KINOシネマ横浜みなとみらいにて、『映画検閲』鑑賞。
時は1980年代のイギリス。自宅で見れるレンタルビデオの全盛期。主人公イーニッドは、青少年の精神性に有害な影響を与えると言われる「ビデオ・ナスティ」(過激な暴力シーンや性描写を売りにする映画)の検閲官。当時のサッチャー政権は、多発する青少年犯罪の一因を「ビデオ・ナスティ」に求めており、完璧主義者のイーニッドは、常に緊張状態、過度のストレスに晒されていました。そんなある日、イーニッドがいつも通り作品をチェックしていると、あるホラー映画の出演女優が、幼い頃一緒に森へ遊びに行った時行方不明になった妹のニーナにそっくりであることに気付きます。また、その撮影場所も、妹を見失った場所と同じでした。その奇妙な偶然に彼女は、映画の製作プロデューサーに近づき、真相を確かめようと動き出しますが、それと時を同じくして、まるでそのビデオの世界に入り込んでしまったかのように、彼女は血塗られた妄想に苦しむようになり……❗️
ストーリーが進むにつれて、観ているこちら側も現実と妄想が入り混じってくる奇妙な感覚に囚われるのですが、だからこそホラー映画定番の「ジャンプスケア(Jumpscare)」が非常に効果的に使われれていて、恥ずかしながらヲタク、実際に3度ほど座席でジャンプしましたよ、「ぎゃーーー、怖いっ」って(笑)映画の舞台になった1980年代って言えばB級ホラーの全盛期ですからね。監督もサム・ライミの『死霊のはらわた』がお好きだそうで(^_^;)そう言えば、粗い画像の感じとか、色遣いとか、『サスペリア』(ダリオ・アルジェント、元祖版のほう)思い出した。当時の作品群に対する監督のリスペクトが感じられました。
また一方では、検閲を厳しくして性的もしくは暴力的な映画を取り締まりさえすれば青少年の犯罪はなくなる……などといった当時のサッチャー政権、ひいては、現在でもどこかの国には存在するであろう表現の自由を厳しく取り締る国家権力に対する皮肉が強烈でした。ラストの、明るくポップな映像で彩られたシーンがその最たるものでしょうか。映画の中のほんの小さな「暴力の芽」すら見逃さない「ミス・リトル・パーフェクト」、ヒロインのイーニッドが、一見いかにも清廉潔白そうに見えてそのじつ、心の奥底には抑制の効かない暴力衝動を抱えているところなんかもね、なんか怖かったですよね。
こういう、いかにもサンダンス映画祭で絶讃されそうなカルトっぽい作品、ヲタクは大好きなんですが、ラストのオチは蛇足じゃなかったかなぁ……。現実と妄想が混沌としたままシュールに終わったほうが余韻が残ったかも。ラストのオチでいっぺんにチープな感じに…。まっ、単なる個人的な好みの問題ですが^^;
それより公式ホームページ見てみたら、この作品の監督プラノ・ベイリー=ボンドって42才の女性なのね。しかもモデルさんみたいな華やかな美女。この人が『死霊のはらわた』フリークで、『映画検閲』の監督なのかぁ……。映画の内容より衝撃的だったかも(笑)