ヲタクが今ハマりまくっているドラマ『バビロン・ベルリン』。Amazonプライムビデオでシーズン3を鑑賞。
シーズン2のラスト、民主主義を守ろうとあらゆる努力を惜しまなかったヴァイマル共和制の申し子、ベンダ行政長官(マティアス・ブラントゥ)は女中のグレタ(レオニー・ベネシュ)が仕掛けた時限爆弾によって無念の爆死😭しかしグレタは、共産主義者を装う恋人のフリッツに言葉巧みに騙されていたのでした。フリッツは実はナチス突撃隊の隊員で、グレタに恋を仕掛けたのもハニートラップ、ヴァイマル共和制の民主主義を守り抜こうとするベンダを亡き者にし、しかもその罪を共産主義者たちに擦りつけようとする国民社会主義ドイツ労働者党(略称NSDAP……つまりナチス党)の陰謀だったのです。恋に狂った末に恩人とその小さな娘を死なせてしまった自らの愚かさを恥じるグレタは、真相を明らかにして彼女を救おうと刑務所に日参する親友のシャルロッテ(本作のヒロイン……リヴ・リサ・フリース)にさえ面会を拒否しています。
※グレタの人生の歯車はどこまで狂っていってしまうのか……。
このシャルロッテとグレタという2人の女性の生き方が、当時の世相と女性の生き方をそのまま反映しているみたいで興味深いんですよね。2人とも貧困家庭の出なんだけど、自分が自立するために娼婦になってお金を稼ぎ、客である警察関係者に頼み込んで「無犯罪証明書」(売春は当時軽犯罪なので本来なら彼女はもらえない)をゲット、刑事助手になって逞しくのし上がっていくシャルロッテ(彼女の口ぐせ「男はみんなクズ」笑)と、一度男性に騙されて私生児を産み、養護施設に預けた苦い経験があるにもかかわらず、いつかは自分を愛してくれる人に巡り会えると甘い夢を抱き、周囲の男たちにまたもやさんざん利用され、ついには殺人にまで手を染めてしまったグレタ。逮捕後も、ベンダ殺害の黒幕である新行政長官ヴェントがグレタに面会に訪れます。「自分は共産主義者に騙された」と、彼女に法廷で虚偽の証言をさせようとするのが目的でした。彼は卑劣にも、「もし言うことを聞かなければ、今養護施設にいるお前の息子に里親はつけない」と彼女を脅迫し始めて……。どこまでツイてないんだよ、グレタちゃん😭薄幸な人生すぎるだろ。
※本作の主役ゲレオン・ラート警部(左)と、国内初の女性刑事を目指して奮闘するシャルロッテ・リッター(リヴ・リサ・フリース)。2人は性別を超えた良きバディとなっていきますが…。
……そんな中、トーキー映画の撮影中、上から巨大な照明器具が落下して、真下に居た当代一の人気女優が即死する事件が起きます。最初は単なる事故かと思われましたが、現場には故意に留め具を外した形跡が発見され、俄に殺人事件の様相を呈して…。早速捜査に乗り出す殺人課のゲレオン・ラート警部(フォルカー・ブルッフ)と、彼の捜査助手シャルロッテ・リッター(リヴ・リサ・フリース)。事件現場となった撮影中の映画は、「モカ・エフティ」のアルメニア人オーナー、エドガー・カサビアンと、親友である闇社会のドン、ヴォルター・ワイントラウブが多額の借金をして製作しているもの。映画の製作を妨害し、彼らを破滅させようと目論む者がいるらしい……ということは推測できましたが、陰で糸を引く黒幕になかなか辿りつけず、ラート警部たちの捜査も難航を極めます。また事件現場に、殺害された女優の夫が映画の中で演じるメフィストフェレスとそっくり同じ、黒ずくめの衣装を着た男が出没、にわかにエドガー・アラン・ポーみたいなゴシック・ホラーみが強くなっていきます(^_^;)シーズン1と2は社会派・政治サスペンスタッチで、それはそれで面白かったけど、お耽美なシーズン3も好みだわ〜。おまけに「土星同胞団」(ドイツに実在する、東方聖堂騎士団から派生した魔術団体)の降霊術も絡んできて一気にオカルトちっくに(笑)。……で、降霊術の霊媒師として突如登場したのが、ラート警部の主治医シュミット博士(ラート警部は第一次世界大戦によるPTSDに苦しんでいて、シュミット博士の精神分析を受けている)。え❗️❓️アンタ、なんでこんなとこにいるの❓️って感じで、もはや何がなんだかわからない(笑)
シーズン1、2も同様ですが、純粋なミステリと言うよりは、史実を巧みに絡めた、歴史大河ドラマの趣。どろどろした人間ドラマや複雑な時代背景も克明に描写されていますので、そのへんを踏まえて見たほうが楽しめるかも。欧州現代史に興味のある方はかなりツボにハマるはず。
※女優の殺人事件に絡んで、ラート警部とシャルロッテが潜入した土星同胞団・降霊術の「儀式」。怪し〜〜(^_^;)
また、シーズン3の舞台となるのは1929年9月。あの世界大恐慌の発端となったウォール街の株価大暴落は、突如として翌月の10月に起こるわけですが、その直前までは株価の上昇が続き、株式市場は空気を入れすぎてパンパンに膨れ上がった風船みたいな状態だったわけです。シーズン3では、銀行から生涯賃金以上の金額を借り入れ、全額株に注ぎ込む人々(それも一般庶民ですよ❗️)の姿が描かれて、背筋が寒くなりました。しかもそれを奨励していたのがドイツ銀行。当時は銀行自体がそんな投資詐欺まがいのことをしていたんですね。何をか言わんや……。欧米では世界大恐慌で、企業家ばかりでなく一般市民の自殺者が続出したと言いますが、そういうことだったのか……。また、シーズン3では、ニッセンという鉄鋼財閥のドラ息子が出てきます。株式市場がいずれ破綻すると予想したまではいいんですが、破綻前に株の空売りで大儲けしようとして、彼の予想より随分と早く株が暴落しちゃったっていう……。彼みたいな大金持ちが当時大勢いたんだろうな…。
※完全なる男性優位、ミソジニーが蔓延する当時の警察で、キャリアアップを目指して大奮闘のシャルロッテ。頑張れ〜〜❗️
迫りくるナチス席巻の暗黒時代。シーズン3ではナチス突撃隊のトップ、ヴォルター・シュテンネス主導による※ウルシュタイン社襲撃事件についても描かれています。ラート警部にとっては2度目の悪夢となる第2次世界大戦も刻々と近づいています。果たしてラート警部やシャルロッテは時代の荒波をどう乗り越えていくのか❓️本国ドイツでは既にシーズン4が放映されたそうですが……。
※当時ベルリンにあった出版社兼通信社。スタッフにはカメラマンのエーリッヒ・ザロモンをはじめとしてユダヤ人が多く、多くがホロコーストの犠牲者となった。
ヲタク、続きが見たくてたまりましぇーん❗️(笑)
★今日の小ネタ……映画館「バビロン」
ベルリンには、その名もバビロンという、老舗の映画館があります。なんでヲタクがその存在を知ったかというと、数年前、ヲタクが敬愛するフリッツ・ラング監督のサイレント映画の傑作『メトロポリス』(1927)が、この映画館で、なんと公開当時そのままにフルオーケストラ付きで上映された……というネット記事を読んだから。この映画館のBABYLONの文字の弯曲具合が、『バビロン・ベルリン』のポスターの文字にそっくりだと思いませんか❓️しかもこの映画館が建設されたのって、『バビロン・ベルリン』のストーリーの始まりと同じ1929年だし。ドラマを見ていると、当時「黄金時代」と呼ばれた、ヴァイマル共和制下の自由闊達な雰囲気の中、花開いた様々な文化や芸術に対する製作陣のリスペクトとノスタルジアを感じるのはヲタクだけ❓️