オタクの迷宮

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オペラを巡る仁義なき戦い〜『ギルデッド・エイジ ニューヨーク黄金時代』シーズン2

 
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 U-NEXTで、HBO制作のドラマ『ギルデッド・エイジ〜ニューヨーク黄金時代』シーズン2鑑賞。脚本が『ダウントン・アビー』と同じジュリアン・フェロウズで、しかも制作はHBOだから、視聴者を飽きさせないストーリー展開と、一人ひとりのキャラ描写の巧みさはもはや見る前から想像できる(笑)日本での副題は「ニューヨーク黄金時代」。確かにアメリカ、特にニューヨークの19世紀末から後の100年間は、作品中にも詳しく描かれているように、大陸横断鉄道が敷かれ、電気は普及し、工業化、都市化、資本主義化が急速に進んだ時期。しかしGildedとは、Gold(黄金)ではなく、金ピカ、とか金メッキ……といった意味。上辺ばかりを取り繕う…と言った否定的な意味合いも含んでいます。作者が題名をなぜGold Ageではなく、あえてGilded Ageとしたのか、ちょっと興味のあるところ。

 
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※現在のニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(通称・MET)先日コンサートを鑑賞したテノールロベルト・アラーニャはMETの常連、個人的にオペラ熱が再燃している最中なので、今回のシーズン2はめちゃくちゃ面白かった!

 

 シーズン1に引き続きシーズン2でも、旧来の富裕層「オールド・マネー」のボス・アスター夫人と、新参者「ニュー・マネー」いわば新興の成金層の代表ラッセル夫人(キャリー・クーン)の、ニューヨーク社交界における権力闘争が続きます。当時のニューヨークでは、アカデミー・オペラハウスにボックス席を確保できるのが上流階級の証。アカデミーに席を持たないラッセル夫人は、席と引き換えにアスター夫人への従属の意を表明することを潔しとせず、当時建設中だったメトロポリタン歌劇場(MET)を牛耳ることによって、一気に社交界の実権を掌握すべく、「仁義なき戦い」を仕掛けていきますが……❗
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※古い因習に妨げられ、悩みつつも、自分らしい生き方を模索する「ニューエイジ」の代表、マリアン(右…ルイーザ・ジェイコブソン。あの名優メリル・ストリープの三女)とラリー・ラッセル(左…ハリー・リチャードソン)。2人の関係にも大きな変化が……。

 

 現代人の目から見ると、シーズン1&2を通じての上流夫人たちの権力闘争はコップの中の嵐……って感じで、そんな些細なことで争っているんだろうと思いますが、当時のアメリカの女性の立場を考えれば納得がいくんですよね。19世紀末のアメリカの理想的女性像といえば、「純潔、良妻賢母、信仰心、従順」。さすがピューリタニズムの国、って感じ(笑)。ラッセル夫人は目から鼻に抜けるような才気、頭の回転の速さ、豪胆さ、権謀術数は鉄道王である夫を凌ぐほど。彼女が現代に生きていればきっと、夫に代わって会社のCEOを務めていたことでしょう。しかし当時のアメリカ社会では、家庭にあって夫を陰で支えるのが妻の役目。彼女の抑圧されたエネルギーは、密室のような社交界に向くしかなかったのか……と、ヲタク的には少々同情したくもなります(^_^;)


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※マリアンの叔母2人。旧時代の価値観にマリアンを押し込もうとするアグネス(右…クリスティーン・バランスキー)と、マリアンの生き方に共感し応援するエイダ(左…シンシア・ニクソン)。しかしシーズンのラスト、この2人の関係性には皮肉などんでん返しが待っています。

 

  また、MET建設と並行して、ブルックリン橋落成に関するエピソードが劇中披露されます。病に倒れた主任設計者の夫の代わりに仕事を密かに引き継いだ女性が、「あなたの功績は世に広く認められるべきだ」と言うラリーに対して「そんなこと止めて下さい。女が設計したなんてことが公になったら、「縁起が悪い」と言って渡らなくなる人が続出する」って答えるシーンはちょっとショックでしたよね。100年前のアメリカって……想像と違ってた(笑)


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ラッセル家の使用人たち。彼らにも様々な人生模様があるけれど、ご主人たちに比べて生き生きと、楽しそうに見えるのはヲタクだけ❓(^_^;)

 

 ゆったりした展開だったシーズン1と違って、ストーリー展開も登場人物の相関図も風雲急を告げた感のあるシーズン2。

 

シーズン3が待ちきれましぇーん❗