オタクの迷宮

海外記事を元ネタにエンタメ情報を発信したり、映画・舞台・ライブの感想、推し活のつれづれなどを呟く気ままなブログ。

激アツ、胸アツ〜Netflix『極悪女王』


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 良かったね〜、いや良かった❗️Netflixの日本作品、だいたい皆面白いけど、今のところヲタクのベスト3は『全裸監督』、『幽☆遊☆白書』、そしてこの『極悪女王』。

 

 貧しい家に生まれ、親の愛情にも恵まれなかった内気な少女・松本香(ゆりあんレトリィバァ)が、「自分だって「なにもの」かになりたい。強くなりたい」と、18歳で女子プロレスの世界に飛び込み、悪役(ヒール)の極みと言われた「極悪同盟」の首領(ドン)に上り詰め、当時絶頂だったクラッシュギャルズとの激しい攻防戦が人気を呼んで女子プロレス黄金時代を築き、「宿敵」長与千種唐田えりか)との壮絶な大阪城ホール「髪切りデスマッチ」を経て、1988年に引退するまでの物語。

 

 ヲタクは彼女たちと同世代だから、あの「髪切りデスマッチ」は覚えてる。(実際の試合は怖くて見れてないけど…^^;)しかしあの試合の裏に、こんな熱い人間ドラマが隠れていたとは……。

 

 しかし、『極悪女王』は、女子プロレスの世界で切磋琢磨する少女たちの、感動的なサクセスストーリーでは決してありません。それよりもむしろ、持って生まれたスターのオーラを持つ者へに対する、それを持たない者の強烈な嫉妬心や、複雑な劣等意識、ドロドロした女同士の足の引っ張り合い、プロレスを技倆を磨くべき1つのスポーツとして捉えるか、あくまでも観客を喜ばせるための興行として捉えるか、それによって生まれる確執や軋轢…etc.をリアルに描いているのです。そして、半世紀前の、コンプラもヘッタクレもない、問答無用の凄惨なショービジネスの世界の内幕も。……何しろ、総合監督が白石和彌(『孤狼の血』『彼女がその名を知らない鳥たち』『死刑に至る病』)だものね❗️一筋縄でいくはずがない(笑)

 

 何と言っても、演じる女性陣の体当たりの熱演が作品にいっそうの輝きを添えています。ゆりやんは、気の弱い、優しい少女香が、自らを輝かせるために極悪のヒールを生きると決めた時から、私生活においても「ダンプ松本」というアイコンになり切ろうとし、結果、家族や友人すらも次第に失っていく哀切さを全身で表現、素晴らしかった❗️そして、あくまでも正統派のプロレスを目指し、技を極めようとする生真面目なライオネス飛鳥剛力彩芽)と、プロレスを1つのエンタメと捉えて、どんどん自らのスター性を表していく長与千種唐田えりか)の対比も良かったなぁ……。その「方向性の違い」によって、次第に2人の間に亀裂が生じていくさまもキッチリ描かれていたしね。そしてヒーローにせよヒールにせよ自分たちは同じように搾取されていたことに気付いていく彼女たちの慟哭。だからこそ、ダンプの引退試合で初めて所属の全女(全日本女子プロレス)に反旗を翻し、クラッシュギャルズ極悪同盟もない、同期4人(ダンプ松本長与千種ライオネス飛鳥大森ゆかり)でのクリーファイト、「私たちは私たちのやりたいプロレスをやるんだ❗️」というクライマックスが最高に盛り上がる❗️

 

 彼女たちを支える脇役陣も、斎藤工音尾琢真、赤ペン瀧川……と、「白石組」のクセモノ俳優たちが揃い踏み❗️演技のアンサンブルが、いかにも白石ワールド全開だった。

 

 作品の成功の立役者はもちろんゆりやんだと思うけど、唐田えりかの演技も特筆に値するでしょう。現役時代の長与千種って、誰もが惹きつけられるスターのオーラを身に纏っている一方で、なんて言えばいいんだろう、どことなく薄幸そうでね、暗い色気があったのよ。ちょうど山口百恵みたいな。もっと言えば観ているこちら側の嗜虐心をソソる……みたいな。それを上手く代行してくれてたのがダンプ松本だったんじゃないか……って。あれ❓️こんなヒネくれた観方してたのヲタクだけか(笑)そういう独特の雰囲気を、唐田えりかは巧みに表現していたように思います。次は白石組の映画で観てみたいなぁ、彼女。

 

 ミソジニー大国日本から、女性たちが主役の、しかもこんなに胸アツなドラマが世界に向けて発信されるなんて……。日本も少しずつ、変わりつつあるのか……な❓️

 

 ポストクレジットに流れるのは、世界を舞台に活躍するラッパーAwichの『Are you serious?』。めっちゃカッコいいっす。