……人間は想像力を働かせる生き物だから、(どの場面で恐怖が襲ってくるか)予想しているうちに、どんどん不安になってくるんですよ。お化け屋敷の原理ですよね。こっちが不安と恐怖のカタマリになってるから、ちょっとした物音でも「ぎゃ〜〜っ」ってなるっていう、アレ(笑)
今回は前から3番目の、お二人の息遣いまで聞こえる良席。そのうえ、向井理さんと勝村政信さんが客席の通路を走り抜けるサービス演出❤ベテラン勝村さんはいつもながら緩急自在、恐怖の中にもユーモアが滲んだ演技で、時折我々の緊張をほぐして下さり、正統派の向井さんとは良いコンビじゃないでしょうか。
それにしても向井理さん、声は朗々と通るし、立ち姿が美しいし、何より舞台映えがしますよね。もっともっと舞台で拝見したいわ〜。……次はシェイクスピア、いかがでしょう❓『ヘンリー四世』のハル王子、『ヘンリー五世』のタイトル・ロール、『ジュリアス・シーザー』のアントニウス、『リア王』のエドガーなんてピッタリだわ、きっと。いつか、期待してようっと(笑)