ヲタクが今年唯一見続けているTVドラマ『光る君へ』。7月に入り、いよいよ佳境に入ってまいりました。ヒロインのまひろ(のちの紫式部……吉高由里子)は、藤原道長(柄本佑)への積年の想いを断ち切り、世渡り上手……いやもとい、人生の達人たる藤原宣孝(佐々木蔵之介)の妾(しょう…当時は一夫多妻制なので、第二、第三夫人の意)となりました。宣孝との結婚生活は残念ながらかなり短かったと思うので、まひろが藤原彰子の女房となり、清少納言の向こうを張って宮廷に華やかな文学サロンを形成するのも、もうすぐ(ワクワク)。楽しみだなぁ。大石静(『長男の嫁』『セカンド・バージン』)の脚本が今日も冴え渡っております。
※清少納言をチクチク批判している「紫式部日記」を読むと、皮肉屋で辛辣な批評家・紫式部(ひねくれ者のヲタク的には、けっこう好きなタイプだけど 笑)。『光る君へ』のまひろは、どちらかといえば正義心の強い直情径行型。まっ、大河ドラマのヒロインとしてはこちらのほうが視聴者の共感は呼びやすいでしょう。
『光る君へ』の主人公は紫式部だから、彼女の書いた『源氏物語』を読んでおけばなおさら楽しい。ヲタクは田辺聖子の現代語訳と大和和紀の『あさきゆめみし』で読みましたが、藤原詮子 (吉田羊)は※弘徽殿女御かな、藤原彰子(見上愛)のあの魂の抜けっぷりは女三の宮だろう……等など、モデル探しをしてみるのも面白き。道長の賢妻、倫子(黒木華)は明石の上かしら。あくまでも道長に寄り添うかのように装いながら、手綱を引いたり緩めたり、結局は自分の思い通りにことを進めていく手腕は大したもんですな。陰の左大臣と言ったところか。
※弘徽殿女御…『源氏物語』中の登場人物。桐壺帝の寵愛を身分の低い女房、桐壺更衣に奪われたため、更衣と息子である光源氏を烈しく憎む。
※男たちの政争の道具となった悲劇のヒロイン…というと藤原定子の名がすぐ上がるけど、藤原詮子 (吉田羊)の人生のほうがよっぽど気の毒に思われる😭『源氏物語』の弘徽殿女御だって悪役じゃないのよ、ほんとうは。詮子の強がりに隠された「哀しさ」が愛おしい。
男たちの政争に巻き込まれ、風に舞う木の葉の如き人生を歩んだ悲劇の中宮・藤原定子(高畑充希)はさしづめ藤壺の中宮でしょうか。両者とも才色兼備で分別のある女性……であるはずが、一時の激情に駆られて仏門に入ったり(女御になるべく幼少期から育てられた女性であれば、神の子孫である天皇に嫁いだ自分が仏門に入るということは何を意味するか、わかっていた筈)、かと思えば天皇に呼び戻されるとホイホイ宮廷に舞い戻ったり(定子)、義理の息子の懸想にズルズルと引き摺られた挙げ句(宿下がりしていた時の2回目のアレは防げたはずよね^^;)不義の子を出産、結局仏門に入る(藤壺)など、よくよく考えると、彼女たちに関わった男性陣をみんなダメ男化しちゃってるんだよね。しかも本人たちはそれに気づかず、(ワタシってなんて不幸なの。こんなに一生懸命なのに、ぐすん)って思ってるフシがあるから始末に悪い(笑)ヲタク的には、作品に登場する女性キャラの中では1番ニガテなタイプかなぁ。
※昼間っから定子と寝所に引きこもり、政務もなおざりの一条天皇(塩野瑛久)。おーいー、しっかりしてくれよ(笑)挙句の果てに、母親の詮子(吉田羊)に向かって「私をこんな人間にしたのは母上のせいだ」って……(^_^;)一条天皇と定子の関係って、恋愛というより共依存な感じがする。
これからの注目点は、何といっても藤原彰子の変貌ぶりではないでしょうか。父親の道長から何を言われても「仰せのままに」(ボー)としか答えず、貴族たちにさえ「うつけ」と陰口を叩かれた彼女が僅か11歳にして立后、夫である一条天皇を若くして亡くした後、いかにして後年皇太后として藤原一門を率い、摂関政治の要と成り得たのか。紫式部は幼い彼女に女房としてどのような影響を与えたのか。
※虚ろな瞳で、幼い弟にすら「お姉さまは毎日何もしていない」と言われる藤原彰子(見上愛)ですが……。
尊い血筋に生まれながら、いやそれだからこそ、一門の興隆のために入内し、男児を産むことこそが使命であると追い詰められていく平安貴族の女性たち。そんな中でも、「政治の道具であること」に抵抗しようとし、知力体力精神力を尽くしてサバイバルしていく彼女たちの戦いを、これからも見守っていきたいと思います。