横浜駅直結のシネコン「Tジョイ横浜」で、『侍タイムスリッパー』鑑賞。これまで神奈川では川崎でしか上映してなかったんだけど、『カメ止め』よろしく、単館上映でのクリーンヒット……ということで、なんと先週から全国上映に❗️早速観てまいりました次第。
時は幕末。会津藩の下級武士、高坂新左衛門(山口馬木也)はその剣の腕を買われ、倒幕の密談に臨む長州藩士・山形彦九郎を暗殺せよとの家老直々の密命を受けます。彼は密談場所から出た所を瞬時に討ち取るべく、暗闇で息を潜め、「その時」を待っていました。しかし、山形も優れた剣の使い手、両者の決着はなかなかつかず、まさに白刃が翻った瞬間雷が落ち、新左衛門はなんと現代の京都撮影所にタイムスリップしてしまい……❗️
……と、ここまでのあらすじを読むと、あるあるのタイムスリップもの❓️って思うでしょう。
でも全然違うの❗️
タイムスリップは単なる受け皿。そこに、黄昏時を迎えた時代劇のリアル、それに「斬られ役」の哀愁を帯びた人情劇が絡み合い、さらには主人公である新左衛門が、「武士の本懐」を遂げられなかった絶望から、生きる目的を自ら見出していく再生の物語でもあって。笑いと涙、そして時代劇の様式美が贅沢に詰まった一大エンターテイメントになっております。ストーリー的にもね、「起承転結」の「転」の部分がね、見事でしたよね。「おーっ、そう来るか」っていう。全然想像もつかない展開が待ってます。(ネタバレになっちゃうからここで言えないのがツライ😭)
この映画の成功要因の1つは、何と言っても山口馬木也を主役に据えたことでしょう。時代劇と言えば馬木也、馬木也と言えば時代劇……だもんね。NHK大河の『麒麟が来る』、『鎌倉殿の13人』、直近では『鬼平犯科帳』など、普段は生真面目すぎるくらい生真面目なキャラが身上の彼ですが、今作ではそんな彼のキャラが何とも言えない可笑しみを生むクリーンヒット、コメディアンの才もアリと見た。一方で、白米のおにぎりを食べ、その美味しさに「日ノ本は良い国になったのですね…。こんな美味しいものが口にできる豊かな国に」と、見ている私たちの涙を誘ったかと思えば後半、幕末における会津藩の凄惨なる悲劇を知って以降は、まるで本当に会津藩士が現代に降り立ったような鬼気迫る演技。ラストのクライマックス、冨家ノリマサさんとの殺陣の場面は思わず手に汗握ります。緩急自在な演技はもはや名優の域では❓️山口馬木也、主役は意外にも初めてだそうですが、今作は一世一代のハマり役、いつか本格時代劇で主役を張る所を見てみたいな。
新左衛門を巡る人々(居候先のお寺の和尚さんやおかみさん)がベタな昭和ギャグを連発し、撮影所のスター錦京太郎(田中ツトム)が一昔前のヤンチャな時代劇スターたち(勝新太郎や山城新伍)を彷彿とさせるのも、往年の時代劇ファンにはたまらなく郷愁を誘うに違いありません。
ヲタク自身、昨年はトヨエツの藤枝梅安シリーズを見て、今年は十代目松本幸四郎の鬼平……と、時代劇が再びマイブームになりつつある昨今。折しも昨日、真田広之の『SHOGUN』がエミー賞を席巻❗️これから時代劇が復権するんじゃないかしら。
新左衛門殿、貴殿の出番、これからですぞ(笑)